のら猫の三文小説

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香奈とコシロ No.84

2013-05-29 00:00:08 | 香奈とコシロ

コシロが死んだ!




香奈は、神太朗がジブトラストに入り、ジブトラストも益々安定的になってきたので、ゆったりとした生活をおくっていた。神子も、大学を卒業した後はジブトラストに入る予定だった。神子は、カミカミで株式投資をして、好調な成績を上げていた。神太朗は若いのに、国内の支援や出資を、良くまとめており、香奈も安心していた。


正子も、神子の株式投資の予測を信頼して、先物にゆっくり取り組んでいた。香奈は、コシロとジブトラストに行き、海外チームの報告を見て指示し、全体的な話を決定して、家にコシロと一緒に帰り、お昼を食べ、コシロと一緒に香奈オフィスからの報告を読み、たまには画廊の人とお不動さんのコレクションの話をしたりしていた。


奈津実たちも大きくなり、奈津実は大学を卒業し、大学院に入った。晩ご飯の食卓も賑やかであった。晩ご飯の後、コシロと一緒に、スイスのコッソリートからの連絡をみながら、チャンスがあれぱ短時間取引して、海外の動向も入手していた。海外のジブトラストも順調だった。


香奈オフィスも瑠璃が上手に運営して、鉱山や油田の利権も取り、安定していた。香奈は、冗談を言って、雑談する程度であった。香奈は益々元気だったし、コシロも不死身のように元気だった。香奈にとっては、穏やかな日々が続いていた。ある日、コシロは、ジブトラストの会長室にかけてある青不動さんに向かって、にゃーにゃーと言って、ジブトラストから香奈と一緒に帰り、何度も振り返った。



青不動さん
「コシロ、いよいよ明日の早朝だよ。こっちの世界に来る事になったよ。今日の晩は香奈とゆっくりしなさい。」

コシロ
「色々とありがとう。今日は香奈とゆっくりするよ。長い間ありがとう、もう会えないね。」

青不動さん
こっちではいつも会えるよ。お前の子供たちが出来ているよ。又香奈と一緒に暮らすよ。香奈はまだこの世でなすべき仕事が残っているんだよ。コシロもこっちから見ているといいよ。



コシロが死んだ。やっぱり不死身ではなかった。前日は元気で、香奈に、にゃーにゃーと普段無口なコシロなのに、いつになく声をかけていた。人嫌いで香奈だけには寄ってきたが、抱かれる事はない猫なのに、その晩は香奈に長い間、抱かれて甘えていた。


ジブトラストに一緒に行く時間になっても玄関に来ず、不審に思った香奈が、コシロの部屋に行くともうコシロは、お不動さんの絵の裏でもう冷たくなっていた。コシロは眠るように死んでいた。


香奈は、コシロのお葬式を挙げ、ショックのあまり、ジブトラストを1週間も休んでしまった。香奈とコシロは、60年以上の付き合いであった。香奈は海外によく出かけたが、家に帰るとコシロがいた、香奈にとっては空気のようなコシロだった。そのコシロが突然いなくなった。お不動さんの絵の裏を何度も眺め、涙が出てきた。とても取引や支援の話をしている気持ちにはなれなかった。


予め予定された出張とは異なり、ジブトラストの重要な決定は延期され、いくつかの来客の訪問も延期され、急ぎの話は、正子が取引が済むまでじっと待って、承認を貰う羽目になった。正子は取引の時は静寂な環境の中で、お香を焚いて心を静めて取引しており、さながらお寺の中のような雰囲気の社長室であった。緊急の事で、話できるのは香奈程度であった。


漸く会っても、正子は細かく色々と質問した。正子は神掛かり的な取引をしていたが、やはり天才的な先物ディラーであり、そして自己責任を重視し、他人の弱さや間違いを大目に見る事はなかった。要するにボンクラを相手にしなかったし、失敗や間違いを大目に見る事は出来ない人だった。人にも厳しく、自分にも厳しい人だった。

