旅限無(りょげむ)

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気が重い民主党政権下の新年 其の弐

2011-12-16 15:09:06 | 政治
首相が「不退転の決意」を表明した消費税増税に関しても完全に後ろ向き。小沢氏側近の鈴木克昌筆頭副幹事長らが増税反対の署名活動を始めても「けしからん行動でもない」。党内には「輿石氏は内心では社会保障と税の一体改革の先送りを狙っている」との見方が強まっており、このままでは首相の足を引っ張るだけの存在になりかねない。…… 

■自分が薄氷を踏む思いで当選した輿石会長にとっては日本の国難や世界の危機などより、自分と党の選挙結果だけが気掛かりなのではないでしょうか?幸か不幸か解散の無い参議院ではありますが、総選挙で大敗を喫したら最後、次の選挙は地獄を見るのは必定ですからなあ。かつての自民党後期と同様に政策より選挙を優先する無責任で臆病な政治を続けていくと日本は政権交代しても生き残れない国だと海外からの評価が定まってしまう恐れがありましょう。財政再建や貿易問題も重要ですが、震災からの復興と原発大事故の収束以上に大事だとは思われません。まずはマイナスを埋め戻して原点から議論を始めるべきだと思うのですが、民主党は自分達の能力と資質を省みる暇もなく大問題を次々に食い荒らしては先送りして、いっぱしの政治家面をしている困った集団になっておりますぞ。


■「言うだけ番長」連敗続き-前原誠司政調会長
「考え方に隔たりがある。法案をお出しになるんでしょうから国会で協議しましょう」
15日の民主、自民、公明の3党政調会長会談で、自民党の茂木敏充政調会長はこう突き放した。8月に民自公3党幹事長が合意した子ども手当、高校無償化、農家の戸別所得補償の見直し協議はこれで決裂。平成24年度の予算関連法案成立は至難の業となった。……やはり戦犯は前原誠司政調会長だろう。政策の最高責任者なのに根回しした形跡はなく土壇場で「子どものための手当」案を提示すれば公明党も「誠意がない」と怒って当たり前だろう。…… 

■特別会計も含めて予算の大規模な見直しをすれば財源は無尽蔵に得られると大見得を切っていた藤井さんが、いつの間にやら税制調査会長に収まって古巣の財務省と手に手を取って増税路線をまっしぐら。そして単なる見世物同然の「仕分け」で現実を知り、尻尾を巻いて財源捻出を断念したら「提言的仕分け」と名称を変更して国民の目を誤魔化そうとしたのは他でもない野田ドジョウ首相御本人だったのだそうですが、名前を変えれば相手を騙せると民主党は本気で考えているのか?「子ども手当て」と「子どものための手当て」とは何がどう違うんだ?3党合意の直後にも「子ども手当ては生きている」と党のパンフレットに刷って配ったと自民・公明両党から怒られていましたが……。


「前原外し」も進みつつある。復興債の償還期限をめぐる3党協議は幹事長会談に格上げすることでやっと合意した。国会終盤では国家公務員給与削減法案修正に際し、自公案丸のみと国会延長を独断で打ち出し、現場は大混乱。「労組だけが支持者じゃない」と言い放ち、連合も激怒させた。八ツ場ダム建設の是非も混乱させたあげく「藤村修官房長官に判断を委ねたい」と丸投げ。自公幹部は「前原氏と話をしても仕方がない」と口をそろえ、輿石氏も周囲に「全体が見えないやつはダメだな」と漏らす。党内調整も与野党協議も連敗続きでは「言うだけ番長」と言われても仕方がない。…… 

■鳩山サセテイタダク元首相も「最低でも県外」「腹案がある」と言い張る裏側で、普天間基地の移転先を探す根回しも運動もしていなかった事が判明しておりますが、前原エエカッコシイ政調会長も同様の悪い癖があるようですなあ。自分が言えば何でも思い通りになると甘やかされた幼児の如く信じている節があります。民主国家の政治家を絶対主義の独裁者と混同しているようにも見えますが、鳩山サセテイタダク元首相の場合は何でも助けてくれる母親とその母親が付けてくれた大番頭が世間を甘く見る愚かな首相を作ったと推測されますが、前原エエカッコシイ政調会長の自信過剰の原因は、菅アルイミ前首相とも共通する長過ぎた野党時代に醸成された陰湿な権力志向になるのかどうか、今でも不明です。


■「雇われマダム」の悲哀-平野博文国対委員長
「私は真面目で、謙虚で、乱暴なことはしない国対委員長として有名です。そのために法案の成立率は低うございます…」
13日夜、平野博文国対委員長は民主党議員のパーティーで自虐的なジョークを飛ばしたが、先の臨時国会の法案成立率34%は平成のワースト記録だっただけに笑うに笑えない。平野氏は「法案の数が多すぎて51日間の会期では間に合わなかった」と釈明するが、要は国会対策のイロハも知らぬ素人さを自公国対に見抜かれ、翻弄されたとしか言いようがない。……党執行部で相対的地位が低く、自ら国会運営の青写真を描く権限さえ持たない……。野党国対委員長らと会談しても要求を輿石氏に伝えるだけ。自らが約束しても後にしばしば覆されるだけに野党は「雇われマダム」と見下し、腹を割って協議に応じようとしないのだ。公明国対幹部はこう哀れんだ。
「平野氏は3党幹事長会談の中身も聞かされていない。かわいそうな人だ…」
2011年12月15日 産経ニュース 

■寄り合い素人集団・民主党が抱え込んだ中空構造は日本政府の恐るべき無責任体制を生み出し、まるで先の大戦争当時の日本のように国家民族滅亡の淵を覗き込むような破局を迎えるまで、日本は立ち止まって考えることも最終的に責任を負う存在を持つ制度を作ることも出来ないのかも知れません。それが出来なければ何度、政権交代を繰り返しても、政界再編を実行しても、何も変わらずに世界が大きく変わる大波と渦の中で翻弄され続けるだけかも知れませんなあ。そろそろ年賀状に書き添える文言を考えねばならないのですが……。

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気が重い民主党政権下の新年 其の壱

2011-12-16 15:08:26 | 政治
■米国のオバマ大統領が「米国のイラクでの戦争は終わる!」と始めた大統領と同じくらい唐突で無責任に宣言してしまいましたが、アフガニスタンからも忙しく軍隊を引き上げて選挙公約を一つでも実現して再選を目指そうと必死のようであります。米国、ロシア、チャイナ、韓国などなど来年は世界が一変するような各国首脳の交代劇が予定されておりますから、今年中東諸国で起こった「アラブの春」が来年は何処に飛び火するのかと心配していましたら、露骨な不正選挙がバレてしまったロシアが一挙にキナ臭くなり始め、日本の報道では小さな扱いだったイランによる米国自慢の無人偵察機の無傷での捕獲!という大事件が起こり、これが直接の引き金となったとしか思えないタイミングでイランと取り引きする奴は米国内の銀行取り引きを制限するぞ!という強力な経済制裁法が可決された由。表向きの制裁理由はイランが核兵器を完成させてしまったら世界大戦が始まってしまうかも知れないから、というものなのですが……。

■間も無く終わる今年、日本は東日本大震災と原発大事故に襲われ、欧州統合の象徴だった共通通貨のユーロが崩壊の危機に陥って歴史的な円高が天井に張り付いたまま、とどめはタイでの大洪水で日本企業の海外生産拠点が壊滅的な被害を受けてしまうという文字通りの国難の年だったことになりましょう。しかし、最大の国難は大震災・原発事故に対して無能・無策ぶりを遺憾なく発揮して政権与党の民主党が代表・総理大臣を交代させねばならなかったという政治の不毛がすっかり根付いてしまっていることではないでしょうか?


自民党の谷垣禎一総裁は13日午前の党役員会で、野田佳彦政権の政権運営について「非常に心許ないことが明らかになってきた」と批判し、「選挙を視野におきながら、そのための準備態勢をしっかり整えていきたい」と指示した。政権への攻勢を強めると共に、早期の衆院解散・総選挙に向けた選挙準備を本格化させるよう求めたものだ。……問責決議が可決した一川保夫防衛相、山岡賢次国家公安委員長(消費者問題担当相)の2氏について「徹底的に辞任に追い込まなければいけない。それが参院の意思だ」との声が続出。2氏の更迭を求め、野田政権を追い詰める方針を確認した。
2011年12月13日 産経ニュース 

■年明け早々、谷垣総裁はベトナムやインドを訪問するのだそうですが、やはり野党暮らしは手元不如意で欧米諸国を歴訪する資金が無いようであります。税金の無駄遣いの代表だった在外公館の勘違い役人と結託した大名旅行を楽しめた昔を知る身ならば、手の平を返した外務官僚の冷たい仕打ちと屈辱的な扱いに腸(はらわた)が煮えくり返って「政権奪還」への執念を強める効果だけありそうですが、旅費が安い近場とは言え外遊などしている場合ではないでしょうに?!万が一にも自民党政権の復活を望む声が日本の何処かに残っているとしても、一川シビリアン防衛大臣や山岡マルチ公安委員長を辞職させるような小事を野党第一党の最大の任務だと勘違いしているようでは、次の総選挙までには自民党の復活を臨む声は掻き消えてしまうでしょうなあ。確かに民主党政権はあれもこれを先送りして日本をめちゃくちゃにし続けておりますが、自民党政権から受け継いだ数々の「負の遺産」が大き過ぎて寄り合い素人集団の手に余るというのが実情でしょうから、そんな巨大な宿題を作ってしまった責任を果たすために原因究明と対策提言を大急ぎで実行しない限り、年金制度を食い潰し赤字国債の山を築き、あまつさえ原発問題を隠蔽し続けた罪は放射能汚染と同じくらい簡単には消えますまいぞ。所詮は戦後復興と冷戦時代の米国追従政策を担う仕事が終わった段階で自民党は歴史的使命を終えていたのに、政権にしがみついて政党として老醜を晒し続けたのが日本の悲劇なのでありましょうが……。

■憲政史上最も愚かな首相と最も無能な首相の後を継いで、政権交代の最後の夢をつなぐために「少しはマシな首相」が登場するかと国民の半分くらいは淡い期待を持って過ごした100日余り、嗚呼、やっぱりダメだったかと年末の日本にあちこちで溜息が漏れております。


政権発足100日を経て行き詰まりを見せている野田佳彦首相。党内融和を優先させ重要案件を先送りさせても内閣支持率は下降の一途。その元凶を探ると民主党執行部のダメぶりが浮かび上がる。

■党内融和が裏目-輿石東幹事長
「党内融和の象徴」として首相から党運営を委ねられた輿石東幹事長。就任当初は「参院のドン」として君臨した自民党の青木幹雄参院議員会長ゆずりの剛腕を発揮し、小沢一郎元代表らの動きを封じながら、衆参ねじれ解消に動くのではないかと恐れられた。ところが、結果は腰砕け。日教組で培った組織偏重の手法は裏目に出てしまい、自民、公明両党は対決路線にかじを切った。先見性と決断力を疑問視する声もある。代表的なのは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加をめぐる対応。離党をちらつかせる慎重派を押さえ込めず、11月10日の政府・民主三役会議で、同日夕に予定された「参加表明」延期を首相に進言した。これを真に受けた首相は翌11日に記者会見を延期し「交渉参加に向け関係国と協議に入る」と玉虫色の表現でごまかした。結果は「決断できない首相」と印象づけ、内閣支持率は下落。輿石氏は「熟慮を重ねて慎重派に配慮した会見だった」と満足そうに語り、自らの力不足を首相に責任転嫁した罪の意識は感じられない。…… 

■先の参院選で若い対立候補に落選直前まで追い詰められて僅差で首の皮一枚つながった程度の老兵を「参院のドン」などと持ち上げる提灯記事を書いて図に乗らせたのは大手新聞社の政治記者諸兄ではなかったのか?かつての金丸信と同郷とは言っても外交・安全保障にはまったくの素人、財政も税制も専門外の輿石幹事長に政局を委ねるのが大間違いと言うものでしょう。


一川保夫防衛相と山岡賢次国家公安委員長への参院問責決議への対応も同じ。続投させれば自公との協調路線は崩れ、来年の通常国会の混乱を避けられないにもかかわらず「辞める必要はない」の一点張り。小沢氏に近い両氏のクビを切れば自らの沽券に関わると保身に走ったとしか思えない。…… 

いよいよ「検察VS小沢」の喧嘩が裁判所を舞台に裏も表も公表されつつありますから、菅アルイミ前首相や仙谷ノーコメント政策調査会長代行が政権交代が実現した最大の功労者であるのに病的に毛嫌いして干し上げ、未曾有の天災・人災に見舞われた東北地方の復興担当にもせずに座敷牢に押し込めたままにして、野田ドジョウ首相にも圧力をかけて手足を縛り、最初から経歴と資質に問題のある閣僚人事しか出来ないように追い込んでしまったのも、民主党内の「小沢嫌い」病が原因でしょう。そこにネジレ国会を乗り切る実力者に祭り上げられた輿石参院会長が木に竹を接ぐような中途半端な橋渡しをするから、さらに野田ドジョウ首相を追い詰めることになってしまいます。「党内融和」を掲げたら自分の言葉と努力で党内の壁を破っておくべきでしたなあ。まあ、民主党内には「小沢嫌い」病よりも「次はオレ」病が蔓延していて総理大臣の地位がどんどん低下しているという事情もあるのでしょうが……。

素人がやっては行けないこと 其の弐

2011-12-14 15:28:16 | 外交・世界情勢全般
■日本の次期主力戦闘機(FX)について、野田ドジョウ首相は来年早々に訪日予定のキャメロン英国首相と13日に電話で10分ほど話したそうです。次期主力戦闘機(FX)は「あらかじめ定められた選定手続きにのっとり公正かつ厳正に選定する」と言って欧州共同開発のユーロファイターを買うとも買わないとも言わなかったそうであります。「公正かつ厳正」の公正は遠い昔に政界を揺るがしたグラマン疑獄やロッキード事件を繰り返さないとの意味があるかも知れませんが、厳正の方は「あらかじめ定められて手続き」という名の責任の丸投げを意味しているようで心配です。防衛省内での選定案を取りまとめるはずの一川シビリアン大臣は舌禍事件と問責騒ぎで省内からも忌み嫌われているらしく、「今月に入ってFXの検討内容について一度も報告を受けていない」との報道があります。従って防衛大臣の頭の上を素通りして選定案は上へ上へと揚がって行くことになりましょうが、最終的に誰が決断を下すのかがさっぱり分かりません。

