のら猫の三文小説

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三人の不良たち No.46

2013-03-05 00:01:17 | 三人の不良たち


香奈は、相場から撤退



香奈は、和子の脅しと諏訪の山荘に地下室を作った事に怯え、無条件降伏した。香奈は欧米では有名な投機筋にまで成長していたが、香奈は和子には弱かった。和子は甘い点もあるが、極めて強引な人だった。香奈もそれはよく知っていた。カナ筋と言われる程の投機筋にしては、和子には簡単に従う、不思議な人が香奈だった。



それに、和子は元々強引だったが、今度は強硬だった。香奈は、香奈オフィスの仕事も実業だけに整理し、アメリカの運用会社に預けていた分もばれるとこまるので、ケイマンに送り、香奈オフィスも当座に必要な分と云って、かなりのお金を置き、一部はシンガホールにこっそり送り、それでも日本には相当のお金が戻ってきた。




シンガポールは、香奈の金庫会社であるが、一応アジアや中東の情報の情報を集めていた。ケイマンは、名前しかない会社で秘密の財布会社であった。香奈は日本にも香奈オフィス以外に自分だけの会社を複数持っていた。色々大変な手続きを細かくして、香奈は日本に戻していた。


戻ってきたお金は、和子が香奈名義の預金にしたり、香奈名義で清美の運用会社に預けた。それでもこっそり残して置いた。徹も和子から云われ、諏訪で静養するのもいいかもしれないと更に香奈を脅した。




一方、由香も宏美たちも全面的に、ビルの仕事は恵に任せていった。お店では由香も宏美たちも名義は残していたので、恵は由香の考えや宏美の考え方も重視しながらも、ビルの管理は統合してやるようになった。宏美と満は新しく出店したお店に重点を置いていた。香奈と由香は、洋治に弟子入りして、健康的な栄養バランスを取った献立を考えていった。三家族とも健康的な食生活になっていった。



和子香奈には日本にお金を戻さして、私が香奈名義の預金にしたり、清美さんの運用会社にも預けたの。大きな金額だったから、凄く儲けたと思っていたのよ。それでも何か怪しい素振りがあったから、問いつめたらまだお金持っていたのよ。


私名義の機械や貴金属の株を買せたり、私の管理会社に出資させたりしたの。それなのに、まだこっそり海外の会社にお金置いていたの。まったくどこまで稼いだのかね。でも資源開発や機械などが現地法人に出資する時に便利だったのよ。


アメリカも貴金属の会社やお店を出すのにも便利だった。ある程度は香奈の会社の出資にして巻き上げてやった。あの馬鹿は、健康も考えず、又金儲けとか云って相場をやる奴だから。献立も結構、香奈風に変えてるみたいだよ。子供たちにも評判いいわよ。魚料理も焼き魚以外に、グリルとか刺身も考えているわよ。」

美佳
「洋治も香奈さんや由香さんのアレンジを聞いてね。幅が出来たと言っているわ。」

真智子
「確かに健康的な食事になったわ。恵さんはお肉減ったと言ってるけど、夜ももっと頑張れると喜んでいるわ。清彦さんも、和風は食べやすいみたいなの。」



洋之助は、化学も紡績も商会も治部レーヨンも、社長を辞めて、会長になったが、紡績の後継社長には、洋太郎に指名せず、化学でも洋治を後継として指名しなかった。それでも洋太郎は、暫くすると社長になり、洋治も化学で副社長になった。


洋太郎は紡績をそんなに大きくせず、上場もしなかった。「会社は利益を求める組織ではない。人を愛し、人を育て、人の役に立つものでなければならない。利益は存続するために必要なだけだ。」と言うようになった。


化学は関連会社も含めて大きくなったが、洋治は「共存なくして繁栄はない。」と言うようになった。二人とも回りは手を焼いた。化学には利益重視の人も結構いたが、紡績にはそんな人は少なかった。


洋之助には、もっと紡績の社内から、会社の利益率の向上と社内留保の拡充を気を配るように求める意見が来るようになった。洋之助は笑って、「困ったもんだ。お父さんに似た人が二人も出来てしまった。」と言っていた。


ホテルを充実させた俊子か洋服事業を拡大させた有希の紡績入りを望む声も出てきた。洋之助は中小企業の経営指導を自分の個人事務所で行うようになった。利益至上主義の有希も、ご主人様の意向もあって、中小企業の利益を確保しながら、各種製品の普及に努めた。法律問題などは清香がやるようになった。美佳は、デザインなどは後継にほとんど任せ、保育所、託児所、幼児教育や子供病院の運営などに重心を置いていた。



和子「恭助が言っていたよ。洋之助さんの所は、一番うまく行った。」

美佳「洋之助さんは、和子さんの会社はみんな大きくなったし、お金も一杯持っていると言ってるよ。」

和子「私もお金なら結構あるよと言ったけど、恭助はそんな事じゃなしに、洋之助さんは若い頃はお金を儲けたけど、今はみんなの為に働いている。事業も大きくしただけでなく、内容も充実させた。それが一番なんだと言ってたよ。香奈にも儲けるだけじゃなしに、世の中の役に立つ事を考えなさいとお説教していたよ。

