超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

2012 e.p./the band apart

2012-08-05 20:03:25 | 音楽





the band apartのニュー・シングル「2012 e.p.」を聴く。







めちゃめちゃ格好良いですね!
曲タイトルを見た時は「銀猫町1丁目」って、ZAZEN BOYSの曲か?って思わず感じちゃったんですが
内容はきっちりバンアパ節でいつもと変わらない・・・いや、いつも以上に研ぎ澄まされてる緊張感があって
久々にガッツリ攻めたな、という印象のシングルになっているんですけど
サウンド以上に日本語詞への挑戦が非常に刺激的な作品でもあって。

でも、不思議と違和感があるようでそこまで違和感を感じなかったのが個人的には驚き
なんか全然格好悪くなってないっちゅうか、
意外と合うなあ、って。
そもそも荒井さんの声って絶対に英語のが似合うと思えるような中立的なボーカルであった訳ですけど
このシングルの4曲をじっくり聴いてみて、それは単なるイメージでしかなかったんだな、って確信出来ました。
男くさいボーカルであったならば絶対に日本語のが格好良いですけど(宮本浩次や井上鉄平とか)
荒井さんの声は本当に英語にぴったりフィットする柔軟な声だったので
今回の日本語詞への転換は本当に驚きました、が
日本語だと日本語でまた違った味わいが出るんだなあという発見があって
正直これはこれでアリって思えたのが一番大きい、この作品を気持ち良く聴けた要因だと思います。
まあそもそもアンサンブルに関しては最早鉄壁と言えるくらいに隙の無いバンドですから
ここへ来ての挑戦は確かに時期と言えば時期なのかも
聴くまではどうなのかな?って不安のが大きかったですが、聴いてみると全然バッチリな出来でした。
出来れば今回だけでなく定期的に日本語詞でも歌って欲しいと思えたくらいにはね。
10年来のファン的にも推し!です。何歌ってもバンアパになるんだな、と。


「くだらない ひとりで踊ろう 世界
 つまらない この世界なら 放り出してくれ」 (「ダンシング・ジナ」一部抜粋)

で、やっぱりその詞が良いんですよね。上記の詞は相当にシンパシーを感じましたが
内容云々以前にちゃんとバンアパのアンサンブルに詞が合うように余計な熱は抑えられてて
その風景だったり、背景だったり、きちんと中立的になるよう計算されていて
本当に詞と曲が一体化した紛う事なき音楽を楽しむ事が出来る、
そのシンクロっぷりも見事な楽曲の数々で
詞だけに捉われず、
でも詞もちゃんと入ってくる
適度なバランス感覚の妙は日本語詞になっても健在と言ったところ
いやむしろ英語の場合は断片的にしか分からない訳だから真価が目に見える形で発揮されたとも言える
パッと聴いた心地は良いんだけど、歌詞カードを読み返してみると意味の重さに気付く、っていう
その何とも言えない真ん中を狙ってる感覚がやっぱり変わらずに好きですね。
何者にも染まらないオルタナティブな格好良さは今作でも健在でした。

「ダンシング・ジナ」はとても柔らかく、テンポ感も良いキャッチーな曲ですけど
詞の内容はまさしくはみだし者、周りに馴染めない人間の為の歌になってるんですよね。そこが好きです。
孤独っていうのは辛いし悲しい事ではあるけれど、孤独で救われる事も確かに存在するという
自分だけが持ってる自分を守り通さんとする芯のある名曲です。


「見つけた独自のステキを 抱きしめていたいだけ かまわないでくれ」 (同上)

この詞なんかも良いですね・・・
気持ちの悪い連帯感や安易な共通認識よりも
自分が大切にしたいのはこういう感情だったりします。
その意味でもこういう曲があって嬉しかった。
勿論、「スウェルター」の忌憚のないシンプルな格好良さも、
「銀猫町1丁目」の火花が飛び散るようなせめぎあいだけで出来てるようなアンサンブルも、
「forget me nots pt.2」のこの季節の夕暮れにフィットするような心地よさも
個人的には全部好きで所謂「全曲推し」が出来る類のシングル、
或いはミニアルバムみたいとか
そんな形容をしても許されるんじゃないか、ってくらいに充実した感触ではあったので
普段バンアパはアルバムだけ買うって方にも是非手に取って聴いてもらいたい、
それくらい面白い作品に仕上がってるんじゃないかな、と。
バンアパの奥深さ、地力、センスの良さ、そしてそこに内包されている熱さ・・・を
十二分に味わえた相当に満足出来るシングルになったと思います。秋のツアーで生で聴くのも楽しみです!






それにしても「スウェルター」「銀猫町1丁目」で顕著ですが
バンアパのアンサンブルって誰一人が欠けてもならないような一体感があるのが素晴らしいですね。
一種の共同体っていうか、その熱量もいつも以上に伝わる出来にもなってるので
是非小気味良くガツンと来るロックンロールを味わって、その後柔らかい曲でクールダウンして欲しい
そのA面B面的な感覚もまた面白くて気が利いてるなあ、と。力、入ってます!