神之助は、密かに話をしていた日銀や財務省の偉いさんには、はっきり言っていた、こんな政策を取ると、いわば投機筋に喧嘩を売っているみたいだよ。世界中の投機筋と喧嘩する、そんな覚悟を持っているならいいけどね。
僕も儲けをある程度我慢して、協力していた事もあったけど、今後は自由にやらせてもらうよ。金は世界を回っているんだよ。日本以外にもマーケットはあるよと脅していた。
日銀や財務省の偉いさんは、まあ急には変更できませんが、神之助さんも運用を分散化させるでしょう。それは結構です。色々と便宜も図ります。今まで通り、色々とご配慮ください。その内になんとかしますと宥めていた。
投資と投機は、いわば紙一重の差でもあり、ナンダカンダとの対策も、国としても考え出していた時期でもあった。
カヨコジャパンの経営陣は、老練な弁護士とか税理士たちであり、十分に税金は減っていた。変に無理な寄付をして、問題になる事は拙いと判断した。調子に乗って、節税対策をするのは、下の下のやり方であり、それは素人のやる事で、本当のプロはさり気なく、自然な方法で節税する事だと知っていた、カヨコジャパンの運営者たちであった。
エンジェルホープジャパン病院は、九州もジブシティーも大儲けとは違うものの、なんとか黒字路線で安定化していた。カヨコジャパンのホテル事業は、むしろ少し赤字でもよかった。カヨコジャパンの経営陣に取っては、今は恵の財団に大人しく、計算しながら、寄付していく時期だと思っていた。開業して暫く赤字で少しづつ黒字になって、又新しくホテルを作る。それは、カヨコジャパンの節税を意味し、つまり自分たちの報酬が上がる事を意味した。経営陣には好都合だった。
カヨコジャパンは、加代子にとっては単なる財産管理会社だった。アメリカの会社の責任者が作った時に、財産保全と効率的に資金を保有できるために作った会社だったので、節税できたら、一定の高額の報酬に加えて、節税分の一定比率を成功報酬として、経営陣に渡す会社だった。実業で利益を出して行く会社でもないとアメリカの加代子の会社の責任者も思っていた。
アメリカの会社では、利益が上がれば、利益比例で報酬を幹部たちに分けていたが、そんな利益を求める会社ではなく、エンジェルホープ財団の事務もして、加代子の金の金庫番みたいな会社の積もりだった。
加代子には、カヨコジャパンのホテル事業は、頭の中では抜けていた。大きな赤字が出れば、流石の加代子も考えたし、カヨコジャパンの経営陣も考えたかもしれないが、赤字とも黒字とも言えない状態にして、節税対策みたいな出資を続けて行った。
加代子教は、宗教団体と言うよりは、、医療に関係する諸雑費を補助する社会福祉活動を行う団体とみんな思い、お賽銭も、ホテルの宿泊料とかレストランの食事代みたいな発想で、みんな出していた。
加代子教は利益と云うかお賽銭や寄付が増えてきたが、宗教法人に一度なってしまうと、宗教法人への寄付は出来ても、宗教法人から配当と云った形での利益配分も出来ず、色々との経費負担をさせる事が可能となる程度であった。
加代子教とは言いながら、運営の細々とした事務処理や金勘定などの財務は、カヨコジャパンですべて受け持っていた。加代子教の僧侶は美術の専門家でもあったし、各地の相談員はエンジェルホープ九州病院からの心理カウンセラーとか恵の財団から出向してもらった人だったので、銭勘定はカヨコジャパンが担当していた、これはエンジェルホープ病院でも同様だった。
カヨコジャパンは、そうした銭勘定をするための組織でもあった。しかし、カヨコジャパン自身が利益を出ていたので、経費負担は、カヨコジャパンがする事も多く、宗教法人の特典をカヨコジャパンが使う事はあまりなかった。
カヨコジャパンのズル賢い連中も、単に経理処理する程度で、そんなに関心もなくなっていった。カヨコジャパンのホテル事業は、利益率の高い冶部ホテル福岡別館、利益率がソコソコのあの都市のビジネスホテルみたいな複数のニコニコホテル、そして地方自治体の施設も入りエンジェルホープ病院の診療所みたいなものも入り、地域再生の拠点みたいな施設とも言われ、利益はソコソコ上げるが、それ以上に拡大し、投資が必要となるニコニコホテル愛染明王さんホテルチェーンであった。
カヨコジャパンホテルシステズは、常に投資しているので、大きく儲ける事は出来なかったが、地域では重要と言われた愛染明王さんホテルチェーンを抱えるホテル事業となっていった。全く別系列の加代子教の宿泊設備といいながらソコソコの利益のあるホテルは加代子教の収入源となった。愛染明王さんホテルチェーンは、九州各地のニコニコサービスの母船みたいなものになった。
カヨコジャパンホテルシステムズが、ニコニコホテルに預けていたこの金は、運営補助の金として処理していたが、利益のあるホテルに運営補助などを置いておくのは、隠し金みたいに思われるとカヨコジャパンの経営陣は思った。
そして、この金は公共性の高いサービス事業に投資すれば、税金控除も得られた。悦子と相談して、ニコニコサービスの拡張に使用され、カヨコジャパンホテルシステムズが大幅に出資した九州ニコニコサービスが出来ていた。運営はやっぱり、ニコニコサービスが担当した。
九州では九州ニコニコサービスが、ハウスクリーニング、オフィスクリーニング、財団と組んだ介護サービスを展開して、圧倒的にこれらのサービスを支配していくようになるのは、更にもう少し先の話であった。
ただカヨコジャパンは、大きな病院となったエンジェルホープジャパン病院とこうしたホテル事業そしてニコニコサービスにも出資していた企業になり、異色の企業群と言われていった。
カヨコジャパンの経営陣は、実務にはほとんど関与していなかった、なんなる銭勘定だけをし、税務処理をする連中だった。しかし、こうした評判はきっちり利用していた。
カヨコジャパンは、公的なサービスも展開している企業と言われていた。実は海外の運用子会社での運用による配当と云った収入が遥かに多かったにも拘らず、運用関係の利益についてはみんな追求すらできない雰囲気になった。あの経営陣の節税の方法は極めて老練だったので、税金は、いつも安かった。