真智子「恭助さんも良いこというね。恵さんでも、この頃は、若い女の子たちの相談にのってるよ。

美佳「洋之助さんも私も、そんな気はなかったんだよ、洋之助さんは、清香の手助けのために考えたら、いつの間にか、中小企業の相談にのっていたし、清香も勝ち気だから、負けたくないから、頑張っていたら、中小企業の相談おばさんになっていたとぼやいていたよ。


有希さんは自分の趣味で、広げただけだし、私も、自分の我が儘から保育所を広げただけだしね。紡績は又愛の会社になって、どうしようと悩んでいるわ。今時、愛とか人を育てるのは時代遅れと言う人もいるのよ。

和子有希さんを役員に入れて、洋太郎さんにもう少し機敏に動くようにさせるのでしょう。俊子さんはなんで断ったの?

美佳「俊子さんは洋太郎に意見が出来ないのよ。顔見ると何も言えなくなると言って。有希さんは洋治以外では強気なの。その代わり俊子さんには、不動産の会社を見て貰うの。こんな事になるなんて予想もしなかったわ。みんな好き勝手にやっていたのよ。」

和子「それがよかったんだよ。私も恭助や香奈に言ったのよ。一時的な儲けに走らずに、自然に振る舞っていく事が大切だし、人の為とか世の為ではどうしても無理が出るし、飾る気持ちや表面だけ繕うのもいけないと思うよ。恭助もそれはそうだと言っていたよ。

真智子自分の仕事の中でやっていくしかできないものね。私も本当は清彦さんとのんびりしたいとも思うけどね、私は医者しか出来ないから、まだ少し、出来る範囲でやっていきたいと思っているわ。



実は俊子と有希は、話し合い、有希に紡績の役員になって貰った。洋服事業に根強い生地が高すぎるとの意見と紡績の本家意識との融合を考えていた。有希はそんなに深刻には、考えていなかった。紡績と化学の合弁会社からも化学繊維入りの素材の提供も受けていたし、第一高級素材なら高く売ればいいし、中級素材ならデザインやアイディアが勝敗を分けると思っていた。心を込めた生地も一つのポイントだと思っていた。


それよりはシーズン性に甘えを持った販売体質の方が問題だと思っていた。有希は洗濯も出来ないような服も利益が上がれば売りかねない人だったが、ご主人様のお客様大事の意向に背けば、抱いてくれない恐怖もあり、修繕やサイズ直しのサービスも始めた。利益など上がらないと思っていたが、結構利益も上がっていった。洋治は一杯突いてくれたし、有希も満足した。俊子は観光事業やリゾート開発も少し視野に入れていたし、敷地内の土地だけなく、各地の土地の調査も必要だった。


洋太郎はそんなに馬鹿ではないが、やはり最高級の品質を維持していく事が生き残る道と考えていた。それにはむしろ、今の路線を維持して、社員の志気を高くしていく事が必要と考えていた。洋治は本気で、共存する事が繁栄の道と信じていた。コンサルティングビジネスがこれからの主流になると考えていた。みんなの夢を結びつけるのが、素材メーカーの営業だと思っていた。



香奈も単に投機だけしていた訳でもなく、香奈オフィスも単に資源の利権だけではなく、資源産出国で民生事業にも少し出資していた。それは利権獲得時の条件だったり、有利に展開するための道具だった。幾つかの産業機械を機械に斡旋したり、プラント業者と手を組む事もあった。


ただ政治体制や規制が突然変わる事も知っていたので、慎重に進めていた。

真理と香奈はこっそり話し合い、思いがけず子供が出来た若い女の子のために、一時的に子供を預かり、どうしてもの時は里親を探す運動を、有志の産婦人科医たちと展開して、資金援助していた。


小さい命は貴方のものではない。」とのスローガンでこっそり進めていた。香奈は若い女の子に対する啓蒙活動にも興味があった。婦人科検診を進める運動にも参加したし、「やる前につけよう、ゴム。」とか「やったら後は、検診を定期的に」とか言っていた。恵は若い女の子の相談に乗るうちに、若い女の子への啓蒙活動を知るようになり、その活動で香奈と会った。香奈と恵は不思議にも気が合い、恵とは話し合うようになり、共同で活動をして、悩んでいる女の子や若い母親には、少しは役に立っていた。恵はこっそりゴムをあげる事までやっていた。



真智子は、娘もそしてその息子たちの嫁ももっと単純だった。したい、やりたいだけで生きてきた。手厚い託児や保育所などに支えられて、自分の可能性を引き延ばす事ができた。



子供は女だけでは出来ない。妻と子供たちを置いて逃げても、保護責任者遺棄にはならない。旦那と子供たちを置いて逃げても同じだが、なぜか女が逃げ遅れる。サポートする筈の人も責任は問われない。そんなどこかの国とは違い、この家では、お金があるからでもあるが、赤ちゃんや子供を預かり、保育するシテスムが完備していた。そうしたシステムのお陰で、真智子や恵も由香も、本来の能力を発揮する事が出来た。そして一族は、出産する女の自立性を保護していた。そうして、そうした女たちに支えられて、一族は栄えていた。