……米ロッキード・マーチン社製の最新鋭戦闘機F35が、金属疲労実験の結果、機体に多数の亀裂が生じるとの恐れが明らかになり、米国防総省が開発計画の見直しに乗り出した。オーストラリアやカナダではすでにF35導入計画見直しの動きが出ているほか、米国側からも日本のFX調達計画を懸念する声が出始めている。
「日本だけが(トランプのババ抜きで)ババを引く可能性があり、戦略的な過ちを犯しかねない」こう語るのは日本の防衛政策に詳しい米大手国防産業の幹部だ。オーストラリアはすでにF35の早期購入を断念し、米海軍の主力戦闘攻撃機FA18導入へシフト。F35の導入遅れで生じる“力の空白”を埋める方向にかじを切り始めた。
F35の共同開発国のカナダも「米財政削減に伴う国防費削減の行方を見極める必要がある」(マッケイ国防相)と慎重な姿勢に転じている。…… 

■自分が担当する沖縄問題に関しても「詳細は知らない」し、沖縄処分などの歴史も知らない一川シビリアン大臣のことですから、豪・加両国の動きなどまったく知らないのでしょうし、日本の防衛に必要とされる戦闘機の能力や適正価格についてどれほど勉強しているのか、はなはだ心細い限りなのであります。先代の菅アルイミ前首相はFXに関して唐突に「軍事に興味があるんだ」とか何とか言い出したことがありましたが、理系大学出身の首相でも第5世代戦闘機の使い方を理解するのは非常に困難だと思われますし、まして農林水産省出身の元官僚である一川シビリアン大臣には選定の仕事は無理というものでありましょうなあ。


「F35の生産計画を遅らせるべきだ」と主張した米海軍のベンレット中将は、国防総省で同機の開発計画を担当する。これまでも開発の遅れを懸念する声は米政府内にもあったが、直接の担当者の証言で、もはやF35の開発遅れは不可避の情勢だ。こうした中、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と英ロールス・ロイスは2日、F35の代替エンジン自費開発を断念すると発表した。「F35の機体の開発、生産スケジュールが不確実で、自費開発による利益確保に影響を及ぼしかねない」からだ。…… 

■エンジンが無くなったら超音速どころか離陸さえ出来ませんぞ!注文主の米国政府が財政赤字で青息吐息なのですから、世界的な不況と経済危機への対応で必死の軍需産業も殿様商売はしていられない御時勢なのでしょう。米国が世界最強の戦闘機を作って維持していられない時代になる予兆のようにも思える大変な事態になったものであります。日本だけが忠義面して最終的な開発コストも分からない新製品を言い値で買って恩義を売ろうと誰かさんが卑屈に考えているのだとしたら、非常に危険なことになりそうです。


オバマ政権に影響力のある「新アメリカ安全保障センター」(CNAS)の上級顧問、パトリック・クローニン氏は2日、産経新聞に「日本がF35を選択すれば、日本と日米同盟に極端な危険を引き起こす」と述べた。米国内で生産計画を遅らせるべきだとの論議が起きている中、「日本が、F35の購入を決めても米国がもろ手を挙げて喜ぶわけではなく、導入が遅れて日本政府が批判されることになっても、米国はその責任を負おうとしない」(クローニン氏)とみられるからだ。こうした懸念について、ロッキード・マーチン社は2日、「試験飛行などの結果が示す通り、開発はきわめて順調で、安全面での問題も全くない」と反論している。
2011年12月13日 産経ニュース 

■虎の子の新製品をしぶとく売り込みたい気持は分かりますが、報道を見る限りはロッキード社の説明には説得力がまったくありません。日本の防衛官僚はこんな話を鵜呑みにして「公正で厳正な選定」作業を粛々と進めているのではありますまいな?!


米国防総省がF35の調達計画を2年延長させる見通しとなり、大詰めを迎えた航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の選定作業の見直しが必至だ。米統合参謀本部副議長らがメンバーである国防調達委員会(DAB)の結果を見極めないまま、日本が年内に結論を出すことは「無計画のそしりを免れない」(日本の防衛産業関係者)ためだ。
DABは、国防予算を管理するナン・マッカーディ法の規定で設置が義務付けられており、連邦議会には当初予算比25%以上増額した計画を中止にできる権限がある。DABは来年1月の会議で、F35の2年間の開発延長を決める見通し。これを受け、国防総省が2月、統合執行運営会議を開くとともに、米空軍、海軍、海兵隊が初期運用能力を決定、実戦配備を進めていく段取りだ。こうした米国の運用見直しを待たずに日本政府がFXを選定するのは事実上不可能だ。…… 

■「当初予算比25%」という基準は日本の官僚が得意とする「小さく産んで大きく育てる」公共事業予算の扱い方とは雲泥の差の明確さを示しておりますなあ。日本の土木工事では2倍3倍は当たり前で10倍だの20倍などというトンデモない予算超過が認められていたのでした。米国製の兵器類を買う時に日本はまったく値切りもせず言い値で買ってくれる乗客だったという話もありますが、売主側の方が厳しいコスト基準を持っているというのも不思議な話ではあります。財務省の嫌がらせを避けるためだけに「清水の舞台から飛び降りる」無謀な選定などしてしまうと、同じ台詞で絶望的な大戦争を始めた大日本帝国の轍を踏みはせぬかと心配です。


米シンクタンク、新アメリカ安全保障センターのクローニン上級顧問は「米国側に不確定要素が増しており、日本のF35選定後、価格高騰や遅延が判明すれば、野田政権の選定責任が浮上する」と語っている。日本側には、仮にF35を選定する場合、
(1)DABの結果を見極めるためにFX選定を延期する
(2)F35を選定した上で、(3年間近く生じる)実戦配備までの力の空白を埋めるための措置をとる-という代替案としての“プランB”の策定が不可欠となってくる。
FX候補でもある米海軍の主力戦闘攻撃機FA18について、飛行隊長を務めたフィル・ミルズ氏は「第5世代というビジネス用語を戦闘機に持ち込むことから最新型のFA18に旧式という誤解が生じる」と指摘。欧州4カ国で共同開発したユーロファイターの英BAEシステムズは「制空能力に加え攻撃力もあり、F35に引けをとらない」と強調する。米軍はF35について「主力戦闘機として他に選択肢はない」(パネッタ国防長官)との立場。日本にも将来的な配備は不可欠だが、延期で生じる空白をどう埋めていくかが焦点だ。
2011年12月13日 産経新聞

■こんなに複雑で難しい選定作業を一川シビリアン大臣と野田ドジョウ首相が責任を負って正しく進められるのか?「誠心誠意」や「全力」ではとても足りない大仕事を今の民主党政権が出来るのか?トンデモない時にトンデモない政権と大臣が登場してしまったと、うっかり政権交代に手を貸してしまったことを後悔することが多いとはいえ、震災復興の遅滞遅延や原発事故対応の大失敗に更なる大きな汚点を憲政史上に残すことになりそうな実に嫌な予感がする師走であります。無理をせず、民主党には年内にでも政権を投げ出して欲しいのですが……。
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素人がやっては行けないこと 其の壱

2011-12-13 15:59:17 | 外交・世界情勢全般
■マスコミ各社が一斉に世論調査の結果を発表して年末商戦の様相を呈した週末だったようですが、今時、「固定電話」だけを使って掻き集めたデータにどれほど統計学的な資料価値があるのかないのか、少なくともこの20年ほどの間に爆発的に「個人」所有の携帯電話が普及している実態から類推して固定電話だけを利用している「世帯」だけを対称とした調査結果に世論動向の実態がくっきりと見えるとも思えないのですが……。それでも、参議院で問責決議が通った一川シビリアン防衛大臣に対して「早く辞任すべきだ」との回答が8割超も集まったと聞きますと、まだ旧式の世論調査にも一定の真実味が残っているような気もします。

■完全内向き「党内融和」に凝り固まっている野田ドジョウ首相にとっては世論の喧(かまびす)しい声など文字通りの馬耳東風で、世間の声より政権維持の命綱となる小沢グループの数と参院の輿石会長の御威光の方が遥かに重要なのでありましょう。そうしたドジョウ首相の胸の裡をよくよく分かっている一川シビリアン防衛大臣であるからこそ、「しっかりと私に与えられた任務を乗り越えていく中で、国民に防衛省、自衛隊ががんばっている姿を見せたい」などと臆面も無く言っていられるのでしょうなあ。少なくとも自衛隊が頑張っていることは大震災と原発事故で多くの国民が理解を深めておりますが、防衛省となりますと背広組の資質が低いのではないか?とあちこちから懸念の声が漏れております。そして何より防衛大臣には既に誰も何も期待していないのでしょうから、うっかり「与えられた任務を乗り越えて」日本の安全保障を危機に瀕するような素人仕事だけはしないで頂きたい!

■米国では12月12日の両院協議会で、12会計年度(11年10月~12年9月)の国防権限法案から在沖縄海兵隊のグアム移転経費を全額削除することが合意されてしまったそうです。米軍再編という大きな枠組みの中に世界一危険な普天間飛行場の移設問題が組み込まれているのですから、グアム移転が停滞したら計画の歯車は急停止するか逆回転してしまうかも?移設計画を根底からぶっ壊してしまった鳩山サセテイタダク元首相は、先に「辺野古以外の場所も考えろ」などと恥の上塗りでしかない妄言を吐いて、マスコミから悪い意味で注目されたことを勘違いしてしまったらしく、12月5日の講演で「首相を務めた人間として責任がある。(普天間問題には今後も)何らかの形で関わらないといけない」と御丁寧に民主党政権の安全保障政策に対する批判の火に油をかけて見せた由。「首相を務めた人間として」有りもしない影響力が残ってはいけないとの理由で政界引退を思い付きで口にしてしまい、後援会の数名に翻意を迫られたとて「やっぱり辞めるのを止めた」と自らの出処進退に関してもウソをついてしまった事も忘れて、何処からともなく吹き始めた解散風を感じて本気で自分の議席を守ろうとし始めたとしたら、世にも珍しい形で自分が作った政党から追い出される元首相の役を演じて歴史に名を残すことになるかも知れませんぞ。

■一川シビリアン防衛大臣は地雷を抱いて敵戦車のキャタピラーに襲い掛かった大日本帝国の軍人のように、「環境影響評価書」という爆弾を年内に沖縄県現地に持って行く気でいるから「乗り越えて」という表現を使ったものと考えられるのですが、これも沖縄問題の「詳細は知らない」からこそ可能な行動だと言えるでしょう。沖縄で大規模なデモや暴動が起こったら日米関係は取り返しがつかない大混乱になることを承知の上なのか、そうなった後始末は外務省に丸投げすれば済むと思っているのか、何も考えていない大臣の頭の中は誰にも分からないのかも知れませんなあ。


政府は13日、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)に、米国主導で国際共同開発中の最新鋭ステルス戦闘機F35を選定する方針を固めた。16日に安全保障会議(議長・野田佳彦首相)で正式決定し、2012年度予算案に4機分の取得費を計上。最終的に約40機(2飛行隊分)を取得する。…… 

■公務員給与の削減法案も国会議員定数削減法案も先送りして国会を閉めてしまい、増税以外は何も決められないのかと思っていたら、今後20~30年間の日本の防衛力を決定する重大なことを野田ドジョウ内閣が事務的にスケジュール通りに決めてしまいましたぞ!野田ドジョウ首相に安全保障会議の議長など務まるのかいなあ?それ以上に一川シビリアン防衛大臣は次期主力戦闘機について「詳細を知って」いるのでしょうか?一体、誰が決めたんだ?


F35は候補の3機種のうち、レーダーに探知されにくいステルス性能を備えた唯一の次世代(第5世代)戦闘機で、最新のレーダーや僚機と情報共有する「データリンクシステム」を備えている。性能面で最有力視されたが、開発が遅れ、空自が求める16年度中の納入が不安視されていた。……安全保障面での対米重視を鮮明にした形だが、実際の配備までには曲折もありそうだ。FXは老朽化したF4戦闘機の後継機。政府は初年度分の4機は完成品を輸入し、その後は可能な限り国内企業を生産に関与させたい考えだ。
2011年12月13日 産経ニュース 

■問題の3機種というのが突如選定されたF35と、F/A-18E/F スーパーホーネット・ブロックIIという馬鹿長い名前の機体と欧州製のユーロファイターなのだそうですが、国民的な議論もなければ国会でもみっちり議論した形跡が無いまま自民党政権時代からの重要な懸案事項だった機種選定が、安全保障に疎い政権と名高い現政権があっさり決めてしまった大丈夫なのでしょうか?特に一川シビリアン防衛大臣に「与えられた任務」としては荷が勝ち過ぎているのではないか?

■どうやら拙速に見える選定の裏には鬼より怖い財務省と防衛省との間に暗闘があったようなのですが……。


防衛省は次期主力戦闘機(FX)選定でF35を本命視している。しかし、米国防総省のF35調達計画が2年延長され日本への導入が遅れれば、抑止力の「空白」が生まれかねない。慎重を期すには、選定時期の先送りが選択肢となるが、これが「FX不要論」につながる懸念もある。今後の手続きは、空自が(1)性能(2)経費(3)国内企業の参加形態(4)納入後の支援態勢-で候補機を採点し、一川保夫防衛相に上申。省内の「機種選定調整会議」への諮問と政務三役会議を経て、一川氏が導入機種を決める。16日にも安全保障会議で了承を得た後、来年度予算に関連経費を盛り込む。…… 

■一川シビリアン防衛相が恐ろしいほど重要な立場に置かれているのは当然のことですが、「防衛には素人、これが本当のシビリアン・コントロール」と自称した流儀で日本の運命を左右する戦闘機の(経費はともかく)性能・国内企業の参加形態・納入後の支援態勢を正しく評価採点など出来るのでしょうか?政務三役会議も安全保障会議も政治主導など夢のまた夢の構成メンバーですから、結局は省庁間の歪で陰気な力関係で拙速に次期主力戦闘機が決まることになりそうですなあ。


候補の3機種のうち、敵のレーダーに捕捉されにくいステルス性が特徴の第5世代戦闘機はF35だけ。中国が2017年に5世代機の実戦配備を目指していることを念頭に空自にはF35導入に期待感が高い。それだけに、「今さらF35以外を導入するための説明資料を作れない」(政府高官)との声もある。…… 

■世界最強の戦闘機であるとの評判が高いのは確かなようですが、その高性能故に同盟国の日本にさえも渡せない軍事機密が満載で早くから「日本には売らない」という声が米国側から聞こえていましたし、どうやら開発実験中に高性能ゆえの不具合が見付かって開発自体が予定通りに進んでいないという曰くつきの機種でもありますから、防衛官僚の声に引きずられて素人(シビリアン)判断が下されると日本の空に大きな穴が開いてしまう心配があります。


FXは平成21年度予算から調達経費を計上する予定だったが、3年にわたり計上を見送ってきた。すでに財務省は防衛費削減のターゲットとして「FX不要論」を唱え、さらなる先送りは不要論を勢いづかせる。実際に先送りすれば、F35に配慮したことになり、ほかの2機種のメーカーが不公平だとして訴訟を起こしかねない。…… 

