のら猫の三文小説

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純子の挑戦 No.14

2012-12-31 00:17:53 | 純子の挑戦


洋一と京子




洋一と京子は、家に帰り、子どもたちを寝かした。

洋一「参った。お母さんはなんでも知ってる。」

京子「貴方、まさか」

洋一「冗談じゃない。少し接待でいい気になっていただけだよ。会社の金で遊ぶな。その通りだね。」

京子「自分の金でも駄目よ。お母さんにいいつけるよ。それに私、少し変なのよ。久しぶりに激しくやるから。火付けてそのままにしていると、お母さんに直訴するよ。」

洋一「あれだけやったのに。」

京子「私じゃ駄目なの。若い芸者でないと駄目。」

洋一「そんな事言ってないよ。」

京子「じゃ今夜も頑張ってね。」


洋一と京子はこうして結婚していた!



京子は、名古屋の大きな機織工場をもつ庄屋の箱入り娘だった。整った顔立ちで、上品そうな顔だちで、近在でも有名な娘だった。

父の横山太吉は、辺見織物の一人娘だった母から譲り受けた機織工場をを安倍紡績に売った。文明開化で、洋風化の波に対応して将来を考えるより、急成長している安倍紡績に売った方がいいと思った。安倍商会に勤めていた知人を頼って依頼した。横山太吉は安倍紡績は、軍服や官服などの洋装と従来の和服等もやっていた繊維の会社であり、いくつかの機織場も居抜きで買っていると聞いていた。働いている人にも迷惑をかけず、政界入りを夢見る自分の評判にも傷が付かず、金になると計算していた。出来れば辺見織物の名前を残してくれるかもしれないとも考えた。安部紡績からの調査団も来て、横山も話をした。

安倍紡績は、辺見織物の技術や立地場所が良い事を評価し、辺見織物の株を8割を安倍紡績が買い取り、2割を横山太吉のものとする。名前も辺見織物で構わないとする案を出してきた。金額も横山には妥当と思えた。安倍紡績の交渉担当は、社長も工場を見てるし、問題ないと思いますが、最終的な社長の決裁を取りますので、少し時間を下さいと言った。横山は、そんな人が来たのかとは思いながら、結果を待っていた。


社長の決裁がおりました。本来なら社長と最終合意して頂くのですが、社長の時間が取れません。社長の長男が取締役になっています。その人をつれていきますので、最終合意をして頂けませんかと言う返事だった。横山は了解して待った。横山の自分の大きな屋敷で、最終確認をした。

もう相当の年輩の遠藤副社長とまだ青年の洋一が交渉担当とともに現れ、横山と最終的な確認をした。


安倍紡績側は、横山が安倍紡績に出資できる案も提示した。完全な子会社よりも横山の面子を立つのではないかと言った。金額は拘らないが、安倍紡績が買い取る金額の1割以内として欲しいというものだった。横山はその案にのった。安倍紡績の出資金総額では百分の一以下ではあるが、単に身売りした事にもならない。金も入ってくる。辺見織物の名前も残る。




合意が済んで帰ろうとする安倍紡績側に、横山は酒席に招待した。遠藤と洋一は断った。せめて汽車の時間までくつろいでください。京子がお茶を持ってきた。京子は18才になっていた。若い洋一を見て、頬が赤くなった。そして安倍紡績側は出発した。横山は商会の知人にお世話になったが、合意した。商会の知人はそれは良かった。安倍紡績の出資金も得たと聞いて、それは凄い。利益反映金などの配当だけで、直ぐに何倍にもなります。交渉がうまいですねと言った。色々と話をすると、社長の息子は22才で独身と言う。横山は、純子が安倍商会の社長でもある事も知った。


横山は安倍紡績の担当と話をして、社長に挨拶するために上京したいと言い、そんな事は結構ですという担当を説き伏せ、時間を調整してもらった。横山は、京子をつれて、東京に行き、純子と会った。挨拶もそこそこに京子を紹介した。純子は横山の意図が判った。洋一を呼び、横山親子を料理屋に行って、接待するように言った。時間はお昼頃であった。


横山は直ぐに用事を思い出したと言い、席を立ち、洋一に宿まで、京子を送ってもらうように頼んだ。横山は1週間程度東京に滞在していたが、京子は夕方にもそわそわしていなくなっていた。洋一は、相手を探していた。

市橋も治部も、恵子も純子もどたばたしたものの若くして結婚した事もあり、見合いは考慮されない、当時としては希有な家であった。しかし洋一には、見合い話も来ていたし、純子や洋介の元にも来ていた。姉の妙子は出来ちゃた結婚に近いし、洋次郎はなんか怪しい。少し焦っていた。お淑やかな京子に、惹かれていた。京子もこのまま見合いで結婚して地方暮らしと諦めていた。飢えている動物にエサを出した時の様に、簡単に話は進んだ。結婚は直ぐ決まった。 



洋一は、洋介と純子が新婚時代に住んでいた家を改築し、京子と共に住んだ。すぐに洋次郎と真弓の熱愛事件が起きた。京子には、洋一は初めての男であり、洋一は純子と妙子の影響から抜け出した。京子は結婚後5年の間に、女の子を二人出産した。そして洋一は女三人に囲まれて、暮らした。京子が純子に会う度に、京子の性知識は増え、洋一は、夜には大変になった。洋一は、頻繁には京子を洋介と純子の家に連れて行かなかった。洋一が鉄鋼に移籍し、出張や接待が増えるにつれて、京子の夜は、寂しくなっていた。 



京子は、年を取らない純子や自分より年上の妙子が自由に暮らし、若く綺麗になっている事や自分より年上の真弓が熱愛されて、若く綺麗になっている事をみながら、30才半ばになっていた。私が一番老けている。一番若いのに。二人とも40才を超えてるのに輝いている。私はくすんでいく。洋一さんは、この頃遊んでいる。福岡から帰ってきた時もおかしかった。そんな思いになっていた時に、「美人競争」が起き、必死になった洋一が京子の身体に火を付けた。私も妙子さんや真弓さんのように輝ける。純子、妙子そして真弓と話をする機会が増え、色々と話を聞いた。以前なら恥ずかしいと思っていた事もやれるようになった。


以前は和服一本であったが、家では洋装も増えた。洋一にもして欲しいと言う事も増えた。「女は40からだよ」と義母さんも言っていた。これからだ。私の青春は。して欲しいと迫る京子に、洋一が、激しく何回かしたのも、ガソリンに火を入れた。そして京子も綺麗に若くなっていった。そして京子の感じ方が深くなり、ついに、40才手前で、白い霧の中で意識が消えていき、不安と絶頂の中で声を上げた。 