香奈は人に任せると細かい事は言わなかった。細かい間違いを指摘する事もなかった。文書も何回も書き直して、やっとの思いで、正子の了解をとっても、香奈の意向を確認してねと最後に言われ、管理セクションの常務は、毎日香奈の家に行き、コシロにお線香をあげ、香奈の意向を聞き処理した。これ以上香奈が出てこないと仕事にも影響が出そうだった。親しかった恵に、香奈を慰めるように依頼した。香奈の家でも、香奈は黙って、部屋にいて、みんな言葉もかけられなかった。瑠璃や徹彦も恵に頼んでいた。香奈には、青不動さんも夢の中に出てきて香奈を慰めていた。



「香奈さん、大丈夫なの。猫で60年以上生きれば、信じられない程の長生きだよ。本当の大往生だよ。」

香奈なんと言っても長い付き合いだからね。私とは徹さん以上に長いのよ。歳に不足はないけど、やはりショックだよ。前の晩は、いつも触られるのが嫌な猫なのに抱きついて、ゴロゴロと鳴いていたのよ。いつもいる存在が突然いなくなるのよ。徹彦や瑠璃よりも付き合いは長いのよ。」


生き物だから、いつかは死ねよ。私たちもそうだよ。」

香奈
「それはそうかも知れないね。コシロの分も頑張るよ。青不動さんにも、猫でも一生懸命、生きたのだからお前も頑張れと言われたよ。」


「そうだよ。頑張るしかないのよ。」



コシロは天才の孤高な猫だった。コシロの助言は香奈にしか判らなかった。コシロの偉大さも香奈しか実感していなかった。そしてコシロは長い間香奈を見守り、香奈オフィスそしてジブトラストも見守っていた。神の子たちが生まれ、大きくなるまで香奈と一緒に
ジブトラストを大きくしてきた。そして神の子たちがジブトラストに入りだして、より一層安定してきた時に、コシロの役割が終わった。まだ猫が世界を支配していると云う事はけっしてなかった。


香奈とコシロ No.83

2013-05-28 00:19:03 | 香奈とコシロ


香奈は元気だったが、もう80歳を超えていた。 




香奈「この間誕生日が来て吃驚したよ。私も、もう82才になっているんだよ。」


「私も78才になったよ。この間財団で話していると、ここは仙人の里と言われているらしい。お義父さんたちも長生きだったけど、最近はなんかおかしいね。病気にもならないし、みんな元気だね。」

香奈
「この間気が付いたけどね、神太朗くんが生まれてから、100才以下では死ななくなったね。」

「そう言えばそうだね。小百合さんもここに越してから、元気そうだね。もう大丈夫なの。」

香奈「もうすっかりいいよ。貴金属会社に副会長室も作って、お店関係の総括をしているよ。真理さんは会長になったよ。海外関係は美枝子さんが動いているよ。


「徹さんもこの頃家に居るね。」

香奈もう年だからね。会社も完全に辞めたよ。未練たらしく、会長とかにしがみついていたが、さすがに85になったら、辞めたよ。今は徹彦が副社長になっているけどね。徹さんは瑠璃の会社をこっそり見ているよ。瑠璃は日本でも石油会社も持っているからね。


「瑠璃さんは海外にも良く行くけど、よく帰ってくるね。」

香奈
「ここの家に帰ってくると元気が出てくるらしいよ。」

「香奈さんの海外の会社はどうなったの。」

香奈
ある程度はジブトラストに吸収したよ。資源関係のビジネスなんかは、瑠璃が面倒見て大きくなっているよ。機械販売会社まで持っているよ。資源利権をボッタクリのように取ってくるのよ。それに相当あいつのものになっているよ。増資もしたからね。報告は受けるけど、もうほとんど瑠璃に任せているよ。私は、今、ジブトラストの会長と香奈オフィスの会長なのよ。」


「私もビルはほとんど小夜さんに任せているよ。ビルは結局、小夜さんが大きなビルを、大阪と福岡にも作ったので、私も、集中的にビルを管理する会社の会長になったよ。みんな孫も大きくなってきたからね。」

