のら猫の三文小説

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香奈とコシロ No.26

2013-03-31 00:00:39 | 香奈とコシロ

昨日の投稿で、前半部分がダブっていました。混乱していた事をお詫びします。


瑠璃の留学



瑠璃は、頭もスタイルも良かった、根性と性格は悪かったが、頭の良さは抜群だった。ほとんど大学にも行っていないのに、成績はいつもトップクラスで、語学も外国にも行った事がないのに、英語のヒアリングも発音までよかった。

組織が警察に睨まれていて、手入れがあるかもしれないと極秘情報を入手して、大学の図書館で、今後の対応策を検討していた。法律の本や関係のある本まで読んだが、海外に留学して逃げるかと云う気持ちにもなった。イギリスの有名な先生が偶々集中講義をしていたので、何気なく聞きにいった。国際経済学の先生で、余り関係もなかったが、とりあえず聞いていた。



この先生はフランス人で英語は、少しなまった。当然英語で話していた。みんな訳が判らん顔をして聞いていたが、瑠璃は少し疑問があったので、やおら質問した。瑠璃は学生らしくない、バーのママさんみたいな格好だったが、その先生にはファションセンスがいいと勘違いした。しかも質問も核心をついていたので、感心してしまった。

講義の後で、瑠璃とその先生は話をした。瑠璃の知識に感心したその先生は、イギリスで勉強しないかと、お世辞を行った。その先生はエライ先生だったのでも無理が効いた。ナンタラと云う有名な大学に編入する事ができた。瑠璃はあっさりとお願いしますと云って、決まった留学だった。



瑠璃は、休学でなく、あっさりと大学を辞めた。大学に入るのは、知識を得るためで、卒業免状を貰うためではないと生意気にも思っていた。恭助も和子も盛んにそれを言っていた。ナントカ大学を卒業したからと云って、それが値打ちがあるのではない、どれだけ勉強したかで決まる。恭助と和子は、学歴で人を判断するなと言ったつもりだったが、瑠璃は香奈で儲けられるなら、自分はもっと儲けられる。

今は日本にいるとマズイのでとりあえずイギリスに行く。今の学校にしがみつかないと云う気持ちが強かった。

瑠璃は、実力主義で、後年ハゲタカと言われるようになるが、ハゲタカには、学歴もヘッタクレもない。実力本位だと言う気持ちがあった。

ただ瑠璃は権力がある人、強そうな人には逆らう愚は避けた。ワシやライオンと戦うハゲタカはいない。反撃されそうもない相手としか喧嘩しないのが、ハゲタカだった。



そのエライ先生には、キレイで大人しく、頭のいい学生と見えるように自然に振舞う事ができた。それが瑠璃の特技だった。



瑠璃は、組織の幹部会で、組織の解散と、今までの付き合いをみんなで知らない振りをする事に決めた。道であっても声もかけない事にもした。書類や関係書類も処分した。元々連絡には携帯電話などは使わなかった。あれは通話記録が残るのだ、公衆電話と喫茶店の電話を使って、連絡を取り合っていた。



幹部たちも瑠璃の慌てようをみて、自分たちもそれぞれ逃げる方法を考えた。瑠璃と同様に短期留学を選択した奴もいるし、病気と云って、田舎に引っ込む奴そして、何気ない振りをしてそのまま、真面目な学生の振りをする奴など様々だった。



香奈オフィスのロンドンでは、香奈の報酬の一部をナンダカンダと口実をつけて、瑠璃に渡してくれた。香奈の報酬は多いので、一部とは云え、学生が暮らしていくのには、十分だった。又ナンダカンダとやりだすと面倒になるのと思い、今度は真面目な学生の振りもした。

元々優秀な瑠璃は、大学では、優秀で有名な学生となった。仲介の労を取ったエライ先生も目をかけてくれた。優秀な学者になれるとも言ってくれていた。



コシロには、瑠璃の根性と性格が嫌いだった。香奈の娘なのに、ハートがない、熱い心が感じられない。見えるのは、打算と計算しかない。頭がいいのは、徹と香奈の娘だから当然としても徹の大局的な考え方から程遠く、香奈が持っている熱いハートの部分がないのが不満だった。それに人を信じる心、信頼する気持ちがない。自分一人では何も出来ないのが判らないのか、海外でもう一度勉強し直してこいと見送ったのだった。





香奈とコシロ Np.25

2013-03-30 00:00:05 | 香奈とコシロ
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恵教は、財団と施設と共に大きくなっていた!