京子「私、この頃とても感じる。深く感じる。貴方が入ってきた時から感じているし、身体全部で感じている。真弓さんは結婚してから、妙子さんはもっと前から。私は今から。」 
洋一「嫌な事いわないで。頑張るからさ。」

京子「宏さんや洋次郎さんよりも頑張ってね。」

洋一「あいつらは、ちょっと異常。女房命みたいな連中。」

京子「貴方にとっては、私はどうでもいいの。」

洋一「そんな事いってないよ、俺も京子は好きだよ。」

京子「じゅ今夜も頑張ってね。」 






純子の挑戦 No.13

2012-12-30 00:39:37 | 純子の挑戦
純子、家族会議をする。



純子は、商会と紡績からかなりの金額を引き上げた、純子が会社に預けていた報酬や配当のお金も相当溜まっていた。給料の三分の一ずつと配当の一部も紡績と商会で貰っていたものの、そんなに使っていない。妙子、洋一、洋次郎を呼び、洋介と一緒に家に呼んだ。 



京子、真弓そして宏そしてその子ども達も連れてくるように頼んだ。泊まり込んで家族会議するからといって。系列の料理屋から料理も運ばれてきた。



純子「私も年だ。色々と相談したくて、お父さんとも話して相談してきた。私とお父さんが死んだ後の事だよ。」

洋介「私はもう年だし、お母さんと話してきた。私の資産など知れているが、私は兄さんや姉さんから、病院はお前やっているし、お前が継げと言われてきた。お父さんから継いだものだ。多少の資産もある。」

洋一「そんな事言わないでくれよ。お母さんとお父さんが家族会議すると言って、2日休暇取った。鉄造さんも鉄二郎さんも吃驚していたよ。ここを見捨てないでくれと言って大変だった。幸之助さんや知子さんも心配しているよ。大体お母さん若いのに、俺より長生きするよ。」

妙子「又馬鹿話が出来ると思ってきたのに、お母さんはそんなに若いのに。」

みんなそんな事は話したくないと言った。

純子「人の命は分からないものだ。弁護士とも相談したよ。取りあえず聞いてよ。今お父さんと私の財産は、これだけだよ。みんなに配るから見て。細かい点は省くよ。洋一お前は、鉄鋼の私名義の出資金そしてお祖父さんやお母さんから継いだ、紡績と商会を除く私名義のほとんどの出資金と、私とお父さんが死んだ後に残った現金の半分をお取り、洋次郎には、紡績の私名義の出資と紡績に預けている現金、そして少しだけの各社の出資名義と現金の四分の一をお取り、妙子は、お父さんの資産の三分の二と現金の四分の一を取ってね。私とお父さんが長生きすればどれだけ残るかわからないけどね。宏さんには、銀行の私名義の出資を譲る。京子さんには、商会の出資金の半分とまだ残っている現金を、そして真弓さんにはお父さんのの名義の資産の三分の一と商会の私名義の出資の半分を譲る。洋一には今住んでいる家、ここの家は洋次郎に渡す。ただ商会や紡績に預けている私の資産は人に貸しているものだし、できればそのままにしておいて欲しい。残った地所や資産は、三人で分ける。そしてお父さんと私のどちらが死んだら、私とお父さんがすべて管理する。」



京子「私になぜ。」

真弓「私なんかに」

「銀行はこれから伸びますよ。それを全部僕に」

純子「まあお聞き。京子さんや真弓さんに譲るものは、できれば現金に換えないでおくれ。みんな子どもたちに残しておくれ。配当などの利益反映金がでれは、自由に使ってもらっていいけど。宏さんもそうだよ。できればそうして欲しい。京子さん、宏さん、真弓さんに譲るもので税金がかかれば、洋一や洋次郎そして妙子が支払っておくれ。みんなそれでいいかい。」

妙子「病院は、私と真弓さんが協力して継げ、自分勝手にしないように。さすが策士よね」

洋一「今やっているものは、その人にか。よく考えているよ。ただ現金はそれぞれ三分の一ずつにしてよ。俺がそんなに受け取る必要はないよ。」

洋次郎「僕が一番多い気がする。それでいいの。」

洋一「でも使えるお金は差はないよ。お前紡績を手放すの? 借しているお金回収するの?」

洋次郎「そんな事はしないよ。」

洋一「だからお前に管理してやっていけと言ってるの、母さんは。人見てるよ。」

「銀行も、洋一さんや洋次郎さんに持って貰いたい。それを修正してください。」

京子「私は、そのままにしておきますよ、お母さん。子どもたちの代理です。」

真弓「私なんかじゃなしに子どもにして貰った方がいいのですが。」

純子「少し、お父さんと相談するよ。」

暫く相談して、

洋介「みんなの意見を参考にして、少し修正したよ。純子から説明してもらう。」

純子「まず残った現金は三分の一ずつ子どもたちに渡すよ。商会の名義と安倍不動産の名義の株は、京子さん、真弓さん、妙子に三分の一ずつにする。銀行の名義は、五分の一ずつ洋一と洋次郎にして、五分の三は宏さんにする。但し、洋一も洋次郎も宏さんに口だしするのは、控えておくれ。それと地所の中で、あの郊外の屋敷は、妙子の名義にしておいた。料理店は京子さんとした。お父さんが譲り受けている長崎の屋敷は、次平名義で真弓さんが管理しておくれ。お父さんはそのつもりで名前を付けた。お父さんの思い出の家だからね。それに三人の子ども達には、自分の会社以外も少しだけ名義を分ける事にするよ。現金なんて残らないかもしれないよ。それは残った時の事だよ。」

洋一「分かったよ。私はいいよ。」

妙子「私も、異存ないよ。」

洋次郎「私も異存ありません。」

「私は、異存ありません。銀行を大きくしますよ。」

京子「私はこどもたちの為に残して置きます。」

真弓「私名義にすると問題も」、

「大丈夫ですよ。弁護士もついてる。こどもたちのためですよ。」、

純子「じゃこれで決まったよ。私は化け物だから長生きするかもしれないけど、今日決まった事は、それぞれ胸において頑張ってね。温かいものはもうすぐくるからね。後はのんびり食べよう。」