■小泉政権の時代、今は国会議員になっている片山さつき女史はかつては財務官僚で防衛予算を担当して「潜水艦は、冷戦構造を前提とした時代遅れの兵器である。増やす事など認めない」とシビリアン発言をして防衛予算から「ひゅうが型護衛艦」と「そうりゅう型潜水艦」1隻ずつを削ってしまった実績?がありまして、小泉チルドレンの一員として国会議員になった後も防衛問題に関しては迂闊に物が言えない立場になってしまっているとかいないとか……。民主党政権内にも安全保障に関しては決して素人(シビリアン)ではない人材が居ないわけではないのですが閣僚級には見当たらないようです。財務省の傀儡政権だと名高い野田ドジョウ内閣ですから財政再建・大増税しか考えない財務省の出鼻を挫くためにも、大急ぎで機種選定を済まさねばならない事情も分からぬではないのですが、あまりにも唐突でありましたなあ。


「透明性を確保した方法で決まる」。野田佳彦首相は12日、英保守党のハワード前党首との会談でそう述べたが、現実は、問責決議を受けた一川氏に選定を丸投げ。一川氏が導入機種について明快な説明をできるかも疑問で、防衛省幹部は「今回の選定は清水の舞台から飛び降りるようなものだ」と話す。
2011年12月13日 産経ニュース 

■こうなりますと、本当に機種選定は素人(シビリアン)流に進められて行くしかなさそうです。「透明性を確保した方法」などという官僚作文を丸暗記して英国側に発信してしまう野田ドジョウ首相にも困ったもので、前と前の前の首相と同じく世界から嘘吐き呼ばわりされてしまわないことを祈るばかりであります。

準強姦とセクハラ 

2011-12-09 14:46:56 | 社会問題・事件
■本日で強引に閉じられる国会で野田ドジョウ内閣の法案成立率は34%なのだそうです。プロ野球で打率が3割台ならば大打者なのですが、国家公務員の給与を平均7.8%引き下げる特例法案などの「自ら身を切る」重要法案のほとんどは年明けの通常国会に先送り、連立相手の国民新党と固い約束を交わしていた郵政改革法案までも一緒に見送りとなって国会では野党が一川シリビリアン防衛大臣と山岡マルチ消費者担当大臣に対する問責決議案を参議院で可決させ、参院外交防衛委員会では8日に、ヨルダン、ロシア、ベトナム、韓国との原子力協定の承認案をトンデモない原子力政策を続けていた責任を感じない自民党も協力して可決されると聞けば、野田ドジョウ内閣が青息吐息でやっと成立させた法案が3割台という数値の低さよりも中身と方向性の方がずっと心配になります。

■問責決議を突きつけられた一川シビリアン防衛大臣は、自分の歳費(月給)120万円余は平気な顔で懐に入れて大臣職手当て分の20万円ほどを返却することで責任を取ったことにしようとしているそうですが、ロクな仕事もしない民主党政権自体を仕分けして税金の無駄遣いを無くす第一歩として、自らの身を切って見せては如何でしょう?一般企業ならば顧客と市場という手強い監視がついていますから信用を失う不用意な発言をしたら即刻処分して善後策を次々に打ち出さねば生き延びられないものですが、政治家と官僚は不思議なくらいに「責任」を取らずに逃げ遂せる場合が多過ぎるようであります。そうした馴れ合い構造を壊すための政権交代だったはずなのですが、天災に世界的な経済危機も加わって本当の国難が襲い掛かって来るという時に役人天国は花盛りで、一緒に政治家も何も決めずに暢気な日々を送っているようでありますなあ。

■今年一年、あちこちで「格差」の問題が噴出して歴史は曲がり角に差し掛かっていることを証明しているのですが、日本に根深く潜んでいる格差のとても分かり易い例がマスコミに取り上げられております。法律には「格差」などあってはならないはずなのですが、日本の検察は証拠を偽造してまで国策捜査を行なって権力を濫用していたことが明らかになる中で鈴木宗男さんが仮釈放となって娑婆に戻って来たと政界もマスコミもちょっとしたお祭り騒ぎ状態のようですが、ムネオさんが冤罪事件の被害者のような扱いを受けていた同じ頃、警視庁捜査1課は、準強姦容疑で、アテネ、北京両五輪の柔道金メダリストの内柴正人さんを逮捕したのでした。男女の仲は余人には分からぬ事がありますから、事件の真相やら今後の展開はまったく分かりませんが、未成年者の飲酒が横行している事実は看過されてはなりますまいなあ。まして内柴元選手は既婚者でお子さんもいるとのことですから、大相撲の八百長事件とは違った意味で大問題となって波紋が広がって行きそうですが、今回の事件には相撲を含む運動競技界に蔓延する人権も法律も無視した強圧的な上下関係や支配関係が深く関わっている可能性が高く、準強姦罪が成立するかしないかとは別に最も広い意味での「セクハラ」犯罪が起こる危険性は高いと言えそうです。

■「教え子を泥酔させて強姦した!」とマスコミは自らの好色さを押し隠しながら面白おかしく報道を加熱させているようですが、内柴元選手の騒動を隠れ蓑にして尻に帆かけて逃げ出したもう一人のセクハラ犯人を見逃してはなりますまいぞ。


外務省は8日、現地女性職員へのセクハラ疑惑に伴い、田村義雄駐クロアチア大使を年内にも交代させる方針を固めた。同省は内部調査により、セクハラまがいの行動があったと判断した。ただ、事実関係にはあいまいな点が残っていることなどから、処分は見送るという。
 田村氏に関しては、一部週刊誌が女性職員に抱き付くなどしていたと報道。外務省幹部が田村氏に事情聴取するなど調査した結果、不明な点はあるものの、大筋でセクハラまがいの行動を確認し、「いつまでも現状を続けるわけにはいかない」(同省幹部)と結論付けた。
2011年12月8日(木) 時事通信 

■内柴セクハラ疑惑に目を奪われていた人には何の話やら、さっぱり分からないかも知れませんが『週刊ポスト』がスクープした卑劣な強制猥褻事件をさすがの外務省でも闇から闇に葬り去れなくなって大慌てで苦汁の選択をしたという恥ずかしい話であります。交代が決まる直前に『週刊ポスト』は田村大使を執拗に追求して「事実無根」という本人の発言を取っていたのは立派です。時系列を遡って事件を追ってみましょう。


財務省出身で環境省事務次官も務めた田村義雄・駐クロアチア大使(64)が現地採用のクロアチア人女性職員へセクハラ行為をしていたことが週刊ポストの報道で発覚した。今年4月、外務省では佐々江賢一郎次官が田村大使を一時召還し、内々に事情を聞いたという。だが、大使はあっさりとクロアチアに帰っていった。
省内では、「次官が大使を厳重注意して当面、改善されるか経過を見ることになった」とされている。査察官の調査で田村大使のセクハラ行為が裏付けられたにもかかわらず、身内だけで事実上、不問にしたのである。もし、東京の外国大使館に勤務する日本人女性が大使に同じ行為を受け、相手国でその事実が問題化しているにもかかわらず、大使が処分もされずに居座れば国民は屈辱に震えるはずである。邦人女性を暴行した在日米軍の兵士が日米地位協定で守られ、日本の裁判も受けずに帰国することに唇をかんできた国民には、その実感があるはずだ。…… 

■一川シビリアン防衛大臣が国会の場で「詳細は知らない」と臆面も無く国防の最高責任者としてあるまじき寝言を発して大騒ぎになっていますが、沖縄で起こった悲劇の加害者は身の丈2メートル超の変質者3人組で被害者は小学生の女の子でした。『週刊ポスト』がスクープしたセクハラ事件の加害者は元大蔵省エリート官僚の大使で被害者は貧しい現地の若い女性であります。


駐レバノン大使を経験した元外交官の天木直人氏が指摘する。
「事件の舞台が米国やフランスなど主要国であれば一発でアウトです。被害女性からセクハラ訴訟を起こされ、とうに外交問題に発展しているでしょう。クロアチアでもこれからそうなる可能性は少なくない」そのうえで、「国益より省益」の霞が関の構造的問題が外交の重大過失を招いていると分析した。
「問題は事件を起こしたのが財務省出身の大使だということです。主要国の大使など9割は外務省プロパーが務めているが、北欧や東欧の、治安や生活環境が良く、外交案件が少ない国には外務省が交流人事で他省庁に大使ポストを配分している。
次官経験者となれば実質的な天下り先です。仕事があまりないうえに、外交官特権が与えられ、給料も月額100万円以上の本俸に加え、税金が一切かからない在勤手当が月に50万~80万円も出ます。そうしたおいしいポストを与えるかわりに、財務省に在外手当など予算で便宜をはかってもらう霞が関の悪しき慣習だからクビにできない」…… 
■「月額100万円以上の本俸」の上に「無税の在勤手当が月に50万~80万円」とは驚くべき好待遇ですが、それに見合うだけの外交を展開してくれているのなら誰も文句は言わないのでしょうが……。


大使は国家の全権代表として赴任し、相手国政府との交渉や邦人保護に責任を負う。そのため米国などでは、議会の公聴会で適格性が厳しく審査され、議会の承認を得なければ任命されない。だが、日本では外交官の訓練も受けず、資質もない官僚が霞が関の天下り人事の一環でトコロテン式に任命される。
大使の給料は最高月額約120万円にボーナスが加わるうえ、天木氏の指摘のように在勤手当がつき、他省からは、「大使を2か国やれば田園調布に家が建つ」とうらやましがられる風潮さえある。田村大使のようなOB官僚は、ざっと8000万円とされる次官時代の退職金に加えて、大使を3年やれば最低でも500万円の退職金が出る。そのうえ、赴任地では日本の恥をさらし、国家に外交的損失を与えるとは言語道断だ。…… 

■ロクな仕事をしない外務省を廃止して東日本大震災の復興費用に回したらどうか?とも思ってしまいますが、諸悪の根源の天下り構造に在外公館も組み込まれているのなら、この「トコロテン式」任命システムは難攻不落の永久陣地なのでしょうなあ。


……クロアチア政府の見解を問うと、「事実関係を把握していないので対応はお答えできない」(同国外務省)と回答した。日本の外務省と田村氏の古巣の財務省はこの外交問題にどう始末をつけるのか。「本件の事実関係についてはコメントできない」(外務省報道課)
「現在は財務省の職を離れているので事実を確認する立場にない」(財務省)
本誌は田村大使を直撃したが、そのやりとりはこうだ。
――大使のセクハラが問題になっている。
「はァ、まったく事実じゃありません」
――今後も大使の仕事を続けるのか。
「(目を丸くして、一瞬口ごもり)いえいえ、もう全然、だいいち、まったく事実じゃありませんから……」つとめて平静を保つようにそう語って公用車に乗り込んだ。
だが、本誌はその後、田村大使が大使館員たちに「『週刊ポスト』の取材に気をつけるように」と指示を出したことを掴んでいる。事実でないならば、何に「気をつけろ」というのか――。
週刊ポスト2011年12月16日号 

■身請け人の外務省はノーコメントで、古巣の財務省は無関係だと言い張る。それならこの不始末の責任は誰が取るのでしょうなあ?!天下りの中でも最も美味しい「渡り」で退職金を行く先々から掠め取り、その上に非課税の在外手当てまで上積みされてこの大使様は一体、どんな大仕事をしていたのかと思ったら……。『週刊ポスト』が抉り出した天下り・渡り大使のセクハラ事件は何とも情けないものでありました。


……バルカン半島の小国・クロアチアは、古くからの親日国として知られる。日本大使館は首都ザグレブの中心地にある。4階建てルネッサンス様式の歴史ある建物だ。東日本大震災の直後、クロアチアの官公庁が集まる日本大使館周辺では政権交代を求める5000人規模のデモが行なわれていた。そのデモ隊が大使館の前を通りかかった時である。彼らは一斉に足を止め、手に持っていたろうそくに灯をともし、震災で亡くなった日本人のために黙祷を捧げた。
11月末の大使館終業直後、その玄関前で、田村義雄・駐クロアチア大使(64)は本誌直撃に顔をこわばらせた――。
田村氏の経歴は大使の中では異色といっていい。東大法学部出身で、1971年に大蔵省に入省。霞が関中枢のエリートコースを歩み、財務省関税局長まで上りつめる。それから環境省に移り、官房長、事務次官を歴任し、2008年に退官した後、2009年から現職に就いた。つまり、外務省のプロパー官僚ではない。日本の特命全権大使の中でも2人しかいない事務次官経験者という大物だ。その人物に現地採用したクロアチア人女性へのセクハラ疑惑が発覚した。…… 

■大蔵省内での事務次官レースには参加せず、ずっと格下の環境省で次官になって美味しい在外勤務になったわけですなあ。でも、大蔵省で関税の仕事をして環境省に移った人物に複雑怪奇な国際社会の情報収集や様々な工作など出来るのでしょうか?クロアチアからの密輸事件などは聞いたことはないし、環境問題よりも経済や産業などの問題が深刻な国だと思われますし、これは野田ドジョウ首相の得意とする「適材適所の人事」ではなかったのではないでしょか?日本の在外公館が官僚専用の老人福祉施設になっているのだとしたら、日本政府にに外交能力など期待できそうもありませんなあ。


実は外務省はその事実を把握しながら、ひた隠しにしているという情報を本誌は掴んだ。「大使のセクハラ」は大使館内で問題化し、外務省は現地に査察官を派遣して調査を行なっている。その報告書は佐々江賢一郎・外務省事務次官や木寺昌人・官房長らに提出されたといい、外務省局長クラスにも回覧されている。外務省幹部の一人がこう明かした。
「クロアチアは決して豊かな国とはいえないが、国民は東日本大震災で1億円もの義援金を募って被災地に送ってくれた。田村大使はそのお礼をしなければならない立場だ。だが、不行跡が相手国の政府にも伝わっており、いい印象は持たれていないと聞いている」……
被害を受けたのは昨春から大使館の事務職員として勤務する20代のクロアチア人女性のクララさん(仮名)。170センチ台半ばという長身で髪が長く、現地職員の中でもひときわ目を引く美人だ。
「大使は美人の若い子が好きなようで、採用する時から、クララさんに目をつけていたようだ。大使館勤務の職に応募してきた若い娘の写真を机に並べて、ニヤニヤしながら眺めて選んだと聞いている」大使館関係者はとんでもないというように眉をひそめて証言を続けた……。
大使の「行為」が始まったのはクララさんが勤務を始めて3日目からだった。田村大使は視察に行くのに現地人の秘書ではなく、わざわざ新人の彼女を指名して同行させ、公用車のレクサスの後部座席に並んで座らせた。そして視察の途中で彼女を抱き寄せ、強引にキスをした。
セクハラ行為はその後、次第にエスカレートしていく。車内でクララさんの足を撫で回したり、抱きついて身体を触ったりするようになったという。非常に悪質なセクハラ行為である。
だが、彼女は半年間、大使のセクハラに対して泣き寝入りを続けるしかなかった。大使館の職を辞めるわけにはいかない家庭の事情を抱えていたからだ。父親が失業中であり、兄弟を含む家族の生活がかかっていたのだという。
車内には運転手もいる。大使の強引なキスを目撃し、すぐに職員の間にウワサが広がった。彼女は現地職員たちに打ち明けたという。
「こんなことが近所に知られれば、いまの家にも住めなくなる」
我慢すべきじゃないという同僚たちに、彼女はそうクビを振った。クロアチアでは居住地域の連帯意識が強い。職を失うことが怖いだけでなく、セクハラ行為をされたことで、自分の家族の評判も落とすことになると心配したのだ。……
週刊ポスト2011年12月16日号 