洋之助は当初思っていた程の莫大な財産にはならなかった。堅実な経営方針の紡績の成長に努力し、頑迷な社内を取り纏め、化学などと合弁会社を作り、発展させていった。それに中年過ぎに、金儲け以外の調整や利益が上がりにくい保育所などの幼児教育、病院関係そして中小企業の振興に時間が取られた。むしろ和子の方が、功一の妻の珠代の遺産も多く、和子自身も事業も広げて儲けていた。


稼いでいた香奈も途中から、「小さい命を救おう」運動や女の子の啓蒙活動を行うようになり、実業やこんな活動に時間が取られた。真理も貴金属の会社を大きくしたが、「小さい命を救おう」運動にも時間が取られた。



もう昔ほど、いい事だけを貫いて行く事が出来ない時代、そして何がいい事かもはっきり分からない時代ではあった。ただ洋之助や和子たちにとって、愛は自分を救ってくれたし、その子たちも守ってくれていた。それは信じていた。子供たちもそれに従って欲しかった。


最初に構想していた粗筋は、ここまでなんですが、これ以降の展開は、少し時間を戻して、香奈が主人公となり、猫のコシロも絡んでくるストーリーになっていきます。



三人の不良たち No.45

2013-03-04 00:07:14 | 三人の不良たち
みんなで海外旅行を楽しんでいた



やがて清彦も会長に退き、真智子は清彦と旅行するようになった。洋之助は、紡績や化学そして商会など多くの会社で第一線を退いていたので、美佳と一緒に旅行するようになった。三人はみんな旅行を楽しむようになったが、和子はヨーロッパ、真智子は東南アジアのリゾート、美佳はアメリカが中心だったので、そんなに海外で出会う事はなかった。美佳と洋之助がニューヨークの空港を歩いていると、心配そうな表情をしている和子と恭助に出会った。



美佳「和子さん、ロンドンにいる筈じゃなかったの。」

和子
「香奈がアメリカで病気になったらしいのよ。徹さんから連絡があってね。観光どころではなくなったの。タクシーも少ないらしい。」
洋之助
「商会に言って、車の手配させているから先に使ってください。」


恭助
「では遠慮なくそうさせて貰います。」


香奈の父親で大蔵省の局長まで上がった恭助が退官してからは、

香奈はフルスピードで稼いでいた。




今までは、香奈は貯まっていたアメリカのお金や海外での資産を使って、株、商品相場や先物そして為替まで手を広げ、海外の自分の会社も複雑に使い、夜も昼もお金を稼いでいたものの、父の事もあり、そんなに派手にはしていなかった。


それが全力でやれる事になった。時代も良かった。ボロ儲けの機会も転がっていた。数年で驚く程貯まった。>海外の会社も、利益が貯まっていたので、細かい各種の資源利権を手に入れたり、資源開発と共同して大きな利権を手に入れたり、他の海外の会社とも協力したりしていった。



元々放任していたが、子供たちも大きくなっていた。香奈はひたすら、金を儲けていた。面白いように儲かり、利益が利益を呼んでいた。香奈オフィスの海外の株ゴロや相場ゴロたちの連中も、利益比例の報酬に釣られ、儲けていた。


香奈は、昼も夜も金を稼ぎ、寝る間も食べる間を惜しんで金を稼ぎ、節税効果のある対策もフルに使い、香奈の海外の会社も国内の会社も金は貯まり、金は金を呼んで貯まり、一方香奈の身体は着実に弱っていった。


大きなお金の動く、商売の話があり、渡米して、自分の会社でうち合わせをしている時に倒れた。睡眠不足で食事もあまり取ってなかった。日本語が分からない現地スタッフは慌てて、病院を手配したが、たまたま日本語の話せる医師もいなかった。


香奈は貧血になり、倒れて睡眠不足でもあり、ずっと寝ていたが、話は大きくなり、徹には、香奈は突然倒れ、昏睡して病院に寝ていると伝わった、徹は慌てて、直ぐに、ロンドンに到着する筈の恭助と和子に連絡して、様子を見て欲しいと言った。恭助と和子は吃驚して、直ぐにアメリカ行きの飛行機を手配して、飛び乗り、ニューヨークに行った。そこで偶然洋之助と美佳に出会い、洋之助が用意していた車で病院に急行して、香奈を見舞った。



美佳「香奈さん、どうだったの。」

和子
「ありがとう、そんなに悪い事はないらしいの。香奈はアメリカやヨーロッパでも相場もしていたらしいの。それで睡眠時間が不規則になって、食事もいい加減で倒れたらしいの。」

恭助
「本当に心配しました。徹君と真理さんには連絡しておきました。」

和子
「もう私は、香奈には相場なんて止めさせるつもりなの。恭助さんが役所辞めてから又やりだしたら、この始末でしょう。香奈は儲かっているよと言ってるけどね。動けるようになったら、連れて帰るわ。」

洋之助
「それがいいと思う。私の所もみんな止めているよ。清美さんに頼んでやっているだけになったよ。」

恭助
「和子さんと5日間ほどいて、香奈を連れてかえります。洋之助さんたちはゆっくり観光してください。」



洋之助と美佳も観光気分は吹き飛んで、和子と恭助と一緒に、ニューヨークに滞在して、香奈と一緒に、日本に帰った。治部病院で、真智子に診て貰って、家で安静する事になった。