子ども達もよばれ、賑やかな食事会になった。

洋介「純子、お前考えていたね。最後の案。お前は本当に凄い。みんながどういうか見るためだろう。」

純子「私は、化け物だからね。でも良かったよ。みんなが考えてくれて。」

暫く、みんな歓談して食べていた。

真弓が来て「私じゃなく、洋次郎さんか子どもたちに。」

純子「真弓さん、どちらにしても子ども達へいくよ。弁護士もついてる。心配しないで。」

洋介「病院は、妙子と協力して頼んだよ。」

真弓「それは言われるまでもなく、拾って頂いたのですから。」

洋介「今でも、真弓さんがやってようなものだよ。妙子は、病院出ると、馬鹿になる女だから。」

妙子「だれが馬鹿なのよ。お母さん、終わった後は、やってもいいでしょう? 私、やりたくて。」

純子「お前の部屋開いてるよ。掃除もしてもらってる。 こどもたちは見てるよ。」

妙子「宏さん、もう食べたの。私食べたよ。」

「そうなると思って、折に入れて貰ってる。覚悟してた。」

妙子「私たちは、別のものを部屋で食べるね。宏さん行こうよ。」

宏と妙子は出ていった。

洋一「姉貴は変わらない。あれが神の手かと思うよ。」

真弓「いや、外科医では、常人の腕ではありません。」

洋一「たしかに、常人ではないよ。病院ではきっと顔も頭も変わるのでしょう。」

洋介「それは確か。ここではやりたいだけの馬鹿女の顔に直ぐになるけどね。今の会議終わったら、顔が変わった。」

純子「京子さん、おいでよ。」

京子「お義母さんなんでしょうか?」

純子「洋一、頑張ってるの?」

京子「頑張って仕事しています。」

純子「仕事は、自分のためよ。女は40から感じるの。」

京子「そうなんですか?」

純子と京子はひそひそ話をしていた。京子は、時々「えっ」とか「そんな」とか言っていた。純子は洋一を呼んだ。



純子「洋一、お前、努力が足りない。京子さんを明日の朝までに綺麗にしないと返さないよ。女を綺麗にしない男は、紡績に帰ってもらうよ。もう一度私が修業さすよ。さあ京子さんをつれて、お前の部屋で。子ども達は私とお父さんがみてるからね。明日の朝、京子さん、真弓さんと妙子の顔みるから」

洋一「そんな急に。」

京子「真弓さんも妙子さんは、元々綺麗ですよ。」

純子「輝きが違ってくるの。京子さんも頑張ってね。色々教えたでしょう。さあ早く。」

洋一と京子も出ていった。



純子「洋次郎と真弓さん、片づけは料理店がもうすぐ来るよ。洋次郎、お前も頑張らないと真弓さんを綺麗にするのよ。明日の朝までに。」

洋次郎「真弓は十分綺麗だよ。」

純子「お前は若いのよ。真弓さんをもっと輝かすのだ。」

洋次郎と真弓も離れに帰った。いつの間にか、子守と乳母が来て、別の部屋に子ども達を連れて行った。料理屋は、残った料理を折に詰めて、片づけ始めていた。




洋介「純子、お前、強引な事するな。姑のする事じゃないよ。」

純子「これが私なの。女房を綺麗に出来ない男は、どこか信用できないの。明日の朝、楽しみだよ。洋介さんも頑張ってね。」

洋介「私は年だから。」

純子「私が大きくしてあげるよ。子どもを見てから開始だよ。」
 





妙子、真弓、京子の部屋には、その晩に封筒が入れられていた。翌朝は朝9時から朝食なまで、8時50分過ぎに、食堂に来て欲しい。洋一、洋次郎と宏には、9時丁度に来て欲しいと書かれていた。 



妙子は、書かれているものを見て、宏に言った。「宏さん、朝も頑張ってね。朝は美人競争よ。お母さんは強引ね。さあもう一回頑張ってね。」



京子も読んだ。「洋一さん、私は不利よ。妙子さんも真弓さんも元々綺麗なのよ。洋一さんは、紡績に戻る事になるよ。」



真弓も読んだ。「洋次郎さん、これは、朝やりなさいと言ってるみたい、私は、いつでも洋次郎さんに抱かれていたい、朝はひさしぶりね、興奮してきた。由美子出てきそう。お願い、手の形と歯型をはっきりつけて。」



翌日 艶っぽく綺麗になった3人が食堂にいって、食事の準備をして、お腹空いたという子どもたちと洋一や洋次郎そして宏もきた。食事が終わると子ども達は乳母や子守に付けられて、別室にいった。

 


妙子「美人競争はどうなったの。私は気になってるの。」

洋一「無理矢理させておいて何考えているの。」、

純子「妙子、京子さん、真弓さんで誰が一番、昨日より輝いていると思うの、昨日と比較してよ。」、

洋介昨日と比較すれば、京子さんだろう。別人のように綺麗になっている。」

妙子「それは認めるわ。真弓さんもずっと綺麗になったけど、京子さん、今日は本当に綺麗。」

洋一「じゃ俺達の勝ちだ。」

純子「誰が美人競争と言ったの。 妙子は、言わなくても宏さんとやる。しかもよくやっている。だからそんなに差がでない。真弓さんもよくやっているけど、朝は久しぶりだから少し差がでる。京子さん、あんまりやってないね。子どももびっくりしてたよ。」

妙子「分かっているのね。」

純子洋一、京子さんと真弓さんそして宏さんになぜ遺産分けしたと思うの。」

洋一「それは、宏さんや真弓さんに分けるつもりだから京子にも分けたと思うけど。」

純子「それは逆よ。宏さんや真弓さんになら妙子や洋次郎名義にしてもいいのよ。二人はそれぞれ一心同体だからね。私はね、洋一の分をすべて京子さん名義にしようとも思ったの。でも、お前も私の子だから親馬鹿でおまけしたの。お前は鉄鋼行って、接待でよく外で遊んでいるのでしょう。鉄二郎さんに妾いて、鉄造さんもつくりそうでしょう。お前も感化され、遊びだしている。一時の混乱収まって、利益もでて、また元に戻りそうになっている。鉄は基本産業だからといって、戻り出せば又だらけているね。宏さん、業界の回復ぶりに比べて、鉄鋼は遅いでしょう。」

