毎度御馴染みの全曲レビュー、今回はつしまみれの「GIVING BLOOD」です。この間ツアーレポも書きました。
このアルバムは、ここ数作がきっちりコンセプトを決めてカチッと作りこまれたものだとすると
逆にノー・コンセプトだと感じる作品でして。
「献血ソング」というでっかい幹があって、その上でふり幅広くロックしてるアルバムって印象で
自由度も高けりゃ、いつも以上にポップだったり、いつも以上に自棄的だったり
ラフなロックンロールをガッツリ楽しめるアルバムで。
だからある意味素に近いのかなって思いますけど
ギャルバンだとかそういう前印象抜きに、本当に素晴らしいバンドなので
是非今作からでも良いんで少しでも広まれば、爪痕を残せれば。むっちゃ格好良いアルバムですね。では以下。
1.うつ病
一曲目から「うつ病」って・・・。その名の通り曲も普通に暗い。
側に誰もいないし
話も通じないし
だったらもうどうでもいいや、って感じの。超ヤケクソ気味。でもこういう音嫌いじゃない。
2.ソナタ・ド・アラーム
途中まではこれも同じくヤケクソ気味で、意味不明なテイストも含んでるんですけど
曲の終わり際に急にマジになるんですよね。
それまでボケーッと適当な感じの、でも鋭い音だったのに
急にポップで、グッと掴まれるメロディに変貌する、っていう。
それが泣ける気持ちに繋がる曲です。
3.フレンチトーストランデブー
「行くあてのない日々」
「油断したらセンチメンタルが 襲いくる」
息の詰まるような日常。
とにかく何をするにも苦しいし、不要な感情が付きまとう。
そんな中で、少しでも夢見たっていいじゃない的な・・・そんな雰囲気を感じます。
基本的にはポップな曲ですが、途中でいきなりアグレッシヴになるのも見逃せない所です。
4.Doing Nothing
「しくまれてるのは知ってる
たくさんレールが敷かれてるもん」
「本当に大事なことは見えないし
本当に好きなこと 知らないまんま」
「何もないことに飽きちゃった」
改めて見ても酷い歌詞・・・酷いと言うか惨めというか
でもこれが一つの現実でもある。所詮は誰かの手の平で踊らされてるだけ。
そんな生活を過ごしてる内に
本当は何がしたかったのか、とか
本当に大切なものはなに?だとか
自分の存在すら分からなくなっていく。だったらもう何もしねえ。と。
でも、これも一種の「吐き出し」なんでしょうね。陰鬱な感情は全部吐き出せ吐き出せ。なくなるまで。
5.グレープフルーツガール
でも、そんな何もない状態でも
好きな人が幸せでいれば
誰かが笑ってくれれば、それだけでいい。そんな曲。多分一番ポップで甘い曲ですね。
6.ラムシープ
どんよりした音像に加え、中々に意味不明でかつ情念的な歌詞。
前の曲がすっごく爽やかだったのに対し、一気にドロドロ感が噴出しちゃった。
でもこれも、こういう面もアルバムには必要です。
不気味な曲始まりが素敵。
7.Bryan
アメリカツアーの思い出を歌った曲。テンポも良くサクサクと聴けるロック。
ピクニックみたいなウキウキ感もあってひたすらに楽しいんだけど
この曲も2曲目同様に、最後に大サビが挿入されて
その熱量にまたもぐっと来てしまう。
ポジティブなエネルギーに満ちた曲ですね。
8.ソラタカク
勢いの良い、ポップパンク。ライブでも当然盛り上がる盛り上がる。
運動会に使っても良さそうなくらい天井知らずに明るい曲だが
それに反するように歌詞の方は切なくて。
その合致してない感じが面白い曲ですね。多少ネガなのにアガるっていう。
9.なmellow
まさか「なめろう」がロックバンドの歌詞に使われるとは・・・
流石千葉バンドですな。
地元を大切にしてるぅ!と思いきや
歌詞の方は全くの意味不明だし、サウンドも歪みまくり(笑)。
奇妙な曲だが中毒性はやたら高い。
10.猫は本当はやさしい生き物じゃない
バンドとして初めて作った曲らしい。率直に言うと、面白い!実は一度ライブで聴いてたけど
軽快なリフやセリフ調の一言で聴かせるサビやタイトルセンスも含めて
色々とアイディアに感心させられる曲。
意外にこういう曲って少ない気がする。
11.献血ソング
名曲です。
自身がバンドをやってる理由や、それで伝えたいこと
ロックバンドとしての生々しさやつしまみれの個性、色々なものが一緒くたに詰まっていて
そのどうしようもない位のむき出しの熱量に圧倒されます。いつ聴いても。
広く浅くなんて表現がクソバカバカしくなるくらい
聴いた人の心に焼きつく位の立派な一撃で
これくらいはやってくれないとな、とつくづく思った。そのくらい太くて逞しい曲ですね。
この曲も音源になる前に一度ライブで聴いていて
その時から大好きな曲でした。
自分も、文章で誰かの「血」になれたらな、と切実に思う。その為に立ち止まっている暇はないですね。
なんて、柄にもない事を思わせてくれる
改めて名曲だと思います。
表現、といっても色々な形があると思いますが
このアルバムは伝えたいことが明確で、やりたいことも明確で
そこに一切手加減は生じないんですが、だからこそ心に残る感じが凄くしていて
やっぱり振り切れてこそ表現なんだな、ってつくづく思いました。
同時にラフさとポップさも同居しているので
いつも通りのヘンテコ感だけじゃない作品、って風にきっちり進化もしてると思います。
モジャーデビュー一発目、は成功と言っていいでしょう。
これからも濃ゆい作品頼みます!ということで。 ツアーも再開されるという事で、そちらも個人的に楽しみ。
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