■確かにクロアチアは小国でしょうが、バルカン半島の付け根に位置して旧東欧諸国やギリシアの情報を掻き集めるのには絶好の場所ではないでしょうか?アドリア海の対岸はイタリアでもありますし、EU経済危機の深層情報を集めて分析する仕事もあったのでは?貧困家庭の小娘を玩具にしている暇があったのが不思議であります。かつて、小国エストニアを舞台にして抜群の情報活動を展開した杉原千畝さんがいたことが懐かしい!まだまだ日本には税金が余っているようでありますなあ。

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捨石ごろごろ民主党 其の参

2011-12-06 15:18:07 | 政治
■瓢箪から駒が転がり出して政権与党になってしまった寄り合い所帯の民主党にとって権力の美酒はこの上も無く美味い酒であるようで、燗酒好きの野田ドジョウ首相は同じ趣味の一川シビリアン防衛相といつまでも一緒に飲み続けていたいらしく恥も外聞も無い国会答弁を繰り返している由。権力という美酒は相当にアルコール度数が高いらしく歴代民主党代表は揃いも揃って皆が酩酊状態になってマニフェストのことなどすっかり忘れて深酒を重ねているようにも見えます。総選挙でたっぷりと冷水を浴びせられれば酔いも醒めましょうが、その後の二日酔いはずっと続くのかも知れませんぞ。政権交代というのは実に悪い酒であります。

一川防衛相は衆院議員を3期務めた後、2007年の参院選石川選挙区で当選し、民主党参院政審会長などを歴任した。農水省出身の農政通として知られる。野田政権で初入閣し、9月2日には防衛相就任について、記者団に「安全保障に関しては素人だ」と発言し、波紋を呼んだ。周囲からは、「思ったことを正直に口に出してしまう性格」とされている。
昨年4月には、地元の石川県小松市で開かれた会合で党支持者の批判に「別に民主党を支援してもらわなくてもいい」と応じるなど、地元では、「舌禍」を不安視する向きもあった。
自民党の森元首相は衆院石川2区で何度も戦ったライバルだ。民主党の小沢一郎元代表が率いた新進、自由両党を経て、民主・自由両党の合併で民主党に所属した。民主党内では小沢グループに所属している。
2011年12月4日(日)11時3分 讀賣新聞 

■衆議院で3期当選したものの、選挙区の石川2区では森喜朗に連敗で重複立候補していた比例北陸信越ブロックで復活当選し続けたいわゆるゾンビ議員だった割には偉そうな態度が目立つのは世襲議員3代目という出自と25年間奉職した農林水産省で染み付いた官僚臭が原因なのか?クラッシャー小沢の脱党・新党・解党・新党騒動には「付いて行きます下駄の雪」となって寄り合い所帯の民主党に流れ着いたものの2005年(平成17年)の第44回衆議院議員総選挙では地元石川2区でやっぱり森元首相にに敗れ、この時ばかりは比例復活もできなかったようですから支持層に偏りがあるのかも知れませんなあ。仄聞しますに組閣人事の参議院枠を握る輿石参議院会長の強力な後押しで初入閣を果たした一川シビリアン防衛相は、どれほど怨嗟の声が上がっても輿石・小沢ラインという虎の尾を踏みたくない野田ドジョウ首相の臆病風に救われて首の皮一枚残して閣僚に留まっているそうであります。

■つまり小沢グループ内での古参顔と参議院議員の身分があればこその初入閣だったわけでありますが、既に反自民政権の風が吹き始めていた2007年(平成19年)の第21回参議院選挙に鞍替え出馬して自民党候補に約4千票の僅差で競り勝つという辛勝ぶりを知れば、民主党石川県連が別の候補者の擁立に失敗したことでお鉢が回って来て、政権交代の風に乗って当選した農政通の議員を選りに選って難問山積の防衛大臣に任命してしまう誰かさんの責任は重大ですぞ。輿石参議院会長の下で政策審議会長を務めていた頃に気に入られ、長年苦労を共にした友達の少ないクラッシャー小沢の援護射撃もあっての入閣となれば国民不在・政策不在は明らかでありましょう。取り返しのつかない大失敗をする前に舌禍事件が機に身を引いて貰うことが国益に叶う選択と申せましょうなあ。党内の論功行賞で短い間であっても大臣を経験したことを個人的な大事な思い出として石川県にお帰りになって余生を過ごすのが最善でしょう。何の仕事もしなかったけれど、取り敢えずはお疲れさまでした。

■一川・山岡に始まる問責決議の連発から野党は審議拒否に走り、財務省直伝の増税法案が宙吊りになる危険性が高まりそうですから、間も無く鬼より怖い財務省から陰湿な攻撃が始まって野田ドジョウ内閣は血達磨・火達磨になって国会内を転げまわりながら数々の国民負担を置き土産に文字通り黒焦げになった「捨石」となるのかも知れません。焼け焦げたドジョウなど誰も食べませんが……。


民主党の小沢一郎元代表は1日夜、都内で開かれた同党衆院議員のパーティーであいさつし、野田佳彦首相が目指す消費増税について「政権交代の原点に返り、国民の信頼に応えないといけない。国民を無視してばかにすると必ず大きな鉄ついが下されると心配している」とけん制した。小沢氏はこの後、自らを支持する中堅・若手議員の会合に出席。同席者によると、同氏は「来年は衆院選になる可能性は十分ある」との見方を示した上で、「選挙に出撃した人のほとんどは帰ってこられない。自分は特攻していく兵士を見送る指揮官にはなりたくない」と述べた。 
2011年12月1日(木)20時41分 時事通信  

■。


民主党の小沢一郎元代表は30日夜、側近の三井辨雄政調会長代理らと都内で会談し、野田佳彦首相が意欲を示す消費税増税について「いま消費税率を上げれば党が二つに割れる。政調としてどうするか、よく考えてほしい」と懸念を表明。「このまま衆院解散になれば戻ってくるのは50人ぐらいだ」とも述べた。
2011年12月1日(木)0時48分 産経新聞 

■この「(当選して)戻って来るのは50人ぐらい」との予測を聞いた時には「そんなに多く戻れるのかいなあ?」と思ったり、クラッシャー小沢の子飼いの議員に対する温情を感じたりしたものであります。歴代の党代表3人は立候補すれば必ず落選するような気がしますし、閣僚経験者も軒並み落選するのではないでしょうか?それも民主党らしいと言えなくもないのですが、一枚看板の「政権交代」を担ぎ回って政見も政策もまったく違う政治家が寄り集まって雪ダルマ式に出来上がった政党ですから、次の選挙では「政権交代」の看板は使えず、ウソ八百を書き並べた『マニフェスト』が一夜にして重い借金証文に変じて政策転換の説明をあちこちで求められるでしょうし、うっかり夢よ再びと甘い気分で選挙に立候補したら「嘘吐き」「ペテン師」呼ばわりは覚悟せねばなりますまい。怖くて近づけない沖縄はもとより、橋下維新旋風が吹き荒れる近畿地区で掻き集めた議席を守るのは至難の業でありましょう。温情溢れるクラッシャー小沢の皮算用が的中したら250以上もの「捨石」が日本全国あちこちに転がることになりますなあ。

■そうなる前に一度は大臣になって位人臣を極めた気分を是非とも味わいたい!と身の程知らずの夢を見ている人もいれば、一度座った大臣の椅子の座り心地の良さに正気を失ってしがみついて離れない人もおりましょう。玉川カルテットの名調子に「カネも要らなきゃ女も要らぬぅ~あたしゃも少し背が欲しい~」というのがありますが、「カネは要らないから大臣を続けさせてくれ!」という風潮があるようです。


一川保夫防衛相は2日午前の記者会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題に絡む田中聡前沖縄防衛局長の不適切発言に対する自らの監督責任について、給与の自主返納を含めた対応を検討していることを明らかにした。田中氏の処分とあわせて判断する。……1日の参院東日本大震災復興特別委員会で平成7年の米海兵隊員らによる少女暴行事件を「正確な中身を詳細には知ってはいない」と答弁したことについて「知ってはいたが、委員会の場で詳細に説明する事案と異なる」と弁明した。……
2011年12月2日(金)11時37分 産経新聞 

■世界一危険な普天間飛行場が恒常化するという恐ろしい可能性がシビリアン防衛相の「給与の自主返納」で消え去るのか?!他に言うことが無いから仕方なく一般的な責任の取り方を思いついたのかも知れませんが、どこまでも事態の深刻さが分かっていない大臣のようであります。大男3人が中学生を強姦したという凶悪犯罪について、「詳細は知らない」と答えた時の顔は決して「委員会の場で説明すべきことではない」などという高尚な政治的判断をしているようには見えませんでした。「こちらの方が大事だ」とブータン国王夫妻歓迎の晩餐会を欠席して駆けつけた同僚議員の集金パーティに関して国会で追求された時、謝罪する相手の名前を知っているのか?と問い詰められると間髪入れずに後ろに控えていた役人からメモを回してもらった一川シビリアン防衛相のことですから、平成7年の事件に関して本当に「詳細は知らない」まま大臣の椅子に座っていたのであったとしか思えません。「知らない」と言った時の照れ笑いのような締まらない表情も実に不快でありました。

捨石ごろごろ民主党 其の弐

2011-12-06 13:33:45 | 政治
■相変わらず反省が足りない野党第一党の自民党が、手薬煉(てぐすね)引いて待っていたとばかりに実に情けない政権奪回策を発動して民主党内の小沢グループに所属する山岡マルチ大臣と、地元の支援者の不安が的中して舌禍事件を起こした一川シビリアン防衛相に問責決議を突きつけてやる!と息巻いているようです。しかし、閣僚とはいえ今の民主党政権を考えれば、失礼ながえらちっぽけな二つの生首を斬り落として凱歌を上げてみたところで、どこからも喝采は起きず快哉の叫びも聞こえないでしょうなあ。就任直後の会見で「これから勉強します」と臆面も無く語った素人大臣を大量生産していたのは自民党のお家芸みたいなものでしたし、怪しげな団体から政治献金を受けていた閣僚だって少なくなかったのですから、上品に言えば五十歩百歩、下品な表現なら「目糞鼻糞を笑う」の類の話であります。

■そもそも1000年に一度の大災害に襲われて、100兆200兆の緊急救国予算が組めない赤字だらけの財政状況を置き土産にして政権を追われた自民党に民主党政権の稚拙な災害対応を責める資格などありませんし、沖縄の米軍基地問題に関しても民主党政権のドタバタ劇を笑っている立場ではないでしょう。世界一危険な普天間基地を辺野古に移転する計画をまとめ上げた功績を自画自賛して、ちゃぶ台返しでめちゃくちゃにした鳩山サセテイタダク政権以来の迷走に悪口雑言を浴びせてみたところで、沖縄返還時の密約問題を筆頭に自民党政権が進めた安保ただ乗り論の言い訳に沖縄を使った政策が常に正しかったとも思えませんからなあ。少なくとも今の政権よりはマシだった!などと空元気を出してみても国民は振り向いてはくれないでしょう。それにしても官僚主義丸出しの野田ドジョウ政権の血も涙もない機械的な強引さには辟易しますなあ。


……政府は辺野古移設に向けた環境影響評価書の年内提出を目指しており、関係閣僚は沖縄県側の態度を軟化させようと、入れ代わり立ち代わり沖縄を訪問している。だが、田中聡前沖縄防衛局長の不適切発言で、その努力も水の泡になろうとしている。同時並行で玄葉光一郎外相も自民党の標的にされ出した。……今月2日の衆院外務委員会。質問に立った自民党の河井克行衆院議員は……10月26日の衆院外務委での玄葉氏の答弁だった。……河井氏はひとつの疑問を抱いた。玄葉氏が同ビジョンを知っていたのなら、鳩山氏の発言を聞いて「鳩山政権ができたらこの問題で終わる」とは思わないのではないかという疑問だ。逆に、同ビジョンの内容を知らなければ、それはそれで問題ということになる。……「沖縄ビジョンが問題で、これで鳩山政権が終わると思ったのか。それなら(10月26日の答弁と)話が違う」と問いただした。この疑問に玄葉氏は……「沖縄ビジョンでそういう(県外の)方向が出されていたのは承知している。一方であのときのマニフェスト(政権公約)には県外と書いていなかった」この発言と10月26日の衆院外務委での発言を総合すると、「党の政策である沖縄ビジョンに明記していても、マニフェストに明記していなかったため、鳩山氏の発言を聞いて驚いた」ということになる。しかし、この釈明には無理がある。それでは民主党にとって沖縄ビジョンとは何だったのか。…… 

■既に国民の多くは大量にばら撒かれたマニフェストなど手元に残してはいないでしょうし、手にした時にも熟読した人はそれほど多くなかったかも知れません。斜め読みしただけの人も熱心に読んだ人もその後の民主党政治を見ていれば、書いた物であろうと口から出たものであろうと民主党の「言葉」の軽さと空疎さには呆れ果てて腹も立たなくなったいるのではないでしょうか?従って今更『マニフェスト』だの『沖縄ビジョン』だのを謝金の古証文みたいに懐から取り出して閣僚に突きつけてみたところで、なにもかもがウソだったのですから細かい文言の解釈を問われたところで痛くも痒くもない、それほど民主党政権は公約を蔑(ないがし)ろにしてしまったということでなのでありましょうなあ。


一方、首相も今月2日の外務委で「マニフェストには(県外と)書いていない」と強調し、その上で、「選挙直前に党代表(鳩山氏)が発言したわけだからそれは極めて重い」と玄葉氏を擁護した。普天間問題の迷走について玄葉氏は「党全体として責任を負っていかなければならない」、首相は「党で責任を感じなければいけない」とそろって同じ趣旨の答弁をしている。だが、その言葉に重みはない。鳩山氏には当然、問題があるが、玄葉氏と首相の発言には「鳩山氏に責任を押しつけたい」という思いがにじむからだ。沖縄ビジョンとマニフェストを都合よく使い分ける姿勢から「誠意」が伝わってこないのは筆者だけではあるまい。前沖縄防衛局長の不適切発言や、一川保夫防衛相の「(少女暴行事件の)詳細は知らない」発言で沖縄県には怒りが燃え広がっている。外務省幹部からはついにこんな声が漏れ出した。
「辺野古移設の可能性は極めて低くなった。いつまでも『辺野古に移設する』と突っ張ることはできない」
2011年12月3日 産経ニュース 