恵のインチキくさい恵教は、密かに不良少女たちに広がり、識者は眉を顰め、社会的な不安要因とまで云われた。そして哀れな信者たちは、絶頂感を味わったばかりに、多くは男の子たちに、安い結納金で売り飛ばされ、主婦と云う名の性処理用にされ、ただで股を広げてよがり、その上家事もやらされ、旦那の下着の匂いを嗅ぎ、洗濯して、家を掃除までしていた。夜を喜びと感じるように洗脳され、その中のあるものは風俗では大金を得られるのに、安い給料の保育士や介護士になり、家庭でのんびり昼寝したり、浮気もできるのに、幼児施設や老人施設でこき使われた。

中には、旦那が夜働いているので、子供と一緒に施設に来て、子供が寝ている夜中にも働く変人もいた。宗教は恐ろしいものだと識者は言っていた。そんな哀れな信者たちを試食しようとやってきた男の子たちも、宗教の魔の手の中で、幼児施設や老人施設で力仕事をして、洗脳され、真面目に働く事が正しいと信じさせられた。中には不良少女たちの餌食になり、不良少女たちの主人と云う名の働きバチに変えさせられた犠牲者もいた。


この頃の財団や施設の運営には恵教の存在ぬきには語れないものだった。施設の実務を大きく負担していたのは恵教の信者であり、ボランティアしている筈の信者が、やがて恵の管理しているビル管理会社の従業員から施設の従業員そして財団の事務員などに転進していった。財団や乳幼児施設を支える金は、赤ちゃんスキ不動産の収益からの寄付であったが、人材の多くは恵教が支えていた。そして恵は、自分のビルの運営をしながらも、実質的に財団と乳幼児施設の運営に乗り出していた。 
 


教祖の恵は、平然とした顔で、こき使われながら楽しそうな信者たちに、更に男を成長させなけれは、女の甲斐性がないと更に扇動していた。男が成長すれば、より感じやすく、絶頂感を多く得られると言って、過酷な修業を信者たちに強いていた。利益至上主義の有希と手を組み、派手な服装や女の子らしい服装そしてちょっと豪華な中級品を売り、儲けていた。 








清彦が亡くなり、健太郎や健次郎だけになると、次々と息子を入れるのは難しく、恵の次男の健二は、鉄鋼でなく、化学に入り、由香の次男 信治は商会に入った。恵の最後の娘の千恵は、一族の銀行ではなく、普通の銀行に入った。

香奈の長女である瑠璃は、やはり頭が良く、東大に入った。ただ瑠璃は、和子や香奈の血を引いて、遊び回っていた。徹彦と智恵子は長い間付き合っていて、結婚するきっかけが掴めず、時期が延びていた。子供でも出来れば早くなったかも知れないが、なぜか出来なかった。徹彦は、徹の薦めもあり、資源開発に入っていた。智恵子は宝石や貴金属、時計などを販売している銀座の店でも古株になり、小百合の補佐をしていた。 




香奈は、自分の香奈オフィスに専念している訳にもいかず、貴金属や時計では和子から遺産も少し貰って、小百合や弟の勝と真理にほとんど任せているものの、やはり少しは役員会にも出ていた。和子も生前から実際に担当している真理の出資分を増やしていた。ただ香奈は長女であって、和子の残した遺産の管理にも注意が必要だった。そのため海外の香奈オフィスにいく時間も少なくなっていた。この時には香奈は相場などは既に止めていた。香奈とコシロの穏やかな日々が続いていた。