和子「みんなに迷惑かけて、ご免なさい。」

真智子
香奈さんは大した事なくてよかったわ。でも身体は大分弱っているから、安静にして栄養つけないといけないわ

美佳
「洋治が、和子さんの家の献立も考えると言ってるわ。洋治は病人食みたいものを考えるの好きなのよ。」

和子
「香奈は、これからもっと儲かるのにと、まだ愚図っているけどね。諏訪の山荘に地下室作って、ここは座敷牢にもなるねと脅したら、あっさり諦めたよ。今は、全部整理させているのよ。商売用の先物は少しは仕方ないけどね。あの馬鹿は驚くほど持っているから、もうこれが潮時だと言ってね。日本に戻せるお金は戻さしているのよ。もう少し元気になったら、洋治君に頼んで、私の家の献立を考えて貰う事にするわ。」

真智子
「由香さんも、教えて欲しいと言ってるわ。」

美佳
「栄養バランスは、洋治の得意の言葉なのよ。我が家では、みんな元気になったけどね。野菜とかフルーツとか魚料理は増えるよ。朝はヨーグルトとか野菜ジュースとか生野菜のサラダもつくよ。」、
真智子
「それは理想的よ。」

美佳
「でもね、たまには食べたくなるよ。厚いステーキを。」




三人の不良たち No.44

2013-03-03 00:00:38 | 三人の不良たち


洋之助は和子に言った。


洋之助
「和子さんは一番巧くいきましたね。時計製造も道之助さんが大きくしそうだし、お店も小百合さんがやっていきそうだし、鉱業は徹さんが大きくして、香奈ちゃんも助けて、外資も入れ上場して名前も変え、大きくなった。貴金属も真理さんがやっている。機械は勝くんが一郎さんや直人さんと協力している。」

和子
「そうでもないよ。大きくすると難しくなるからね。もっと色々な問題が出てくると思っているよ。乗り越えられるかは、みんなが考えていくしかないよ。私は恭助が役所辞めたら、一緒に旅行にでも行きたいと思っているよ。

洋之助
「でもなかなか出来ないよ。私も美佳さんとのんびり旅行もしたいけれども、なかなか出来ないよ。洋太郎は紡績で評判よくてね。動かせなくなってしまった。洋治は悲鳴あげるかと思ったら、妙子伯母さんにも気に入られ、みんなとも仲がよくてね。もう私も勝手には動かせなくなったよ。ホテルは俊子さんが充実させて、洋服事業は有希さんが大きくして、私も美佳さんももう名義だけの会長だよ。寺下さんも自信なさそうだったけど、商会では貴重な調整役になってしまった。私はのんびりしたいと思っても、それなりに忙しくなっているよ。和子さんも同じだよ。」

和子
「清美さんに、運用だけさせていればいいのに、中小企業の増資とか支援なんかするからだよ。清香ちゃんも色々手伝っているし、ワルらしくないよ。」

洋之助
「他の目的でやったけど、結局それが儲かるとか清美さんが言い出してね。仕方がなくなった。」

和子
「真智子さんの店も、由香さんや恵さんの精力封じとか言って、任せると大きくなって、満君がしょんぼりしているから、元気だせと男の子用の店をわざわざ作ったの、私は無謀と言ったけど、真智子さんは株で損する子もいるでしょうと言って、やらせたら満君は、学生企業家になった。満君と宏美さんに任せた店は、一番まともな店になった。分からないものだね。」



美佳「子供たちもみんな片づいたね。よかったよね。」

和子
「危なかった小百合もなんとかなってほっとしているよ。しかし、香奈は依然として馬鹿なのよね。あいつの家行くと、凄い格好しているよ。徹さんは、香奈さんはあれでないと本来の冴えがなくなりますよ。型にはめると力が出ませんと言ってるのよ。」

真智子
「それはそうだよ。私も恵さんを見ていると、そう思うよ。凄い格好だけど、恵さんなりの考えが有るみたいな気がしているの。格好も派手かと思うと、突然落ち着いたり、下着もつけれない服装もしたりしているよ。」

美佳
「離れを作ったのに、まだ良く来ているの。」

真智子
「ご飯は一緒に食べているの。みんな家事や料理などはあんまり、できないでしょう。」

美佳
「私の家も初めは俊子さんがそうしたいといったけど、洋治は、今は私の家の家計簿をつけてくれているし、主婦みたいになったの。朝は早起きして、ランニングした後、コーヒーも何種類か入れてくれて、野菜もカットして、フルーツも切ってくれるのよ。卵料理も作ってくれている時もあるの。栄養とかバランスよくとかうるさいけどね。それで朝も晩もみんな一緒にご飯食べているの。離れは作ろうと思っているけど。みんな一緒の方が経済的よ。」

