仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

お寺軸

2011年07月06日 | 現代の病理
昨日の読売新聞(23.6.5朝刊)に山田太一さんが“私のあんしん提言”というインタビューが掲載されていました。(以下転載)
 
自殺についてはどうか。
 「今回の東日本大震災で、一時期、死者、行方不明者あわせて3万人弱という数字が出てみんな驚いた。だが、日本では毎年3万人を超える自殺がある。それだけ生きていても仕方ないと思う人がいる社会というのは、やはり異常だ。人間は何日も絶望したままでは生きられず、ある瞬間を乗り。越えられれば生きていけるのに、そうなっていない。また、絶望の根底には、自分は生きる価値がないとか、あいつは駄目な姉といったマイナスの思考が見られるが、今の社会は、マイナスをなくそう、なくそうとし過ぎるのでは。人生はプラス、マイナス両面から成り立っている。人間はマイナスによっても育まれるということに、みんながもっと気づけば生きやすくなる。

孤独死については。
「戦後、日本人は、家制度や親の束縛を受けずに自由に生きる個人主義を目指してきた。その究極の姿と言えなくもない。行政が何かするというより、一人ひとりが考える問題だ。ただ、自殺もそうだが、助けを求められたら手を差し伸べられるような社会でありたい」(以上)

世間の価値観はプラスのできことが良で、マイナスは不です。しかし価値観の質的転換から見ると、マイナスの出来事、すなわち苦しみの体験こそ、自分の価値観をひるがえす最良の時となります。苦しみという“思い通りに成らない”体験こそ、いつも意識するのとのない、私の不完全な価値観が顕わになる時だからです。

そうしてみると現代はマイナスの状況下の人に寄り添い、その人を肯定的に見る場所と考え方と人が不在だということだろう。

孤独死の多発が戦後、豊かさを追い求めてきた究極の姿だとすると、現代の病理は、最も気づきにくいともいえます。いつも語ることですが「安くて便利で快適」、これは経済性優先、合理主義、欲望肯定の考え方です。

そこの3つを満たす場所が都会だとすると、これから農村部の果たす役割は、経済性優先、合理主義、欲望肯定でない文化の供給でしょう。「田舎軸」という考え方があります。

以前ご紹介しましたが島根発「日本一の田舎づくり計画」 島根大学准教授 作野広和さんの提唱するものです。

「日本一の田舎づくり計画」とは、従来の経済至上主義に基づいた集中指向で大量消費社会とは異なる、分散指向で循環型かつ人間重視の社会を築き「新たなシステム」の構築を目指すもので、様々な問題を抱える経済中心主義の日本や世界の価値観に対して、オルタナティブ(もう一つの新しいもの)な概念として島根県民が有するライフスタイルを堂々と提示しています。

そしてこの田舎軸は、都市を否定するものではないし、便利で機能的なライフスタイルと対立するものでなく、双方が絡み合いながら新しい社会を紡いでいくことを目指しています。

この田舎軸の都会バージョンであるお寺軸を、分りやすい言葉で提唱する必要が、お寺の近々の課題でしょう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 暑いところ、ようお参えりでした | トップ | 寺院での支援活動 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

現代の病理」カテゴリの最新記事