■チャイナという場所で、もっとも臆病なのは「最高権力者」です。「易姓革命」の歴史を有り難がる人々ですから、前政権を打ち倒した革命政権の「初代」は神にも近い人物として記録されます。ということは、王朝最後の皇帝はボロクソに書きたてられるということです。自らを「漢民族」と呼ぶ人達は、血統や人種とは無関係に、漢王朝が残した文化的遺産の末流にぶら下ってアイデンティティとしています。司馬遷が『史記』を書いてから、悪逆非道の限りを尽くす悪い王様を殺害して民を救う英雄が「革命」を起こして新王朝を立てるという構図は、後に儒教が待ち望む「天子」と皇帝が重なってしまいます。「革命」というのは西欧のレヴォルーション(支配関係の上下逆転)とはまったく違う歴史的事件です。
「革命」が起これば、未曾有の大混乱の中で全政権に関係した一族郎党が皆殺しになるばかりか、支配階層の民族自体がそっくり入れ替わる事も起きました。ですから、北方民族の騎馬民族や森林の狩猟民族が皇帝となれたのだから、日本の豊臣秀吉も皇帝の候補者になっても不当ではないことになります。まして、女真族の故地に満洲帝国が建国された時に、チャイナの地に不平不満の声など上がるはずは無く、清帝国の支配地域のほぼ全域を、漁夫の利で継承するのに成功した中華人民共和国の時代になって、「日本の侵略」が問題とされるようになったのです。
■新政権の正統性を強調する目的で前政権の悪行を詳細に記録するのが習慣となっているので、天意・天命を一身に担った新皇帝は、完全無欠の「聖人」として歴史に登場しなければなりません。そして、暴動はさまざまな原因で発生しますが、革命政権の正統性だけは不変でしたから、極端な「勝てば官軍」だけが正義を保証することになります。建国のイデオロギーが儒教であろうと、マルクス主義であろうと、無謬の聖人として皇帝は即位し、前政権が積み上げた公私に亘る「借金」を棒引きにしてくれますから、民は新しい政権の下に喜んで収まります。共産党政権が断行した農地の解放と分配は、大昔から「聖人」が行なうべき政策でした。文字を知らない人々にも知られる伝説を実現して人気を得てから、新政権は独自の政治を実施するのも繰り返された事です。共産党政権は、スターリンの真似をして強制的に農村の集団化を進めて大失敗しましたが、現政権が最期を迎えない限り、これを責め立てる声は上がりません。
■前政権を非難しながらも、実際には、秦の始皇帝が残した国家・社会インフラをそっくり受け継いだ漢王朝以来、前政権に悪口雑言を投げ付けながら、秦の万里の長城・隋の大運河・唐の西域支配・元の通商網・清の北方領土、これらが次々と継承されてチャイナは膨らみ続けたのです。チャイナに国境など存在しないのですから、折角、海に出張ってみたら石油や天然ガスが発見されたのですから、日本がごちゃごちゃ言うのは、実に不愉快なのです。ロシアなみに凶暴な態度で臨まないと、「国境」の話し合いなどする相手ではありません。バチカンは、先日亡くなったヨハネ・パウロ二世の時代になって初めて「十字軍」の所業を謝りましたが、チャイナにそんな時代がやって来ることは絶対に有りません。この点は、アメリカ合衆国とよく似た体質と言えます。そんな大国に東西から挟まれているのに、日本は「国境」に鈍感過ぎます。
■チャイナの新政権は「万歳、万歳、万万歳!」と叫ぶ人々に迎えられて永遠の繁栄を夢見ますが、絶頂期を越えると王朝に対する怨嗟の声に包まれて、ゴミのように捨てられる運命に有ります。二千五百年間続いて来たこの歴史的伝統は変わりません。それを骨身に沁(し)みて知っているのがチャイナの権力者です。常に過剰な人口と痩せた耕地に加えて、北方からの略奪に苦しみ続けたチャイナは、「中華思想」でしか統一は保てない場所です。世界の中心に位置する世界第一の文明を持つ「民族」としての自覚だけが、皇帝の地位を保証してくれます。その文明の新しい名前が「マルクス・レーニン・毛沢東主義」であった時代は、数千万人の餓死者が出ても権力は何とか持ち堪(こた)えました。しかし、看板だけの「社会主義」の時代となった後は、共産党政権の正当性には大きく動揺し始めるのは当然で、「天命が変った」のではないのか?という疑問が湧いて来るのは時間の問題です。
反体制的な秘密結社とうのが、革命史の陰の主人公ですから、現政権はこうした集団を徹底的に弾圧します。同じ穴のムジナなのですから、遣り口は知り尽くしています。田舎の宗教マニアが他愛も無い健康体操サークルが、現政権に対する不満を吸収して成長するのは許せぬ事態です。教祖が海外に逃れて活動を続けるならば、それはハワイと日本で革命の旗を上げた孫文の再来となる危険性が生まれます。チャイナの「革命」は、成功すれば壮大な歴史として記録されますが、有名無名の暴動と「革命」との間に、本質的な違いは有りません。肉体的な空腹や精神的な不満が爆発して暴動が起こり、偶然にリーダーが出現して世間受けする「大義名分」を思い付けば、暴徒が革命軍に変身するのです。暴動の理由など、何でも良いのです。成功したら、後の歴史家がきっと上手く書いてくれます。
■こうした歴史的な構図を前提としますと、万里の長城をうっかり越えて南下して目的も無くうろうろしていた大日本帝国陸軍は、革命で倒された前政権の立場に置かれているのが分かるでしょう。ですから、現政権も国民が「反日」運動をするのは基本的に大歓迎です。前政権への悪口雑言は、現政権への賛美・礼賛と同価値だからです。日本から潤沢な援助資金が入っている時には、「反米」でも構いませんが、どうも米国好きのチャイナの本音が有るせいか、1999年のユーゴスラビア誤爆事件直後の官製暴動も短期間で終息しました。しかし、文字も箸も服も盗んでいった日本などにナメラレテ堪るか!という気分は容易に共有されます。以上の要点を再確認してから、以下の記事を読んでみると、北京政府が権力中枢の「中南海」で息を潜めて怯えている様子が想像できるのではないでしょうか?