和子
「洋治君て凄いね。ホテル並ね。でも美佳さんは、家計簿もつけた事もない人なのに、よくいうよ。わたしもつけたことなんてないわよ。

真智子
「家計簿ってなにするものなの。だって要るものは要るじゃない。記録して何か役に立つの。」

美佳
「私もあんまり分からないけどね。でも役にも立っているの。まったく私は知らなかったの、どれくらい使っているか。それにお金自体も私のお金か洋之助さんのお金も分からないのよ。でも洋治はね、食費はこれくらい、電気やガスなどもこれくらいと言っているの。あれば便利よ。」

和子
「真理さんは会社以外ではお金に関与しない人なの。商品相場で儲けてもお金はみんな勝が管理する事になるのよ。私は要る分は使っているだけね。全然分からない。恭助も小遣い取って、残りは私のお金と一緒になるしね。大体これでやっていけてるのよ。香奈なんてまったくいい加減よ。お菓子の箱に二人のお給料を入れているよ。晩ご飯はみんなで出来るだけ食べるようにしているじゃない。お菓子の箱持ってくるから、それ一つ頂戴といったら、お金が入っているの。香奈は運用しても、運用の上限決めさして、それを超えると、勝に管理を頼むようにさせたの。結局勝がお金の管理をしているわね。」

真智子
「私もよく分からない。清彦さんも勝手に使っているわよ。残ったお金は入れてくれるけど、私のお給料と併せるし。大きなお金がいる時は、銀行からおろしているわよ。」

和子
「真智子さんは、自分の管理会社や資産も分かっていない人だしね。家計簿以前だよ。一族や一家の管理会社だけじゃないし、自分の管理会社ですら良く分からないでしょう。」

真智子
「清美がよく言うけどね。もの凄く複雑なのよ。清美も一家の管理会社までよ、多分。純子会や洋介会そして先代の次平さんや鉄平さんの管理会社もあるのよ。病院もあるし、みんな知ってる人は洋之助さんぐらいでしょう。和子さんは知ってるの。」

和子
「大体私が作ったからね。純子会や洋介会とは、私は関係ないから。それでも動いているからね。現状はじっくりと帳簿みないとよくわからないわね。それに恭助のも複雑なのよ。」

美佳
「洋之助さんもじっくりと帳簿みないと分からないと言ってるのよ。個人として動かしているか、どの会社として動かしているかは、よくわからなくなると言ってたわ。」

和子
「あんまり一杯会社作るからよ。」

美佳
「洋之助さんはお義兄さんたちの管理会社にも関係しているの。だから私の所は今は洋治にできるだけ任せようとしているの。私のも多少あるしね。和子さんも考えないと。」

和子
「今は真理さんの事があるから勝が知っているわよ。」

真智子
「私は清美に任せているけど、清美は、健太郎には話しているらしいの。」

和子
「ちゃんとやっているじゃない。」

美佳
「もうすぐみんな60になるけど、みんな若いね。」

真智子
「まだ現役だよ。美佳さんはもうやってないの。」

美佳
「やっているよ。私の生き甲斐だもの。」

和子
「私も死ぬまでやっていくよ。」





恭助が役所を辞めると、和子は恭助と一緒に3週間ほど海外旅行に行ってしまった。


機械会社にちょっと休むからと言って、みんな慌てていた。他の会社も一時的に混乱した。



美佳「和子さん、みんな慌ててたよ。突然3週間もいなくなって、香奈さんも何処へ行ったか知らないと言ってたのよ。その香奈さんもアメリカへ行ってしまうし。連絡場所ぐらい言わないと。」

和子
「真理さんだけには言ったよ。万一の時だけ連絡してよと言ったの。香奈は自分の事は黙っている事もあるけど、他の人の秘密守れるやつじゃないしね。でも香奈には途中でメールを送って、ヨーロッパでお金使いすぎたから、香奈の海外の会社から北欧のホテルにお金を送れといったら、自分でアメリカから北欧までお金届けに来たの。自分でお不動さんの絵を買ったり、ノルウェーに仕事に行ったりしてアメリカに戻ったのよ。オランダで宝石買ったのが予想外の出費になってしまったの。元気な内に、恭助と一緒に旅行したかったのよ。一郎さんにも少し休みたいと言ってたのに、3週間と言ったら、黙っていたわ。けどみんなちゃんとやってたわ。」

真智子
「北欧だったの。」

和子
「イギリスからフランスへ行って、オランダやドイツにも寄って、北欧も少し見てきたの。良かったよ。」

美佳
「それって、和子さんの視察も兼ねているのでしょう。洋之助さんが一郎さんと会ったら、突然ドイツの機械会社の買収の話を言ったりして、向こうの会社とちゃんと連絡と取っているのが判ったと言ってたわよ。真理さんの提携先にも寄ったらしいね。商会にも連絡させていたと判ったのよ。視察と言えばいいのに。」

