エンジェルホープジャパン病院 その4
ただこのビックな組織は、厚生労働省とは仲が悪かった、正しくは病院事務局そしてその背後のエンジェルホープ財団、カヨコジャパンの首脳と厚生労働省との関係は最悪だった
保険病院辞退という手段をいつも考えていた
医療費全額国庫負担とはいうものの、それは保険医そして保険病院に限られる制度だった。
例えば、敷地内の病院は、敷地内の冶部一族の健康管理をするためだけの病院で、ジブトラストがゼニを出して、製薬関係の病院が医療スタッフを出していた。敷地内は不思議の里でもあり仙人の里でもあって、生きている伝説とか化石がいる所だったので、その秘密を探る目的もあった。医療費を国庫に頼る事はなくて、全額自分たちで負担していた
金が金がという、エンジェルホープ財団やカヨコジャパンの連中は、医療費は患者に請求するものでなくて、くれるといった寄付で病院は運営するものだと云う原則が、この連中の頭に、今ではこびりついていた、それに国からくれる医療費は全体の病院運営では、それほど大きな比重ではなくなっていた、この薬は保険外、この検査は保険外とかグタグタ云うし、請求も邪魔くさい、保険適用外の処置は患者の了承がいるのに、この病院はその承諾書もないとか文句言われた。どっちにしても金請求しないから関係ないとか、年中揉めていた。
国から出る筈の医療費は遅れて、病院から請求する医療費もギリギリの時期に請求するなど、揉めに揉めていた
エンジェルホープジャパン九州病院は、同じ財団、カヨコジャパンの下ではあるが独自の運営が出来上がっていた、関係病院と関係医院も含めて、国から貰う医療費以外の治療費は、加代子教から患者に渡すゼニを病院が貰うシステムが確立して、その契約書というか一連の書類が完備していた。
加代子教は医療費以外の交通費とか栄養費とかいった、金まで出していた。そして加代子教からの寄付も今では巨額に上り、加代子教の愛染明王講の信者総代会がこれを管理すると云うシステムが出来上がり、カヨコジャパンつまりエンジェルホープ財団からの援助の金は微々たるものになり、いわば独立しているような組織となっていた。
九州の加代子教の愛染明王講は信者数は増えて、リトルキャト九州の社長も入り、九州財界の大物は大抵入っていて、報酬のある程度の比率でいつも寄付し、多くの人もそこそこ寄付していた。支払うゼニは膨大だが、入ってくるゼニも膨大になっていた
元々、設立当初は、巨額の寄付をカヨコジャパンがする事で成り立っていたのだったが、今はカヨコジャパンの寄付は、入ってくるゼニと出て行くゼニ、基金の残高をみながら調整してだしていた。そしてその金はドンドンと減ってきた。
金の切れ目は縁の切れ目で、出す金が減ると影響力も減って、カヨコジャパンの影響力よりも愛染明王講の信者総代会の影響が強くなっていた。
書類は完備しているし、なにしろ宗教も絡み、九州ではその威光に逆らうと、愛染明王さんの祟りがくるとまで言われている組織なので、厚生労働省の九州当局もその威光にひれ伏していた。
厚生労働省の大臣は、陽太親衛隊、陽太グループの番頭みたいな人で長年、厚生労働大臣であった人で、しかも今は、陽太の命令でジブシティーや敷地内を含む、選挙区にその地盤を換えていたが、それでもエンジェルホープジャパン病院とは仲は悪かった。
選挙の時には病院の中には、この大臣のポスターは、一枚も入っていない程だった。
陽太が総理を辞めてから、全額医療費国庫負担は、微妙に変わり、自己負担の治療、検査とかが増えていった。初めはくそ高い、先進的医療とか先進的な検査をドンドンと使い、ゼニ儲けをいそしむ奴らの対策だったが、それが微妙に変化していった
外圧も陽太が総理でなくってから、それまでおとなしくしていた海外の保険会社が、医療保険を売り込みたい狙いもあった。
大臣は別の事を考えていた、医師とか医療スタッフの報酬は、医療費全額国庫負担制度が開始してから下がってきて、医師の報酬面での魅力が減ってきて、医師の質が低下していっていた。ある程度自由な料金設定が可能な分野を作らないと日本の医療の質が低下してしまう恐れを感じていた。
保険適用外の検査とか治療は、患者の承諾書が必要、その必要性に応じて、やはり国も補助する細かい規定まで作ったが、やはり補助対象者の年収も考慮に入れたりするので、申請手続きは結構鬱陶しく、医療保険は少しつづ増えていっていた。
エンジェルホープジャパン病院は、こうした厚生労働省の対応に、真っ向から反対するものだった、必要な医療に先進的とか保険適用外とかの区別は要らない、必要な薬、処置などは保険適用云々とかは考慮せずに行っていたのが、厚生労働省の大臣そして下の局長には癪に障った。病院内で張られていた。医療費を請求する事は本病院では致しませんとのポスターも問題視していた。
医師全てに、加代子のような大富豪の嫁さんはいない。神三郎とか専門病棟の腕自慢の外科医には、がっぽりと寄付してくれる金持ちの患者がいるかもしれないが、そんな医師はそんなにはいない。医師は医療活動で生活しないといけない。日本全体の医師の生活を考え、そして医師の質も維持していくために、考えだしたのが今の制度と云う自信が彼らにはあった。
医療費全額国庫負担の大前提を財務省の攻撃から守りながらも、医師の生活と医療の質も考えてつくり上げた制度と云う自信もあった。担当の局長は官僚ではあったが、少しは骨がある人だったので、政界の黒幕と言われた陽太の従兄弟の神三郎が院長であろうとなかろうと国が決めた手続きを守ってもらわないと困ると言っていた
エンジェルホープジャパン病院と九州病院の話題は、マスコミでは流れなかった。主要の新聞社、通信社そして週刊誌に至るまで話題にもしなかった。
むしろ、悪口は構わないが、褒めるとか実態を報道するのは固く禁止していた、実際は強い要請ではあったが、禁止しているのも同様だった
厚生労働省は、年金の金も握っていて、年金の金は運用もしていて、強い要請に逆らうとナニされるか判らないと云う恐怖があった。
陽太と神三郎は従兄弟ではあるが、神太朗と神子の仲は一種の緊張状態でもあって、そのため、神三郎と陽太も仲が良くない事も、陽太側近の大臣は知っていた
流石に、三流週刊誌騒動で、エンジェルホープ財団が取った対応とかもみんなにも知れ渡り、悪質なデマを流すと厄介との認識もあり、紡績の洋太郎と云うよりも今では実質的に冶部本家とも云えた洋之助の家系は、主要マスコミに滅法強く、悪口も言えない、権力にも逆らえない、板ばさみになって、この病院の問題は無視する事にマスコミは決めた。
遺伝子治療の話も、日本のある研究機関としかいわず、それも外電引用する程だった。そして大きな病院や大学付属病院も、エンジェルジャパン病院の遺伝子分析を利用して、遺伝子治療を行えるようになってくると、この病院で日本全体、いや世界の殆どで行っている遺伝子治療の基礎になっている遺伝子分析がこの病院で行われている事は報道しなかった。