クリス研究所の特許とかの知財収入はドンドンと増えたが、一部を除いて、出資していた機関に対して、分与する形になっていた。
出資割合の上位三機関は ジブの遺伝子分析センター、エンゼルホープジャパン病院そして少し離れて阿部製薬だった。阿部製薬は少し特殊で、派遣研究者の給与そして研究費用は全て阿部製薬が負担して、その代わりに派遣した研究者たちによる研究成果については阿部製薬の独占的優先権をある程度認める形になっていた。製薬各社の条件も概ねこの契約になっていた。
少し複雑であって、各社毎に違うものではあった。
ジブの遺伝子分析センターと クリス研究所の給与条件、研究者の待遇は、ほぼ同一であってしかもこの場合は研究者の給与負担はクリス研究所だった。
エンゼルホープジャパン病院の遺伝子治療センターの場合はこれ又特殊で、遺伝子そのものの研究グループも存在するが、遺伝子解析チームは他にはないグループであって、遺伝子解析は、エンゼルホープジャパン病院の遺伝子解析チームの上位にあるチームがクリス研究所の解析チームだった。遺伝子解析については、この上位チームに対して、エンゼルホープジャパン病院の遺伝子治療センターからある程度の技術指導料を支払う事にもなっていた。商業的な遺伝子解析はエンゼルホープジャパン病院の遺伝子解析チームにほぼ独占させる事の対応だった。
要するに、この利益分与金の実質的な支払いは、ジブトラストの遺伝子分析センターが一番多くなるようにしていた。
ジブの遺伝子分析センターの人間に対する研究は、 このセンターの本来の趣旨である胎児の遺伝子疾患を治す事に主眼があって、難病奇病の遺伝子分析や研究程度まで行う事が多く、一般的な根本にも影響する部分は、クリス研究所のチームが行う形になっていて、境目はファジーのように不明確だった。
この分野では数多くの医薬品が発売されたが、元々対象者が限定的で、製造してくれる製薬会社も限定的だった。要するにゼニにはならない研究だった。
ジブトラストの遺伝子分析センターは それでも根本的な研究をして、それをクリス研究所に出資している製薬会社にクリス研究所を経由して、その結果を供与する形にしたのは、実はクリスの考えでもあったのだ。
ジブトラストの遺伝子分析センターも香奈の意志、本来のセンターの果たすべき役割を決して軽視したものではなかった。ただクリス研究所を経由した分与金の存在は、ゼニにもナラン事とかの非難を起こりにくくしていたものだった。遺伝子分析センターの幹部たちもある程度した段階でクリスの意図が判った。