平野啓一郎『ある男』(文藝春秋、2018年)
平野啓一郎さんの小説第二弾として『ある男』を読んだ。推理小説風の作りで、あっという間に読めた。
通常の推理小説と違うのは、推理小説なら探偵役である主人公である弁護士の城戸自身が自分の出自や家族や生き方のことで、時には茫然自失となるほどに悩んでいて、それが彼の探している人物のそれと重なるという、精神科医にありがちな状態が描かれていることにある。
つまり城戸は自分が担当した依頼人からの仕事を淡々とこなして人探しをしているだけではなく、やり取りをとおして、自分の人生を見つめ直しているということだ。そこから、在日へのヘイト問題だとか、犯罪者の家族の問題といった社会問題への照り返しが、この小説の副主題ともなっている。
宮崎県西都市に住む里枝は小学生の息子がいるバツイチだが、両親が営む文具店に絵の具などを買いに来る男と触れ合ううちに好感を抱いて、再婚をする。谷口大祐との間に娘をもうける。労災が多いと言われる林業で働いていた彼は、伐採した木の下敷きになって死亡する。ところが谷口大祐は本当の谷口大祐ではなかったということがわかる。
かつて離婚問題で担当したことがあった弁護士の城戸が相談を受け、本当の谷口大祐の兄やかつての恋人などへの調査を行ううち、だれかが谷口大祐を名乗っていたことがわかる。ではだれと?そして本当の谷口大祐の生死は?
上にも書いたが推理小説じたてなので読みやすかったのか、平野啓一郎の腕のせいで読みやすかったかはわからないが、入れ替わりの仲介をしたとされる男(刑務所に入っている)とのやり取りあたりが、ちょっと混乱したくらいで、面白い作品だった。
最後あたりで、長い間冷えていた妻との関係が修復したが、実は妻が不倫しているのではと思わせる箇所ができてきたり、谷口大祐のかつての恋人であった美涼といい関係になりそうな展開になると思わせたりしたのだが、それらに触れることなく尻切れトンボみたいに終わったのも、小説らしい余韻を残してくれた。
『ある男』へはこちらをクリック
平野啓一郎さんの小説第二弾として『ある男』を読んだ。推理小説風の作りで、あっという間に読めた。
通常の推理小説と違うのは、推理小説なら探偵役である主人公である弁護士の城戸自身が自分の出自や家族や生き方のことで、時には茫然自失となるほどに悩んでいて、それが彼の探している人物のそれと重なるという、精神科医にありがちな状態が描かれていることにある。
つまり城戸は自分が担当した依頼人からの仕事を淡々とこなして人探しをしているだけではなく、やり取りをとおして、自分の人生を見つめ直しているということだ。そこから、在日へのヘイト問題だとか、犯罪者の家族の問題といった社会問題への照り返しが、この小説の副主題ともなっている。
宮崎県西都市に住む里枝は小学生の息子がいるバツイチだが、両親が営む文具店に絵の具などを買いに来る男と触れ合ううちに好感を抱いて、再婚をする。谷口大祐との間に娘をもうける。労災が多いと言われる林業で働いていた彼は、伐採した木の下敷きになって死亡する。ところが谷口大祐は本当の谷口大祐ではなかったということがわかる。
かつて離婚問題で担当したことがあった弁護士の城戸が相談を受け、本当の谷口大祐の兄やかつての恋人などへの調査を行ううち、だれかが谷口大祐を名乗っていたことがわかる。ではだれと?そして本当の谷口大祐の生死は?
上にも書いたが推理小説じたてなので読みやすかったのか、平野啓一郎の腕のせいで読みやすかったかはわからないが、入れ替わりの仲介をしたとされる男(刑務所に入っている)とのやり取りあたりが、ちょっと混乱したくらいで、面白い作品だった。
最後あたりで、長い間冷えていた妻との関係が修復したが、実は妻が不倫しているのではと思わせる箇所ができてきたり、谷口大祐のかつての恋人であった美涼といい関係になりそうな展開になると思わせたりしたのだが、それらに触れることなく尻切れトンボみたいに終わったのも、小説らしい余韻を残してくれた。
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