読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『プロテスタンティズム』

2018年10月14日 | 人文科学系
深井智朗『プロテスタンティズム』(中公新書、2017年)

アマゾンを見ていたら、ずいぶんとレビューが多くて、しかも星が多いものばかりなので、興味を覚えて、読んでみた。

1517年のルターによる贖宥状批判の「95か条の提題」を取り巻く神聖ローマ帝国の宗教情勢や政治情勢から始まって、現在の新プロテスタンティズムの国であるアメリカの宗教の現状についてまで、手短だが、非常にわかり易く解説されている。

私はかなり単純に、カトリック=現世回避=現世享受に対して、プロテスタント=現世重視=勤勉というような図式的な見方しか持っていないが、当たり前だが、そんな簡単な話ではない。

それにしても教皇一人が聖書の真の解釈者であるとして、教皇に絶対服従をするカトリックが、細かなところでは、様々な宗派があるにしても、一致団結しているのに対して、聖書こそが神の言葉として始まったプロテスタントでは、教皇や司祭の仲介を拒否した結果、各人が好き勝手に聖書解釈を行うようになり、バラバラになったというのは、物事の皮肉のように思える。

プロテスタントでさえも、国家と宗教という関係は破棄できず、ピューリタンたちがアメリカに自由を求めて旅立って、国家と切り離されたプロテスタントを作るまで、ずっと国家宗教として、プロテスタントもカトリックも、国家との関係を断ち切ることができないというのも、宗教の恐ろしさを教えてくれる。そしてそのアメリカでも、・・・。

私は若い頃には宗教は無知と非科学的原理に基づいているものであって、人間が科学的な考え方を確立するようになれば、いずれはなくなるものだと思っていたけど、資本主義社会が無知や貧困を再生産しているかぎり、そして、人生というものが先の見えないものであるかぎり、なくなることはないのかなという気がしている。


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