香奈
「徹彦や瑠璃の子供でさえ、大学に行くようになったよ。みんなの孫も同じような年齢になってきたね。瑠璃の娘の奈津実は大変な娘になったよ。」


「やっぱり売春でもやっているとか、変な趣味があるとか、妊娠しているとかなの。真面目そうな女の子に見えるけど。」
香奈
「瑠璃の娘だし、瑠璃は海外によく行くし、放任しているから、そうなるかと思っていたけど、くそ真面目な女の子になったよ。色々とうるさいんだよ。飯食う時の箸の持ち方が悪いとか、新聞読んで飯食うなとか飯食う姿勢が悪いとか言うんだよ。瑠璃にもこそこそ工作するのではなくて、相手の気持ちを酌んで、誠意を持った対応をしなくてはならないとか言ってるよ。瑠璃は、一枚の紙にも裏もあるし、表もある。裏で処理する方がその人の面子を守る事にもなるんだよとか云ってるよ。


この間格安で鉱山の利権を取った事を説明していたよ。ボッタクリだと言われたが、色々相手側にも事情があったんだね。陰で売った人の援助しているなんて、私も始めて知ったよ。私は、瑠璃が又金で頬撫でて、ボッタクリしたと思っていたよ。みんな、須坂瑠璃とは言わないよ。資源ハゲタカと言われているのよ。


奈津実も真剣に聞いていたよ。徹彦の長男の徹志も言葉使いも丁寧で、飯なんて云うとご飯でしょうとか言うんだよ。勝彦君の子供の瞳ちゃんも綺麗な女の子だけど、地味な格好で真面目だし、最近おかしいと思わない。恵の所の孫も頭もいいし、真面目な子みたいばっかりだね。」

健一の息子の健は、頭良いんだよ。東大の工学部に行って、鉄鋼に入る事になったのよ。健一は身体だけの男だし、小夜さんはハデハデおばさんなのに。


健二の娘の由香里も格好は派手だけど、真面目で優秀なんだよ。医学部に行っているのよ。由香さんの息子の健太君の所も、健行君が東大の理学部の数学科で勉強して、大学院に行くつもりらしいよ。


家の中は、一時キャバクラみたいな雰囲気だったから、どんな子に育つか心配していたのに、友一まで東大に入っているのよ。もうすぐ法学部を卒業して安倍化学に入る予定なのよ。あの友貴の息子だよ。私の家から四人も東大に入るなんておかしいね。香奈さんの所は、ほとんどみんな東大だけから珍しくないかもしれないけど、私の家では大変な事だよ。」

香奈
「俊子さんもそう言ってるよ。悦子さんの子供も真面目な子でね。聖子ちゃんの息子の清太郎君はモデルにでもなりそうな男の子なのに、真面目なんだよ。禎子ちゃんの子供も真面目なんだよ。みんな品行方正な子ばっかりだよ。東大なんてマイクロバスで行っていた時もあるらしいよ。


「神太朗君の影響かも知れないよ。みんな一緒に幼稚園まで行っていたから。」

香奈
「いい子に育つのはいいけど、なんか面白くないね。小百合の息子の道太郎君は、まだ本音を言うよ、道之助さんの真面目な所も引き継いでいるけど、小百合に似て結構生意気な面もある子なんだよ。みんな、もっと本音言い合う事もして欲しいね。」


「いい子に育つのは良いことだよ。結構子供同士では言い合っていると思うよ。」

香奈
「瑠璃は頭は良かったけど、不良でそれなりに私と同類みたいで分かったけど、孫たちは、みんな真面目で姿勢もいいけど、本音は分からないから、大丈夫かね。神太朗君はみんな大丈夫だと言ってくれているけどね。」


