海外のジブトラストでも本格的に先物取引を始める。
正子は自分の家でもディーリングルームを作った。三人の子は家では増幅したパワーを正子に送った。香奈の家にも元々ディーリングルームがあったが、ジブトラストでは、ごきげんソフトが優秀なため、セキュリティー対策が優れており、外部ログインするには、何桁ものパスワードが複雑な周期で次々と変わり、香奈はあっさり諦めた。
スイスの運用会社は香奈だけのものだったので、コッソリートとの連絡を取って、色々な情報も貰い、ジブトラストとしても参考にして、自分だけの運用会社でも活用していた。コッソリートはジブトラストスイスとしても香奈とよく連絡を取って手堅く十分なリスクを取って細かく儲けていた。コッソリートは若い頃の経験を生かし、損をしない運用を心がけていた。年間数割程度の儲けを取る事を目標にして、十分なリスク取りを心がけていた。香奈には色々なヨーロッパの情報を教えてくれた。
香奈はスイスの運用会社でも、コシロと相談しながら少しは運用をしていたが、ただもうそんなに遅くまで取引はしなかった。コシロも香奈もそんなに若くなかった。アメリカ時間まで起きているつもりもなかった。コシロものんびりしていた。香奈とコシロは、規則正しい生活をするようになった。香奈はそれでも時々徹の部屋に襲いに行く事はあり、コシロは呆れて自分の部屋で寝ていた。
香奈オフィスからの香奈子飼いの人たちは、香奈オフィスの業務と関係する業界の株式相場や資源や貴金属の商品相場には強かった。ただ時折、香奈と話をするうちに正子は、ヨーロッパの先物にも関心を持ち、支店やジブスイスに本格的に株式先物担当もおき、ヨーロッパの先物取引も始め、ここでも無類の強さで勝ちまくった。
元々香奈オフィス時代から、コシロは大きく儲けがありそうな時は、株式先物を香奈と一緒にしており、窓口はあった。ただ商品や株式相場が中心の香奈オフィス海外だったので、先物担当専門はいなかった。先物に比較的強い奴が中心となって、本格的に株式先物を取引する事になった。そしてこれが香奈オフィス海外からジブトラストの海外に本格的に変化していく切っ掛けにもなった。
株式や商品相場だけでは、香奈オフィス時代と同じで、ジブトラストとしての資金の他にも香奈の現地財産管理会社から資金融通を受けていた時も最初はあった。現地の幹部たちは、いつものように勝手に資金を出して。利益配分を適当に処理し、香奈も適当に認めていた。それが儲けだして、ジブ海外に金が出来、ジブ海外だけの金庫会社を作りだしていた時だった。そこに正子が株式先物で又儲けだした。香奈と現地の幹部たちでは、香奈海外と同じ雰囲気だったが、正子の天才的な株式先物がそこに加わり、ジブ海外として完全に運営されていくようになった。
影響はホテルの運営本部や貴金属まで及んだ。エコノミーホテルも、運営本部は同じ場所においてあり、システムも良く似たものを使用していたので、影響を受けた。客室稼働率は90%はいつも満室に近い事を意味するが、本当に満室が続いた。貴金属では真理は元々慎重だったが、上がれば真理が少し売りを出す。売りを出すと、下がり、手じまうと又上がった。連戦連勝で進んでいた。
一応出資枠の拡大は一巡していて、出資者はもうそんなに増えなかった。香奈は配当を少しずつ増えしていったが、配当が出資金の倍になった時点で、香奈は配当ふやさなくなった。毎年、年間二千億以上も現金が増えていった。支援していた企業からの配当も増えていった。
ジブトラストが安定して、配当を出せるように香奈は考えていった。
香奈は、コッソリートからの情報を貰い、コシロと一緒に検討しながら、短い時間ではあるが、こっそりとスイスでの運用を続けていた。数時間だけしか取引しなかったが、コシロも香奈を助けてくれた。コシロの先物は、まだまだ正確だったが、それほど先物でオーバーナイトはしなかった。そんなリスクをおく必要もなかったし、コシロもそんな表情を見せる事もそうなかった。大きく儲ける事もなかったが、少しづつ儲けるだけで香奈はよかった。香奈には、コシロとのんびりしている時間だった。取引に気分が乗らないと、コシロとお不動さんの絵を見ている時もあった。コシロも歳だったが、元気だった。
