超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

さよなら絶望先生 30巻(最終巻)/久米田康治

2012-08-17 19:01:52 | 漫画(新作)






久米田康治「さよなら絶望先生」30巻読了。







これで最終巻な訳ですけど、
読み終えた今の感想としては・・・「嬉しかった」っていうのがまず一番に浮かんだのかな。
そう、嬉しかった。なんじゃそりゃ、って思われるかもしれないんだけど、とにかく嬉しかったんです。
元々長期連載の最後の最後は物語の世界観を根底から覆して終わるタイプの作家でしたけど
今回もまあそのパターンっちゃあパターンな訳で
ある意味予想通りは通り
だけど、そう分かって身構えていても驚かされた、上に、ちょっと感動もさせられた・・・という
絶妙なポイントを付いてきてるんですよね。自分が予想してた展開の一歩先を往かれちゃった感じで
それもまた嬉しかったし、そのオチに納得出来たのも嬉しかった。これはこれでアリだなって思えたんです。
要するに、何が一番嬉しかったって
今回も今回で前の連載に負けないくらい強烈なオチだった事
その上で更には前の連載に負けないくらいの感動もセットで付いてきた事
そんなハードルをきちんと越えてくれた事が嬉しかったんですよね。
間違いなく、名作だって断言出来るラストだったと思う。

基本的にハーレム漫画のラストって大体曖昧にして終わるでしょ?
でも絶望先生は全然曖昧にしてない、どころかはっきりさせて終わるのが凄いと思ったね。
ここまでスッキリ出来たハーレム作品の終わりは「ボンボン坂高校演劇部」以来かも。
しかも、その方法がまた納得出来ないようで納得出来るんですよね。
ただ単純に、
無作為に生徒を惚れさせてるように思えて
その実こんなラストにする計算があったんだ!っていう、そんな賢さを感じたハーレムエンド
更に言えばカフカちゃんの「ペンネーム」の表記とかも初期から確かに付けられていた訳でして
その辺も「改蔵」のやや唐突なエンディングとは違い
ここで繋がるか!的な
辻褄がピッタリ合っていく瞬間を目撃出来たって事で
往年の読者的にもかなり面白がれるラストになってるのもまた間違いない、詳しくは書きませんけど
その辺はやっぱり直に読んで確かめた方が良いと思ってるので。でも、何かを感じずにはいられないと思う。
無感を許さない、ショッキングだけど、どこか感動的で余韻にも浸れる最高のラスト。
ここまで読んで来て本当に良かったです。
「改蔵」の最終回も大好きで当時相当お気に入りでしたが
それに負けないくらいに素晴らしいエンディングであったと個人的には感じました。
言葉は要らないような気もしましたが、敢えて言葉にするとこうなります、ってことで。
約7年間、お疲れ様でした。今回もまた思いっきり驚かせてもらえて感謝です。


久米田康治の漫画はちゃんと終わらないこと、がステータスだったのに
ここまできれいに円満に終わってどうする(笑 
とも思うけど、
まあでも打ち切りでも人気低迷にすら当て嵌まらない純粋な完結を読めた、っていうのも
往年のファン的には感慨深いものがあるよなあ。おまけに30巻完結という
まるでサンデーの30巻ルールに則ったみたいな引き際も何気に古巣の魂を引き継いでるようだ・・・
というのは考え過ぎかもしれませんが(笑)。幸福な終わりがつくづく似合わない作者、
だけど煮え切らない状況を繰り返してちゃんとした終わりが出来るくらいに成長出来た、というのは
一つのドラマ性があって面白いし、遅咲きの地力を感じさせる実に良い着地点
この作品は確実に代表作たり得る作品になったと思いますが
ある意味試行錯誤の上で辿り着いた
多くの失敗の上に成り立ってる作品である事は間違いないとは思うので
単なるヒット作以上の価値のある大切な漫画としてこれからも引き継がれていく
新人のヒットとは全く違う価値観を携えている久米田漫画の一つの完成形として残っていく事間違いなし
逆に言えばここで金字塔を建てた分これからどうするかは未知数ですけどね(笑
案外もう好きなようにやっちゃっていいとは思ってますけど。
またラブコメも読みたいですね(笑
或いはポカポカのような冒険もの・・・は流石にないかな。何にせよ、確実に付いて行くとは思うので。

正直な話、マガジン移籍+アニメ化のコンボで人気作家になってしまった印象もあって
それがアニメ化されないとか打ち切り連発してた頃のファンからすると若干寂しくも感じたり
でも、この最終巻を読んでると
多分この人はずっとこういう漫画描くんだろうな、っていうのを
半ば確信してしまったんですよね。
だからその点ではあんまり寂しく感じる事もないよな
久米田康治はきっといつまでもひねくれて、でも最後には心に残る漫画を描いてくれるんだろう
そんな確信を得れたのも個人的には凄く嬉しかったですね。これからも猛スピードで加速していきそうですが
振り落とされずにしっかりと、昔からの読者として彼の漫画を素直に楽しんで行こうと思います。
そう思えるような最終巻でした。ありがとうございました!






やってる事は「改蔵」の延長線上でありながら、キャッチーなキャラ造詣だったり
過度にマニアックなネタの絶対数を削ったり、分かりやすいハーレム展開で入り口を広くしたりと
元々のポテンシャルに加えてそういう歩み寄る努力が実を結んだ正しい出世作!
なんだけど、最後の最後には作者らしい裏切りもあったり(笑
気付けば新規も古参も大満足の正当進化版に仕上がってましたね。その手さばきに、改めて拍手!でした。
また次回作も楽しみに待ってます。