超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 4巻/谷川ニコ

2013-06-22 16:18:58 | 漫画(新作)

















谷川ニコ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」4巻読了。
















この4巻を読んでなぜもこっちがいとおしく感じられるのか?というのがよく分かりました
すごく・・・幼いんですよね 大人になろうといちいち背伸びしてみたり
身の丈に合わない成長をしようと頑張ったり、
ただ彼女が不幸なだけの物語でなく
実は相当に健気な漫画なんだなあ、と読んでて実直に思ってしまいました
それに加えて偉ぶってるけど実際は周りの人物に頭が上がらない立場の弱さとか
普段のモノローグが不敵な分怒られて泣いている姿がギャップ的に無性に可愛く思える
所謂美少女キャラが持っている愛される類の純真さは持ってないけれど
その分いつかの自分を見てるような、
こういうことあったかも、って思えるような人間くささが魅力的なキャラなんだな、と
だからこそもこっちの存在がいとおしく感じられるのかなって。 共体験を思わせるキャラというか。

もこっちは基本的に惨めで散々な日常を送っている訳ですけど
どのエピソードでも大体何も努力してないわけじゃなくて彼女なりに頑張ろうとはしてるんですよね
それが報われないという現実感溢れるエピソードは逆に言えば癒しに近いというか
「まあこれが現実だよねえ 笑」って自分と重ね合わせてクスクス出来る
でも、基本的に「頑張ってはいる」という事実があるからこそ
健気だなあって感じられる部分はあるし、
怠惰だなあって思う時もあるけれど(笑
憎めないいじらしさが発生するのかなあ、と思えて今巻は特にそういうエピソードが目立ってたかなと
要するにもこっちというキャラクターの良さを益々掘り下げる事に成功しているという事
本当はよわっちくて勇気もないのに粋がってしまう幼さと滑稽さ、
彼女の場合は普通なら弱点となり得るそういう部分が逆に読者から見て可愛いと思える要素なんだなあって
そんな風に真っ直ぐに彼女の事を好きになれる内容に仕上がってたのが素敵だなと思いました
この巻も思春期や学生時代を直に思い起こさせるリアリティが含まれていて、
その意味じゃ微笑ましい漫画でもあるんじゃないかなーって
友人の性事情に対して自分が子供だって感じるのも「分かるなあ」と思ったし(笑)。
これまででも随一というくらい塩梅的には抜群の一冊に仕上がってるかと。


また、サブキャラの存在も素晴らしく面白いです
母親がまず凄いしっかりしてるというか、怒る時はしっかりと怒って
もこっちを気遣う時は素直に気遣って、もこっちと違ってしゃんとしてる印象で(笑)。
そういう親子の関係的な部分でも意外と楽しめる内容になってるなあ、と思いつつ
弟とのエピソードも何気に素敵なんですよね
昔の作文だったり、
姉のミスを責めない描写だったりと
彼も彼で何だかんだ完全に嫌っちゃいない時折垣間見せる優しさが印象に残るキャラになって来た
態度だけで心の奥底では少しは好きだった気持ちも残ってるのかな~と思える隙間の提示が良いですね。

そんな家族たちに加えていよいよ性事情の進んできたゆうちゃんのカミングアウト描写が強烈だったり
またはきーちゃんのもこっちに対する態度のあからさまな変化っぷりにクスクス出来たり
もこっち以外のキャラの行動にも均等に笑えるようになってきた感覚があって
それもまたこの漫画が更に豊かになっている証拠で好印象でしたね
決してもこっちだけの漫画じゃないというか、
案外脇キャラも良い味出してるなあと素直に感じる事が出来る内容にもなってました
そういう点でもただ単に初期の延長線上でなく新しい側面を感じる事が出来て良かったですね
きーちゃんはあのまま行ったら物凄い女王様キャラになってしまうのでは・・・(笑
でも、根底には愛情があるでしょうし観心地は悪くなかったですね。
それに対するもこっちのリアクションもまた笑えました。


そういったもこっちのキャラが更に磨き上げられいじらしいと感じれるようになったポイントと
サブキャラの個性や味が要所要所で光ってたポイントが今回気に入ったんですが
最後にもう一つ書くとこの巻は単純に一話一話の完成度が高いです
冒頭の新宿に挑戦しておのぼりさん状態になる撃沈っぷりから始まって(まあ千葉とレベル違うからなあ 笑)、
ケーキネタの絶妙なオチ、マラソンネタのもこっちの厚かまし過ぎる心の発言だとか
突如襲い来る醜い過去の描写も分かるし年末の大掃除の話では
自分はサボり気味で身内が優秀~っていうのも個人的には共感出来てしまうし
そこで感じる悔しさも道理だけど確かに感じちゃうんだよねえ・・・それは良い感情でないけれど
そういう滑稽な部分も描くからこそ身近に思えて好きになれるのもまた事実
反面教師にもなり得るし(笑
それと「エデンの檻」ネタも不意打ちで吹いてしまった
でもオチはハートフルっていうのもメリハリが効いてて良かったです
クリスマス会とかの疎外感も痛い位理解出来るし、
正月ネタももこっちの幼さ全開ですっげえ楽しかったなあ(笑
ゴキを処理するネタも「そりゃそうだよね」ってズレっぷりに笑えたし
入学願書の話は堂々と忘れた事をえばるように言ってボコられる流れに悪いけどニヤニヤ
でも最後には少し温かいオチが付いて良かったなとも思う 本当のオチはゲスでしたけど(笑)。
誕生日の話はもこっちの打ちのめされっぷりが楽しかったけど、でも同時に幸せそうだなあー、とも
そしてゆうちゃんのエロさはここで完璧に極まった気がします
ある意味もこっち以上に強烈なキャラですね(笑)。

と、こんな風に上記の掘り下げの成果に加えて
一話毎の着眼点やオチ、構成がいつも以上に優れていた巻でもありました
そういう部分を踏まえて多分これまでと比べても出色の新刊に仕上がってるんじゃないかなーと
更にキャッチーになったもこっちのキャラに存在感を増した取り巻く面々、
ネタの安定感も今まで以上という満足度が非常に高い新刊でした
まだまだ楽しませてくれそうな気概を感じる事が出来たのも個人的に嬉しかったです。5巻も楽しみ。












そういえばこの作品も千葉なんですね
巻末にチーバくんが出てたのに驚いた(笑)。
前にも海浜幕張駅が出てきた事があったし地元的な意味でも良く分かるんで好きです
自分も未だに新宿は半分別世界だと思ってますから! 巻末のおまけもらしくて素敵でした。


「明日は一人で普通の日を過ごそう・・・
 苦しくないさみしい一日を過ごそう・・・」

もこっち、大好きです!