仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

鳥を識る③

2017年06月01日 | 日記
『鳥を識る なぜ鳥と人間は似ているのか』(春秋社刊・細川博昭著)の続きです。

概念を理解するー人間との対等な会話

アフリカ赤道部に暮らすヨウムは、カラスに匹敵するほどに発達した脳をもちながら、気性はとてもおだやかで、南米系の大型インコのように絶叫することもあまりありません。神経はかなり繊細ですが、忍耐力はあります。
 かつて、アレックスというヨウムがアメリカの研究機関にいました。アイワーン・ペッパーパーク博士によって時間をかけて訓練されたアレックスは、人間がもつ概念のいくつかを理解し、それを言葉に発することで、人間との会話も可能でした。

 バナナ、チェリー、クラッカー、トウモロコシ、にんじん、水。
 はさみ、鍵、釘、コルク、洗濯ばさみ。
 紙、木、石、革。
 赤ノパラ色回邑、オレンジ、黄色、緑、青、紫、灰色。
 三角形、四角形。五角形、六角形、ラグビーボール型。四角い立方体(キューブ)、球。

 アレックスは身のまわりにある、こうしたものの名称(ラベル)を五〇以上も理解していました。このほか、一から六の数字も理解し、その英単語を口にすることもできました。
 紙や石、木、革、さまざまな食べ物のたぐいは実際に足でもち、くちばしでくわえて固さや質感を感じるとともに、昧やにおいを確認するなど、五感をフルに使って理解をしていました。

 …石にもいろいろなものがありますが、「石」がもつ[硬い]などの複数の特徴から、石がどんなものかを理解したうえで、それを判断することができました。人間のように、ものをカテゴリーに分けて理解することがヨウムにも可能であることを、この事実ははっきり認識していました。

疑似餌をつかって漁をする

魚の習性を理解したうえで、「漁」をする烏もいます。熊本市の水前寺公圃とその川辺に暮らすササゴイは、昆虫類などの生き餌のほか、さまざまなものを疑似餌(ぎじえ)として水面に落とし、餌とまちがえて水面近くまで上がってきた魚を捕まえます。

道具をつくる文化をもつカレドニアガラス

[さまざまな動物が道具を使うが、目的に沿った道具をつくれるのは人間だけ]という観念を軽く吹き飛ばしてくれたのが、南太平洋のニューカレドニア島に棲む、カレドニアガラス。 コンパクトな体型で、脳重はおよそ七・六グラム。日本に暮らすハシボソガラスよりもひとまわり小さな脳であるにもかかわらず、道具を自作し、使いこなす実力をもちます。
 カラスの仲間は基本的に雑食ですが、高タンパクで、ほかの栄養価も高い昆虫の幼虫も好んで食べます。ある地域のカレドニアガラスは、ふたまたに分かれた木の枝をくちばしで折り枝についていた葉も、きれいに取り去ります。その結果、折り取った枝は、「フック状(鉤状)」の棒になります。
 それを穴が空いた枯れ木の中に差し入れ、中にいるカミキリムシの幼虫をひっかけて引きずり出して食べるのです。ほどよい枯れ枝が落ちていたら、袷ってそのまま、あるいは少し加工して使うこともあります。


カレドニアガラスの若鳥は、同じ地域に暮らす先輩ガラスの作業を見て、道具の作り方や使い方を学びます。じっくり見たあと、やりかたをイメージしながら、トライーアンド・エラーを繰り返し、道具づくりと虫取りの精度を上げていきます。
 数年後、熟練のレベルに達したガラスは、その年や前年に生まれた若いガラスに技を見せて伝える[師]となります。こうして「文化」が継承されていきます。(以上)
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