超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ニセコイ 3巻/古味直志

2012-08-03 21:30:41 | 漫画(新作)






古味直志「ニセコイ」3巻読了。







この3巻を読んでて改めて感じた事の一つとしては、
これは完全に千棘と楽の為の物語でその筋が一切ブレてないっていう
そこが一番大きかった気がしますね。それと同時に、結構一昔前のテイストだと思うんです。
今は割と最初からある程度好意があったり、或いはもう相思相愛なのに踏み切れなかったりするパターンが多くて
それはもう世代的なものも含まれてるのかもしれないですけどこれは俺らの時代のラブコメというか
なんせ3巻の時点で、一応恋人設定(仮)で始まってるのにやっと名前呼びっていう
超が付くほどのじっくりペースなんですよね(笑)。
でもそこを小野寺さんとかつぐみとかで他の色を入れてるからこそスローって印象は持たずに
瞬間的な面白さと長期的な面白さを同時に味わう事が出来るっていうその手さばきも凄いと思う
要するに思った以上に堅実で誠実なラブコメディに仕上がってるのが好きという事で
それ考えるとやっぱメイン二人の貢献が一番大きいよなあ、と。

思えば、最近はあまりに過程を簡略化し過ぎたといいますか
これくらいのジワジワ感こそが本来のラブコメの旨みだよなあ、ってそう思う自分もいたり
益々二十代後半的にグッと来る要素ばかりの作品だと思えるんですけど
逆に言えば一周回ってこういうのが今の世代には新鮮なのかな?って
そう考えると時代が回る楽しさも感じたりしますね。
やっぱりこの漫画のタイトルが「ニセコイ」ですから、偽の恋な訳ですから
それが真実に変わっていく過程が一番楽しいんですよね。時折飽きさせない為に寄り道もしてますけど
通して読んでみると基本的にそのニセがホントに変わっていく過程を中心に、
そこだけはブレずに描いている漫画だと感じるんです。
連載では気付き難いですけど
こうやってコミックスで一気に読んでみると如何に順序を踏んで感情の変化を丁寧に描けてるかが肌で感じられて
その意味でも是非単行本で一気読みして欲しい作品ではありますね。つまみ食いなんかじゃなく
完全に千棘と楽の変化、揺れ動きを軸に描いている事が如実に分かりますから。
今回は特にそれが強めでメインをおざなりにしない古味直志の芯の強さを感じたりも出来た
まさしく「順調」って言葉の似合うオートマティックに楽しめる巻だったんじゃないかな、と。


んで改めて自分は千棘が一番好きだな、って思いましたね(笑
この子が一番人間らしいっちゅうか、多分それは感情の機微が細かく描かれてるからなんだろうけど
恋愛漫画として最もこの漫画を楽しく演出してくれてるのは間違いなく彼女ですから。
以前とは違って態度の隅々に妙な優しさや戸惑いが出てきたり
初期なら激怒してた事が抑え気味になったり
そんな心境による変化を眺めてるだけでもニヤニヤ出来るんですよねー。
それに比べると小野寺さんはやっぱり「きれいな人形」というか、「僕の理想」というか
どうにも作られた感じがして個人的にはあんまり夢中になれないんですよね。
つぐみは完全にある種の芸人ですし(笑
つぐみもつぐみでいじらしくて惚れる理由がハッキリしてるから実は千棘の次に好きなんですけど。
主人公の楽にしたって、3巻目で微妙に千棘優先だったりデレの表情があったりして
お互いツンデレ同士っていうその関係性もまた面白いです(笑)。
割とヒロインが多目な所為か、
一種のハーレム作品として扱われる事の多い今作ですけど
単行本で読めばきっとそんな感触も案外感じないんじゃないかな、って思える程度には
本筋に対しての怠惰さを感じない見事な手さばきの3巻目でした。王道っていうよりも堅実なんですよね。実は。

最後に、今回はなんとお色気重視の温泉回も挟まっています!!
個人的にこの回は本当大好きで「island」と同じ作者とは思えないはっちゃけっぷりを披露してるんですけど
そんなラッキースケベだったり少年心をくすぐるお色気から逃げない姿勢もまた好みですね。
今までは意図的に避けて来たんでしょうけど、
描こうと思えばこういうのだって描けるんだ、という作者の懐の深さと
あとはもう単純にギャグ的にも面白くて(笑 あくまでコメディ中心に描いているその他意の無さが好きでした。
やっぱり、PTAに喧嘩を売ってこそジャンプの漫画だってイメージが自分の中には根付いてるので
その意味でも優等生漫画でない事を証明してくれた意義のある温泉回だったなと思います。
なんか、こう・・・「ありがとうございます!」って素直に感謝したくなる(笑
そんなお遊びに関しても非常に良好な新刊、大満足でした。






それにしても、トランプの時の小野寺さんの表情は近藤るるるの絵柄っぽいなあ(笑
現在のラブコメに欠けている「ジワジワ感」を良い具合に補填してくれてる実は貴重な作品かな、と。