神三郎は人格円満な子供ではなく、負けず嫌い、独立独歩の面も持っていた。頭の切れる兄弟、頭の切れる父親、母親の環境の元に育ち、負けるものかと育っていた。長男の神一はガキの頃から天才と言われていた。神二郎は独特の性格で、特に 兄の神一を意識しているようには見えないが、神三郎は意識していた。
それが周囲との軋轢を生みやすいのは否めない。ただ 人は助け合うもの、ナニか優れているのは、それで人を助けなさいと神様に言われているのだと僕は思うと言っていた、神二郎からの影響も受けてはいた。
頭のいい家系ではあるが 神三郎も努力して東大医学部に入り、そこでも努力して、手先も器用で外科に入った、消化器外科を専攻したが、あまりにも手術が上手すぎて、元々権力の権化みたいな治部一族だけに、権力に媚びる事をせずに 教授の不興をかった。
治部病院に移籍するしかなかった。
ここで総婦長に可愛がれた、腕は良くても性格はいいとは言えない人たちの中で生活できたのは、この総婦長のアドバイスがあったからだった。神三郎ちゃんには本当の医師の匂いがすると言ってくれた。名門で、資産家の息子なのに、真剣に医者を務めていると褒めてくれた。看護婦たちは名門一族のボンボンだけに 眺めているだけだったが、恐れを知らない 加代子からの熱心なアプローチを受けた、どこかオカシイ感じのある加代子につい同情し、人助けの積りもあって結婚した