『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりにもう一つ転載します。
ベルクマンの法則 寒冷と熱帯のように対比的な気候と関係して、古くからいかれてきた法則にベルクマンの法則とアレンの法則というものがある。ベルクマンの法則というのは、一八四七年にクリスティアン・ベルクマンが発表したもので、恒温動物では同じ種の中で、または近縁な種同士において寒冷な地方に生息している動物ほど大型になるというものである。一方アレンの法則は、ジョエル・アレンが一八七七年に発表したもので、恒温動物の同種または近縁な種において、寒冷な地方に生息している動物ほど耳・首・足・尻尾などの突出部が小さくなるという法則である。ベルクマンの法則にしたがって、同じクマの仲間でも、ホッキョクダマの仲間は体長約二・五メートルもあるが、日本のヒグマならニメートルくらい、そして熱帯のマレーグマは、一メートル少々しかない。また、アレンの法則にしたがって、極地に暮らすホッキョクギッネはとても小さな耳しがないが、日本のキタキツネは中くらいの耳をしていて、そして砂漠に暮らすキツネの仲間のフェネックキツネは極端にう大きな耳を持っている。なおフェネックキツネは、大人の個体でも小さな体に大きな耳がついていて、可愛らしい動物である。
哺乳類は恒温動物であり、体温を常に維持しているが、怛温動物はこうして気温が変化しても深部体温を一定に保つことで、脳や内臓などの温度を安定させて生命を維持しているのである。また、恒温動物は食べ物を体の中で分解し、そしてそこから発生するエネルギーを使って心臓などの生命維持に必要な筋肉や、身体運動のための筋肉を動かしている。つまり食べ物がエネルギーを経て運動になるわけである。このような「食べ物」から「運動」へのエネルギー変換をエネルギー代謝という。余ったエネルギーは脂肪などとして体内に蓄えられる。しかしここで、エネルギーはそれほど効率よく変換されるわけではなく、使われたエネルギーの大部分は「運動」にならず、「貯蓄」されることもなく、熱になるのである。これが運動をすると身体が熱くなるわけである。この一連の過程の中で、エネルギー代謝が多いほうが熱も多くなるので、必然として体が大きく、動かす筋肉が大きくて、食べる量が大きいほうが生み出す熱が多くなる。したがって体の大きい動物のほうが、寒冷地方でも多くの熱を生み出せるのである。
こうした熱は体の外に出ていく。熱は体の表面から出ていくため、体の表面積が大きいほど熱は出ていきやすくなる。そこで、寒いところでは体を大きくしつつも、表面積は小さくすることが適応的である。そもそも、面積は二乗的に増えていくものであるが体積は三乗的で増えていくので、体が一様に大きくなった塲合に、体積あたりの面積は相対的に小さくなっていく。そのため、体が大きいほうが熱を生み出す量が多く、熱が逃げる量が相対的に少ない傾向となることがベルクマンの法則の理論である。一方、体表面積を少なくするには、できるだけ体の突起を減らすことでも達成できるので、耳や四肢の突出が小さくなることがアレンの法則となる。両法則をまとめると、体積あたりの表面積を小さくすると、球体に近づいていくことになり、ホッキョクグマやホッキョクギツネのように、丸つこい体になる。(以上)
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