「真面目な子で心配するのはおかしいよ。神太朗君は運用会社にも行ってるみたいだね。」

香奈
「そうだよ。よく来ているのよ。社長室には正子さんの椅子以外に大きな椅子が3つのあるよのよ。神子ちゃんも時々来ているよ。神太朗君たちがくるとすぐ分かるよ。空気が変わるもの。真理さんまで分かるらしいよ。」


「今度、運用会社に行ってみるよ。私はビルには週1回程度しか行かないよ。香奈さんはいつ行くの。」

香奈
私は午前中は、コシロと一緒に毎日いるよ。午後はコシロと一緒に早く帰るよ。香奈オフィスからの報告を見るのよ。



神太朗が大学を出て、ジブトラストに入り、社長秘書となり、正子を手伝いだして、一層大きくなり、現金とは別に、運用資産は六兆になった。



香奈とコシロ NO.82

2013-05-26 00:08:41 | 香奈とコシロ

香奈は元気で、香奈オフィスもジブトララストも好調だった。



香奈は、コシロと一緒にジブトラストに通い、海外のオフィスからの報告を見て、指示して、支援や出資の相談を受け、来客と会う日々だった。来客の予定がなければコシロと一緒に家に早く帰り、コシロと一緒にお不動さんの絵をみたり、香奈オフィスの報告をみたりとのんびり暮らしていた。歳にも拘わらずたまにスイスのコッソリートからの情報を元に、香奈ファイナンシャルとして取引したりしていた。スイスの運用会社での運用もコシロと一緒に取引していた。スイスの運用会社はまだ香奈だけの会社にしてあった。香奈ファイナンシャルには入れず、香奈の個人的な取引をするためだけの会社としていた。国内株式は、香奈ファイナンシャルとして取引していたにも拘らず、不思議にもこの会社は香奈ファイナンシャルとは別系列の組織としていた。コッソリートが完全に面倒を見てくれていた。
コシロが、コッソリートのメールを見て、香奈に、にゃーと鳴いて、国内株式を買う事もあったし、先物取引もコシロの表情に見ながら取引していた。


瑠璃も香奈オフィスを資源大手と言われるまで大きくしていた。ハゲタカの瑠璃と陰口を聞かれていたが、それでも香奈オフィスの保有する資源利権は多くなり、香奈が運営していた時の相場での荒稼ぎはなくなったのに、むしろ利益はあがっていた。香奈は通常の運営は瑠璃に任せて、ハゲタカ度を調整する程度だった。香奈が直接見ていたジブトラストも順調だったし、香奈はこんな生活が永遠に続くと思っていた。香奈はいつまでも健康で元気だったし、歳の事は忘れていた。コシロも化け猫のように元気な猫だった。香奈はまだ海外総括だったので、海外に出かける事もあった。コシロはそんな時はゆっくり自分で部屋で休んでいた。香奈は出張の予定をコシロに言うのが癖になり、コシロもそれが分かるのか、そんな時は香奈を玄関で見送っていた。



ただコシロには、友達だった青不動さんから、


夢の中で伝えられていた事があった。



コシロは元気だったが、もう60才を超えていた。



青不動さん「コシロ、もうそろそろ香奈とはお別れだよ。もうそんなに生きられないよ。わしの力も限界があるのだよ。」

コシロ
「折角のんびりした日がおくれているのに、残念。でも今まで、楽しかったよ。香奈は海外に行っているけど、最後に会えないの。」

青不動さん
「今日や明日の事ではないよ。暫くは大丈夫だよ。でも心の覚悟をつけておきなさいよ。」

コシロ
「香奈と会った大学へ行ってみたいけど、無理だろうね。」

青不動さん
「奈津実の彼の良平が、今日夕方、奈津実を送りに敷地の端の美術館の前にくる。その車は屋根のついてない車だから、潜り込めば、大丈夫だ。お前が乗れば忘れ物を思い出して大学に戻るようにしてやるよ。その車は出発出来ないように、させるから、翌朝までゆっくりしなさい。朝、奈津実を迎えに来るようにしてやるよ。」