「持っている潜在力からすると少し。」

純子「お前、鉄鋼変えるといって、自分が変わっているの気付かないの。このままお前変わっていくと、お前の分は、京子さんに変えていくからね。それが言いたかったの。」

洋一「そんな事ないよ。俺はちゃんとやってるよ。接待は多いけど、それも仕事だから。」

純子この間、会社の工場に行って、少しだけ見て直ぐに工場の接待で、芸者呼んでいたでしょう。それが会社を変えると言っていた人のやる事ですか?お前の才なんてしれてるの。少しの才に慢心する位なら、なくても人の意見聞いた方がましなのよ。

洋一「なんでそんな事まで知ってるの。」

純子「洋一、お前はみんなに見られているの。折角設備も製品も揃ったのに、上がだらけると、何にもならないの。妾持とうと遊ぼうとそれはいいけど、自分の金で遊び、女房を綺麗にしてからにしなさい。」

洋一「分かりました。昨日の事は俺に説教するために仕組んだ。そういう事か。」

純子「今朝の京子さんが、本当の京子さんよ。女に愛と精を与えれば女は変わると、私いつも言ってるよね。人も会社も、愛情もって育てれば変わるのよ。鉄鋼も愛情を持って、育てれば、もっと輝くような会社に変わるのよ。」

妙子「お母さんは、やっはり策士だよ。」

洋一「もう一度、やり直すよ。色々とありがとう。今朝の京子見て、俺も分かったよ。でも時間はかかるよ。今の会社変えるのには。俺の部門から少しずつ変えていくよ。」

洋介「じゃ、これで終わる。洋一もしっかりしないと、お母さんを怒らすと怖いよ。」 



家族会議は、午前中に終わると聞いていた、幸之助と知子がやってきた。純子が相続について、決まった事を話した。

幸之助「姉さん、まだ若いのに、そんな事決めて。でも大体予想通りだけど、病院は半々にして、商会の名義で差をつけると思ったのに。製薬会社の出資名義はほとんどは、洋一くんか。知子、少し製薬会社の出資増やせるかな。」

知子「それは出来るよ。洋次郎さんなら歓迎するわ。」

純子「お前達、洋一の事知ってるね。なぜ教えてくれないの。」

知子「お姉さんも知ってるでしょう。それにまだ噂だし。」

純子「あいつには説教したの。少しばかりの才を鼻に掛けて、慢心するなんて。」

幸之助「まあ、洋一くんはまだ遊び始めた段階だから。知子から聞いてるけど、会社も改善してるらしいよ。」

知子「前よりは、ずっとましよ。でも洋次郎さんはいい人ね。」

幸之助洋次郎くん個人名義じゃ、少し目立つ。安倍紡績として持って貰いたい。製薬会社も、会社として紡績の出資を増やすようにするよ。それなら洋一くんも刺激しないしね。一種の交換だかね。お姉さん若いから頑張ってね。うちの役員会には出てよ。」

純子「お前も、なかなかだね。」

幸之助「私も姉さんの弟だよ。ある程度はね。病院は共同名義か。なるほど、考えているね。まあ子ども達次第という事だね。でも学校は、それも一緒か。参考になるよ。僕も考えてみるよ。」 




純子の挑戦 No.12

2012-12-29 01:12:09 | 純子の挑戦
やがて、恵子も亡くなった。 



恵子は、鉄一の急死で、もめた事もあり、純子と話し合い、製薬会社の多くは幸之助と知子が相続し、純子は一部を持ち、逆に紡績、商会、鉄鋼は純子がかなりの出資名義を相続していた。安倍不動産は三分の一つづ分けた。料理店は、鉄一の部分も引き取っていたので純子と幸之助と知子が各店単位で相続するようになった。現金の多くは幸之助と知子が受け取っていた。純子は恵子が持っていた鉄平の郊外の屋敷と農園も相続した。安倍鉄鋼は、鉄一の死後、相続問題で、他の会社の名義を恵子や純子に書き換えて、安倍製薬がグループの中核になり、今度は安倍紡績もそれに加わる形になった。



純子は、休みをよく取るようになった。



洋介「純子、会社は忙しいのじゃないの。こんなに休み取って大丈夫か?」

純子「私も随分働いてきたし、みんなちゃんとやってるしね。それにもう私の会社というより、みんなの会社だ。みんながやっていく方が良いんだよ。」

洋介「私も真弓さんや妙子に任せる事が多いよ。妙子は、お前のように、やる事が好きだけど、外科医としては、今一番脂が乗っている所だろう。父がやりたがっていた手術も出来るようになった。」

純子「堅い竹内の家で、大丈夫かなと思っていたら、ついに諦められた。宏さんも忙しいのに、朝の光の中でやった。良かった。朝やるのも楽しいと言っているよ。」

洋介「でもここに良く来てるけど。」

純子「私は家にいる事が増えたし。私とは同類だから話しやすいんだよ。時々子どもと宏さんつれて、泊まり込むだろう。私、妙子と真弓さんで話すと、何でも言える。よそでこんな話できないと言ってるよ。」

洋介「あれは凄いね。私も近づきにくい。玲子や慶子は、お前や妙子みたいになると心配しているよ。」
純子「私と暮らして、不満だったの。」

洋介「そんな事はない。私は十分楽しんで来たよ。ただ子どもの前で、舐め方や舌の使い方だ、体位や腰の使い方なんか話している母親や祖母はいないよ。」

純子「良いじゃないの。妙子も真弓さんも医者なんだし、変な所で間違った事を知るよりも。」

洋介「美子さんや知子さんも来てるでしょう。幸之助くん、ぼやいていたよ。変な知恵つけるから、美子さんが迫るようになったと。」

純子「幸之助は努力が足りないよ。あれも仕事も。」

洋介「洋一はどうしてるの。あんまり家には、こないけど。」

純子「あの子は、私が苦手みたいだよ。仕事してる時の私は、話しやすいけど、家ではやりたいだけの馬鹿女の顔をしていると思ってるみたい。どちらも私なのに。ここの家に、京子さんつれてくると大変と逃げているのさ。仕事はちゃんとやっているようよ。鉄造さんや鉄二郎さんも、少し変わってきたし。」

洋介「洋一には、お前の裸をみせたから、怖がっているじゅないの。」

純子「それは妙子だよ。あいつ平気で、洋一や洋次郎の前でも、平気で裸になる女だから。着替えするのに、洋一や洋次郎に、そこの帯取ってとか、裸で言ってたし。」

洋介「洋一は、本当に日本人形みたいなお淑やかな京子さんと結婚して、子どもも女の子が二人だから、ここは化け物屋敷で、教育に悪いと思っているのかもしれないね。」

純子「化け物とは何よ。でも京子さんは、おとなしい人だから、無理に連れてくる事はないよ。京子さんは、時々電話くれるし、真智子や清美とも、会ってもいるのよ。私は、結構京子さんと話している。洋一がね。京子さんに変な事言わないでと言うの。女を喜ばして綺麗にするのが、男の甲斐性。女房愛せない男が、仕事できるものか。お前はもう少し京子さんとやらないと、お前も大きくなれないと言ってやった。」