■思えば政権交代が起こった総選挙は、それまで慣用されていた「地滑り的勝利」どころではなく三つの震源域が連動してズレた東日本大震災にも似た不運な偶然が重なったな不思議な現象だったような気もします。長過ぎた自民党政治を終わらせるのには成功したものの、まさか夢見がちの素人集団が内ゲバにばかり熱心で内政も外交も停滞と混乱の極に達するとは誰も想像しなかったのでありました。大量に当選した1年生議員だけでなく当選回数だけは多い無名のベテラン議員でさえも自分の所属政党が発表した『マニフェスト』や『ビジョン』を熟読研究していなかったのではないか?と今更ながら疑ってしまう事態が頻発しております。自民党政権が米国とやっとの思いでまとめ上げた移設計画をぶっ壊してしまったのは鳩山サセテイタダク元首相個人の責任だ!と言いたいけれども言えない辛さも分かりますが、菅アルイミ首相は昨年12月17日に恐る恐る沖縄を訪問して空き缶叩いての「帰れ!」コールの大歓迎?を受けて逃げ帰って以来ほぼ1年間、首相の訪問は実現せぬまま「マニフェストに書いてない」との国会答弁が出るに至ったのでありますから、基地移設はほぼ不可能だと言えましょうなあ。

捨石ごろごろ民主党 其の壱

2011-12-04 15:06:55 | 政治
■師走に入りまして例年ならばクリスマスとお正月が近いとて、何やらそわそわ気忙しくなる中にも新しい年を迎える清新な気分が徐々に盛り上がって行く頃合なのでありますが……東日本大震災と原発大事故の被災地からぽつぽつと喪中葉書が届き始めますと、早めに用意せねばと思う年賀状に喜びの言葉を書くのも躊躇(ためら)われる重い気分が押し寄せて来るようであります。この8箇月余りの長い長い時間、日本はどうなってしまったのか?その疑問を一身に受けてしっかりと答えを出さねばならないはずの政治はどうなっているのかと思えば、国民の生命財産よりも大事な政党助成金を確保するためだけの政界再編の生臭い風が何処からともなく吹き始めているとかいないとか……。

野田佳彦首相は3日、千葉県立船橋高校の同窓生が主宰する企業経営者団体「政経倶楽部連合会」の東京例会に出席し、消費税増税と環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加、安全保障面の強化ーの3点を挙げ「不退転の覚悟で臨む」と実現に強い意欲を示した。
……久々に出席したこの日は、約15分間にわたり熱弁をふるった。しかし公邸に戻った際、一川保夫防衛相について「辞任論にはどう対処するか」と記者団から質問されても無言を貫いた。
2011年12月3日(土)20時48分 産経新聞 

■いざ政権を奪って総理大臣になってみたら、「駅前留学はノバ、駅前演説はノダ」などと下手なダジャレに乗せて気楽に出来もしない絵空事を並べて好き放題に政権批判を続けているわけにも行かず、官僚作文を一言一句間違わないように「慎重」を装って自らの政治家としての無定見が露見しないように、既に二代続けて愚かで軽率な首相を輩出してしまった崖っぷちの民主党代表としては解散総選挙を一日でも一時間でも先延ばしすることにのみ全身全霊を傾けて政権与党の旨味と快感を少しでも長く味わっていようと、内輪と国際会議ではハメを外して相変わらずの大風呂敷を広げるものの、公式の記者会見や国会の場では揚げ足を取られないように木で鼻を括ったような話しかしない野田ドジョウ首相なのであります。

■高校の同窓会では「不退転の覚悟」を熱く語った野田ドジョウ首相は同日の夕方には東京都内に戻って再び「不退転の覚悟」を披瀝していたそうですから、しばらくは「不退転の覚悟」をあちこちで愛用することになるのかも知れません。しかし、マニフェストに羅列した空手形を筆頭に、民主党政権はずっと威勢のよい話を花火のように打ち上げては引っ込める、一歩前進三歩後退を繰り返しているのですから、今更「不退転」を濫発されても「不」の字が余分でうそ臭く感じられてしまいます。退却・撤退・引退の「退」と七転八倒の「転」をくっ付けたような迷走と停滞の民主党政権の2年余りは長過ぎた春の椿事だったような気もしますなあ。


野田首相は3日夕、都内のホテルで開かれた中小企業経営者の会合に出席し、消費税率引き上げを含む社会保障・税一体改革の取りまとめや、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた協議などについて、「不退転の覚悟でしっかりやる」と述べた。……会合は非公開で行われ、首相は15分間のあいさつを行った。出席者によると、首相は当面の政策課題として、消費税率引き上げ、TPP交渉参加、安全保障の三つを挙げ、「自分の代で、捨て石になってけりをつける」などと語った。
2011年12月3日(土)20時5分 讀賣新聞 

■高校の同窓会でも15分間の熱弁だったそうですから、ほとんど同じ内容だったと思われますが、少し色合いを変えて今度は「捨石」です。民主党政権全体が巨大な捨石の山と化しているような気もしますから、その頂上に乗っかっている首相が「捨石」になって転がり落ちる前に捨石の山ががらがらと崩れ落ちるかも知れません。あちこちで新たな三点セット(税制改革・TPP・安全保障)を何がなんでも強引に推し進めるぞ!と吼えて歩いている野田ドジョウ首相ですが、既に紙くず同然ではありますが民主党の『政権交代』マニフェストを開いてみますと、どこにも「社会保障・税の一体改革」の文言は見付かりません。税金に関しては第1章「ムダづかい」の第9項に「公平で簡素な税制をつくる」と書かれておりますが「租税特別措置」の見直しばかり並んでいるだけでした。これは選挙公約だった予算の無駄遣いを一掃すれば増税は不要だ!というホラ話と同工異曲の魔法だったことが今となっては見え見え。

■TPPにしましても「マニフェスト政策各論」の第7章「外交」の第51項には「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める」と掲げてありまして、自民党政権が米国側との交渉に失敗した事実を嘲笑しつつ、自らの外交能力の低さも知らずにうっかり書いてしまった一節だったようです。さらに第52項には「アジア・太平洋諸国をはじめとして世界の国々との投資・労働や知的財産など拾い分野を含む経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の締結を積極的に推進する」とも書いてありますから、両項目の実現も出来ないまま一足飛びにアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に向けて向こう見ずな跳躍を試みようと、マニフェストには影も形もなかったTPPに参加するという大博打を打とうという話のようです。

■そして「安全保障」の入り口に横たわっているのが沖縄の普天間基地移設問題であります。しつこくマニフェストにこだわりますが第7章の51項に「日米地位協定の改定を提起し米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と書かれておりまして、鳩山政権発足以来、一度も「地位協定」に関する交渉が始まったという話は聞けず、その代わり「在日米軍基地」に関しては「国外、最低でも県外」という最終目標が唐突に首相の口から出て大騒ぎになったのでした。それ以降の経緯を野田ドジョウ首相も知っているはずなのですが……。


米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先をめぐり民主党の鳩山由紀夫元首相が「最低でも県外」と発言したことを「誤りだった」と断言した玄葉光一郎外相。だが、野田佳彦首相はこの発言を鳩山氏に謝罪し「過剰な気配り」を演出、玄葉氏も(10月)28日の記者会見で懸命に釈明するなど、腰砕けとなってしまった。発端は(10月)26日の衆院外務委員会での発言だった。
「誤りだったと思っている。あの発言を聞いて、鳩山政権ができたらこの問題で終わるのではないかと思い、現実のものになった」玄葉氏は、鳩山氏が衆院選前の平成21年7月、沖縄県内の集会で「『最低でも県外』の方向で積極的に行動したい」と発言したことに対しこう答弁した。これに激怒したのが鳩山氏サイドだ。……
「『党沖縄ビジョン2008』に『県外移設を模索』と書いてある。それを選挙で言っただけで勝手に言ったわけではない!」しかし、普天間問題は鳩山氏が「県外」にこだわったために迷走した。その反省から、首相は日米合意に基づく名護市辺野古への移設方針をぶれずに進めようとしている。にもかかわらず、首相は(10月)27日夜、鳩山氏らとの会食で玄葉氏の発言について「間違いだ。申し訳ない」と謝罪してしまった。…… 
■「模索する」というのは細大漏らさぬ情報収集に全力を注ぎ水面下で地道な根回し交渉を徹底的に進めることを意味するのが常識なのですが、鳩山サセテイタダク元首相にとっては選挙前の景気づけにリップサービスの材料にしてしまうことを意味していたようです。野党時代ならば「だったらいいなあ。ねえ、皆さん!?」と聴衆を煽って盛り上げる材料にしても良いのでしょうが、もしかしたら本当に政権交代が実現して自分が総理大臣になってしまう可能性が少しでも見えている時には言ってはならない事でしたなあ。


玄葉氏自身は(10月)28日の記者会見で、首相の謝罪について「直接聞いていない」としたものの、「『誤りだった』との認識に変わりはないか」と問われると「いずれにしても、沖縄の皆さんに大変申し訳ないというのが私の心理だ」とはぐらかしてしまった。当の鳩山氏は28日、都内でアレクサンドル・パノフ元駐日ロシア大使と会談するなど、引き続き外交での影響力発揮に意欲を示している。沖縄では鳩山氏の議員辞職を求める声が依然としてくすぶっているのだが。
2011年10月28日 産経ニュース 

■沖縄県民に愛想尽かされ、ママの金で飼い慣らしたはずの手下にも逃げられ、虎の子だったロシアとのパイプも使い物にならなくなった鳩山サセテイタダク元首相は、次の選挙に出ようと出まいと政治生命は尽きたも同然のようで、菅アルイミ前首相と揃って存在感は皆無で何処でどうしているのやら……。こうした異常な光景を見ただけでも民主党には政権担当能力はまったく無かったのだと改めて分かるのであります。勿論、この話題は直近の防衛相と高級官僚の舌禍事件との関連で引き出したものなのですが、この問題は野田ドジョウ首相が「適材適所」だと強弁する任命責任だの防衛省内の認識不足だの、あるいは一大臣や官僚の劣化などという簡単な問題ではないのではないか?という深刻な不安から始まっている話なのであります。

日本の幸福度、ブータン国王演説 其の四

2011-11-18 15:48:58 | 日記・雑学
■先の藤村官房長官の会見で言及された「携帯電話を使用した閣僚」は蓮舫大臣だったことが判明したそうです。

蓮舫行政刷新担当相が、国賓として来日中のブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会前に行なわれた立食形式のカクテルパーティーの際、携帯電話を使用していたことが分かった。複数の出席者が証言した。国王夫妻にも皇室にも礼を失する行為だといえ、自民党など野党は徹底的に追及する構えを見せている。
藤村修官房長官は17日の記者会見で、晩餐会で閣僚が携帯電話を使用したことを認めたが、誰が使用したかは明らかにしなかった。蓮舫氏は記者団の質問に一切答えなかった。……
2011年11月18日(金) 産経新聞  

■蓮舫行政刷新担当相は脱税などで逮捕歴がある男性との関係がある!と一部週刊誌が指摘しており、国会でも西田昌司議員に詰め寄られて「逮捕歴を知らなかった」と弁解しております。看板倒れの「2位では行けないのか?」仕分けで人気急落してからは、菅アルイミ内閣では「節電啓蒙」などという訳の分からないポストを与えられて震災後の混乱期に何処で何をしていたのやら、さっぱり分からなかったものでしたが、野田ドジョウ内閣では二匹目の泥鰌を狙って行政刷新担当大臣として返り咲いたものの、あまりぱっとしないようです。今回の「携帯電話の使用」疑惑でも、後で使用したことは認めたものの、失礼のないように使ったんだ!と言い張っているそうです。

■さてさて欠席四人衆の最後は細野豪志環境相であります。欠席理由について記者会見で「(地方の)首長が上京し、ゴミの広域処理問題で東日本大震災の被災地を助けてもらえないかとお願いする機会があったので、そちらを優先した」とのことです。菅アルイミ内閣がもたもたしていて震災後8箇月も経っているのに瓦礫処理が進まず現地では困り果てている実情であります。震災復興の巨大プロジェクトの絵が描けず、官僚組織も動かせないから法律も作れない。地方議会とのパイプが無いから責任の押し付け合いばかり目立って実効が上がらない。細野環境相に特別の権限と財源があるのならば上京した首長と直談判するのも結構ですが、どうせ「聞き置く」だけで民主党得意の「全力を尽くします」「万全を期します」と言って見送るだけのことならば、国賓歓迎の宮中晩餐会を欠席するのは如何なものでしょうなあ。震災復興に熱心に取り組んでいると言いたいところでしょうが、取り組み方が間違っているような気がします。まともな政府であれば行政システムがフル稼働できる仕組みと法律を作って官僚と地方に任せればよいのですから、大臣は宮中晩餐会であろうと国際会議であろうと悠々と出席できる体勢になっているでしょうに?!

■菅アルイミ前首相を手本にしているわけでもないでしょうが、あれもこれも自分で背負い込んで身動きが取れなくなるかも知れないパフォーマンス型の行動が目立つ細野環境相の足元で呆れ果てたミスが露見してしまいました。


福島市内で採取されたとみられる放射性物質を含む土壌が環境省に送られ、職員が埼玉県内の空き地に投棄した問題で、細野豪志環境相は18日、自身について今後の在任期間中の大臣給与を全額、国庫に返納するなどの処分内容を発表した。職員の上司だった前官房総務課長(17日付で異動)は国家公務員法に基づく戒告、職員は同省の規定に基づく訓告、南川秀樹事務次官と谷津龍太郎官房長を同厳重注意の各処分とした。……横光克彦副環境相と高山智司環境政務官が2カ月間2割▽南川事務次官と谷津官房長が1カ月間1割--を自主返納することを決めた。…… 

■原発事故の被災地から対応の遅い政府に対する怒りを込めて放射能汚染土壌が環境省に送り付けられ、それを役人が放射線を計測して勝手に捨ててしまったという漫画みたいな話なのですが、元々、詳細な汚染情報も出せず、迅速な除染活動も実施せず、最終処分地も決められない政府の対応が問題なのですが、法律に従って仕事をするはずの行政府の省内で「違法投棄」が行なわれてしまうというのは緊張感も危機感も欠落している証拠でしょうなあ。何とも恐ろしい話であります。こんな役所が不法投棄を取り締まれるのでしょうか?