香奈は、ジブトラストとしても長期的な投資もしていった。ジブは正子がやたらと稼ぐが、いつまでも先物に頼っている訳にもいかなかった。儲けたお金はリスクの高い先物や商品相場にどんどん投入するのも危険だったし、じっと現金だけを抱いているのも効率が悪かった。そして儲けたお金の三文の一程度は長期的な視点で株を保有する事にしていた。その株の選択は香奈とコシロが話して決めていた。
香奈は、仕手集団とも云えた、相場ゴロのような香奈オフィスのグループをジブトラストに移し、取引をさせたが、その元金というか投資のお金は儲けてもそんなに増やさなかった。いつもいつも儲かる儲けられる事はない。欲をかくと大損すると思っていた。そうして儲けたお金は、土地や金、現金、そして長期的な展望に基づく投資に振り分けていた。香奈は長期的な投資をしながらも一方で株を保有するリスクも考えていた。
ジブトラストと云うべきか香奈と云うべきかは分からないが、2つの側面を持っていた。一族の会社や気に入った会社は、じっと長期的に保有したが、リスク低減のため情け容赦なく、売る事もあった。それは香奈の相場師の直感の一面とコシロとの会話による長期的な視点を併せ持つ複雑な一面でもあった。
コシロは香奈以外の人間は嫌いだったが、それでも顔なじみになってくると恭助とかジブトラストの管理の部長とかになるとイチイチ逃げるのも邪魔くさくなり、香奈と一緒にいた。正子がやたらと儲け出し、海外のジブも好調だった時に、ジブトラストは国内や海外で長期的な視点に基づく株投資を、香奈とコシロが相談しながら、進めていた。後年ジブトラストの出資や融資で成長の土台を築いた企業は、国内のみならず海外にも多かった。保有株の名義は、複雑に分散していた。特に海外では、ジブトラスト名義の財産管理会社群や香奈個人の財産管理会社まで時には使用する事もあって、ジブトラスト単独での名義は案外少なかった。
ただ管理の部長の斎藤は、コシロを横においた香奈が色々と検討しながら進めていると思っていた。コシロは香奈に時々にゃーにゃーと言っているだけのように見えた。時々斎藤の心にコシロの声が響く時もあった。そんな時は斎藤の出した書類に間違いがあったり、未調査のまま提出したりしていた。香奈は柔らかくもう一度検討してみてよと言うだけだった。
香奈とコシロが話し合って、今後の成長する分野に投資したりしていた企業は上場だけでなく、非上場の企業もあった。神之助の霊力に恐れ逃げるためにつくった新宿オフィスであったが、逃げ出した連中もそれなりに成長していく企業を探し、将来性のある企業に出資し、応援したいと言ってきた。そしてその調査結果を香奈とコシロが話し合って判断していた。
勿論香奈は相場師でもあったので、もう下がると直感した時は売り飛ばし、又の機会を待つと云う事は当然あった。香奈は元々チャンスとみれば大儲けをしたい性格なので、コッソリートの情報で儲かると思った時は、自分の管理会社でも、海外のオフィスでも、新宿でも連絡して果敢に買った。それは海外のオフィスの現地の連中も同様だったが、大規模な買いは、香奈の了解を得て進める事になっていた。
香奈はいつもいつも儲ける事はできないと思っていた。休むのも相場なのだ、儲けられない時に焦って相場に手を出しても損するだけと海外オフィスや新宿の連中にもいつも言っていた。こうした香奈の直接指導は神太郎が新宿を手伝い出すまで続いていた。
香奈は正子が神がかりで儲けたお金を三分の一は現金で、三分の一は不動産や金そしてもう三分の一は長期視点の株として更に大きくするようにしていった。香奈はそんなに株をじっと保有するタイプでもなかったが、なぜか気に入った会社はじっと保有していた会社もあったのも不思議だった。
ただ後年大きくなった神子はこうした長期保有の株も神がかり的に高いと思うとさり気なく売り、安くなるとさり気なく買い戻して、元のように保有するといった神業をみせたので、調整売買は神子に任せていった。神ならぬ香奈は、なかなかそんな事は出来ないので、香奈は直感的に閃かない時はじっと我慢して保有していた。この時の香奈やジブトラストもそうだった。