読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「陰の季節」

2006年06月30日 | 作家ヤ行
横山秀夫『陰の季節』(文芸春秋、1998年)

これは短編集でも、同一のD県警本部に勤務する者たちが主人公になっているという意味で、連作的な短編集になっている。

「陰の季節」は人事を担当する警務課調査官の二渡が主人公。昨年、刑事部長を定年退職し、警察の肝いりで作られた「産業廃棄物不法投棄監視協会」という社団法人の専務理事に天下りした尾坂部が三年の任期が終わるというのに後任に席を譲らないと言ってきたために、人事にごたごたが起きたら本部長の栄転に差し障るために、なんとしてでも尾坂部を辞めさせろという指示が二渡に言い渡される。じつは6年前に起きた、自分の娘のレイプ事件の犯人を尾坂部は追っていたのだった。専用の車と運転手がつくので、それを利用してくまなく調査をしているようだというところまで二渡はつかむのだが、最後の最後で、この運転手が犯人だということが尾坂部にはわかっていて、彼を追い詰めるためにわざと事件現場のそばを走らせたり、もうじき捕まるというようなことを言っていたのだった。そしてついにこの運転手=犯人は自殺してしまう、というお話。

「地の声」は警務部監察課監察官の新堂が主人公。謹厳実直で真面目一筋だが、けっして持てる男ではない、切れ者でもない、長年昇進から見放されていた生活安全課長の曽根がクラブのママと密会しているというタレコミの文書が届き、新堂に真偽の調査が依頼される。結局、これは曽根自身が流したもので、こうすることで、このクラブが売春をしていることを摘発して点数稼ぎをするためにこれを流したのだということが分かる。そして温情から新堂はこれをつぶしてしまうが、ライバルの二渡にこれを利用されてしまい、曽根だけでなく、自分までも昇格できなくなってしまう。

全部の短編をこうして紹介しようと思ったけど、つまらないからやめる。横山秀夫の短編はたしかに密度が濃くて、集中して読んでしまうけど、あとに何も残らないから、もう読まない。

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