「解り合うふりにも気付かないふりをした」
その7です。
7.泡沫
この曲は・・・このアルバムの中で最も触れたくない曲というか
物凄く暗黒の匂いがする、気が違ったかのような雰囲気たっぷりの禍々しいナンバーに仕上がってて
事実こうやってレビューを書くのにも個人的には覚悟のいる曲といいますか、
時間が掛かってしまいました。
でも、その分思い入れって点に関して言えば
多分今作でも随一なんじゃないか・・・って思える、
そんな痛々しい「傷」をダイレクトにリスナーに突き刺す何一つの甘さを排除したロック
何せただただ堕落していくだけで、救われる歌詞なんて一切描かれてないですからね。それがリアルっちゅうか。
頑張れば、信じれば救われるなんて幻想に唾を吐きかけるような攻撃性と毒を含んでますけど
逆に言えば、地に足を付けて生きたい人間にはこういう音楽のが響くと思う。
何が幸せなんて人の数と同じくらい違うけど、
こういう形の「幸せ」もあるんだよ、って。そんな曲ですね。
冒頭から既にクライマックス感漂う煮え滾るようなアンサンブルに
小高芳太朗の気違○いじみたキレキレのボーカル、
そのテンションのまま
何一つ上向きにならずに終わっていく楽曲観の凄まじさと
ここ数年のランクヘッドの楽曲の中でも底抜けに暗いナンバーとして鳴ってますけど
でも、裏を返せば現実をちゃんと見ている。とも取れる歌詞や方向性にもなっていて
それが逆に前向きなのでは?だとか
一面的ではなく
多面的に考えて咀嚼する事が出来る実は懐の深い曲
本当に大人ならではの哀愁が鳴らされてるので、大人の自分はついつい感情移入しちゃうというか・・・。
【騙すなら最後までちゃんと騙して
そうしたら幸せなまま死ねるでしょ?】
のっけからこんな歌詞ですもん。
そりゃ引くわっていう。
でも・・・個人的にこれ凄く分かるんですよね。
知るって事が決して幸せだとは限らない、
騙されてた方が良かったって事も多いじゃないですか?
ぶっちゃけ、知る前であれば諦めも付いたし、余計な感情を持つ事もなかった
でも半端に知らされてしまった為に、変な後悔とか叶わない期待が付いてしまったり
本音を聞くって事の全部が全部プラスに働くとは決して限らないし思えない
それを暴くのも個人的に時折野暮に感じることもある。
主に女性の情念をイメージして描かれた歌詞だそうですが(ライブのMCより)
でも、同じ男の自分にも突き刺さってくる部分も多い歌詞になっていて
聴いてると何が一番幸せなのか?ってそっと考えてしまう
そんな曲で
だからこそこうやってレビューを書くのにもある種の気合が要る曲なんですけどね(笑
真実を知って幻滅するなら、いっそ騙されたままで幸せに死にたい。
それが正しいのか間違ってるのかはともかく
そこに至るまでの紆余曲折を感じざるを得ないような歌声のシリアスさや
歌詞のよく分からないようで実はよく分かる経緯の描写といい
伊達や酔狂ではなく
本気で歌のコンセプトに徹底的に従って、感情移入して、全身全霊で情念を吐き出してるような
そんな「やりすぎ!」って思う程度には突き抜けた暗黒のエッセンスがむしろ潔く気持ち良く感じる
正にランクヘッドならではのペーソスロックに仕上がってて
気が付けば何度もリピートしてしまう
勿論朝起きたときにちょっと聴こう。ってなるような曲ではないんですけど(笑
でも、しっかり聴けばしっかりと心に爪痕を残してくれる、そういう曲だとは確実に思います。
まあ、聴けば地獄みたいな世界観が鳴ってるから、聴く方が早い曲と言えばそうなんですけど(笑
でも結局は人間なんて冒頭の詞みたいに本音隠して解り合うふりばっかしてる生き物
要するにある程度は仮面夫婦にならざるを得ない側面があるとは思うんですが
それに対して「もっと本音で!」って言ったって
そこにも限界があるのは経験済み
ならば、敢えて知らない、敢えて触れないっていうのも一つの選択肢ではあると思う
時には片目を瞑るって行為も必要になってくるんじゃないかと。っていうのが今現在感じてることですね。
聴き手は選ぶかもしんないけど、間違いなく名曲だと思います。
この曲はきっと何年経ってもコンスタントに取り出して聴くんだろうな。
大切な一曲。
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