前総務課長は東日本大震災の現地災害対策本部(仙台市)の本部長を兼任していた。細野氏は「危機管理の要の官房総務課長を現地対策本部長と兼任させた責任は私にある。また、(送付された汚染土壌には)除染について国が責任を果たしていないという福島県民の気持ちが込められている」などと処分理由を説明した。
2011年11月18日(金) 毎日新聞

■ブータンを世界的に有名にした「国民総幸福度」を今回の国王夫妻は直接日本に持ち来たったような数日間でありますが、迎えた日本の幸福度は恥ずかしくも悲しいほど低いレベルのままで、民主党政権が続く限りはますます低下して行くようで心配であります。さっさと違法状態の選挙制度を変更して日本が潰れてしまう前に総選挙をして欲しいものです。ウソやペテンではなく、幸福度を上げる真の政策を提言する政治家をしっかり選びたいものでありますなあ。
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日本の幸福度、ブータン国王演説 其の参

2011-11-18 15:48:31 | 日記・雑学
■「適材適所」で組閣したはずの野田ドジョウ内閣には不可解な疑惑が次々に浮上して国会の議論でも追及されることが多いのでありますが、残念ながら余りにもレベルが低い話ばかりで寄り合い所帯の経験不足と人材不足の恥を晒すだけで、国家百年の計とは何の関係も無い馬鹿馬鹿しい子供の口喧嘩ばかりのようです。任命責任者の野田ドジョウ首相が「適材適所なのか?」と追求される閣僚の代表が素人=シビリアン・コントロールの防衛相でありますが……。

一川保夫防衛相が16日夜、国賓として来日中のブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会を欠席し、同僚議員のパーティーで「ブータン国王が来て宮中で催し物があるが、私はこちらの方が大事だ」とあいさつしていたことが17日分かった。国王夫妻にも皇室にも礼を失する行為だといえ、自民党など野党は参院での問責決議案提出を視野に徹底追及する構え。発言は参院予算委員会でも取り上げられ、一川氏は「軽率だった。申し訳なく思い、反省している」と陳謝した。藤村修官房長官は首相官邸に一川氏を呼び「宮中行事を軽視するかの発言は軽率だ。厳に慎むように」と厳重注意した。この後、一川氏は記者団に「自分の任務はしっかりと責任を持ってやっているつもりだ」と述べ、引責辞任を否定した。…… 

■国賓のブータン国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会よりも大事なパーティというのは、三重県選出の高橋千秋参院議員が開いた政治資金集めの催し物だった由。政治家ではなく選挙屋たる面目躍如と申せましょうが、驚くべきことに主催者の橋議員は「日本・ブータン友好議員連盟副会長」という役職に就いているのだそうですぞ。自分が宮中晩餐会に招待されない小者だからと言っても、正式に招待を受けている防衛相を呼びつけて政治資金集めを手伝わせるとは言語道断!まずは「日本・ブータン友好議員連盟副会長」を謹んで辞任することから始めるべきでありましょう。実に失礼千万な話でありますからなあ。これが民主党流の外交か?!

■高橋千秋参議院議員は自身の公式ホームページでも「農業」を強調していますし、三重県農業協同組合中央会との関係が深いこともあり、農林水産省の元官僚出身の一川防衛相とも「農業」繋がりで仲がよいのかも知れません。農協やトヨタの労働組合との関係が深いと言われる橋議員が、どうして「日本・ブータン友好議員連盟副会長」になっているのでしょう?仔細は不明ながら農業技術支援の関係か、はたまた、菅第2次改造内閣で外務副大臣に就任したのが切っ掛けだったのか?もし外務副大臣時代の就任ならば東日本大震災発生の2日後3月13日夜、外務省で宿直勤務に就く直前まで外務省関連団体の20代の女性職員と酒を飲み、女性の体をあちこち触りまくったと週刊誌に書き立てられた頃の話かも?どちらにしてもブータン国民から「そんな副会長は要らない」と言われてしまいそうですなあ。


……宮中晩餐会には全閣僚が招待されたが、一川氏のほか山岡賢次国家公安委員長、川端達夫総務相、細野豪志環境相が欠席した。また、藤村氏は17日の記者会見で、晩餐会の席上で携帯電話を使用した閣僚がいたことを認めた上で「行事進行上支障を生じることのないように」と全閣僚に注意したことを明らかにした。携帯電話を使用した閣僚は特定できていないという。自民党は、他の欠席閣僚についても理由が適切だったかどうかを追及する構え。携帯電話問題についても閣僚の特定に向け、調査を始めた。
2011年11月17日(木) 産経新聞 

■改めて一川保夫防衛相の経歴を見てみますと、三重大学農学部農業土木学科卒業後、農林省入省。農林水産省災害対策室長を最後に退官して石川県議会議員(2期)、96年10月より衆議院議員(3期)、この間、農林水産委員会、国土交通委員会、議院運営委員会、国家基本政策委員会などの各理事を歴任。落選後、07年、参議院通常選挙において当選。ということです。鳩山サセテイタダク元首相が点火して爆発させてしまった沖縄基地移設問題を菅アルイミ前首相は拱手傍観の構えで先送りし、いよいよ野田ドジョウ内閣が本気で後始末しなければ日米関係が危うくなったという緊迫した状況で、どうして農業専門家が防衛相に任命されたのか?誰にも理由は分かりません。これまでも一川防衛相には数々の舌禍事件がありまして、さぞや自衛隊隊員の皆さんは腹立たしい思いを我慢していることであろうとお察し申し上げます。

■因みに雁首揃えて宮中晩餐会を欠席した山岡賢次国家公安委員長は、国会予算委員会などで集中砲火を浴びて吊るし上げられている身で「マルチを取り締まる立場の大臣の秘書官の母がマルチの会員、叔母がマルチのトップリーダーだ!」と暴露されて火達磨状態。自民党は18日午前に山岡消費者相に対する問責決議案を2011年度第3次補正予算案の関連法案成立後に参院へ提出する方針を固めた由。そして、川端達夫総務相は欠席理由を国会で追及されて「ずいぶん昔からの約束があり、調整を試みたが、どうしても昨日しかできないということで、結果として欠席することになってしまった」と意味不明の言い訳をしていたそうです。一体、何を約束していたのかこれから暴露されるでしょうが、余り格好の悪い「約束」でなければよいのですが……。細野豪志環境相については後述。


一川氏は9月2日就任に際して記者団に「私は安全保障に関して素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」と発言して批判されたが、反省の色はない。
10月15日には地元・石川県の民主党県連パーティーで「防衛省、自衛隊の仕事は私より前原誠司政調会長のほうが詳しい」と発言するなど素人ぶりはむしろエスカレートしている。
米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、10月17日に沖縄県の仲井真弘多知事と会談した際は「私も航空自衛隊小松基地を抱える石川県に生まれ育った。地元の悩みや苦労は分かっている」と米軍基地と自衛隊基地を混同した。このとき仲井真氏は黙っていたが、2日後に会談した玄葉光一郎外相に「首相の指揮命令系統にある自衛隊と米軍基地が全く違うことが分かっているのか」と詰め寄った。…… 

■まだ就任してから3箇月にも満たないのに、これだけ危ない素人発言を連発しているのですから野田ドジョウ首相の任命責任は厳しく追及されるべきでありましょう。既に沖縄県民・県知事からの信頼を失い、おそらく防衛省内部でも邪魔者扱いされていそうですし、何よりも米軍関係者から相手にされていない可能性が濃厚で、これでは日本の安全保障はボロボロになってしまいますぞ。小沢グループからの数合わせ人事との噂があった一川防衛相就任ですから、下手に馘首したら党内分裂騒ぎが再発すると野田ドジョウ首相が考えているのなら、それは国益に照らして本末転倒と申せましょうなあ。


10月25日には衆院安全保障委員会で平成23年版防衛白書について「正直言ってまだ全部目を通していない」と発言。11月12日には、年内に提出予定の普天間飛行場移設に関わる環境影響評価書について「無理に提出するものではない」と言い放った。防衛省内での求心力は皆無に等しい。10月7日に起きた航空自衛隊小松基地所属のF15戦闘機の燃料タンク落下事故について同月11日の「防衛省は国民目線の観点が十分浸透していない」と身内を批判し、自衛官の総スカンを食った。南スーダンへの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣は外務省主導で決まり、当事者の防衛省はほぼ“蚊帳の外”。年内に控える航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の選定では、一川氏に政府・与党の調整役を期待する声はなく、北沢俊美前防衛相が「影の防衛相」として影響力を強めている。
2011年11月17日 産経ニュース 

■これでは税金泥棒!との誹りは免れないでしょう。こんな人物に大臣給与を誰が払いたいと思うでしょう?役立たず、石潰し、そして、今回の欠席事件で国賊の呼称も授与されそうですなあ。本来なら農政で守旧派として大暴れすべき経歴と素質の持ち主のようですから、きっと御本人も「どうして防衛相なんだ?」と思いつつ、でも初入閣は嬉しいなあ!と就任したのでしょうが、辞退すべきだったでしょう。

日本の幸福度、ブータン国王演説 其の弐

2011-11-18 14:10:34 | 日記・雑学
■演説の続きです。

私は若き父とその世代の者が何十年も前から、日本がアジアを近代化に導くのを誇らしく見ていたのを知っています。すなわち日本は当時開発途上地域であったアジアに自信と進むべき道の自覚をもたらし、以降日本のあとについて世界経済の最先端に躍り出た数々の国々に希望を与えてきました。日本は過去にも、そして現代もリーダーであり続けます。このグローバル化した世界において、日本は技術と確信の力、勤勉さと責任、強固な伝統的価値における模範であり、これまで以上にリーダーにふさわしいのです。…… 

■「確信の力、勤勉さと責任、強固な伝統的価値」なんだか随分と懐かしい言葉が並んでいるような気がします。「勤勉さ」が発揮できない非正規雇用制度の暴走が起こり、最近では超一流企業の経営者の中には「責任」の欠片も無い犯罪行為に走って会社を潰し兼ねない大事件を起こしてしまう愚か者が目に付きます。「強固な伝統的価値」は衰退著しい地方とグロテスクに巨大化する都市のどちらにも見当たらなくなって久しいような気がします。ブータン国王陛下は古きよき時代の日本のことをお話になっているような感じがしますなあ。


世界は常に日本のことを大変な名誉と誇り、そして規律を重んじる国民、歴史に裏打ちされた誇り高き伝統を持つ国民、不屈の精神、断固たる決意、そして秀でることへ願望を持って何事にも取り組む国民。知行合一、兄弟愛や友人との揺るぎない強さと気丈さを併せ持つ国民であると認識してまいりました。これは神話ではなく現実であると謹んで申しあげたいと思います。それは近年の不幸な経済不況や、3月の自然災害への皆様の対応にも示されています。…… 

■我々一人ひとりがもう一度「規律を重んじる国民」になれるように努力したいものですし、大急ぎで「誇り高き伝統」を再発見して学び直す必要もありそうです。そして、「不屈の精神」と「断固たる決意」ができるマトモな政治家を是非とも選び直して自民党政権が産み育て民主党政権が増徴させてしまった役人天国国家を改革することが急務でありましょう。


……皆様、日本および日本国民は素晴らしい資質を示されました。他の国であれば国家を打ち砕き、無秩序、大混乱、そして悲嘆をもたらしたであろう事態に、日本国民の皆様は最悪の状況下でさえ静かな尊厳、自信、規律、心の強さを持って対処されました。文化、伝統および価値にしっかりと根付いたこのような卓越した資質の組み合わせは、我々の現代の世界で見出すことはほぼ不可能です。すべての国がそうありたいと切望しますが、これは日本人特有の特性であり、不可分の要素です。このような価値観や資質が、昨日生まれたものではなく、何世紀もの歴史から生まれてきたものなのです。それは数年数十年で失われることはありません。そうした力を備えた日本には、非常に素晴らしい未来が待っていることでしょう。この力を通じて日本はあらゆる逆境から繰り返し立ち直り、世界で最も成功した国のひとつとして地位を築いてきました。さらに注目に値すべきは、日本がためらうことなく世界中の人々と自国の成功を常に分かち合ってきたということです。…… 

■これほど真正面から「素晴らしい未来が待っている」と断言して頂けるのは大変に有り難いことであります。確かにパニックや暴動も起こさず、多少の空き巣こそ泥は出没したものの、苦難にじっと耐えている日本は海外から高く評価されているようです。しかし、それは被災された多くの人々が賞賛されてるだけのことで、日本政府の対応が褒められているとは寡聞にしして知りません。今回の大震災と原発事故を本当に乗り越えられるのか?と自信がなくなりそうな時もありますが、もう一度だけ「あらゆる逆境から繰り返し立ち直り、世界で最も成功した国」になる努力をしてみようと元気が湧く演説であります。


ご列席の皆様。私はすべてのブータン人に代わり、心からいまお話をしています。私は専門家でも学者でもなく日本に深い親愛の情を抱くごく普通の人間に過ぎません。その私が申しあげたいのは、世界は日本から大きな恩恵を受けるであろうということです。卓越性や技術革新がなんたるかを体現する日本。偉大な決断と業績を成し遂げつつも、静かな尊厳と謙虚さとを兼ね備えた日本国民。他の国々の模範となるこの国から、世界は大きな恩恵を受けるでしょう。日本がアジアと世界を導き、また世界情勢における日本の存在が、日本国民の偉大な業績と歴史を反映するにつけ、ブータンは皆様を応援し支持してまいります。ブータンは国連安全保障理事会の議席拡大の必要性だけでなく、日本がそのなかで主導的な役割を果たさなければならないと確認しております。日本はブータンの全面的な約束と支持を得ております。…… 

■「他の国々の模範」となるべく国民一人ひとりが頑張らねばなりませんが、残念ながら戦後60有余年「アジアと世界を導」くことなどまったく考えずに経済成長に邁進した日本には「国連安全保障理事会の議席拡大」に本気で取り組む外交能力は無く、小選挙区から出て来た地元密着型の政治家の中からは必要な人材が得られないのが実情であります。ブータンが熱心に応援して下さっても日本にその意思と能力が欠如していてばどうしようもありません。


ご列席の皆様、ブータンは人口約70万人の小さなヒマラヤの国です。国の魅力的な外形的特徴と、豊かで人の心をとらえて離さない歴史が、ブータン人の人格や性質を形作っています。ブータンは美しい国であり、面積が小さいながらも国土全体に拡がるさまざまな異なる地形に数々の寺院、僧院、城砦が点在し何世代ものブータン人の精神性を反映しています。手付かずの自然が残されており、我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています。ブータン人は何世紀も続けてきたように人々のあいだに深い調和の精神を持ち、質素で謙虚な生活を続けています。今日のめまぐるしく変化する世界において、国民が何よりも調和を重んじる社会、若者が優れた才能、勇気や品位を持ち先祖の価値観によって導かれる社会。そうした思いやりのある社会で生きている我々のあり方を、私は最も誇りに思います。我が国は有能な若きブータン人の手のなかに委ねられています。我々は歴史ある価値観を持つ若々しい現代的な国民です。小さな美しい国ではありますが、強い国でもあります。…… 