和子
「そんな事言ったら、本当に仕事になってしまうわよ。恭助の関心のある所にも寄ったしね。仕事は三分の一位よ。」

真智子
「でもいいわよね。私も行ってみたいわ。二人とも元気なうちに。」

美佳
「そうはそうね。私も長い旅行は、結婚した時に洋之助さんと行ったきりだわ。もう30年以上も前だわ。あの時はやってるだけだったわ。」

和子
「あの時は視察だったらしいね。美佳さんの身体の視察なの。」

美佳
「少しは仕事したわよ。」

和子
「私も一郎さんたちと話してるのよ。ドイツでは機械会社で、お父さんたちと戦前仕事していたと言う人とも会ったわ。もう凄いお年だけど、色々とお父さんたちは、やってたみたいよ。一郎さんも直人さんたちも少し海外にも出かけると言ってた。これからはヨーロッパとも付き合いは深くなるのよ。真理さんも勝と一緒に行きたいと言ってるけど、一人でも行かないと仕事出来ないと言ったの。徹さんも香奈も一人で行ってるよ。」

真智子
「3週間は無理だけど、私も清彦さんと行ってみよう。」

美佳
「洋之助さんも行こうと言いながら、時間が取れなかったけど、和子さんの話も聞いて、行く気になっているのよ。もっと短くなりそうだけどね。」

真智子
 「みんな、もう一度青春かもしれないね。」




三人の不良たち No.43

2013-03-02 01:12:40 | 三人の不良たち
意外な展開




洋之助は忙しく、結局美佳が和子の家で、恭助と和子、道之助と小百合とご飯を食べた。

美佳「道之助さんのお父さんの名前は?」

道之助
「道宏と言いました。でも私が小さい時に亡くなりました。」

小百合
「道之助さんは、お父さんの形見の時計を大切に持っているの。」

美佳「見せてくれない。」

道之助
「いいですよ。」

美佳
「やっぱり、お父さんは、黒田道宏と言わなかった?

道之助
「そうです。私が小学校に上がる時に、母は自分の姓に戻ったのです。母は自分で育てていくつもりでそうしたと言ってました。」
和子
「それがどうしたの?」

美佳
道宏は私の弟なのよ。父は道宏を可愛がっていたの。愛用の時計もあげたらしい。でも道宏は酒場の女の人を好きになったの。父は反対して、道宏は出ていって、消息がとれなくなったのよ。どこで暮らしていたの。

道之助
「仙台で、父は小さい時計屋をしていました。私が小学校に上がる前に亡くなったのですが、かなり借金があって、時計屋は手放したのです。母は私を連れて、東京に戻り、酒場で働き、そして小さい居酒屋をやり始めて、私を育ててくれました。」

美佳
その時計には、大きなサファイヤがついている筈よ。売ればかなりのお金になると思うけど、それは売らなかったの。

道之助
「これは父が大切にしていたものですから、これだけと言って、母は大切に持っていました。」

和子
「私にも見せて、本当ね。かなり高価なものだよ。時計も貴重なものよ。」

恭助
「これで美佳さんとも親戚になりましたね。」

和子
「美佳さんはどうするつもりなの」

美佳
「兄たちと連絡を取ってみます。」



黒田家からは、道之助の家を作り、それなりの財産も渡したいと言われ、和子が当初思っていた「小百合には、道之助さんと一緒に苦労させてから、道之助さんに時計製造の会社を任せ、店は小百合に」との計画は狂った。東京には修理センター以外にも営業の拠点を作ろうとしていた。道之助は単なる時計の技術屋ではなく、大きな可能性も持っているような気もしていた。



小百合は卒業すると、直ぐに道之助と結婚したが、和子は、小百合に朝早く店に来て、店の前を掃除して、店も綺麗にするように命じていた。店員が出勤するとお早う御座いますとみんなに頭を下げて、仕事は始まる。仕事は店長の横で聞いている、道之助が迎えに来てくれないと、終業後の掃除をしてみんなにご苦労様でしたと頭を下げて、お金の勘定をして、店を閉めて、銀行の夜間金庫にお金を入れる。名目は店長代理とされた。


道之助が迎えに来ると、その時点で、本来その仕事の遅番の店長代理がお金の勘定と夜間金庫への入金をしていた。しかし、道之助が迎えに来て家に帰っても、夕食後は、時々は香奈の仕事の手伝いをするために香奈の家に言っていた。香奈は経済学や相場を更に教え、質問をして、答えられないとこき下ろしていた。道之助が出張で家にいないと、朝から晩までこき使われた。そして疲れて家に帰ってきても、コンビニの弁当を食べながら、香奈の仕事の手伝いをして、家に帰って寝る。


翌日も早くから店に出る。そして道之助の泊まりの出張は結構あった。和子も時々店に来て、小百合のミスをつけて怒る。妊娠するまで続くよと和子は脅していた。小百合は必死になって夜は頑張って妊娠した。妊娠すると、香奈は勘弁してやると言った。和子は、店には出ろと言って、店には働きに行っていた。



資源開発は中東の原油のビジネスが大きくなり、鉱山関係にはそれほど熱心ではなくなった。香奈は鉱業のために作った海外のオフィスを独立させ、資源開発の調査の仕事も請け負ったが、自分の管理会社に入ってきたお金を使って、アメリカやヨーロッパでも、猫のコシロと話しながら、こっそり相場をしていた。


香奈は、日本でも自分だけの運用会社を持ち、清美にも運用を任せ、アメリカでも運用会社に運用を任せ、自分のオフィスでも運用していた。その上、ヨーロッパでも運用する事になっていた。ただ表向きは、資源関係の情報を集めるための事務所であった。