コシロ
「ありがとう、1晩ゆっくりとしてくるよ。」


コシロ、雌猫と一夜を過ごす






コシロは、良平が奈津実を送ってくるのを美術館の前で待ち、こっそり車に乗って、大学に戻った。良平は忘れ物を取りに帰った隙にコシロは抜け出し、香奈と初めて会った大学の夜の構内を見て回った。コシロが香奈をつけ回していた頃から、月日が過ぎてすっかり、様子が変わってしまった。そして懐かしい部室の裏に行った。そこには茶色の猫が段ボールの中で寝ていた。茶色の猫は、何故か、怒りもせずに、じっとしていた。



コシロ「君が今ここに住んでいるのか、大昔ここに住んでいたので、一晩だけ、ここに休ましてもらうよ。」

茶色の猫
「大昔というといつの頃なの。」

コシロ
「60年ぐらい前かな。ここはあまり変わらないね。」

茶色の猫
「冗談の多いおじさんなのね。猫はそんなに生きられないのよ。」




茶色の猫は雌猫だった。コシロは、天才肌の孤高の猫だった。若い時の香奈を見て、秘めた想いを胸に隠し、長い間香奈と一緒に暮らしてきた。コシロは、猫が嫌いだったが、茶色の猫は真摯な、そして純粋な心を持つ雌猫だった。語り合っているうちに、初めて猫と関係を持った。コシロは、無意識に生きた証を残した残したかったかもしれない。翌朝まだ寝ている茶色の猫に無言で別れを告げ、激しい疲労を覚えながら、屋根のない赤い車に足を早めた。



良平は、忘れ物を取りに、大学に帰ったが、忘れ物を取って戻ってきると車の鍵が見つからなかった。ポケットの中に入れた筈なのに、判らなかった。修理会社に連絡しようとも思ったが、とりあえず明日の朝にしようと思い、カバーを掛け、タクシーで家に帰った。降り際にお金を払おうとして財布の中に車のキーがあった。大切なスポーツカーだったが、何故だか酷く疲れ、明日の朝は早く、奈津実を迎えに行く約束をしてしまっていた事に気付き、そのまま寝た。翌朝早く、家から又大学に行って、敷地の美術館に行った。道もすいていたので、早くついた。まだ時間には早く、少し散歩していると奈津実が来て、もう一度大学に行った。



香奈の家では大変だった。


香奈が大事にしていたコシロの姿が消えていた。

瑠璃「コシロがいないのよ。お母さんが出張の時にいなくなっているのよ。お母さんが、帰ってきたら、大騒ぎだよ。いついなくなったのだろう。もう歳なのに。

正人
「帰ってくる時に出かけるのを見たよ。姉さんも見たでしょう。」

奈津実
「美術館の前まで良平さんに送ってもらったけど、見かけなかったよ。」

正人
「良平さんとキスでもしていたから、判らなかったのでしょう。どちらにしても遠くには行っていないよ。不用心だけど、庭に面しているコシロの部屋の窓を少し開けておこうよ。」


そうしよう、泥棒なんてこないよ。コシロを閉め出して、風邪でも引かすと香奈がうるさいよ。

瑠璃
「お母さんには内緒だよ。お母さんは、2日したら帰ってくるから、それまでに帰って欲しいもんだね。」

正人
「明日みんなで探そうか。」

奈津実
「明日は、私早く大学に行くの。卒業論文の整理をしておきたいの。良平さんが迎えにくるのよ。」

瑠璃

「それは勝手にしなさい。こんな時にそんな事いって大変なのよ。コシロは私よりお母さんとの付き合いは長いのよ。60年以上も生きている猫なのよ。ギネス級の長生きの猫なの。取りあえず明日まで様子を見ましょう。」



そんな時、ジブトラストの管理セクションの常務で部長の斉藤から電話がかかってきた。


斉藤会長は元気ですよ。ジブドイツの連中が今日はベルリンに案内して、良いブランディの出すレストランに案内してから、ホテルに送ると言ってました。翌日は空港まで送るので、もう電話出来ないから、コシロに言っておくようにとの会長からの伝言です。

