(1)7度目の日米関税協議に訪米した赤沢担当大臣は米国政府の担当代表ベッセント財務長官とは会談できなかった。7度目のベッセント長官との会談予定もないまま訪米するというのも米国側からは日本政府の無謀、あせりが見透かされるもので、これではまともに対応してもらえない政治の未熟さを感じさせられる。
(2)報道では最近の石破首相とトランプ大統領の電話協議でも、石破首相が関税の話題を切り出すとトランプ大統領は露骨に不快感を示したといわれ、そもそも日米首脳電話会談で双方代表者を決めて日米関税協議を始めたものが7度も協議を続けてもほとんど進展(米国の意思どおり)がないことに、米国側からは突き放しの意向が強く出てきているとみられる。
(3)赤沢担当は7度も訪米しているが、経産省幹部は「ベッセント氏は関税交渉へのやる気が無い」(報道)と話し、熱意は伝わってはこないのは冒頭の無関心な対応でもよくわかる。米国としては途中協議でも日本だけ特別扱いできない発言もあり、その後は適当にあしらわれている印象だ。石破首相は日本から日本の国益を損ねてまで交渉を急ぐ必要はないなどと悠長なことを言っているが、国際政治の経験不足、理解不足がよくわかる発言だ。
(4)日本は政治力の評価は低く、輸出産業、企業は製造、販売、技術、開発で世界的評価は高い。ここは評価の低い政治よりは評価の高い輸出産業、企業に対応をまかせてみたらどうか。米国市場、米国民の日本車の人気、購入、利用は高いのだから輸入元、市場、米国民の反応をみて、輸出産業、日本企業でも厳しい貿易関税環境の中でも日本企業なら方法論を見つけ出すことも期待できるのではないか。
(5)日鉄のUSスチール買収問題でもバイデン前大統領、トランプ大統領が反対を表明しながら、日鉄が米国政府との交渉に立ちむずかしい話ながらトランプ大統領もそれなりに理解の接点を見出して日鉄のUSスチール買収計画は基本的に成功に導いた。
日本政府が前面に出ていたらどうだったのか、日米関税協議を見ているとただ混迷を繰り返したのではないかと思えてくる。
(6)企業の「したたかさ」と政治の「甘さ」の評価の違いがそのまま出ている。日本の場合は政治は遠慮して企業にまかせる方が効果的ということはある。