その内に、資源開発とは別に幾つかの鉱山の権利を取り、原油関係の仲買みたいな事もやり、貴金属相場や原油相場にも手を出すようになっていた。香奈は一発倍増とか5割以上とれる機会を待って、じっと待って集中的に儲けるようになっていった。いつもいつも儲ける事なんて出来ないと思っていた。自然と香奈のオフィスにもそんな人が増えていた。普段はチンタラとカタギの商売をして、チャンスをじっと待っているそんな儲け方になっていた。ロンドンとニューヨークだけのオフィスもフランクフルト市場にも興味を持ち、事務所を持ち、海外のお金を管理するために、シンガポールにも金融関係のオフィスを持ち、アメリカで貯まるお金をこっそり管理するためにケイマンにも形ばかりの個人事務所と銀行口座を持つようになった。



恭助「もういいだろう。小百合もお腹大きいし、家で休めてやったら。香奈も利益出しているし、小百合も頑張っているから。」

和子
「小百合は、まだまだだよ。そんなにお腹も出てないよ。医者にも行ってるよ。動いた方が良いんだよ。私も働かされたよ。」
恭助
「香奈は小百合の借金なんて、もうとっくに無くなった。本当はもっと儲けていると言ってたよ。」

和子
「香奈はちゃんと、お金貸すからもう一度やったらと言ったのに、今度失敗すると、又長い間、こき使われると怖がったらしい。根性がないのよ。店でも名目だけは店長代理だけど、なんでも修業と云って、掃除から客の応対まで、手加減しないで、こき使うように店長には言ってる。」

恭助
「怖い母親だね。」

和子
道之助さんは、遺産も貰ったし、私が肩代わりと言ってくれたけど、あれは小百合の修業だと言って断ったよ。その代わり道之助さんと一緒にいると嬉しいらしいよ。

恭助
「和子さんは怖いね。」

和子
「結局あいつのためになるんだよ。店でも大分慣れてきたようだよ。」

恭助
「香奈はうまくやっているの。」

和子
「運用も、本当はもうそんなにしていないのよ。時々やってる程度なの。ただ海外ルートで任せていたり、清美さんに預けていたりしている。自分ではそんなにしないのよ。今回は小百合のためにやらしたのよ。香奈は馬鹿だけど、色々と海外ルートの情報もあって、海外でも自分の会社を作って、資源開発と協力しているのよ。経済や相場は詳しいのよ、小百合に教えさせたの。小百合程度では太刀打ち出来ないのよ。それも教えたくてね。香奈は会社でも結構忙しいのよ。

恭助
「和子流の特訓か、勝はよくやっているみたいだね。」

和子
「勝は技術屋だから、私にはよくわからないけど、一郎さんはそろそろ経営企画室に入れたいと言ってくれている。真理さんは素質ある人だね。店も見て欲しいけどね。小百合が落ち着いたら、手伝うと言ってくれているよ。」


明、洋治に感心する



明は、様子を見て洋太郎に言った、


「洋治さんはすごい亭主関白なんですね。有希さんはなんでも洋治さんにお伺い立ててますよ。この間、おトイレ行っていいと聞いてましたよ。洋治さんはこぼさないようにしなさいよと言ってました。」

洋太郎
見かけだけはね、でないと有希さんが怒るから、言わされているだけだよ。有希さんは、洋治がいないときは、なんでもしている。洋治に甘えているだけだよ。


ご主人様とか言われても、家計簿つけて、有希さんや子供たちにも気を配り、お金も管理して、必要なお金を渡し、ゴミを出すご主人様だよ。有希さんは子供たちと一緒にあれ買って、これ買ってと言って甘えてるけど、みんな買うと有希さんはかえって怒っている。みんな買っちゃ駄目と怒っているよ、


第一、いつもみんな起きたら、コーヒーも何種類入れて、野菜サラダも準備して、カットしたフルーツもヨーグルトと一緒に置いてあるだろう。あれは洋治が準備しているんだよ。早朝にランニングして、シャワー浴びてから、やっているんだよ。有希さんは寝てるよ。明君もなりたいかい。彩香もその素質あるよ。」


「彩香さんは、はっきりしてます。僕も時々叱られています。そんな事になりませんよ。お義兄さんは何でも俊子さんに相談してますよ。俊子さんはお義兄さんの面倒もちゃんとしているのに、そんなに俊子さんが怖いのですか?」

洋太郎
「有希さんも、はっきりしているよ。有希さんも洋治に怒っているよ。あれはご主人様ごっこみたいなものだよ。私は色々あってね。俊子さんがお金を含めて、すべて管理するようになって、私も必要なお金は残して、すべて俊子さんに任せている。何でも俊子さんと話すると、俊子さんも真剣に考えてくれるし、私は今が気に入っているし、第一、楽だよ。