ただ、香奈は、機械や資源開発などの役員も兼務していた上に自分の海外の香奈オフィスにも時々出かけるため、多忙を極めていた。コシロは自分で勉強していたい事もあって、香奈と一緒にのんびりする時間が確保されれば、いつもべったり一緒にいる事を望む猫ではなかった。

香奈もコシロのための資料や本は、惜しまずに渡していた。香奈には、コシロからこんな資料が欲しいとかの要望は直ぐに判った。ただ香奈は、自分の子供たちの世話はほとんどしなかった。コシロは香奈の息子の徹彦や瑠璃にはそんなに関心もなかった。甘えるよりは批判的な態度で冷たくみる雰囲気もあった。徹彦や瑠璃も生まれる前からいる猫なので、そこにいるのが当然のような気がしていた。




瑠璃、海外逃亡!


香奈「瑠璃にも困ったもんだ。大学に入っても遊び歩いていて、今度は突然イギリスに留学するとか言い出すんだよ。高校の時には補導されたんだよ、盛り場を夜遅く、派手な格好でウロウロするから。警察にも呼ばれたんだよ。恵の所はみんな大人しいね。」


「私の家の子供たちは、大人しいと云うより覇気がない気がするよ。瑠璃さんはなんか危ない子だね。頭はいいのかも知れないけど。へんなグループに入っているらしいよ。イギリスに行くのはいいことだよ。恵教の信者からも相談されたよ。そんな売春まがいなグループから抜けるように、私は言ったのよ。でも東大生の綺麗な子もいる噂があると言っていたよ。あれは瑠璃さんの事じゃないの。そろそろ手入れもありそうだよ。」
香奈「本当なの。瑠璃は、学校も途中で辞めるとか言ってるよ。留学するにしても卒業してからにしたらと言っても、もうお金も振り込んでいるとか言って、直ぐにイギリスに行くつもりらしいよ。バイトでも当座の金貯めたけど、留学時の生活費と学費とかは頂戴と云うから、ロンドンのオフィスに連絡したおいたよ。あいつ、やばくなって逃げるつもりかね。」

「さすが、香奈さんの娘だね。逃げ足は速いね。でも賢いよ。このままいれば本当に大変みたいだよ。」 


瑠璃は、頭も良く、綺麗でスタイルも良かった。ただ問題は男と金が好きで、高校時代から怪しげな店に出入りし、お金を稼ぎながら男と遊んでいた。ただ瑠璃は単にそれだけではなかった。和子や香奈と違い、組織工作が得意で、遊び好きの不良娘たちとネットワークを持ち、いつでも遊び、稼げるような組織を作った。それが有名になりすぎて、瑠璃は危険を察知し、組織も解散して、逃げる事にした。瑠璃は、さっさとイギリスに留学してしまい、日本から離れた。コシロは、平然と見送り、さっさと出ていけと言わんばかりの顔をしていた。



数ヶ月後、大学生の女の子たちも絡む大がかりな売春グループが一斉に摘発された。グループの中で、中心的な女の子たちは、多くはもう止めていて、名簿や連絡先などを記録は残されていなかった。

噂ではグループのリーダー役の女の子が危険を察知して、解散を提案したらしい。ただ一部の末端は動いていて、警察も逃げようとする気配を察知して、摘発したようであった。女子大生の組織的な売春と三流週刊誌にも話題になり、謎のリーダーの存在も取り沙汰されたが、やがてその話題も枯れてきた。

捕まった女の子たちも、せいぜい末端の女の子で、全体の規模や人員の構成も知らず、指導程度で済んだ。捕まった女の話から数人の女の子の名前も出てきたが、女の子たちも単にデートの斡旋だとのらりくらりと言い逃れをして、巧妙な細工もしているようで証拠もなく、やがて事件はいつしか消えた。 


香奈とコシロ No.24

2013-03-29 04:22:20 | 香奈とコシロ


恵教は、財団と施設と共に大きくなっていた!