中国・北京市で9日、日本の国連安保理常任理事国入りに反対するデモが暴徒化した。日本大使館や大使公邸に投石し、日本製の自動車をひっくり返して騒いだ。市内の日本料理店や日系企業のあるオフィスビルも襲われ、ガラスを割られる被害が出た。
10日には広州で反日デモ隊が日本総領事館のあるホテルに投石した。反日運動活動家は5月4日の五四運動記念日に向けて、さらに行動を呼びかけている。
日本政府の抗議に対して、中国政府は遺憾の意を表している。だが盾を持った機動隊を配置しておきながら、暴徒化したデモ隊を排除せず、外国公館への投石をやるにまかせていたことは、明らかに警備の不手際である。
昨年夏のサッカー・アジア杯で暴徒が日本公使の乗った車を襲った時も、警備が不十分で車が壊された。共産党要人の住む中南海地区ならこんな警備はしない。
中国は、軍隊でデモ隊を鎮圧し世界から非難された1989年の天安門事件を反省して、ガス銃や盾を持った機動隊を創設した。だが、大使館前の機動隊は盾を構えるだけで動かなかった。デモ隊からみれば、警備当局が投石までは許容していると判断するだろう。これではいつまた投石騒ぎが起きるかわからない。
尖閣諸島領有権運動や日本製品不買運動の活動家があおった反日デモが、なぜ暴徒化したのか。大学地区の中関村での反日集会では学生主体の若者たち約2000人だった。ところがデモ行進が始まると、地方から出稼ぎに来ている男女の労働者が加わり約1万人に人数が増えた。群衆はデモ指揮者の指示を無視して、日本大使館に向かい投石した。
天安門事件が胡耀邦元総書記を追悼するデモから始まり、みるみる人が増え、最後は共産党の一党独裁に反対する大規模な民主化運動になったのと、一脈通じる。中国での経済活動に特有のリスクをチャイナ・リスクという。中国で民衆のデモが容易に暴徒化するというのもチャイナ・リスクのひとつだろう。今回の反日デモには、日本製品不買運動団体が加わっている。攻撃の対象は、「中国政府が批判する日本の歴史教科書を支持している」と彼らに名指しされた日本企業だ。毎日新聞 4月10日
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★旅限無・中国考察特集★
中国の反日暴動・尖閣諸島問題の背景には何が有るのか…考察してみました。
★旅限無・中国考察特集★
中国の反日暴動・尖閣諸島問題の背景には何が有るのか…考察してみました。
・チャイナの欲望a>(4/20)
・緊張の週明け(4/18)
・胡錦涛の後を誰が考えているのか(4/18)
・園田直を知っていますか? その五(4/17)
・園田直を知っていますか? その四(4/16)
・園田直を知っていますか? その参(4/16)
・園田直を知っていますか? その弐(4/15)
・園田直を知っていますか? その壱(4/15)
・「暴行事件」を見棄てる話(4/14)
・外務大臣、御用心!(4/13)
・「暴動スイッチ」ON(4/13)
・中国が謝る時(4/12)
・「中国の暴動」を考えるヒント(4/11)
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雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
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ご挨拶がおそくなりましたが、改めてTBさせていただきました。
貴ブログの内容に感嘆しながら勉強させていただいております。
尚一層のご活躍を祈念しております。
私まったくのパソコン音痴
・トラックバックの機能さえわかりませんので
ご指導くださいよろしくお願いいたします。
時間がないので後日ご挨拶いたします。
nammkha0716 様の記事とても勉強になりました
旅文字も箸も服も盗んでいった日本などにナメラレテ堪るか!には・・・(爆
また見にきます〜♪
瀕死の中国の悪あがきなのですね。
本当に、とばっちりもいいところです。
ただニュースで伝えられる知識だけで
イライラしたり、ムカムカしてる毎日。
興味深いお話、また読みに来ます。
私のブログからもTBさせていただきますね。
旅限無さんの書かれる記事はとても興味深く拝見させていただきました。勉強にもなりましたし。
日中間及び朝鮮半島との関係については改めて勉強してから記事を書きたいと思います。
そのときにもTBさせていただきますね。
これからも旅限無さんの記事を楽しみにしています。
それでは、失礼いたしました。
そして中共から見れば「打倒した王朝」に当たる台湾(中華民国)が、中共とは異なり日本と友好的であることも歴史の必然である
のかな、と思いますね。
中共が怯えているというのは同感です。もし中国国内で革命が起こったとしても、中華思想による中華帝国は不変でしょうし、清末期には、辺境地域に鈍感だったこともあり列強にモザイクにされ半植民地に成り下がった過去も反省してるであろうことから、日本にとっては容易ならざる相手ではあります。それこそ凶暴な態度で挑むべきです。
凶暴−、の節は旅限無さんの本文からちょっと借りまして、まあその、一般的なイメージの凶暴という意味ではなかったです。誤解を招いてしまいすみませんでした。
私の立場は、たとえ中国が全体的には同情に値する国だとしても、現実にベトナムやチベットを侵略し、日本や台湾を恫喝することで人民を養おうとする事など到底容認出来ないということでした。
さすがに説法がお上手です。
私の場合、最近中国の反応が愉快に思えて笑ってしまいます。ではまた、宜しくお願い致します。