超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

サクラサク症候群 2巻/保志レンジ

2013-12-04 20:16:31 | 漫画(新作)





















保志レンジ「サクラサク症候群」2巻読了。






















この漫画は「少年ライバル」って言うその名の通り少年誌でやってるラブコメな訳ですけど
少年誌のラブコメと言うと基本的にヒロインが複数居て、
片想いのようでいて実は相思相愛で~ってパターンが自分の見た限りでは大半、
というかそれがある種の基本になっていて私自身そういう作品を好む趣向があるんですが
そういう「お約束」から考えるとこの漫画は随分異端に映るんですね。

まず、主人公が誰からも想われてない(笑)。
2巻の段階でもそれを貫いていたんで正直ビックリしました
片想いは片想いのままだし、かといって主人公を想ってくれる新ヒロインも現れない
あくまで景虎というヒロインに恋焦がれつつある若竹、という構図は2巻でもそのまま
そういう関係に悩みつつ迷いつつ試行錯誤しつつも
距離が縮まったり、
青春の猶予期間を疑似体験出来るような心地良い内容に仕上がっています
「実はヒロインも主人公を好きだった」「他のヒロインも主人公を好きになる」という
2大お約束をきっぱりと回避している上にその景虎自身はあくまで若竹を「最高の友達」だと思っている
男女間の友情を信じ切っているからこそなんとなく読んでて切ない気持ちになってしまう・・・
凄く話題になっている訳ではありませんが
何気にかなりのニュータイプ、稀なラブコメとして成立していると思います
青年誌とかではまた違うのかもしれませんが、少なくとも少年誌ラブコメとしてはかなり貴重な存在ですね。
だからラブゲームの行方とかではなく純粋に若竹の頑張りを応援したり
秘めた恋心の揺れを楽しむのが面白い漫画になってます
少年誌ラブコメで「このヒロイン健気だな~」って思う事は多いですが
まさか主人公に対して健気でいじらしいな~って思えるのはちょっと少ないですね
この巻では葛藤の末に叶わない恋を愚かながら選んでしまう若竹、
だからこそ少しは彼が報われる時が早めに訪れればいいなあ・・・なんて思ってしまう
物悲しくも、時折挟まれる心地良い距離感の描写に心が温かくなる漫画です
正直こういうの「も」待ってた気がする
オルタナティブだと思います。


また、この作品はそういう二人の距離感や若竹の恋心の進捗の様子以外にも
「未成熟な若者の成長」というテーマ性もあるようにはっきりと感じられました
まずちょっとおてんばが過ぎる景虎のキャラ性の時点でそれは結構感じてたんですけど(笑
でも、それ以外のサブキャラ達、美々ちゃんの共通観念に従ってしまう弱い性格、
連帯感から逃れられない選択が上手く出来ない性格の描写
スズメというこれまた未成熟故に自己中心的な行動を取ってしまう女の子、
ただただ「好き」なだけで無鉄砲な将鷹、
そして何が正解なのかも自分では分からず暗中模索を続ける迷いの胸中の若竹・・・
どのキャラも思春期の穴にハマっているようなキャラクターたちばかりなのは多分作為的なものかと思われます
二人の関係描写や各々の片想いの行方と同時に「青春の機微」も同時に描こうとしているのを感じられて
その意味でも深みを感じるような内容になってました
景虎はおてんばなだけじゃなく、親との確執も発生しましたし
そういう思春期全般のあれやこれをあまさず拾おう、という志の高さを感じます
なので、ラブコメとしての期待と同時に思春期ものとしての期待も同時に持てる所が益々好きですね
今後スズメというキャラクターがどういう変遷を遂げていくのか、
将鷹にもきっと悩みがあるだろうし
他キャラの恋愛に関しても微妙に気になってたり・・・
若竹が最終的に高校問題に関してどういう決断を下すのかも中々楽しみですし
そういう猶予期間、モラトリアムのモヤモヤだったりちょっと晴れた時の美しさだったり、
一歩一歩手探りで成長していく感覚が恐らくこの漫画のもう一つの売りなんだと個人的には思いました。

加えて、美々や将鷹の存在に良い影響を与えてもらって
若竹が辛い恋を健気に選んで、自分の「好き」を貫き通したあの結果に関しては
その事実だけでちょっと涙が出そうなくらいグッと来てしまいました
まだ面と向かっては言えない、
まだ行動に移すほどの勝手さは持てない
だけど、その気持ちを殺さずに守って、尚且つ「好き」という意思もハッキリさせて、、、という
そういう若竹がまた一つ成長出来た姿と景虎がおてんば娘から思い遣りを与えてもらって
少しは他人を思い遣れる子に変化しつつあるというこれまた一種の「成長」もまた
この巻を読んでいて確かに嬉しかった事実の一つでした
二人は今は最高の友達、
でも疎遠から心温まる友情を戻す事が出来た時点でひとつカタルシスを生む事が出来ている気もします。
二人でお忍びの勉強会や景虎の妹が邪測する事で生まれたラブコメっぽい空気も好みでしたし
今後きたるべき二人の遊び回にもまた大きな期待が懸かりますね(笑
景虎の成長に関しては前半がおてんば維持だった分
後半できちっとその片鱗を見せてくれて少し安心した部分もありました
その上である意味不穏な引きがやや気になりますが、今の二人ならきっと乗り越えられるはず。
親の相互関係など気になる要素を多々含みつつ3巻もまた相当に楽しみにしています。
今回もまた少年誌ラブコメの基本から離れた独特の内容にカタルシスもらいました。頑張れ、若竹!













それにしても、ちょっと恋愛関係?みたいに周りに邪測されると
若竹には追い風だろうなあ、って思えて少しニヤニヤしてしまいます(笑
美々ちゃんも景虎の妹もそういう役割的に貢献してやって欲しいですね。
若竹の間接的告白を思いっきり聞いてしまった美々ちゃんのシーンは可哀想だけど笑った。
若竹、不遇だけど男的には格好悪いけど、その姿には感情移入してしまいますね。ある意味カッコいいよ。




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