瑠璃
「コシロがいなくなったのよ。」

斉藤
「それは大変です。管理の連中で捜索隊を編成しましょう。みんなを呼び戻しましょう。」

瑠璃
「一応、明日の朝まで様子を見ましょう。お母さんには内緒にしてね。恵おばさんにも言ってないの。」

斉藤
明日の朝、お電話しますね。捜索隊を作らないといけません。警備会社からも応援の人を出してもらいますよ。ヘリコプターも準備させるか考えます。


翌朝、朝ご飯の前には、コシロはいなかったが、おそるおそる見に行った智恵子が、コシロが絵の裏で、深い眠りに入っているコシロを見つけた。死んでいるようにぐっすり寝ていた。

智恵子「コシロが寝ています。でも動きませんよ。」

徹彦
でもお腹が少し揺れているよ。ぐっすり休んでいるんだよ。

瑠璃
「コシロの部屋とお母さんの部屋の窓を閉めておいてね。もう大変だよ、コシロがいなくなると。内緒だよ、コシロがいなくなったのは。斉藤さんにも口止めしておくわ。

徹彦
「そうしよう。智恵子も黙っているんだよ。」

智恵子
「そうします。」




香奈とコシロ No.81

2013-05-25 00:25:54 | 香奈とコシロ


治部産婦人科小児科病院



財団は、産婦人科小児科病院にも寄付をして、産婦人科小児科病院はいつしか、自由診療に近いものとなった。自己負担分や診察代は、財団が貸すシステムが整った。保険適用外にも病院は安くしていたが、窓口での現金支払いは少なくなり、やがて消えていった。


無利子無担保無期限の借用書にサインすれば、領収書を出した。財団からの紹介の患者には、始めから同様の事をしていたので、全部の患者にも同じ事をするようになった。余裕があれば、その分だけの支払いをしてもらう事にした。直ぐに金を払うと言った人には払って貰ったが、借りておくと逆に病気の事とか、健康相談の小冊子が届き、電話相談などもしやすく、いつしかみんな借りるようになった。


寄付をしてくれた人にも同様だった。先代の治部次平の考え方は、部分的に取り入れられた。ただ初めは、限定的なものだった。財団も無制限な財源を持っているわけでもなかった。ただ思いがけなく、返してくれるお金も多く、寄付も集まり、ジブトラストや赤ちゃんスキ不動産に入ってる医院にまで、少しずつ、この制度が広がって行くようになった。長い間払えない人には、財団が相談して、就職先を斡旋したり、対応を協議していくようになった。


快適は快進撃を続けていた




聖子の快適洋服も海外で製造し、海外で販売して、アフリカを除いて工場網もほぼ完備された。ついにエジプトの港の近くで縫製工場を作る計画があった。安いよのスーパーも郊外の3店舗から始まり、赤ちゃんスキ不動産のビルの一角も借りたりしていたが、少しずつ店を増やし、店も広くしていったが、そんなに大型店はなかった。それでも今では、全国の中都市にまで店舗網は広がり、20店舗を数えていた。客寄せや二郎対策で食品も置いたのが、効果が出て、安売りの店として有名になっていた。聖子は、生鮮や総菜も置いたが店内管理に自信がなく、売り切り方式を取っていた。閉店間際には、みんな値下げして、生鮮や総菜は無くなる店だった。



二郎と聖子との間の子供も大きくなり、長男の清太郎は、モデルのような青年になりタレントにもスカウトされるほどだったが、聖子は年齢よりずっと若く、家の中では、色ボケで艶やかな若い女としか見えず、清太郎は、女の子を聖子と比べるようになり、女の子と遊び回る事もせず、女の子を騙して風俗にたたき売る事もせず、いつしか牧師や坊さんのような青年になり、経済学部を卒業して、紡績に入っていた。礼儀正しく、品行方正で絵に描いたような青年になっていた。


