超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ベッドフォンタウン/PaperBagLunchbox

2011-10-31 03:33:47 | 音楽(名盤レビュー)






前回は1年ぶりでしたが、今回は1ヶ月ぶりの名盤レビューです。
時を経て自分に多大な影響を与えたと思われるアルバムを紹介するコーナーであります。

今回は、PaperBagLunchboxの「ベッドフォンタウン」です。





「ついさっきまであの娘の心震わせていた別れの歌も
 あっという間に あっという間さ」 (さよなら日和)


「ふらつく夜の散歩道 
 悲しい心のそばにはいつも誰もいない」

「すべてはぼくの勝手な一人
 誰かなら笑いとばせるはずの痛み
 なんて頼りない夜なんだろうか
 
 すべて忘れるまで
 ずっとそばにいてくれたあの子はいない そんな夜はどこまでも続くよ」 (ふらつく夜の)


「嵐のようにはしゃいだあとで
 何故だか妙に切なくなるんだ」 (partyはつづく)


「さみしいだけなんてうそだろ?
 楽しいだけでもうそだろ
 結構いい顔でわらう
 部屋ではひとりで何思う」 (オレンジ)


「ぼくにも何かできることを
 ぼくにもどこかいける場所を
 確かめようとしたら
 追いかけようとしたら

 すぐに消えてしまうんだけどね」 (夜明け)





いつでも元気で、精神的に健康で
いい夢を観て・・・なんて都合のいい風には出来てない自分と世界ですから
不安定な感情に弄ばれたり
どうしようもない虚無感に襲われる事も日常茶飯事な訳ですけど・・・
そんな時には劇薬のように作用する音楽です。
こういう歌は
はっきりいって本当に孤独な立ち位置にいる人にしか歌えないし、歌っても響かない。
サウンド的には浮遊感のあるアレンジとボーカルが印象的なリラックス出来るタイプの音楽なのに
詞に関して言えば
その間逆っていうか、人間の持つ不安や絶望、悲しみやルサンチマン、孤独、そういった
ある種のうめき声っていうか軋む音っていうか・・・そういったものを振り切れるまで表現した詞になってて
当然こんなものが売れたりマニア層に浸透する訳もないんですけど
その分
きっと不安定な人間や後ろ向きな人間が聴いたら
正直中毒になる可能性はめちゃめちゃ高いと思います。
癒しって言葉を使うのもあれですけど
逆にこういう言葉がヒーリングになってる感覚もあるんですよね。触れたくない部分に触れられると
泣きそうになったり、或いは素直に泣けたり・・・勿論それを初めから狙っているようなあざとさは皆無で
むしろ自然にこういう風になっちゃうんだろうな、って
人間性が高い次元で出てるのが
とても秀逸で、最高で、好きならばずっと好きで聴いていられるくらい思い入れのある音楽です。

このアルバムって
リアルタイムで聴いて、リアルタイムで好きになったんですけど
本当に心に響くようになったのって
ある程度歳食ってからなんですよね。
若い時に聴いても
ある程度感動するかな?とは思うんですけど、実際は何度も何度も聴いたり、色々な経験を積んだりして
その延長線上で聴いてみると・・・
ちょっと泣きたくなる位心に響いてしまう。
心の中の不安定な感情を全部掬われた気持ちになる。
ていうのは、これ歌ってる人そのものが不安定だし不安定な歌声って思うし、って事で
そのあまりの本音や心情の吐き出しっぷりに感動するのではないか、と。
しかも日本語で
伝わりやすい言葉で
情感たっぷりの歌声で。
やっぱりこういう音楽は、その国の言葉で聴いた方が全然強いなあ、とは感じる。
音響を組み込んだアレンジも荘厳で柔らかさもあって、様々な観点から琴線に触れてくる
そんな至高の孤独の音楽。
幸せじゃなくても
そこに救いが無くても
とってつけたような感動が無くても
それでも感動したり、泣きそうになる音楽ってなんて素晴らしいんだろう、って。
言っちゃえば、ありのままを
ありのままに描いているだけ。それなのに、でもそれがすっごく琴線を震わしてくる、っていう。
無名だし知名度無いけど
確かにこの音楽に何度も救われて来たんだな、って最近改めて聴き込んで、そんな事を思ってしまいました。
出来るだけ深夜に一人きりで、ヘッドフォンから大きな音で聴いて欲しい、そんな作品でもあります。


一押しは全曲なんですが(なんせ名盤って評価するくらいだし)
中でも詞の密度が恐ろしく濃く、虚ろなボーカルも絶品な「ふらつく夜の」、
他人とは感性が違っても必死に想いを伝えようとする様に心打たれる「5度」、
多分この中で一番情緒不安定な「オレンジ」に、
途中の轟音が壮絶な「藍時」、
唯一テンポ早めの「夜明け」の焦燥感も快感且つ沁みる、と出色の曲は多いものの
ほぼ全ての曲がミドルテンポ、バラッドなので当然若者向けではないのですが
そんな入り口の狭さを越えるくらい
心にダイレクトに来る曲がいっぱい並んでいます。神秘性も往々にしてあるので、その意味でも
他とは毛色の違う音楽にはなってて
全体的な統一感もまた素晴らしいアルバムに仕上がっています。
もう既に解散済みで
誰も知らない知名度のバンドだとは思いますが
この作品の凄まじさは機会があれば是非、って所です。あくまで個人的な評価ですけどね。





このアルバムの影響って言えば、
やっぱりこれを聴いた事で、ますます本音を出す曲を
精神にグッと迫ってくる曲を
そんな音楽をますます好きになれたかな、って気はつくづくします。
それも個人的な感性による判断でしかないのですが、このアルバムからは本音しか感じなかったので。
それが滑稽で、でも一番美しかったとも思う。





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