読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『国境の南、太陽の西』

2008年12月06日 | 作家マ行
村上春樹『国境の南、太陽の西』(1992年、講談社)

『ノルウェーの森』といい、この『国境の南、太陽の西』といい、村上春樹のこの時期の小説は麻薬みたいなものだという気がする。

だれだって、『国境の南、太陽の西』のハジメくんみたいに、かつて好きだった(そして今も好きな)女性と再会して、「あのときこうしていたら、僕たちはうまくいっていたかもしれないね」とか「ほんとうは僕は君のことが好きで、会いに行きたかったんだ」とか、「もし可能なら、もう一度やり直せないだろうか」とか、話し合ってみたいと思うような女性が必ずいるものだし、ほんとうにそういう会話をしてみたいと思っているはずだ。しかも何か知らないが、一抹の後悔の念とともに。

麻薬みたいというのは、一度そういう想念に取り付かれたら、もうそこから離れることができないからだ。もちろんそれでなにもできなくなるとか身を持ち崩すというようなことはないにしても、数年に一度その女性のことが思い出されて、かつて交換していた年賀状をごそごそと昔の荷物のなかから探し出してみたり、妻にも見せたことがない写真を、やはりクローゼットの奥のほうにしまってあった箱のなかから取り出して眺めたりするようになるからだ。

そういうことって女性にもあるのだろうかと思う。男は昔の女に未練たらたらの場合が多いが、女は未練を残さないとは、よく言われることなので、たぶん女性はそういうことはしないのだろう。そうでないとしたら、本当に相手の男を待ち続けるくらいのことをするのだろう。

いつまでもこんなことに付き合っていてはだめだね。いい加減、村上春樹なんか終わりにしなきゃ。

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