洋介「凄い姑だね。」

純子「まだたつでしょう。しゃぶってあげるから。」

洋介「私も年だから」

純子「大きくなったでしょう。いくつになってもやっていこうね。」


洋介は思っていた。
こいつは本当に化け物だと洋介は思っていた。こいつは年取らないし、まだこんなに綺麗。こんな化け物に出会って、私は幸せだった。


妙子は、思っていた。


お祖父さんの言ってた、心臓の手術は、まだ難しい。でも多くの臓器では、かなりやれるようになってきた。いくつかの症例を詰め重ねていけば、もっと多くの事ができるだろう。お祖父さんのやった手術は、偶然と決死の覚悟そして神のような医者が必要だった。やがては、心臓の手術も安全にやれるようになるかもしれない。それは玲子や宏一の時代かも知れないし、もっと先かも知れないが、いつかはきっとやれるだろう。 真弓さんは綺麗になった。どこか醒めた疲れたような影はなくなった。患者にも優しく接している。洋次郎は何の取り柄もない子だと思っていたら、あんなに女を変える事が出来た。

 

宏は大変だった。

仕事は順調だし、やりがいもある。大学を離れるのは、不安だったが、お義母さんの援助や協力で、銀行も大きくなった。でも妙子は化け物だ。私と洋次郎くんとは、年も離れているのに、競争されられる。この間なんて、朝からやらされた。確かに朝の光の中で、あえいでいる裸の妙子は綺麗だった。妙子とやるのは楽しい。しかし回数が多すぎる。あいつは何回してもすっきりしたと元気よく出かける。翌日休暇を取って、あいつが朝、腰をふらついて病院へ出勤させようと、念入りに準備して3回もやった。指でも何回も逝かした。痙攣するまでついてやった。それでも凄かったといいながら、寝て、朝になったら、今朝はお腹空くのよといいながら、ご飯を一杯食べて、足取り軽く出勤した。私は腰が重かった。帰ってきたら、今日も頑張ってくれるのと聞く。お義父さんが大変と言っていた意味がよく分かった。真弓さんが、綺麗で、輝くような人になった。洋次郎くんは頑張りすぎている。でも私も妙子は好きだ。妙子を愛し、もっと綺麗で輝く人にするのだ。


真弓は幸せだった
洋次郎は優しい。私が変態だと言っても、去っていかなかった。私の中に精を入れてくれた。私は洋次郎の純粋さで蘇る事ができた。由美子のままでは、本当にどぶの中であえいで、身も心も汚れて、くだらない男たちに愛される事もなく、殴られたり、引き付き回されたりしながら、あえぎ、感じて、そしてやがて、愛のない暴力に疲れ、また違う男の玩具となり、枕のような女になっていただろう。それが私の人生だと諦めていた。私の中の由美子も最近出てこない。例え出てきても洋次郎の愛があれば、私は守られる。由美子は残念そうに、去っていくしかない。慶子は大丈夫だろうか。私の血は、洋次郎の血で浄化したのだ。大丈夫だきっと。それにお義母さんや妙子さんは、自由にどんな話もしてくれる。私も自由になんでも言える。愛されて、洋次郎の精を入れて貰える。お義母さんも妙子さんも、それを喜んでくれている。



洋次郎は楽しかった
由美子さんは、私の憧れだった。敵わぬ夢と諦めようとしても、見てるだけでも思いながら、酒場にも後を追った。今は私の妻だ。どんなに疲れていても、私の求めを受けてくれる。子どもを作らないようにしていた時は、悲しかった。ただ私は、由美子さんがいればいいと思って、諦めようとしていた。

それでも由美子さんいや真弓を愛し続けた。いつしか真弓は、私の精を身体の奥で、受けてくれるようになり、三人も子どもができた。父は、長男に伝説の医者と言われる次平の名前を付けてくれた。功一おじさんやみどりおばさんにも、新しい次平がきっと出来ると口説いたらしい。大切に育てよう。慶子も可愛い。真弓は、自分の血を恐れている。少し虐められて喜ぶ所はあるが、みどりおばさんにも聞いたら、みどりおばさんは、笑っていた。
それは、献身的な人が、愛情不足になった時に起きやすい。洋介も少しは分かっているのよ。お前は、大きな可能性を育てているのよ。私のお父さんの次平そして、鉄平おじさんや香さん、恵子さん、純子さんそして真弓さん。そうした人たちの思いがお前の子供たちの中に宿っている。お前の子どもたちは、きっと素晴らしい人になるわ。お前は、真弓さんと三人の子どもたちに、愛情を注ぎなさい。それがお前に出来る事よと言ってくれた。

私は、お母さんや姉や兄とは違い、それほどの才もない気がして、悲しい気持ちになる時もあった。しかし私は真弓を手に入れた。私の宝物だ。お母さんは、「お前は、純粋な気持ちで人に接する事が出来る。賢く立ち回ろうとしたら、駄目だよ。お前の良さがなくなる。純粋な気持ちで努力し、人の意見を聞き、自分の出来る範囲で人を助けなさい。お前は真弓さんと一緒になれた。それはお前が、純粋に真弓さんを愛したからでしょう。お前はいつまでもその気持ちを持ち続けなさい。そうすれば道は自ずと開ける。慢心したり、一時の大儲けを夢みたら、やがてすべてを失うわ。真弓さんは、お前には幸運の女神だったのよ。いつまでも愛し続けなさい。」と言ってくれた。私にはそれしか生きる道がない。今日は真弓が早く帰ると言っていた。家に帰るのが、楽しい。



純子は、商会では、才能溢れる人や純粋な人そして熱心で正直な人たちをそれぞれ副社長として、多くの事を任せた。自分が作った複雑な規則も変更してもいいと言った。純子個人の資産と会社の資産も分離していくようにした。純子の個人資産で、行っていた社員への貸付も、会社シートして行うように変更した。今まで貸付を行っていた個人資産の一部を商会に寄贈して、多くの資産は引き上げた。商会ではみんな高給だったし、純子の資産から借りる事に抵抗もあり、それほど貸付もなかった。



