旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

罪と罰を考える 其の壱

2006-04-12 12:37:05 | 社会問題・事件
■毎日、毎日、「普通に死を迎えられない」人々の事件やニュースが報道されて、地名や被害者の名前どころか、事件そのものさえもどんどん忘れてしまいます。自分の身や親族が巻き込まれたら、とても堪え切れないような酷い事件を耳にしても、いちいち我が身に引き寄せて感情移入していたら、正常な神経を維持して暮らしてなど行けませんなあ。事件を忘れた頃に、ふと小さな裁判の記事が目に留まっても、「はて、そんな事が起こったかいなあ」などとトボケた感想を持つ自分に愕然としたりもします。

2002年にJR東京駅構内で視察されたファストフード店店長、桶田順彦(まさひこ)さん(当時33歳)の両親が、加害者の大森秀一受刑者(37)(強盗殺人罪で無期懲役刑)に約8770万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は6日、約8370万円の損害賠償を命じた。秋吉仁美裁判長は「親として、被害者の成長を誰よりも喜んでいた原告の悲しみは甚大」と述べる一方、大森受刑者が法廷で遺族に直接謝罪したことを考慮し、慰謝料を減額した。……

■被害者は殺害された「当時33歳」のままで、犯人は4年間の寿命を延ばしています。当たり前の事なのですが、自分の家族がこんな人生の終り方をしたとしたら、この4年間、どんなに悲しく苦しい暮らしだったことでしょう。この事件は、警察官だった父上が涙を見せずに息子の正義感を褒めて上げていたのが印象的でした。被害者の桶田さんは学生アルバイトの時に勤務態度を高く評価されて、卒業後に正社員に採用された人だったはずです。多発するコンビニ店の万引き(そろそろこの用語をマスコミは止めたらどうでしょう?)に義憤を感じていたとの報道も有ったとの記憶も有ります。


……大森受刑者は02年7月、パンなどを万引きし、店外に出たところを桶田さんに取り押さえられたため、持っていたナイフで桶田さんの腹を刺して殺害。04年2月に最高裁で上告を棄却され、無期懲役が確定している。大森受刑者は今年2月の口頭弁論に刑務所から異例の出廷。「命がある限り償っていきた」と述べていた。

■この大森という男は、駅のコンビニを狩場か何かのように考えて、放浪生活をしていたのではなかったでしょうか?多くの目撃者が協力して直ぐに似顔絵が公開され、実の弟が連絡して出頭させた事件だったと思います。韓国から「武装スリ団」が出稼ぎに来ているそうですが、「武装万引き」というのも居るのかと驚いたものです。飲酒運転の罰則が厳しくなってから、ハリウッド映画ばりのカー・チェイスが増えて困りますが、「バレなければ良い」という風潮から「バレたら逃げる」「捕まったらトボける」「裁判でゴネる」とどんどん犯罪者の態度が悪くなっているようです。しかし、02年の夏に起こったこの事件は衝撃的でした。元気な肉体を持った30男が駅のコンビニで食糧を盗みながら当たり前のような顔をして暮らしていた事、発見されて逃走に失敗したら用意していたナイフで殺人。

■確か、300円前後の商品を盗んで人を殺したのではなかったでしょうか?「300円ぐらいなら罪は無い」と思って生きている人間と、「300円でも盗みは許せない」と思って生きている人間が最悪の出会いをしたわけです。人の命は平等に尊いのでしょうが、生きていて欲しい人が死んで……。


……大森受刑者は刑事裁判では殺意を否認。父親の清順さん(63)は「順彦と遺族のことをどう考えているのか尋ねてみたい」と思い、提訴したが、昨年9月の第1回口頭弁論では、大森受刑者の姿はなく。答弁書の提出もなかった。民事裁判は被告側の反論がないと終結してしまう。清順さんは、本人の言葉を聞けるまで裁判を続けるよう裁判長に頼む一方、出廷を促す手紙を書いた。今年2月、大森受刑者の尋問が実現。刑務所の作業で得る報酬から少しずつでも賠償することと、清順さんらに手紙を書くことを約束したが、手紙は、まだ届いていない。……4月7日 讀賣新聞

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