明は、両方とも極端だ、まだ二人とも学生だけど、出来れば二人で話をしていきたいなと考えていた。




三人の不良たち No.42

2013-03-01 00:00:34 | 三人の不良たち


洋之助は、忙しかった。



洋之助は、紡績を財政基盤の強い会社にした、それはみんなが認めていた。洋之助は、忙しく紡績社内にすら、居る事も少なかった。商会でも隠然たる勢力を持ち、治部洋服そして治部レーヨンを押さえていた、治部洋服の運営は、有希が頑張りだして、洋之助は全体的な監督をするだけだったが、それでも忙しかった。



紡績の製造現場で何をしているのかすらよく知らなかった。
それに洋之助は、みんなから愛される経営者になろうと云う気もなかった。むしろそれを拒否して、恐れられる経営者になろうとしていた。洋次郎が亡くなってからは、自分に従う人を重用した。けっして首を切る事はしなかったが、洋之助側近グループが出来ていた。

洋之助自身が怒鳴る事はなく、ニコニコ笑いながらも、逆らう奴を左遷していた。ただ洋之助は自分に逆らっても能力のある奴は、自分の勢力下にある部門ではなく、社内分社化した管理部門とか製造本部に入れて、勝手に仕事をさせた。そこで自分の腕で稼げと言った。

洋之助は、人からどのように思われようと、長い間、愛の会社として存続できる財政的な基盤を作るのが、自分の役目と信じていた。



洋之助への毀誉褒貶は、激しかった。洋之助は身びいきの強い人だったし、子分たちも可愛がっていた。商会そして化学、自分の配下とも云える、治部レーヨンそして治部洋服だけでなく、ありとあらゆる、子分たちの会社の面倒を見ていた。どこまでが公でどこまでが私と云う差もなかった。公私混同以前の問題だった。

色々な子会社に対して、紡績は出資していたが、自分の管理会社、兄弟の二代目次平たちの管理会社、子供たちの管理会社まで複雑に使い、出資させて、ピンハネをしていた。結局、紡績自身が一番儲かったが、そうした管理会社にも利益が転がり込んでいた。



洋之助は、愛の会社に拘る紡績社内を説得する事を断念して、紡績を社内で独立採算性の強い、幾つかの本部を作った。洋之助完全支配の本部と勝手にやらせる本部に分けていた。



営業本部は、チンタラとした仕事をしていたので、治部洋服と治部レーヨンと手を汲み、あっさり言えば、ピンハネさせて、利益を出るようにした。



根強い愛の会社信仰が残る製造本部は、勝手にやらせる事にした。



研究本部の独立性を高め、全紡績の研究を請け負う研究エンジニアリングのような会社にした。紡績グループの研究体制を一貫して、そこが指導できるようにした。



そして、自らも運用グループを集めて、財務本部として、子分たちを集めて運用会社のようにした。出資している会社群は多いが、昔から保有している会社の株式は、管理本部担当として、資産効率を重視した株式や子分たちが関与している子会社の株式は、財務本部担当としていた。

財務本部が上げる収益は、それ以外の部門が上げる収益を軽く上回っていた。財務本部の人の報酬は、利益比例として、紡績の他の部門とは桁が違っていた。

ただ、洋之助が忙しく、財務本部にすら居る事ができず、運用に強い子分たちも歳になるにつれて、株式や商品相場の比重を減らして、債券比重を高めていった。債券のプロを採用して、債券運用会社のような様相さえ示していた。



管理本部は、紡績プロパーが多く、全体の数字も一応判り、運用実態も少しは判った。彼らにとっては、洋之助のプライベートな会社群に流れ込んでいる利益は、洋之助が公私混同で、ナイナイしていると云う思いが常にあった。

俊子のジブサービスが掃除やオフィスサービスをして、更にピンハネする積もりだと思っていた。俊子のジブサービスを採用する時に、相見積もりを取りたいと云ったのは、洋之助への抵抗だった。

俊子は、洋之助の思いとは違い、セコイ、ピンハネをする積もりはなかった。サービス部門の技術向上のための別組織だった。相見積もりをしたら、他の会社は、思い切った安値を出したのに、更にそれよりも安かった。管理部門の奴らはビビッた。洋之助は軽く笑っていたので、より恐怖が高くなった。洋之助に対する変な手出しは出来ないと悟ったが、むしろ洋之助への恐怖感と、複雑な感情が彼らの心の底にヘドロのように積み重なっていった。



洋之助も、もう自分の方法は少し変えていくしかないと知った。もう時代が変ったと思った。
紡績と他の子会社との関係も単なる出資しているだけになっていった。それは紡績にとっては利益が単に配当だけになっていくものになり、子会社は勝手に大きくなって、子会社と云うよりは、完全に別会社になっていった。



俊子がホテルを上手に運営し、有希が治部洋服を高収益にしたので、その二つは完全に二人に任せたが、それでも色々な会社の運営に深く関与していた。

洋之助は、ありとあらゆる仕事を紡績とは別に経営する必要になり、一層忙しくなっていた。

美佳と家族と一緒に飯を食う事は大切にしたが、それでも外でビジネスランチやビジネスディナーの機会は増えていた。

和子も知の人として知られ、機械の経営を握る女帝と言われていたが、人を上手く使う人だったが、洋之助は自分で考え、自分で動き、子分たちや側近たちを手足のように使い、紡績では恐れられる存在と言えた。