一方、紡績では、純子の紡績で得た個人資産と会社資産は、帳簿では別れているが、実際には一体化していた。純子の個人資産は増えていたし、裁縫や織物などの働いている人もよく利用していた。純子は紡績の母とも神様とも思われていた。神様からお金を借りると全て順調に行った。家を建てる時も純子からお金を借りると全て順調に進むと云う伝説まであった。借りたお金も直ぐに返せた。借すお金も多かったが、返してもらうお金も多かった。神様からのお金は直ぐに返せるのも不思議だった。

それでも、毎年積み上げていた純子の資産は大きくなって、まったく使用していない個人資産が半分以上あったので、半分だけ引き上げた。紡績では、準備金での操作で、賃金の変動は少ないものの、会社の挙げた利益は、出資金、働いている人、留保に等分に分けていたので、賃金は多少変動していた。純子は、ここでは、自分が死ぬまで、このやり方を通すつもりだった。長時間の労働は嫌っていたし、自分も含めて自分の時間が必要だと思っていた。そして才能溢れる人も重視したが、熱心で純粋な人も必ず加えていた。

そして、純粋な洋次郎が、人の意見を聞きながらも運営を助けていた。洋次郎には、常にいっていた。才能や天分溢れる人を見付け、可能性を引き出しなさい。一方、正直な人や熱心な人なども、同じように重用しなさい。常に議論していくようにしなさい。大儲けは不治の病の始まりよ。儲けは程々がいいのよ。ここの会社は、働く機会を人に与え、世の中に役に立つ為に作った会社なのよ。利益は、会社が続けていくためには、必要だけど、それが目的ではないよ。今は宏さんが、経済の動向などを研究して教えてくれる。人の意見を聞きなさい。細かい事には目をつぶり、人に任せなさい。人を信用しない人は、人には信用されないわよ。法律家など多様な人の意見を聞きなさい。人を助けない人は、助けられる事はないのよ。不正な事したり、ずる賢く立ち回ると、お前は、何の取り柄もない男になるよ。

洋次郎は、頑固なまでにそれを守っていた。商売や会社の運営は、純子の育てた人が各部門に散らばっていた。洋次郎はそうした人たちの意見を素直に聞いた。洋次郎の才能は、人を信じ、人を愛する事だ、信じられ愛された人がお前を助けてくれると純子に言われ、洋次郎はそれを信じていた。



純子の挑戦 No.11

2012-12-28 00:27:26 | 純子の挑戦

時代は過ぎていった。



やがて功一が亡くなり、後を追うように、珠代も亡くなった。一平も亡くなった。

恵子「一平さんも死んでしまった。次ぎは、私の番だ。」

純子「私は、なんとか乗り切れそうだし、そろそろ引退したいと思っているのだけど、でもなかなか辞めさしてくれないの。商会も、ほとんど人に任せているの。」

恵子「紡績は、洋次郎がやっているの。」

純子「洋次郎は子どもが出来たし、現場も知ってるから。ただあの子は営業なんか得意じゃないれど、色々な人の意見真剣に聞いて、人に任せているよ。洋次郎はあれでいいよ。会社は儲けるためじゃなく、人に働く場を与え、人の役に立つことをするのよ。ただそれを続けるためには利益が必要なだけよと言ったら、本当に守っているよ。才ない子だと思っていたら、あれが、洋次郎の才能なのよ。ここは、幸之助は才もあり、しっかりしているけど。」

恵子「幸之助に聞かせておくよ。お前は天分に溢れて、才に溺れると危惧していたけど、違ったね。幸之助は大した才もないくせに、自惚れる所があるから、お前も時々注意してやってね。それに、純子、ついに鉄造の会社助けてくれた。お父さんも安心してるわ。」

純子「実は、あれは宏さんの銀行に援助求めてきた会社があって、調べてみると内容はいいけど、投資が多すぎていたの。でも鉄造さんの会社にないものだったし、鉄造さんもいいと言うから、合併する事にしたの。でも鉄造さんの会社は、人材が少なくて、不安だというし、洋一も手伝うというから、私も出資金を追加したの。だから鉄造さんらの出資も少なくなっているわ。」

恵子「そんな事に拘っていると、会社自体がなくなっていく時代かも知れないね。でもそれはお父さんも昔言ってたよ。幸之助もこの頃多少、人に任せるようになってきたし。それでいいのかもしれない。」

純子「正直に言うと、今回の混乱でね、かなりのいい企業が困って、幾つかは、かなり安い価格で買い取ったの、紡績に。それに宏さんの銀行もいくつかの銀行を吸収したし、大変だったけど、会社としては大きくなった。商会も、少しは可能性ある所を吸収した。知子は、知ってるよ。」

恵子「お前は、何でも焼け太りする奴だからね。でも恨みをかうような事は、やってないだろうね。」

純子「それは勿論だよ。合併の形にしてるし、紡績の出資も一部渡しているよ。」

恵子「それは信じてるよ。お前が本気で、ずる賢く振る舞えば、もっと金も入ってだろうが、もう落ちていたかもしれない。私は幸之助には、この会社が何でこんなに長く続いたと思うと、聞いたの。幸之助は、私が賢明だったからと言った。私は言ったよ。違うよ、鉄平お父さんが、多くの人を助けたからだ。私も少しは助けたけど。馬鹿にならず、慢心せずに、お前も人を助ければ、会社は続くよ。どんなに賢く、狡く金を儲けても、それは一時の事だ。人を助けない奴は、やがては落ちていくよ。純子は天分にも恵まれ、お前の何倍も賢いよ。だが会社が大きくなっているのは、人も助けたからだよ。その人に助けられて大きくなったのよと言っているよ。

純子「なんでそこで私が出てくるの。でも確かに私は、色々な人から助けられた。」 


純子の挑戦 No.10

2012-12-27 01:02:48 | 純子の挑戦

純子、雨の日を恐れる




純子は、宏と話す機会が増えてきた。銀行といっても投資銀行に近いもので会ったので、普段は閑散としていた。普通の人からの預金は限られていた。ただ経済には、晴もあれば雨もある。ただ天気とは違い、政策で制御できるが、大きな波はどうしてもある。純子には、まだ経済的な意味で、雨にあってなかったが、それを気にしていた。今のやり方では、どこかで行き詰まるのではないかと思っていた。



手を広げていた純子であったが、投資は抑え気味になっていた。最低限の投資になっていた。ただまだ純子の危惧とは異なり、内部保留は増えていっていたし、純子の個人貸し付けもそんなに増えていなかった。 



