超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

マテリアル

2009-11-22 19:27:03 | 音楽(名盤レビュー)

久々に名盤レビューをやろうと思います。

私的な名盤レビューとしてはこれで2回目、第1回はTheピーズの「どどめをハデにくれ」でした。

今回はもう10年以上ずっと聴き続けている大切なアルバムを紹介します。
SOPHIAの「マテリアル」です。


個人的に「ALIVE」とどっちにしようかと相当迷ったけど(どちらも方向性が同じなので)、
こっちのが判りやすいかな?と思って「マテリアル」にしました。
でも「ALIVE」も大切な作品なんで、いつか取り上げたい。予定は一応、ある。



「何かに憧れて
 何かを傷つけて
 何かにムカツイて
 何かが傷ついて
 何かを奪い合い
 何かに微笑んで
 何かを失って
 涙に明け暮れて
 守ったもの  何処に置いたっけ」


という非常に虚ろな、心情の独白を延々と垂れ流しているようなナンバー「大切なもの」から始まるこのアルバム。
喪失感からのスタート、ということでこの時点で心にくるものがあります。


この作品と「ALIVE」はSOPHIAの歴史に於いて明らかに異質です。
さわやかに希望や愛を歌うSOPHIAのイメージからするとあまりにもいびつで、
全体的にささくれだっている、負の感情が目立つ作品になっています。
と、同時にシニカルさも往々にして強いですね。
嘆きながら噛み付いている、そんな印象のアルバム。
多分、世間が考えているよりもずっとコアなアルバムだと思う。


とにかく一曲一曲の個性、インパクトが強くて
蚊の鳴くような虚ろな声で絶望を真正面から歌う「航海」(多分タイトルは「後悔」とのダブルミ-ニングだと思う)
デジタル・ハードコア調でほぼ歌がない「take me away」、
明確な捨て曲として鳴らされている大胆な「言葉」、
ABメロが殆ど聴こえない(歌ってるのに)「センチメンタリアン・ラプソディ」、
最後に思いっきり叫んで終わるキツめのバラード「material of flower」・・・
と、どの曲も手が付けられないくらい振り切った方向性で鳴らされているのが特徴的。

要は、J-POP的にまともな曲がほとんどないんですよ。
よくこんなアルバム出せたなとつくづく思う。
一言で言えば「まともな曲がほとんどないアルバム」って形容がふさわしいです。長いか。

ただ、バラエティに富んでいるという感じではなくて
尖ってていびつな曲と、悲しみを直で鳴らしているような叙情性のある曲の2タイプに分かれるという、
ほぼ二極化している作品だと個人的には思います。
だから面白いというか。


中でも特に好きな曲をいくつか挙げると、


・4曲目「せめて未来だけは・・」
タイトルからしてギリギリ臭がしますが、内容もギリギリな感じで
歌詞を眺めてると凄い脈絡がないように思えるというか、これヤケクソで作ったんじゃないの?と感じてしまいます。
 しかし音に関しては、サウンドアプローチで若干ひねくれた部分を残しつつもすこぶるポップなんですよね。
いびつさとポップさが融合しているというか。
こういう曲はこの時期のSOPHIAしか作れなかったんじゃないかな。


「責任という席を目指して突き進むのさ
 座ったら 座れたなら 落ちない様重い腰上げるな」

「若い頃はどうして そんなに無茶なんだろう?
 そんな音楽聴いて 何か残るもんあんのか?」

ここら辺のフレーズが特に好きです。というか何か考えさせられる。


・7曲目「Birds eye view」
先述した悲しみと叙情性だらけ、というかそれそのものって印象の曲。
聴いてると有無を言わさず悲しい気持ちになってきます。

「笑顔の私は数える程もなかったから」

ってフレーズが印象的。

そしてこの曲と近い方向性の「Place~」もこれまた心に滲むような曲で
「つまづいて泥だらけの寂しさに震えて それでも負けないと誰が言えるだろう」という
一節は安易な応援歌に対してのアンチテーゼとも取れます。


・10曲目「beautiful」
これはこのアルバムのテーマソングとも言えそうですね。
全体的に加工されているサウンドメイクや突き抜けたメロディが光るポップな一作なんですが
その上で核心を突く様な鋭い言葉がいくつも並べられているのが素晴らしいです。
毎日を悶々と生きている人は射抜かれる可能性大なんじゃないかと。

「死にたくなる程嫌な事なんて1つもないぜ だから今日も空っぽで陽が暮れる」

の部分は、改めて秀逸だと思う。



そしてこのアルバムには自分の人生の中でも特に大切な一曲、
「黒いブーツ~oh my friend~」が収録されています。
この曲に関しては、色々と思い出がありすぎて(といっても大したことじゃないんですが)
ちょっと私の主観が強くなっちゃうかなあ、と思ってここで多くは語りませんが
多分、どういう人でも引っかかる要素が強い、
しかしサウンドアプローチ的にはひねくれた部分も持ち合わせている
普遍的な名曲だと私は思っています。
 動画サイトとかじゃなくて実際にCDで聴いてみて欲しいですね。
何かしら感じるものがある筈。なかったらごめん。



このアルバムに関して一番思ったのは、人生を失敗した、ひん曲がってしまったような、
擦り切れた人がそれでも前を向いて進んでいくような、
ボロボロのまま歩いていけるような、そういうエネルギーがあるアルバムだと思うんですよね。
擦り切れてても、ひん曲がっていてもいいじゃないか、くらいの。
そういう風に肯定してもらえるような力があると思う。
このアルバムには。


長々と語ってきましたが端的に言うとシニカルさとポップさとペーソスを混ぜ合わせて
1つのまとまりを打ち立てたというか、
要するにとっても個性的なアルバムだってことです。
個人的には相当の名盤。
 そして、これがヒット・チャートの上位に入ってたことは今考えてみると凄いことなんだなあ、って思う。
元々の人気があったにせよ、ここまで音楽性変わってよくついてこれたなー、と。
余談ですけど、精神状態が不安定な人が聴いても響くんじゃないかと思う。多分。

と言う訳で、今回はSOPHIA「マテリアル」でした。


「何を探してんだろ この俺の心とやらは 無理に掻き回す程 ナイ ナイ ナイ」(大切なもの)

私はずっとこんな感じです。
こんな歌詞から始まるアルバム、響かないはずなし。




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