『なぜヒトだけが幸せになれないのか』(講談社現代新書・2025/4/24・小林武彦著)からの転載です。
ヒトはどうしたら「幸せ」になれるのか
本書では、ヒトはなかなか「幸せ」になれないというお話をしてきました。その理由は人類の700万年の進化の過程で獲得した心と体が、定住して農耕がメインになる「弥生格差革命」以降の社会にフィットしなくなってきたことが、一つの原因です。
極端な言い方をすれば、格差が生じ、不公平感にさいなまれ、不特定多数の顔が見えない「世間」からの評価と、孤独と不安に怯えながら暮らしているのです。本来は、チャンスは平等にあり、努力は評価され、不正は憎まれ、喜びや悲しみは共有され、お互いの信頼感に支えられたコミュニティで安心して子育てや老後が送れるように、遺伝子はカスタマイズされていました。それなら、自然に回帰した生活に戻ればいいかというと、それも現在の便利さ、本能と結びつかない快楽の消費を知ってしまったヒトにとっては難しいでしょう。
そこで、ヒトが「幸せ」を取り戻すための私の提案は、科学技術をうまく使いながら、弥生格差革命以前のヒトが持っていた二つの「幸せ」のエッセンスを実現することはできないだろうかというものです。一つは安心して暮らせる新しいコミュニティの構築、もう一つは格差なく誰もがゼロベースから成長できる環境です。この1つが、現代の、特に日本人のような先進国で暮らすヒトを「幸せ」にする重要な要素だと思っています。
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