■多くの場合、自画自賛は聞くに堪えない不快なものですが、ブータン国王陛下の演説は素直に感動できる誠実さがあるように感じます。はたして日本人が同じ調子で自国を語れるのだろうか?「手付かずの自然」などはほとんど残されていませんし、僅かに残った自然もマスコミが玩具にして人々を呼び寄せて荒らしてしまいますし、相変わらず自然災害には弱い面が目立ちます。精神や文化の面でも「我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています」と胸を張って言える状況ではなさそうです。自民党政権末期、安倍元首相が「美しい国」と言ったことがありましたが具体的な政治ビジョンにならないまま忘れ去られてしまいましたなあ。


それゆえブータンの成長と開発における日本の役割は大変特別なものです。我々が独自の願望を満たすべく努力するなかで、日本からは貴重な援助や支援だけでなく力強い励ましをいただいてきました。ブータン国民の寛大さ、両国民のあいだを結ぶより次元の高い大きな自然の絆。言葉には言い表せない非常に深い精神的な絆によってブータンは常に日本の友人であり続けます。日本はかねてよりブータンの最も重大な開発パートナーのひとつです。それゆえに日本政府、およびブータンで暮らし、我々とともに働いてきてくれた日本人の方々の、ブータン国民のゆるぎない支援と善意に対し、感謝の意を伝えることができて大変嬉しく思います。私はここに、両国民のあいだの絆をより強め深めるために不断の努力を行うことを誓います。改めてここで、ブータン国民からの祈りと祝福をお伝えします。ご列席の皆様。簡単ではありますが、(英語ではなく)ゾンカ語、国の言葉でお話したいと思います。
「(ゾンカ語での祈りが捧げられる)」
ご列席の皆様。いま私は祈りを捧げました。小さな祈りですけれど、日本そして日本国民が常に平和と安定、調和を経験しそしてこれからも繁栄を享受されますようにという祈りです。ありがとうございました。 

■実に忝(かたじけな)い気持になる名演説でありました。見事な親善外交と申せましょう。政治家の外交演説とは次元が違う格調の高さ、深い精神性が満ちております。やはり伝統的な精神文化を継承する人格は貴重な存在なのだと再認識させられます。せっかくの清清しい気分が台無しになってしまうのが残念ですが、ブータン国王両陛下をお迎えして我が日本国の民主党政権は実に恥ずかしい騒ぎを起こしてしまった話に移らねばなりません。

日本の幸福度、ブータン国王演説 其の壱

2011-11-18 14:02:02 | 日記・雑学
■東日本大震災と原発事故が起こって以来、日本の政治家は勿論のこと作家やジャーナリストなどの文筆家からさえも永久保存版の言葉が聞けないことは非常に残念なことであります。それだからこそ今年3月16日にビデオ・レターとして公表された天皇陛下のお言葉が折に触れて思い出されるのであります。深い悲しみを同情と労りの言葉に包み込み、慰めと励ましを分かり易く語り掛けて下さる歴史に残る名文は、日本経済新聞以外の新聞は1面に掲載しなかったという事実と共に長く記憶に留めておくべきでしょう。それにしましても御高齢の陛下が日帰りも含めて被災地を訪れては苦境にある人々に直接語り掛け続けねばならなかったのは、民主党政権の菅アルイミ内閣が政局の内輪揉めばかりしていて復興や事故対応に「全力」を注いでいなかったからだったと思われます。皇族内の諸問題も報じられているとは言え、天皇陛下の御不例は震災・原発事故に真摯に立ち向かい続けたお疲れが原因であるとすれば、菅アルイミ前首相の罪は実に深いものがありましょうなあ。

■ましてロクでもない組閣人事を弄び、年に数日だけの御静養を中断させて認証式に引っ張り出したのは菅アルイミ前首相でしたし、その前の鳩山サセテイタダク元首相の時代には素人内閣の閣議がまとまらず、だらだらと無駄話を続けて結論が出るのが夜になることもあったそうで、内容を熟読の上で署名捺印せねばならない天皇陛下はずっと閣議決定書が届くのを待って御就寝時刻がどんどん遅くなることもあったやに聞きます。御臨席の皇族方に対して「早く座れよ!」と文句を言った某委員長もいましたし、民主党はどこか子供染みた迂闊さが目立つ寄り合い所帯なのであります。

■さてさて、自国内でも東南アジア地域でも絶大な人気を得ているブータン国王が来日中で、会見を楽しみになさっていたのに入院治療中とて晩餐会などの歓迎式典に参加できなかった天皇陛下はさぞや無念であられましょうが、そんな陛下の御心中も察せず野田ドジョウ内閣の閣僚数名はトンデモない無礼を働いてしまったのは恥ずかしい限りであります。公式歓迎晩餐会を選挙屋稼業に忙しいとの理由で平然と欠席した閣僚連中も以下の国会演説は何事も無かったような顔をして拝聴していたのでしょうか?耳の鼓膜と脳みそが正常に接続されているなら恥ずかしくてその場から逃げ出したくなったはずなのですが……。


天皇皇后両陛下、日本国民と皆さまに深い敬意を表しますとともにこのたび日本国国会で演説する機会を賜りましたことを謹んでお受けします。衆議院議長閣下、参議院議長閣下、内閣総理大臣閣下、国会議員の皆様、ご列席の皆様。世界史においてかくも傑出し、重要性を持つ機関である日本国国会のなかで、私は偉大なる叡智、経験および功績を持つ皆様の前に、ひとりの若者として立っております。皆様のお役に立てるようなことを私の口から多くを申しあげられるとは思いません。それどころか、この歴史的瞬間から多くを得ようとしているのは私のほうです。このことに対し、感謝いたします。…… 

■このように呼び掛けられた「国会議員の皆様」の中に、世が世ならば陛下の宸襟を乱す不忠の者!と誅される不心得者が混入しておりますぞ。それにしましても、いかに外交辞令とは申せ「世界史においてかくも傑出し、重要性を持つ機関である日本国国会」とまで言われてしまいますと、一有権者として穴があったら入りたくなりますなあ。なるほど国会は野党の野次と怒号が渦巻く中で与党は役人の作文を棒読みするだけなのですから、野田ドジョウ総理大臣閣下は謹んで間違いを訂正して差し上げたら如何でしょう?今の国会議事堂の中に「偉大なる叡智、経験および功績を持つ皆様」など存在していたのか?と国王の御言葉を拝聴しながらドギマギしてしまいました。


妻ヅェチェンと私は、結婚のわずか1ヶ月後に日本にお招きいただき、ご厚情を賜りましたことに心から感謝申しあげます。ありがとうございます。これは両国間の長年の友情を支える皆さまの、寛大な精神の表れであり、特別のおもてなしであると認識しております。
ご列席の皆様、演説を進める前に先代の国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク陛下およびブータン政府およびブータン国民からの皆様への祈りと祝福の言葉をお伝えしなければなりません。ブータン国民は常に日本に強い愛着の心を持ち、何十年ものあいだ偉大な日本の成功を心情的に分かちあってまいりました。3月の壊滅的な地震と津波のあと、ブータンの至るところで大勢のブータン人が寺院や僧院を訪れ、日本国民になぐさめと支えを与えようと、供養のための灯明を捧げつつ、ささやかながらも心のこもった勤めを行うのを目にし、私は深く心を動かされました。…… 

■王族の名前にもチベット文化の影響が見られるようにブータンはチベット仏教文化圏ですから慈悲の心に満ち溢れる信仰心の厚い国なのであります。変なブータン・ブームが起こって怪しげな宗教商売の材料にするような不心得者が出て来ないことを祈るばかりですが、旧オウム真理教の集団が急速に信者数を増やしているなどというニュースを耳にしますと、韓流ブームの次にブータン・ブームを起こしてやろうと考える輩が出て来ないとも限りませんから御用心、御用心。


私自身は押し寄せる津波のニュースをなすすべもなく見つめていたことをおぼえております。そのときからずっと、私は愛する人々を失くした家族の痛みと苦しみ、生活基盤を失った人々、人生が完全に変わってしまった若者たち、そして大災害から復興しなければならない日本国民に対する私の深い同情を、直接お伝えできる日を待ち望んでまいりました。いかなる国の国民も決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮にこのような不幸からより強く、より大きく立ち上がれる国があるとすれば、それは日本と日本国民であります。私はそう確信しています。…… 

■ブータン国王陛下がお感じになった「深い同情」こそ、日本の天皇陛下が決してお忘れにならない御心痛と同じもので、新婚旅行でもある来日の貴重な1日を福島県訪問に割くというのも同じ精神をお持ちになっているからでありましょう。今も地道なボランティア活動に精を出している多くの人々がいることを改めて思い出し、しっかり愚かな政府を監視して次の総選挙では決して間違いを繰り返さないよう準備しておきたいものです。


皆様が生活を再建し復興に向け歩まれるなかで、我々ブータン人は皆様とともにあります。我々の物質的支援はつましいものですが、我々の友情、連帯、思いやりは心からの真実味のあるものです。ご列席の皆様、我々ブータンに暮らす者は常に日本国民を親愛なる兄弟・姉妹であると考えてまいりました。両国民を結びつけるものは家族、誠実さ。そして名誉を守り個人の希望よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ちなどであります。2011年は両国の国交樹立25周年にあたる特別な年であります。しかしブータン国民は常に、公式な関係を超えた特別な愛着を日本に対し抱いてまいりました。…… 

■「名誉を守り個人の希望よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ち」を何処かに置き忘れて来てしまった我々の来し方行く末を考えさせられますなあ。そんな強い気持が日本中に満ちているのなら、毎年3万人以上もの人が自殺し続けることもないでしょうし、1000兆円もの国の借金が積み上がったり年金制度が食い荒らされてしまうこともなかったはずなのですが……。

TPP 毎度お馴染み民主党流外交 其の弐

2011-11-16 16:12:00 | 外交・情勢(アジア)
■ハワイから帰って来たらすぐに衆参両議院の予算委員会で連日吊るし上げられている野田ドジョウ首相は早くも満身創痍の様相を呈しているようです。切り込み隊長役を買って出たのは自民党政策審議会長の山本太一議員のようで、例の米国が仕掛けた「誤報」事件の後始末が外交手続きとして杜撰極まりない!と激しく攻め立てておりましたなあ。自民党も野党暮らしの辛さと惨めさのウサ晴らしでしかない野次と怒号で恥を晒している場合ではなく、与党民主党は弱点だらけなのですから正々堂々と議論で勝負して欲しいものであります。両手の指では足りない民主党の弱点の中でも「独り善がり」で「思いつき」ばかりの外交上の失政は文字通り「国益」に関わる大問題でありまして、無手勝流で夢見がちな書生論を振り回して日米関係をボロボロにした鳩山サセテイタダク元首相、そして、羹に懲りて膾を吹くように何もせずに1年以上も外交空白を作ってしまった菅アルイミ前首相が仕出かした大失敗を、本来ならば大急ぎで整理して国民に詫びて具体的な対応策を次々に打ち出さねばならないのに、野田ドジョウ首相は余りにも長く深く財務官僚と付き合い過ぎた悪影響で、「増税!」以外の話は曖昧模糊とした役人作文を棒読みしているだけのような印象が強いのであります。

■余りにもTPP参加問題が注目されて首脳会議で話し合われる他の議題に関する報道がまったくないまま野田ドジョウ首相が渡米してしまったのが気になっておりましたが、案の定、先代首相と同様に原発事故の収束に手間取り、電気エネルギー政策の見直しも出来ない現状から考えて実現不可能な大計画に満身創痍の日本がうかうかと同調することになったようであります。どうせ、自分の政権にせよ民主党という政党にせよ、あと僅かな命だろうと絶望的に自棄を起こして将来に決定的な禍根を残してやろうなどと恐ろしい逆恨みをしているわけではないでしょうな?!


……アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は13日夕(日本時間14日午前)、経済成長と環境保護を両立する「グリーン成長」の数値目標などを盛り込んだ首脳宣言「ホノルル宣言」を採択し、閉幕した。野田佳彦首相は首脳会議の場で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を改めて表明した。……ホノルル宣言では、域内全体で2035年までに、05年比で45%以上の省エネを実行することを盛り込んだ。太陽光パネルや電気自動車など「環境物品」の普及のため、各国が15年末までに関税を5%以下に引き下げる日米提案にも合意した。…… 

■かつて鳩山サセテイタダク元首相が国連で「省エネ」の大風呂敷を広げて得意顔だった頃は、間違いなく自民党政権よりも大規模な原発増設計画が前提となっていたのですが、菅アルイミ首相変わると直ぐに福島のポンコツ老朽原発が水蒸気爆発を起こしてしまいました。設計段階で想定された稼動期間をコスト削減の名目で大幅に延長したばかりだったポンコツ原発が地震と津波で壊れてしまったからには、もう新設・増設は悪い冗談か夢のまた夢となりまして、下手をしたら来年中にもすべての原発が止まる可能性さえ出て来るのは当然であります。さてさて、反対しにくい「環境」を名目に関税引き下げを組み込んだ「05年比で45%以上の省エネ」を約束してしまって大丈夫なのでしょうか?昔は世界一だった日本の太陽光パネルの技術は残念ながら「原発神話」の猛威の下でどんどん後れを取ってコスト面では競争力が無いとも言われているのですから、うっかりすると原発エネルギーを失った日本が安価な太陽光パネルを大量に輸入することになりはしまいか?こんな所にも「原発安全神話」を広めてしまった罪の深さが浮き出して来ます。


……中小企業やベンチャー企業の国際展開支援のため、今後、税関手続きの円滑化や知的財産権の保護強化を検討。スマートグリッド(次世代電力網)では、規格の国際標準化を目指し、国境を越えた広がりを後押しする。……一方、野田首相は首脳会議で、TPP交渉参加を改めて表明。APEC域内を経済的に統合するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向け、「主導的な役割を果たしたい」と述べた。日本の交渉参加については、複数の首脳から「歓迎の意が示された」(外務省)という。野田首相は13日夜(日本時間14日午後)、政府専用機で帰国の途につく
産経新聞 11月14日(月) 産経新聞 

■原発事故の後で急に注目を集めて話題になった「スマートグリッド」ですが、どんなにバラ色の未来が示されても現在の電力会社の縄張り独占体制が存続している限り、スマートグリッド技術は本来の能力を発揮できないのですから、本当に「国際標準化」が議題になる会議に日本は参加資格が無いことになるかも知れませんぞ。世界が固唾を呑んで見守っている史上最悪の原発事故の対応に手間取り、夏の電力不足騒ぎに続いて冬もエネルギー不足が心配されている日本の実情を考えれば、とても新しいエネルギー・システムを世界に提案して「主導的な役割を果たし」すことなど不可能でしょうなあ。

