ランクヘッド「青に染まる白」全曲レビューその4「潮騒」です。
4.潮騒
この曲は、メロディはポップですけど実際は重い一曲ですね。
過去に起こった忘れられない痛み、別れの記憶、後悔のビジョン、
時が経てばそんな経験も水の泡みたいにどんどんと消えていくものですけど
そんな事実だったり事象に対して逆らう一曲というか
それが痛みであろうと、苦しみあると、忘れたくない、いつまでも抱いていたい・・・という
個人的にはある意味男にしか書けない類の楽曲なんじゃないかって思いますけど。その未練に心打たれる。
特別じゃない出会い、特別じゃなかったあの日々
だからこそ、今も特別じゃないこの日常の側に誰もいないのが違和感というか
いつかひょっこりと顔を出してきてくれる、
また分かり合えるんじゃないかと
そんな淡くて情けない希望が胸の中に渦巻いて止まらないっていう冷静なようで冷静じゃない心境を
落ち着いているようで落ち着いてはいないそういう白濁した感情を歌っている曲で
それもまた経験によって青く染まってしまった心
その心の揺れ動きを描くって点では
実に今作にピッタリな曲なんじゃないかなあ・・・となんとなく感じる一曲です。
物憂げな雰囲気と、切実な心の痛みの表現が胸を刺す、後悔の果てで佇むようなセンチメンタルなナンバー。
そんな楽曲の背景を考えると更にのめり込んで聴くことが出来る秀逸な楽曲ですね。
ライブで聴くと、思った以上にダンサブルなアレンジになるのもまた面白かったなあ、と。
【僕らはいつも不満そうに笑っていた】
笑っていた、だけならば何も引っかからないところですが
「不満そうに」って表現を付け加えることによって何倍も感情移入の幅が広がるのが流石だな、って思う。
ただ笑っていただけじゃない、ただ嬉しかっただけじゃない
そこには胸の内に隠してる
言葉では言い表せない傷や痛みや黒さもあって
純粋に笑えてた訳じゃない、何一つの不満もなく嬉しがれてた訳じゃない。
けど、笑えていた事もまた事実は事実でもあって・・・。そんな切なさの表現にグッと来る。
傘の中に二人入ると必ず濡れる部分が発生するように、
こと人間関係に関してもはみ出す部分や濡れる部分は抑え切れない訳でして
それを考えるとこういうフレーズに通常以上に感化されてしまう自分も居たりしますね。
笑ってた、でも不満もあった、けど笑えてたっていう。その痛みも感情も全部残そうと努力する曲。
あの日あの時の出来事を引き摺って、もう二度と後悔なんてしないように・・・と。
【掴んだ砂が音もなくこぼれた】
砂っていうのが実に上手く関係性を表現出来てて良いですね。
砂でしかない、形なんてあってないようなもので、絆なんてあってないようなもので。
油断してたら、ボケてる内にすぐに手の平から零れ落ちていくものだって。
本当ならばその砂が零れ落ちないように努力すれば良かったのに、
気付ければ良かったのに、
大人になれれば良かったのに、っていう。
音もなく、っていうのもある日突然前兆もなく決別が訪れるって事柄の比喩のみたいで
そんなセンチメンタルな後悔や感情を広げて浸らせるにはピッタリのフレーズだと思って。
この歌自体の目的はそんな悲しみや痛みを引き連れて歩くって事だと思うけど、
同時にそんな誰にでもある後悔や感傷の感情に浸らせてくれる
気持ちを解消させてくれる役割もあるなあ、と。
そんな風に改めて聴き込んでみて如実に感じたりしたのでした。サウンド等は随一にポップなんですが
その分「こんなにも~」の部分で哀愁を込めていたり、ただポップって形容だけでは済まない
奥深さが底辺に漂ってると感じられるような、そういう一曲です。憶えたい一曲。
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