純子は、恵子と話していた。一平も恵子も、家でのんびりしていた。

純子「さすがにお母さんも、年とったね。」

恵子「お前もね。」

純子「知子も結婚して、男の子が出来て良かったね。鉄平と名付けて、元紀くんも婿養子にして、お母さんもなかなかやるよ。」

恵子「知子はお前に似て、遊ぶ娘だし、私はむしろ早く結婚して良かったと思っているよ。元紀さんは学生だし、知子は手元に置くために、製薬会社で働かせているよ。あいつもお前も家で、のんびりする女じゃない。」

純子「私じゃないよ、お母さんに似たの。でも早かったね。」、

恵子「元紀くんが長くて太く、奥に入れると感じるかなら、奥に入れてたみたいだ。馬鹿だよ。お前みたいに、最後に腰を動かせないのね。まあお前みたいに遊ばれるようもましだと慰めているの。」

純子「でも結局、お母さんは得したじゃない。知子も家にいるし、元紀くんも家に入れて。幸之助もしっかりしているよ。これで製薬会社は安心ね」

一平「そうでもないよ。まだハラハラしているよ。純子も役員だから、しっかりみてやって。」

純子「ここは、経済がおかしくなっても影響は少ないと宏くんも言ってるよ。病人が少なくなる事もないしね。」

恵子「そうでもないよ。やはり影響はあるよ。鉄一には意見しようと思っていたけど、言う前に死んでしまった。鉄造や鉄二郎では無理かな。」

純子「鉄一おじさんや鉄造さんにも、何回も言ったけど、独自製品が少ないの。結構優秀な人多かったのに、なぜ作らなかったのだろう。お金は一杯あるし、まだ儲かってると言ってね。」

恵子「鉄一ね、妾いたのよ。女は、直感でわかる。照代さん冷たかったろう。葬式の時も。」

純子「鉄二郎さんにもいるよ。」

恵子「知っていたの。それに子どもまで作ってるのよ。まだ鉄一の遺産について長い間もめて、その内照代さんまで若いのに死んで、又もめて、春江は鉄鋼とは縁を切りたいと言い出して、私が、お前と話して、商会、紡績、製薬と機械の鉄造と鉄二郎分を買い取ったけど、春江に渡しても足りず、私が鉄鋼の春江分をお前にも少し協力して貰って、買い取った。鉄鋼はもう全然他への影響はなくなってしまった。春江は金できて、旦那とは離れて暮らしている。」

純子「春江さんは鉄一おじさんの遺産も入って離婚して、小さい海運会社を貰って、商会と手を組んでやってるよ。もう男はコリゴリといってる。」

恵子「春江は、鉄平を形だけでも養子にくれと言ってる。鉄鋼はあの二人ならいずれ危なくなるから、安倍は、絶えるといってね。知子も二人目も出来たので、知子と元紀くんと話して、そうしたよ。」

純子「安倍鉄平と治部次平が又できたね。」

恵子「お前が仕組んだだろう。」

純子「春江さんとは一緒に仕事しているわよ。次平の名前も復活したし。春江さんは、男は遊び相手で、結婚はこりごりと言ってたから、こういう考えもあるよと言っただけだよ。私はね、この頃不安なの。」

恵子「商会も紡績も調子いいだろう。なにが不安なの。」

純子「私のやり方で、利益が上がらなくなった時に、対応できるか。みんなにも言ったんだけど。」

恵子「お前もお父さんみたいだね。投資も控えめにしてるし、なぜそう思うの。」

純子「私、そんなに雨の時経験してないでしょう。いつまでも好調と言う事なんてないわ。それに輸入や輸出も大きくなって、波も大きくなる気がするの。宏さんも危惧しているけど、時期は分からないって。」

一平「一番、うまくやってるお前がどうして。 お前が貸しているお金が増え出して来たのか?」

純子「注意してみても増えてないけど。仕事の内容や利益比例の賃金を、少し考え直そうとしているの。」

恵子「鉄造なんか、遺産の事で鉄二郎ともめてから、話もしなくなっている。鉄一が、金だけ残すからね。純子、鉄造に意見してやって。私でもあそこの会社、怖いと思うのに何にも感じないのかね。」

純子「そんな事したら、お金を狙っていると言われるよ。少し言ったたら、そんな事言われたの。そしてここが本家だと。鉄一おじさんの遺産も多いし、会社としてもお金持ってるし。」

恵子会社として、何も考えず、ただ同じもの作って、今は利益出ているし、金もある。だから何もしようとしない。ただ、優秀な人は、少しずつ去る。営業も貧弱。鉄造と鉄二郎は、口も聞かない。大した意見持ってないくせに、人の揚げ足とってやり合う。私、最近この頃あそこの役員会なんか行ってない。純子代わりにどうだい。」

純子「私は忙しいから、無理だよ。それに鉄造さんや鉄二郎さんが気がつかないと無理だと思う。でも技術は元々優秀なんだけどね。」

一平「純子、幸之助や知子には意見してやってね。兄弟なんだから。」

 
純子が帰った後、

一平「何で、純子心配しているの? 商会も紡績も好調だし、給料も高いし、みんな頑張ってるのに。」

恵子お父さんと同じよ。何か危機が見えるのよ。お父さんは早すぎたけど、でも今、薬種問屋はないよね。好調は永遠には続かないよ。でも本当に会社として未熟なのに、鉄造はまだ儲かっていると何も考えず、遺産がどうだったと言い合ってる。会社として色々な事考えて、新しい分野も検討させている純子が、いつか雨が降ると言って考えている。そんなものだよ。先手とってると、先が見える。後手後手とまわっていると、今しか見えなくなる。

一平「幸之助もなんとかやってる程度。知子を商会や紡績でもやって勉強させるか。」

恵子「そうはいってもね。もう直ぐに役員の改選時期だし、幸之助か知子に、私の代わりに行って貰おう。一平さん、どうかね。」

一平「二人をここに呼ぶよ。」


幸之助は、今でも大変なのに、知子に行って貰いたいといった。知子は、行ってみたいと言った。純子は、知子を入れるのは、いいけど、お母さんも役員に留任して、時々は出てねと言った。鉄造は、代わりという案に飛びついた。うるさい人がいなくなると心配せずにすむ。

