超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ネコあね。 5巻/奈良一平

2012-08-12 03:42:49 | 漫画(新作)






奈良一平「ネコあね。」5巻読了。







読んでる間ずっと泣いてました・・・。
泣きそうになった、とか思いっきり泣いた、どころか
持続して泣き続けたっていう正直中々経験出来ないレベルの涙腺決壊っぷりですが
それはお涙頂戴で泣いたんじゃなくて、登場人物があまりにも優しすぎて泣いたんですよね。
辛い事があっても孫の前ではひたすらに笑い続けるおばあちゃんだったり
自分の居場所が他人のものになってしまった悲しみ
でも一緒にいてくれたお姉ちゃんや
物心付く前から大人の凄さを垣間見て小さな成長を遂げた銀ノ介の心情だったり
そんな彼の迷いに気付ける早瀬さんのいたわりだったり、
登場人物の優しさの一つ一つが堪らなく
心に響いて
それが涙となって思わず溢れ出してしまう・・・っていう個人的にはそんな漫画。
最早私にとってこの漫画で何も感じない事は不可能、と言える位に感情移入必至の作品になっていて
至福を超えて非現実を現実のものと捉えて夢中になってしまったくらいにのめり込んじゃった
それくらい大好きでお気に入りで、大切だって言い切れる新刊に仕上がってました。
大げさかと思われるかもしれないけど
言葉にするとこうなる、っていう。


この奈良一平って人はシンプルな作風ながら人の感情をなぞるのが上手いですわ。
他人に向かって暴言を吐いてしまった時のあの何とも言えない気持ち悪い感覚だったり
自分が別の生き物になってしまったような心地の悪さ、
人の抱えるいじらしい感情や
失った事実に対して必要以上に寂しく落ち込んでしまう気持ちだとか
見えないところで一人で泣いてしまうある種の弱さ、でも
我慢をしてまでも大丈夫であろうとする大人ならではの強さだったり
そんな感情表現のどれもがいちいち突き刺さってしまって中々心から離れてくれません
恐らくですけど、自らの経験も混ぜて描いてるんじゃないかなあ、って思えるくらい生々しくて
でも基本的にはシンプルで柔らかい作風なので過剰にリアルを強調する作品にも陥ってない
そのバランス感覚も素晴らしいなと思いつつ
何だかんだで読み手をそんな感情の渦巻きに引き込む手腕と言いますか
つまりは用意周到、バックボーンの繊細な描き込み、流れの丁寧さによって
見事に泣いたり笑ったりしてしまうっていう
構成の上手さをフルに感じれた新刊でもありました。最後の最後には背負い込んでた銀ノ介が素直になれた
そんな素朴でちょっと温かいオチが付いてたのも最後まで心地良く読めた要因だったんじゃないかと。
とにかく、何もかもが素晴らしいと思えた、何もかもが温かいって感じれた最高の5巻でした。

この先どんな結末が待ってようが
この内容だけで絶対的な安心感があるっちゅうか
それくらい磐石で読み手に寄り添った内容だったと思います。
割と「どうなる?」って想いが強かった4巻目に比べて考えると、
この5巻目は「きっと大丈夫!」って根拠を持って思えるようなそんな巻でしたね。
もっともそれが確実なんて言う気は更々ないですが
例え寿命が来たとしても
こんなに優しさに満ち溢れた日々を過ごしたんだから、絶対に後々の支えになってくれるはず。
そう信じたい、信じ切りたい、いや信じ切れる、そう断言出来る超良質な内容で
こういう漫画がある限り自分はいつまでも漫画好きでいられる
そのくらい大好きだな、
この漫画を心から信じてるんだな、と。
本当に素晴らしかったです。読めて嬉しかった。ありがとうございました。






ここまで書いといてなんですが、本当にこの漫画って「読めば分かる」漫画のトップクラスだと思うので
特に何も考えずに素直に触れるのが一番、本当に心に残る作品ってこういう漫画だと感じます。
心の底から大好きだと言える作品です。奈良一平さんどうもありがとう。