■日曜日の午前中に放送されたフビテレビ『新報道2001』でも取り上げられていたのですが、
文藝春秋2011年11月特別号に「赤坂太郎」が「野田内閣に跋扈する“十七年前の亡霊”」という気になる文章を書いております。要するに初の非自民党政権となった細川内閣と野田ドジョウ内閣の内外事情が不気味に酷似しているという話なのですが……。副題は『増税、日米関係、小沢一郎……野田内閣は細川内閣と同じ途を辿るのか』という文章です。


■不気味な“暗合”

国会運営は予算日程と密接に絡み合っている。「国対カレンダー」は予算と関連法案をいつ成立させるかを終点に、いつ召集したらよいのかを考えて起点とする。このため財務省、中でも予算を担当する主計局が果たす役割は大きい。鳩山、菅両内閣での財務省出身の首相秘書官が主計畑でなかったことが象徴するように、これまでの民主党政権は主計局とは距離を置いてきた。野田はこれを180度変え、主計局と手を携えて国会、政権運営に乗り出している。財務省で国対の司令塔となる官房長・香川俊介も主計畑で勝の信任が厚く、元代表の小沢が官房副長官を務めた時の秘書官でもある。財務省の「国対ライン」をフル活用する野田の心づもりが、今回の延長劇で明らかになった。過剰なまでの財務省への傾斜に、民主党内では危惧と懸念が芽生える。代表選の最中には財務相だった野田をプレーアップする思惑で円高対策を発表させた。増税論議では財務相・安住淳が持ってきた政府税制調査会の案から消費税を除外させ、財源となる復興債の償還期間は十年とすることを「首相指示」として実行した。だが、これが本当に野田本人の考えだと思う議員は、民主党内には一人たりとも存在しない。…… 

■野田ドジョウ内閣は党内融和と安全運転でのろのろ走り出したものの、素朴で地味で低姿勢という御自身のキャラクターで国民の目をどこまで欺けるかは不明ながら、野田ドジョウ内閣は一皮剥けば財務省主導の増税最優先が生命線で、それ以外の震災復興・原発事故収束・農業改革等々はまったく具体的な政策も予算規模も分からないオマケみたいなものなのかも知れません。


……野田が喜んだ「彼とは仕事ができる」とのオバマの言葉も、史上ワースト一、二を争う元首相・鳩山由紀夫、前首相・菅直人と比較してのことであり、会談本番では沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題など、あらゆる二国間問題を列挙され、進展を迫られた。それを米側は国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長のダニエル・ラッセル、国務次官補のカート・キャンベルらが米国人記者へのブリーフィング(状況説明)であからさまに語っている。「自己紹介もそこそこで、ウィットの利いた冗談の一つもなかった」と会談の同席者さえ認めるほど、米側の姿勢も厳しかったのだ。当の野田本人は高揚したまま帰国した翌日の(10月)25日、東京・墨田区の両国国技館に足を運んで大相撲秋場所の優勝力士に内閣総理大臣杯を授与するパフォーマンスをみせた。夜にはキャピトルホテル東急に移動して政府・民主三役会議に臨み、秋以降の日程を確認。政権運営のヤル気をみなぎらせた。だが翌26日、小沢の元秘書三人に有罪判決が出て、野田の「党内融和」は危機を迎える。公明党の姿勢も読みにくさを増した。 

■この文章はハワイのAPEC会議に行く前の話ですが、米国側が野田ドジョウ首相を随分と安く値踏みしていたことが分かります。リーマン・ショックで苦境に立ったオバマ大統領が飛びついたのが太平洋沿岸の小国が作ったTPPで、そこに太平洋を挟んで日本も引っ張り込めれば一挙に好き放題に荒稼ぎができそうだとの皮算用は見え見えなのですから、財務省の言いなりになったのと同じ調子で米国追従になるのも時間の問題なのではないか?と多くの国民は不安になっているのでしょうなあ。


……振り返ってみれば野田が師事する細川も政治改革法を成立させたまではよかったが当時の米大統領、ビル・クリントンとの会談で「日米は成熟した大人の関係」と打ち上げたあたりから雲行きが怪しくなり、大蔵省と組んだ「七%の国民福祉税」で完全に失速。八カ月で政権を投げ出した。衆参両院ともに過半数を確保していた細川に比べ、野田が置かれている「ねじれ国会」の状況は一段と厳しい。野田に「政治とカネ」の問題があることも、細川と同じだ。多すぎる不気味な“暗合”は何を意味するのか。細川と同じ課題への取り扱いを誤れば、野田の退き際も、細川と同じになりかねない。(文中敬称略)

■もう政権を投げ出す姿を細川元首相の終わり方と重なって見え始めているとしたら、中途半端に大きな約束などして国益を損なうことになる前に、さっさと解散総選挙をして『マニフェスト』の落とし前をつけて欲しいものであります。
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TPP 毎度お馴染み民主党流外交 其の壱

2011-11-14 16:06:03 | 外交・情勢(アジア)
■賛成派も反対派も「ああ、よかった」と胸を撫で下ろしてくれる暗号・なぞなぞ・判じ物みたいな「関係諸国との協議を始める」との公式発表を行なって、怒号も投石も受けずに米国ハワイに飛んだ野田ドジョウ首相でしありましたが、短い日程は瞬く間に終わり既に御本人は帰国の途に就いている由。どんな「TPPお化け」が出るかと思っていたら、相も変らぬ上から日本を見下ろす図体の大きな米国が待っていたようです。日露戦争の幕引きを仲介して日本に恩を着せたかつてのセオドア・ルーズベルト大統領は「左手に棍棒を持って笑顔で握手する男」と呼ばれていたそうですが、再選が難しいともっぱらの噂のオバマ大統領は笑顔と貫禄を見せながら議長役を務めつつ、日本の首相に対しては手の込んだ罠を仕掛けておいた模様です。相手がドジョウならば足で泥を掻き乱して笊(ざる)に追い込むだけの話なのですが……。

12日昼(日本時間13日朝)にホノルル市内で行われた日米首脳会談の米側の報道発表をめぐり、とんだハプニングが起きた。米側の報道発表資料には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「野田佳彦首相が『すべての物品およびサービスを自由化交渉のテーブルに載せる』と述べた」と書かれていた。これに対し、外務省は「そのような発言を首相が行った事実はない」として、米側の報道発表を否定する報道発表をして火消しに躍起となった。外務省によると、首相は「昨年11月に策定した『包括的経済連携に関する基本方針』に基づいて高いレベルでの経済連携を進める」と述べただけだという。外務省が米側に説明を求めたところ、米側は同基本方針に「センシティブ品目(自由化に慎重な品目)について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし…」と書かれていたことを踏まえ、報道発表したと説明。誤解を認めたという。…… 

■民主党を割るような大騒ぎをしている最中でも、TPP参加に「反対」と明言する議員は一人もなく、賛成派に盾突いた人たちは自称「慎重派」だったことを考えれば、米国側から見れば遅かれ早かれTPPに参加するのだろうと気を利かせて?先回りしてやってつもりだったのかも知れませんが、一晩「慎重に」熟慮したことで離党分裂の危険を何とか乗り切った野田ドジョウ首相としては、「慎重に」の一言を省略されては立つ瀬がありますまいなあ。米国が発表した資料にある問題の『すべての物品およびサービスを自由化交渉のテーブルに載せる』という一文では、何処にも「慎重に」の一言を挟み込む隙間がありませぬ。皮肉なことに「センシティブ(慎重)品目に対する配慮」という肝腎な前提条件をばっさり切り捨ててシラッと発表しているのですから、相手は正確に「慎重」の意味を承知の上で、この可否も是非も誤魔化す玉虫色の表現は受け付けないぞ!と軽いジャブを打ったつもりなのかも知れませんが、この先制パンチは厳しいボディブローになって後々ずきずきと痛むことになるかも知れませんぞ。これを「誤解」と報道してよいのでしょうか?


……この基本方針は菅直人政権が閣議決定したもので、民主党政権のあいまいな姿勢が今回のような誤解を招いたともいえそうだ。
2011年11月13日 産経ニュース 

■そもそも、とかく情報不足が責められるTPP参加ですから一般国民としては軽々に賛成だの反対だのとは言えない難問ではあります。しかし、アノ菅アルイミ首相が唐突に言い出して反発を受けてすぐに引っ込めた不快な記憶がある限り、決して手放しで賛成など出来ないという不快感情的な問題があるのは確かでしょうし、政権交代マニフェストで約束した国家戦略局も看板倒れになっている現政権に「国の形」など描いて貰いたくはない!という強い拒否反応も起こっているのではないでしょうか?

■民主党内の「慎重派」が大喜びして送り出したのに、ハワイの会議が始まってしまえば日本の新聞は挙って「TPP交渉入りを表明」と見出しを打ってしまいましたし、外国メディアも「慎重に」も「関係諸国との」も省略して会議の進捗状況を続々と報じていたようであります。


野田佳彦首相は13日午前(日本時間14日早朝)、米ハワイ州で開催されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に向け、関係国と協議に入る」と表明した。その上で、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築に向け、「主導的な役割を果たしたい」と述べた。一方、日本の現状については「少子高齢化が進展し、東日本大震災を契機に厳しいエネルギー制約に直面する『課題先進国』だ」と指摘。昨年6月に閣議決定した新成長戦略を拡充する「日本再生戦略」を年内に取りまとめる方針を改めて強調した。
「(成長のために)復興財源・社会保障の安定財源の確保に取り組む」としたが、消費税増税については具体的に言及しなかった。
2011年11月14日 産経ニュース 

■TPPよりも大規模なFTAAPの実現に「主導的な役割を果たす」と、TPPの交渉会議が開催されるハワイ現地に乗り込んで発表するということは「関係国との協議」は実質的に参加することでなければ辻褄が合わないでしょう。「経済成長のために増税」だの「自由貿易と農業再生の両立」だの、最初から無理な組み合わせを平然と語れる野田ドジョウ首相の神経が分かりませんが、縦割り行政の官僚組織から出て来る紙切れを切り張りしている間に日本はボロボロになって行くような気がしますなあ。日本の企業や国自体が、民主党みたいな内向きで志の無い寄り合い所帯みたいなことになったらどうしましょう?

西岡武夫 享年75歳 其の弐

2011-11-08 13:03:17 | 政治
■「三権の長」問題は江田五月参議院議長が2011年1月に、菅再改造内閣で法務大臣に就任して世間を驚かせたことがありました。第2次田中角榮改造内閣で中村梅吉元衆議院議長が法務大臣に就任したことはありましたが、参議院議長の入閣は前例が無かったようです。そもそも党の綱領も原理原則も持たない民主党なのですから、健康と年齢の問題が無ければ「どじょう演説」以上の立派な政治家としての矜持を示す名演説が聞けたかも知れませんし、格の違いを見せ付けて代表に当選していたかも知れません。どうやら打診を受けた御本人も本気で立候補を考えたことがあったようですから、野田ドジョウ首相としては出馬を見送って貰って有り難かったに違いありません。西岡参院議長の死去に際して野田ドジョウ首相が談話を発表しました。

西岡武夫参院議長のご逝去の報に接し、心から哀悼の意を表します。西岡武夫氏は、昭和38年以来、衆院議員として11回、参院議員として2回当選され、この間、文部大臣、参院議院運営委員長、参院議長などを歴任され、教育分野をはじめ国政全般に多大な貢献をなさいました。特に、参院議長として、難しい議院運営や、参院改革の議論などにおいて優れたリーダーシップを発揮され、わが国の東日本大震災からの復旧・復興に向けて今後もさらなるご活躍が期待されていた中で、突然の訃報に接し、誠に残念であり、深い悲しみの念を禁じ得ません。ここに心よりご冥福意をお祈り致します。
2011年11月5日(土) 産経新聞 

■あの「ドジョウ演説」をした同一人物が書いたとは思えない型通りの面白くも何ともない事務的な文章であります。さり気無く原発事故対応を巡って菅アルイミ前首相に何度も辞職を迫った話は省かれているのが印象的ではありますが……。個人的に西岡議長の言動が気になって、今年の3月から報道記事をストックし続けておりました。自分の死期を悟った上での発言や行動だったとしたら、軽薄な「クールビズ」騒ぎを一顧にせず国会内でネクタイを決して外さなかった西岡参院議長は本当の侍だったのかも知れませんぞ。経歴を見ても菅アルイミ前首相とは対照的な地道で一途な生き方が浮かび上がりますからなあ。

■衆院11期、参院2期。早稲田大を卒業後、長崎新聞の論説委員などを経て63年の衆院選旧長崎1区で初当選。76年にロッキード事件を批判して自民党を離党して新自由クラブの結成に参加し幹事長に就任。80年に自民党に復党して竹下、宇野内閣で文相、党税調会長や総務会長などを歴任。政治改革をめぐり93年に再び自民党を離党し、94年の新進党結成に参加。98年の自由党結党には副党首として参加。98年の長崎県知事選に出馬して落選。01年参院選の比例代表で当選。03年の民主、自由両党の合併で民主党入り。

■西岡議長の追悼でもあり、もしかすると民主党(政権)への追悼になるかも知れませんが、今年3月から10月27日までの西岡言行録を振り返ってみようと思います。話は桃の節句3月3日から始まります。


政府・与党が平成23年度予算案を予算関連法案と切り離して無理に衆院を通過させたことで国会運営が滞り……
「憲法に違反する。議長の判断を認めるわけにはいかない!」民主党の羽田雄一郎参院国対委員長は2日の記者会見で、同党出身で本来は身内の西岡武夫参院議長を痛烈に批判した。西岡氏が同日、1日に衆院を通過した予算案を衆院通過から1日遅れで受領したためだ。
西岡氏が異例の対応をとったのは、民主党が予算関連法案を予算案と同時に通過させなかったからだ。赤字国債を発行するための特例公債法案など歳入に関わる予算関連法案は予算案と同時に参院に送るのが慣例だが、関連法案の衆院再可決に必要な3分の2の議席確保にめどが立たないため、野党説得の時間稼ぎという意味もあって関連法案の送付を遅らせたのだ。
結局、西岡氏は予算案を宙に浮いたままにしておくことは避け、2日に受領することで妥協を図ったが、同党の参院幹部は敵か味方か分からなくなった西岡氏に不満をぶちまけた。
「菅さんよりも、西岡さんの方が、先に辞めなければいけなくなるんじゃないか」…… 

■大震災・原発事故の前、この頃は外国人からの政治献金疑惑で「菅辞めろ!」の声が党の内外で高まっていたことを思い出します。本当にあの未曾有の大災害と大事故を天佑神助と大喜びした日本人は菅アルイミ前首相ただ一人みたいなものでしたなあ。