カヨコファイナンシャルが、ほとんどの株式を保有していながら、非常勤の役員も派遣しなかったのには、訳があった。この会社は、古い小さい工場を持つ、小さい会社なので、それこそ非上場だった。経緯もあって、神太朗系列の証券会社名義として株式を保有する事もなかった。
出資額も、カヨコファイナンシャルの全体の資金力からみれば、端金程度の小額である事は事実ではあったが、それよりも、加代子が強い思い入れを持った工場だったとの事が原因だった。触らぬ神に祟りなしと云う思いが、加代子の会社の幹部たちにあった。
加代子のアメリカの会社の幹部
「どうしましょう、ほとんどの株式を保有しているし、若いビジネススクールを卒業した兄ちゃんでも、偉い先生に頼んで、一人でも派遣しておきましょうか?」
加代子のアメリカの会社の責任者
「止めときな。そんな奴が利益を上げようと変に頑張ると困るよ。加代子さんに、なぜそんな奴を雇ったとこっちが怒られるよ。アイツは、うまく逃げたよ。」
加代子のアメリカの会社の幹部
「アイツに、形だけの非常勤の役員でも兼任させましょうか?」
加代子のアメリカの会社の責任者
「そんな役員、アイツは引き受けないよ。考えてもみなよ。加代子さんが、あんな思い入れをもっている工場だよ。加代子さんは、あそこで作った家具を大事にしていたよ。何かあったら、大変と思って逃げたんだよ。アイツは本当にズル賢い奴だね。本当にいい家具を作るために、経験のある工場長に全て任せるのがいいとかうまい事を言って、さっさと逃げた奴だよ。アイツが逃げたのに、我々がコミットする危険を犯す必要はないよ。我々も本当にいい家具だけを作り続けるように、経験のある人に、全て任せていると云う事にしておく方がいい。香奈オフィスの子会社からの採掘権の金も入り、少しは配当として貰うようにしたとか言ったね。」
加代子のアメリカの会社の幹部
「採掘権やホテルからの利益を含めて、利益の五分の一程度は、配当に出すとか言ってました。採掘権からの収入は、期間も限定されるので、製造設備の充実とか、販売網の強化とに少し使い、今後困らないように、準備金として貯めておくとか言ってました。配当は三分の一とかそれとなく、示唆したんですがね。もっと配当をよこせとかいいましょうか?」
加代子のアメリカの会社の責任者
「余分な事は言わない方がいい。又本業で、赤字になったら、困るじゃないか。あんな会社にこれ以上金を出す羽目になるよ。神太朗さんに聞いたら、ジブアメリカは、定期的に会社の業績を確認するために、非常勤の役員を派遣したとか言っていたよ、それでいいよ。出資した金も我々としては大した金じゃないしね。多少は、配当をくれるんだからね、」