長女の綾子は、聖子と二郎の愛を奪いあうライバルになり、いつまでも異様に若い聖子にライバル心を持ち、聖子の快適洋服を上回る企業を自分の手で作ろうと考えていた。そして俊子や悦子に近づき、世界的なホテルチェーンを作ろうと、経済学部に進み、観光について勉強し、治部ホテルにアルバイトにいっていた。




悦子と洋一郎の長女の尚子は、逆に服飾に興味を持ち、文学部で心理学を勉強したにも拘わらず、治部洋服に入っていた。有希は、聖子に利益ベースでも追い越された事が、世界と日本との差であると認識していたので、幾つかの世界の有名ブランドを手に入れたり、交渉もしていた。孫の尚子を治部洋服の海外戦略の先兵にしようと教育していった。有希は、貢ぎ病は治ったものの、聖子とは違う路線で競う積もりであった。長男の洋高は、大人しい青年になり、理学部で化学を専攻し、洋一郎の手伝いをする積もりであった。禎子と雅也との間の雅彦も大人しく、雅也の誘いに応じ、商会には入っていた。



香奈とコシロ No.80

2013-05-24 00:00:39 | 香奈とコシロ


神太郎と神子



そして神太朗が来ると、正子の取引は活発になり、大きな利益を上げていた。神太朗は大学では法学部に行っていたが、教室内は緊張感が張りつめていたので、次第に特別待遇で、授業にも来なくてもいいと言われるようになった。敷地内の木々も大きくなり、敷地そのものが大きな森になってきた。花は異様に大きく咲いていた。ジブトラストは益々大きくなった。不動産投資もピークを超え、保有する現金も増えてきた。



香奈「正子さんにも海外を見て貰ったら、成績も上がったのよ。神太朗君も見ているみたいね。私が修正する事はほんんどなくなって来たのよ。」

「正子さんは、そんなに海外に行かないよ。年に1回か2回程度だよ。ほとんどこの敷地内にいるよ。よく海外の状況がわかるね。」

香奈
「私とも少し話はしているけどね。海外のオフィスから時折来ているよ。神太朗君にも会っているよ。」



神子は、神太朗とは違う国立の経済学の名門大学に入っていた。神子は綺麗だったし、頭もよかった。何人もの男が言い寄ったが、相手にされかった。暫く大学に真面目にでていたが、神太朗と同じく、特別待遇になった。そして正子の部屋には、良く来ていた。神子は予測する力は強く、経済予測や株価展望は、正子にも言ったし、カミカミファイナンシャルの取引も行うようになった。正子が個人的に出資していた聖子や悦子の会社の株もカミカミファイナンシャルへ出資する形となった。

神子は、予測の力があり、神太朗よりも取引が上手く、正子の名義でカミカミファイナンシャルの運用を担当し、大きく増やしていった。それでも現金比重を多く、堅実に運用していた。正子の意向もあり、商会の株は、下値で拾う程度で買っていた。




正子は、神子の予測の力をジブトラストにも影響させて、この時期に運用会社は又伸びていった。あらゆる相場で勝ち続け、ついに運用会社の資産は、現金とは別に5兆を超えていた。上場株の保有評価額は、ついに海外を合わせて、2兆6千億を超え、非上場で1兆5千億になった。4千億から始めた中国での株式は少しずつ増資には応じてきたが、もう株式評価額では、8千億を超えていた。


香奈が投資した中国企業は、今や世界的企業になっていた。配当も5百億程度貰っていた。ジブ上海銀行もニューヨークとロンドン、フランクフルト、シンガポール、東京に小さい支店を出した。相変わらず為替中心の専門銀行として独特の存在だった。アメリカでも香奈が1億株、買った石油会社の株は、香奈が、結局ほとんどをジブトラストに市場価値で売却し、今では、ジブトラストに売却した価格の3倍にもなっていた。それ以外にも50億ドルを超える上場株をアメリカで持っていた。ヨーロッパでも50億ユーロの株式があり、それ以外にも海外の非上場の株式を保有する事になってきた。海外比率は、元々少なくしている筈なのに、何故か増えてきていた。ジブトラストは不動産投資も落ち着き、現金も貯まってきたので、香奈の独特の計算でも配当は、どんどんと増え、ついに出資金の3倍になった。流石にこれ以上の配当は出さなくなった。