恵のインチキくさい恵教は、密かに不良少女たちに広がり、識者は眉を顰め、社会的な不安要因とまで云われた。そして哀れな信者たちは、絶頂感を味わったばかりに、多くは男の子たちに、安い結納金で売り飛ばされ、主婦と云う名で、ただで股を広げて、その上家事もやらされ、旦那の下着の匂いを嗅ぎ、洗濯して、家を掃除までしていた。

夜を喜びと感じるように洗脳され、その中のあるものは風俗では大金を得られるのに、安い給料の保育士や介護士になり、家庭でのんびり昼寝したり、浮気もできるのに、幼児施設や老人施設でこき使われた。

中には、旦那が夜働いているので、子供と一緒に施設に来て、子供が寝ている夜中にも働く変人もいた。宗教は恐ろしいものだと識者は言っていた。そんな哀れな信者たちを試食しようとやってきた男の子たちも、宗教の魔の手の中で、幼児施設や老人施設で力仕事をして、洗脳され、真面目に働く事が正しいと信じさせられた。中には不良少女たちの餌食になり、不良少女たちの主人と云う名の働きバチに変えさせられた犠牲者もいた。


この頃の財団や施設の運営には恵教の存在ぬきには語れないものだった。施設の実務を大きく負担していたのは恵教の信者であり、ボランティアしている筈の信者が、やがて恵の管理しているビル管理会社の従業員から施設の従業員そして財団の事務員などに転進していった。

財団や乳幼児施設を支える金は、赤ちゃんスキ不動産の収益からの寄付であったが、人材の多くは恵教が支えていた。そして恵は、自分のビルの運営をしながらも、実質的に財団と乳幼児施設の運営に乗り出していた。 
 


教祖の恵は、平然とした顔で、こき使われながら楽しそうな信者たちに、更に男を成長させなけれは、女の甲斐性がないと更に扇動していた。男が成長すれば、より感じやすく、絶頂感を多く得られると言って、過酷な修業を信者たちに強いていた。利益至上主義の有希と手を組み、派手な服装や女の子らしい服装そしてちょっと豪華な中級品を売り、儲けていた。 



香奈とコシロ No.23

2013-03-28 00:00:23 | 香奈とコシロ


敷地内の施設は再び完全に独立した!

美佳と真智子は、一時気落ちしていたが、子供たちの笑顔に元気づけられ、長生きをした。敷地内の一族の乳幼児施設は、一族の多くから出資してもらい、完全なプライベート会社 治部ホーム学園となった。学園と言っても、治部ホーム託児所、治部ホーム保育所そして治部ホーム幼稚園と分かれていて、治部一族の少人数限定の理想を目指す乳幼児用施設とした。保育料等はその時の実費に近いものを貰っていた。一般用の乳幼児施設(治部託児所、治部保育所そして治部幼稚園)と連携を取っていたが、施設としての考え方に大きな差異があり、同じ組織内にしておく事は難しかった。 


俊子、香奈そして恵も、ここが、一族の明日を保障する場所だと信じていた。一族の女たちは、ここで助けてもらって、仕事をしていく事ができたし、一族も女たちに支えられていた。しかし先進的で十分な人手をかけた託児所や保育所そして幼稚園は、いくつかの知見を財団や一般の乳幼児施設に与えた。  

 


「小さな命を救おう」財団の財政的な基礎は固まり、乳幼児施設も運営していく事が出来るようになった。そして財団も模索しながらその具体的な活動を始めていた。乳幼児施設も少し、軌道に乗ってきた。赤ちゃんスキ不動産もなんとか財団への寄付を続けながらも、少額の配当を出していく事が出来ていた。ただ、まだ限定的な小規模な存在である事は否めなかった。 


恵教が出来た!

