(1)防衛費増額の財源を増税にするのか、国債にするのかで岸田首相(増税派)と自民党萩生田政調会長(国債派)とで意見が分かれている。岸田首相は国家財政赤字が1200兆円規模に膨らんで世界に類をみない借金大国になっており次世代社会に負担のツケを回すのは避けたい意向から現世代社会で負担する増税を決めた。
(2)これに対して萩生田政調会長は所属する安倍派の亡くなった安倍元首相が防衛費増額は国債発行でまかなう主張をしてきた経緯から国債発行を主張して、政府と与党自民党が対立する構図となっている。政権を巡る主導権争いも関係しているとみられている。
(3)増税派は前述のように財政赤字が1200兆円に及びこれ以上借金財政(国債)に頼ることは次世代社会に負担増を強いることになり、国際社会から健全財政の信用を失うことにつながりGDP3位の国家責任を問われることにもなる。
国債派は考えるに防衛費問題は現世代だけの問題ではなく主権、安全の未来にかかわる持続的な問題であり、現世代と次世代社会の共通問題として利益を共有する問題だとの主張だ。
(4)理論的には防衛費増額問題は現世代、次世代社会共通、共有問題として、国債で公平、平等に負担するというのが理解しやすい。しかし、国家予算の3分の1を国債に頼り、国家財政累積赤字が1200兆円に増えて財政健全化にも問題は大きく、さらに国債発行で国家財政赤字を増やすのは避ける必要はある。
(5)そういう意味、理論、財政事情からは増税派に固執する岸田首相の選択に分はある。ここまではいいが、現在社会は大型物価高が相次いで来月も大型値上が控えており国民生活に負担増が重くのしかかっており、増税実施時期は未定だが物価高にさらに増税では余程の国民の理解、協力が必要となる。
(6)防衛費増額、財源の増税は岸田首相が独自に決めて、指示に基づき自民党内で骨格が決められて、国会で議論もされずに増税で財源をまかなうことになった決定過程が問題だ。
今回の岸田首相のG7国歴訪では岸田首相はバイデン大統領に防衛政策変更、防衛費増額の方針を説明して支持を受けているが、肝心の国会審議、説明はこれからの通常国会であり、新聞社説でも「順番」が逆だとの指摘があった。国民主権国家がないがしろにされている。
(7)もちろんその前に財政支出、政策の精査、見直し、点検が必要だ。