「運用会社からの配当は凄すぎて、声も出ないよ。出資金の3倍の配当が毎年出るよ。」

香奈「これでも抑えているのよ。みんなに渡しても大変だから。私はもう見てるだけだよ。海外の大きな会社の株も低迷時期に少し買って、少しずつ増え、今では相当持っているよ。」

「今は運用会社も大変らしいね。あの付近の木は異様に大きい。真理さんに聞いても建物自体が異次元空間になっているらしいね。香奈さんも異様に若いよ。私も財団では怪物とか言われているけど、私よりもずっと若いよ。真理さんや俊子さんも若くなっているよ。怖いくらいだよ。

香奈「私は午前中は大体行くだろう。近くだから影響も強いのよ。一緒に住んでいる俊子さんも有希さんも若いよ。有希さんが商会の役員会に久しぶりに行ったら、若い秘書が、ここは役員用のフロワーだからと言って、追い返したらしいよ、たまたま社長が来て、平謝りだったらしいよ。

「有希さんは元々若い感じだけど、異様な若さだね。」

香奈運用会社の中はもっと凄いよ。空気が違うのよ。管理の人も時々交代するのよ、都心の人と。みんな若くなるけど、凄い緊張感が張りつめているからあんまり長くいると大変みたいよ。正子さんは早く帰るからまだいいけどね。



神太朗は大学を卒業するまでにも、ジブトラストによく来て正子を手伝っていた、正子は先物取引以外の仕事は神太朗に整理してもらうようになった。神子も時々来た。正子の家の部屋も一つのディーリングルームになっており、神子は、カミカミファイナンシャルで運用して、自信を付けていた。正子も刺激を受けた。そして、この時期に運用会社は更に大きくなり、国内外の証券会社も影響を受けた。



神太朗と神子の霊力がジブトラストに影響して、そして更に、ジブトラストは大きくなっていった。株式用の口座には三千億、商品や先物の口座には六千億が用意され、現金は三兆に増えた。運用利益は、一兆を超え、毎年繰り越していくお金は、二千億程度になり、配当として九百億程度出す事は問題なかった。財団への寄付は、財団の活動状況で、五百億以上出す事もあった。



神子の取引での力は、カミカミファイナンシャルでは遺憾なく発揮され、保有する現金の半分以下で運用しているにも拘わらず、その上、やはり神子は学校にも時々は行っていたにも拘わらず、カミカミファイナンシャルの資産を倍々ゲームのように増やしていった。正子の運用手数料、報酬や配当は膨大だったが、それを神子は更に増やしていった。



「運用会社は凄く大きくなったね。配当は、出資金の3倍で張り付いてるけど。」

香奈恵も惚けたね。みんなの生活はこれで十分でしょう。それにみんな、管理会社の株も何とかなったでしょう。これ以上、出しても意味ないのよ。一族の会社には、運用会社がお金を援助するでしょう。

「そうかもしれないね。財団や施設の資金も増えたよ。病院も、運用会社から寄付も貰っているよ。産婦人科小児科病院では、診察代を貰わなくても、やっていけるようになって、財団からの無利子無担保無期限の貸付で、診察代を取らなくなったよ。託児所も一杯できたよ。保育士や看護婦の学校まで作ってしまったよ。どこまで大きくなるのかね。」

香奈「もうそんなに大きくするつもりないわよ。」

「健次郎さんたちは、会社辞めて、のんびりしていたけど、退屈していたから、寿クラブ経済研究所なんか大層な名前の老人クラブ作って、遊んでいるわ。少しは役に立っているの。」

香奈
「渋谷の研究センターとは少し違う発想だから、参考にはなるわよ。」