恵の「恵姉さんとなんでも話そう」ボックスは、恵は女の子たちの相談にのっている内に、カリスマ的な存在になり、ついには、恵は教祖になり、男の子との絶頂感を味わう事が魂の救済になるとか、楽しく男の子をセックスするための方法とかを、教祖恵のお告げとして、流布されていった。乳幼児施設での奉仕活動も何故か、絶頂感を味わうための修業と位置づけられるようになった。 


乳幼児施設には、恵教のキャピキャピの派手な格好の女の子たちも奉仕活動に来て、おしめの洗濯や子供をあやしたり、遊んだりしていた。そして男の子も、女の子をものにしようとする不健全な目的を持ったり、子供たちを単に助けようとする健全な目的を持って、参加するようになった。ただおしめの替え方やおしめの洗濯や力仕事をさせられて、キャバクラに遊びにくるような気分は、一新されられた。ただゴムを貰って、帰る時に、そのまま、どっかに行ってしまう女の子もいた。 



香奈とコシロ No.22

2013-03-27 00:00:18 | 香奈とコシロ

治部一族の危機


清彦、洋之助 相次いで亡くなる!

長生きした清彦であったが、病院に検査入院しているうちにそのまま亡くなった。真智子も気落ちしていた。半年も経たないうちに今度は洋之助も風邪を引き、念のため入院していると突然亡くなった。美佳も寂しくなった。そのせいか、「小さな命を救おう」財団とそれに連携を持つ乳幼児施設に協力してくれた。 


洋之助は、清彦の死後、かなりの自己名義資産を各管理会社に移していた。それでも相続税などの税金は多かった。  

 



恭助と和子、突然の事故死!

恭助と和子は元気だった。二人を慰めていた。そして動ける内に、旅行しようとよく海外に行っていた。珍しくコシロは、海外旅行に行く前日の晩に、恭助や和子に、にゃーにゃーと話しかけたが、和子と恭助はヨーロッパに行き、ドイツのフランクフルト郊外で空港に急いで帰るタクシーに乗って、大きな交通事故に巻き込まれ、二人とも亡くなった。
 


「香奈さんも大変だったね。突然の事故で。」
香奈コシロが不安そうな顔をしていたけど、いつもの旅行と言ってたのよ。本当に大変だった。ドイツまで遺体を取りに行って、葬儀もしたし、会社も混乱していたわ。もうあまり出ていないけどね、やっぱりいるのといないのは違うのよ。実際には、ほとんど何もしていない資源開発でも、混乱していたの、創業者だからね。徹さんも存在の大きさを痛感したと言っていたわ。

機械はもっと大変だった。役員会でも何も決まらないのよ。海外関係はお母さんの顔で繋がっていたらしいの。ドイツでは日本よりも大きな記事で報道されたらしい。勝がドイツに行って動揺を抑え、これからも協力していくとか買収した会社でも、これまでと同様にしていく事をみんなの前で話したらしい。

ドイツはファミリー企業が多いからね。マダム和子の息子の勝が役員になっていて、みんな漸く納得したらしいの。お母さんは観光だけで行っていたみたいな事言っていたけど、みんなとよく話もしていたのよ。 勝もこれからヨーロッパへ、特にドイツに行くと言っていた。真理さんもロンドンに行って、話もしてきたらしい。」
「お義父さんの時はとっくに引退していたけど、会社関係は、大変だったの。それに鉄鋼の株を多く持っていたのは、洋之助おじさんだったから、おじさんが亡くなった時も大変だったの。洋治さんが、株は処分しないし、今までと同様経営陣を支持すると言ってくれた。お義兄さんと健次郎さんが役員になって一段落したけどね、お母さんも美佳伯母さんも気落ちして大変なのよ。運動には協力してくれているけどね。私と真美さんがお義母さんを旅行に誘っているの。美佳伯母さんは清香さんが誘っているけど、俊子さんが動くと洋太郎さんがついてくるし、有希さんは洋治さんを連れて行く。みんな忙しいから、時間調整も難しくなるのよ。」
香奈
「もうみんないい年なのに、変わらないのね。」