一平「ここは、やはり女の家系だね。」


知子は、恵子の代わりに、鉄鋼、商会、紡績の役員会に出るようになった。知子が初めての役員会に出た後、一平、恵子、幸之助に話していた。

一平「どうだい、参考になったかい。」

知子「鉄鋼は、出てるだけでみんな発言しないの、直ぐに終わるのよ。何も決まらないのに、又次ぎに話しましょう。議論は文章の「は」は「も」じゃないかと言ったり、揚げ足とりの質問ばっかり。 商会は、延々と続くの。私にも意見を求められたの。大変だった。しかも決まっていくの。又次の機会という事少ないの。お姉さんの表情は、真剣だし。お姉さんの景気後退した時の対策は、さすがにみんな驚いて、時間かけて議論しましょうと云う事になった。これは疲れる会議だった。でも商会の現状って凄いのね。紡績は少し違うの。お姉さんはあまり発言しないの。途中とか終わり頃しか発言しないの。お姉さんが言うと結論なの。反対する人もたまにいるけど、凄く緊張してるのよ。お姉さんが又説明すると、それで終わりなの。景気後退の時の対策も、副社長という人から提案しているの。色々意見を出して、もう一度みなさんよく考え下さいで終わったの。商会は持ち出し禁止の資料もあって、終わったら、急いで帰っていくの。」

恵子紡績では、純子が神様みたいになってるから、純子は、逆に発言できなくなってるのよ。純子は、違う人に異なった見解から検討させて発言させている。そうじゃないか。」

知子「景気後退せずに、どんどん成長したらどうなると聞いている人いた。あれってやらせなの。」

恵子「純子ならそれくらいの事やる奴だから、議論せずに決めたくないの。」

知子「商会の人は、直ぐに帰るけど、鉄鋼は終わってからの雑談の方が長いよ。それに鉄造さんと鉄二郎さんって仲が悪いみたい。」

恵子商会は、各社からの派遣もいるから、直ぐに報告にいく人多いのよ。

一平「景気後退については、みんなは、なんと言ってた。」

知子「商会では、まだ早い、もう少し先と言う人もいたけど、可能性はあると言う人もいた。紡績は色々な展開を考え、又次ぎと言う事になった。終わった後、お姉さんは、宏さんにまとめてもらっているから、又お母さんに相談にくると言ってた。本当なの。」

恵子「いつかそうなるかもしれないね。お前も考えておいて。役員会で純子が言ったら、波紋もあるだろうね。」 



純子の恐れていた事は、現実の事になった。



純子は、紡績では、すぐに手を打った。賃金への利益還元はしたが、準備金への積み立て比率を上げた。一方部門長には、今後のためにはなるが、利益が低いとか人手が掛かりすぎるとして、今まで出来なかった仕事をまとめさせた。賃金だけでなく、仕事も必要なのだ。賃金の付加部分が減少して、生活が困った時の社長貸付の見直しをさせて、周知させるようにした。短期投資だけとして、大きな投資は控えたり、手を広げていた関連会社も整理していく事にした。 



商会も、すこしずつその可能性を踏まえて、仕事を再検討していった。でも数年間は、景気はむしろ上昇していくように感じられた。それは、突然起こった。昭和恐慌と言われるものであった。

鉄造の鉄鋼や鉄加工品は、普及型で量産しやすい製品が多く、売上は激減していった。内部留保は大きいものも、成績は急低下していった。



製薬会社での役員会の後、純子は話していた。

純子「ここは、成績の低下も少ないし、やっばり、薬屋は強いね。紡績は人も多いし、大変だよ。」

恵子「鉄造が慌てていたよ。あいつじゃもう無理かもしれないね。」

純子「多分、いくつかの鉄関係の会社が集まると思うよ。鉄一おじさんも投資は控えていたし、鉄造さんもあまりしてないから、赤字になっても相当もつよ。」

恵子「鉄造はしなかったのではなくて、出来なかった。判断できないし、鉄二郎と協力も出来ない。」

純子「それが結果的にまだましなの。でもあそこ人材が少ないから、主導権とれないかもしれない。個人としては、鉄一おじさんの遺産も多いし大丈夫よ。」

恵子「純子も、あの会社を再生させる気ないの。」

純子「それは無理だよ。大きい儲けだけに走らないで、色々と細かい利益を積み重ねてと言ってたけど、利益出ていたからね。転換できなかったの、それが激減すると手が打ちようがないの。鉄造さんもあんまりやる気ないみたい。もう新しい投資して成長する事も難しいでしょう。紡績は、準備してても大変なのよ。今は整理して赤字を少なくして、再編の可能性を考えて行った方がいいよ。混乱はいつか収まるよ。功一兄さんの所は、功一郎さんと功二郎さんが協力してうまく乗り切ったよ。多様な製品もあるし。」

恵子「お前、色々言ってたのでしょう。功一さん、意外と聞く耳持つ人なのね。鉄一は、金できて、才もないくせに慢心した。一方才ある功一さんが人の意見聞くようになった。」

純子「功一兄さんは変わっていったよ。愛されるだけでなく、珠代姉さんを愛するようになって変わった。珠代姉さんの意見も聞くよ。お姉さんの病気以来夫婦で助け合ってるからね。さっさと引退して珠代姉さんと暮らしたいといって息子たちに任せていたし、功一郎さんたちも人の意見を良く聞いているよ。」

恵子「結局、夫婦仲次第か」

純子そうとはいえないけど、晴れの日に傘を準備するのは難しいのよ。晴れはいつまでも続くと思いがちだしね。夫婦仲というより、人の意見を聞くようになれば、それなりに準備できるでしょう。ただ夫婦仲悪いと相談しない癖つくのがいけないと思うよ。それに儲け過ぎは、後々響くのよ。お金は貯まるけど、次ぎもそうなると期待するのが危険なの。

恵子「ここはもつかね。」

純子「ここは健全だし、技術高いけど、幸之助や知子が、どの程度人の言う事を聞くかだよ。それに私の考えだよ。常に安倍とか市橋とか治部が、いつも経営できる人がいるのは難しいよ。やはり、会社大きくなると、いつかは他人が経営するようになるよ。」

恵子「それはそうかもしれない。でも知子ぐらいまでは持つだろう。」

純子「そうだろうね。でも私も多分いなくなるよ。私の考えだよ。会社でも業種でも大変な波が来る時とこない時あるよね。そんな時にどう対応できるかだよ。大変な波が来なければ、どんな人でも問題ないけど、来た時の対応次第だよ。お母さんは乗り切ってきた。でも他の人は分からないよね。」

恵子「そうだろうね。それは知子が決める事だね。」