「貴金属と時計は、和子伯母さんの直轄で、大変じゃなかったの。」
香奈
「衝撃はあったけどね。貴金属はお店を含めて、真理さんと小百合がやっているし、真理さんはあまり表に出たくない人だから、小百合を出すでしょう。それは変わらないし、時計は道之助さんに任せるとお母さんが言っていたし、それほど大きくもないしね。遺産関係はこれからよ。色々と考えていたみたいだけど、突然だったからね。相当お金を出す事になると思うのよ。」
「これからは、香奈さんが纏め役になるのね。」

香奈
「それは無理だよ。色々多すぎて、みんなでやっていくしかないよ。洋之助おじさんも洋太郎さんを商会に入れたかったけどね、結局お仕置きがお仕置じゃなくなって、紡績でしょう。今は有希さんが出ているけどね。計画してもそのまま行かないよ。」

運動も少し停滞ね。みんな動けなくなって。
香奈
「乳幼児施設は動いているし、財団も動いているわよ。私たちはまだ動けないけどね。俊子さんはそういう運営をしていく人だよ。」、
「さすがだね。俊子さんが入ってよかったね。」 


とは云え、盛んに活動していた中核メンバーの活動が落ちて、既存の施設だけが動き、他の組織との連携も出来なくなってしまった

俊子は乳幼児施設には、当面の赤字は問題は別に、スタッフの育成などを進めるに指示していたが、洋之助亡き後の整理を洋治ともに行っていた。洋太郎はみんな俊子に一任する癖がついていたし、有希も、会社以外の事は洋治に一任する習性になっていた。

洋之助は、現金も多かったが、洋之助は数多くの会社に関係し、管理会社も多かった。洋之助は敗戦後の混乱期に金を儲け、多くの会社の株も持ち、その株も管理会社に分散し、子分だった人たちの面倒もよく見て、不動産も貸したり、借りたり、利益を上手く分散させていたので、相続の処理は複雑を極めた。  


和子の管理会社の数も多く、それに和子の父の功二郎や母の静香が遺産として貰っていた土地、恭助名義の土地なども多かった。和子も恭助も現金を多く持っていたし、和子の非上場の株もほとんど管理会社が保有もしていた。

しかし、諏訪の土地や長府の土地など和子が遺産として貰っていた不動産の個人名義は、予想外に多く、そこまでは和子も完全に把握していなかった。香奈や真理以外には多く稼いでいる人もいなかったので、処分できない土地などは、香奈が多く相続するようになった。和子が、香奈のお金を取り上げ、香奈名義で預金していた金は、運用会社からの配当も入り、大きく膨らんでいたが、計ったようにほとんど消えた。和子や恭助の残した遺産も膨大なものだった。

和子が運営していた機械は世界的な規模の会社にまで成長し、和子の個人名義にまだ残っていた株や個人名義の不動産の評価額は膨大だった。
それでも和子の香奈相場禁止令によって、香奈が各会社や管理会社へ大きく出資していた事も効いて、なんとか乗り切る事ができた。


清彦もそれなりに資産があり、恵は義母の真智子の指示で、分からないまま、走り回っていた。しかし真智子の方が資産は多かったので、税金で苦しむ事はなかった。

これらの三家族がこれらもどこまで持ちこたえる事が出来るのか、俊子、香奈、恵たちにも分からなかった。お金も無くなり、一族を牽引してくれた洋之助や和子たちも亡くなり、一族は、過去の遺産やファミリー企業の稼ぎで暮らすようになるのだろうか。資本の力はあっても、上場会社では、会社を指導するのは難しい。本来、企業を大きくする事も出来た、俊子、香奈、恵たちは、多くの時間とかなりの利益機会を、これらの運動にはつぎ込んでいた。そして、彼女たちも本来の利益を稼ぐ自分の事業を見る時間も必要であった。企業や財団も世代交代の波や判断基準の更新が必要となっていくだろう。それらの波を乗り越える事が出来るだろうか。不安は残っていた。