旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

西岡武夫 享年75歳 其の壱

2011-11-08 13:02:42 | 政治
■「内弁慶」という慣用句はありますが、これまで日本語には「外弁慶」という表現はありませんでした。政権交代が起こると日本語もいろいろと変化するらしく、民主党政権になってたったの3年で既に3人目となった歴代総理大臣はうち揃って外国に行くと嬉しさの余りなのか、すっかり舞い上がって子供染みた万能感覚が爆発したかのように大風呂敷を広げて大見得を切って悦に入るという実に困った悪い癖を継承しているようです。初代の鳩山サセテイタダク元首相は政権交代直後の興奮状態だったこともあり、特殊な思考回路をフル稼動させて一足飛びに外交政策を大転換できると勘違いし続けて自滅。次の菅アルイミ前首相は自らの舌禍で参議院選挙に大敗してネジレ国会という重荷を背負い込んでしまったので、国内では野党と世論調査の結果に怯えて猫を被っている苦しさの反動でもありましょうが、国際会議に出席すると生涯の夢だった総理大臣になった事を実感したいばかりに、先代に負けず劣らず次々に大風呂敷を広げて見せては飽きると放り出し、また次の風呂敷を取り出して子供のように遊んでいるようでした。

■そして三代目の野田ドジョウ首相も、海外に出向くと同じ病を発してわざとらしい低姿勢をかなぐり捨てて主要議題とはまったく関係の無い「消費税引き上げ」を宣言してしまったのでした。民主党政権はその名前に似ず、非民主的で独断専行を好む気味の悪い正当なのだと、多くの国民が知ってしまったからには、いよいよ解散総選挙などして議席を失って路頭に迷うのはイヤだ!という内向き下向きの虚仮の一念だけを求心力として生き延びるための協同組合になっているのかも知れません。そんな政党に政治が出来るのかいなあ? ■

野田佳彦首相は7日の衆院本会議で、フランス・カンヌでの20カ国・地域(G20)首脳会議で消費税率の10%への引き上げを表明したことについて「国内で方針として示したことを国際社会で説明し、アクションプラン(カンヌ行動計画)に入れた。できなかったら責任を取るという話はしていない」と述べ、「国際公約」ではないと強調した。首相は国際公約を「説明」に格下げしようと必死だが、野党側は首相の“逃げ口上”だと反発している。…… 

■政権交代マニフェストを紙くずにして平気な政党の代表ですから空手形を濫発しても政治家として良心が痛むなどということもないのでしょうが、さすがに「国際公約」と報道されるとちょっと気になるようです。カンヌの議場では誰も注目しない場違いな発言でしたが、遠く離れて唐突に「公約」を聞かされた日本国民にとっては大問題でありました。増税・TPP参加・年金制度改悪などなど矢継ぎ早にマニフェストには何も書かれていない大きな政策変更が発表され、党内では愚にも付かない「議論」で時間を浪費し、国会では総選挙の緊張感が無い噛み合わない質疑がだらだらと続くばかりで国民は何が何だかさっぱり分からず、ただ不安になって日に日に嫌な予感が膨らむばかりであります。


首相は、年末にかけて「社会保障と税の一体改革」に伴う消費税率引き上げ時期を具体化させ、来年3月までに関連法案を提出、次期通常国会で成立させたいとしている。会期内の法案成立を目指すには自民、公明両党の協力が欠かせない。しかし、両党は関連法案提出前の衆院解散・総選挙を求めている。その上、「2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」というスケジュールを既定路線と思っていた首相にとって、カンヌでの発言を両党が「国際公約をした」と責任追及に出てきたことは想定外だったようだ。こうなると、与野党合意の障害となるような要因を摘んでおく必要がある、と首相は判断した。カンヌでも同行記者団に対し「国際公約というと飛躍のある言葉だ。法的拘束力があるわけではない」と予防線を張っていた。…… 

■「法的拘束力」が無いのは解散総選挙を限界まで先送りしているからではないのか?国際信義の上からもこの発言は問題でありましょう。「法的拘束力」が無いからG20の場で何を言っても構わないと考えているのなら、一体、誰が日本の言葉に耳を貸すのでしょう?本来は「2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」の後に、「でも前の総理大臣が選挙で大負けして国会がネジレてしまった上に大震災と原発事故も起こってその対応にも失敗しているから、本当に消費税の引き上げが出来るかどうか分からないのが実情で……」と付け加えるべきだったのでしょうが、それでは単なる独り言になってしまって格好が付かないから断定口調で発表してしまっただけのことなのかも?


衆院本会議では、消費税率引き上げ時期の具体化にあたり「政府・与党の議論や、与野党協議を踏まえて決定したい」と低姿勢を見せながらも、衆院解散の時期に関しては「関連法案提出後は成立に全力を尽くし、(増税)実施前に総選挙で民意を問うのが筋だ」と突っぱねた。これに対し、自民党の西村康稔氏はアドリブで再質問に立ち、「首相は国際的に公約された。実現しなかった場合には当然、責任を取る。内閣総辞職か衆院解散と考えるが、いかがか」と追及した。首相は、唐突の質問に目を泳がせ、再び演壇に立つと「実現に全力を尽くすのが責任だ」と答弁した。語気を強めた割に、内容は曖昧だった。騒然となった本会議場で、続く公明党の竹内譲氏も「海外で表明するとは何ごとか」と批判した。野党が質問に立つ8日以降の衆院予算委員会で集中砲火を浴びることは必至だ。……
2011年11月8日(火) 産経新聞 

■政権交代マニフェストには「4年間は引き上げない」と書いておいて5年後に引き上げる準備をするという奇怪な「国際公約」をして帰国する野田ドジョウ首相が政府専用機でニース市のニース・コート・ダジュール空港から日本に向けて出発したのは日本時間5日の未明でしたが、民主党では貴重な本格的な政治家だった西岡武夫参議院議長が5日午前2時24分、肺炎のため都内の病院で死去したのでした。野田ドジョウ政権が発足した後の10月27日に「首相の指導力」を切望する所見を発表していた西岡議長は、翌28日からは口内にできた帯状疱疹の影響で参院本会議を欠席して入院していたようですから、野田ドジョウ首相の「国際公約」に関して何を思ったかは遂に聞くことはできなくなってしまいました。

■6日夜、出身地の長崎市の葬儀場「法倫会館」で営まれた通夜には与野党の関係者ら約1100人が参列したそうで、その中には帰国早々にとんぼ返りで参列した野田ドジョウ首相の姿もあったそうですが、政治的な悪口雑言の限りを尽くして「退陣しろ!」と言われ続けた菅アルイミ前首相の姿は無く花輪だけが飾られていた由。どこまでも度量の狭さと陰湿な執念深さは治らない人のようでありますなあ。そんな人物が452日間も総理大臣の席に座り続けていたと思うと、今更ながらゾッとします。

■野田ドジョウ首相が誕生した民主党代表選の直前、8月26日の午後のこと、クラッシャー小沢と鳩山サセテイタダク前首相は「第3の候補」を模索していたのでした。なかなか一本化できない海江田経産相と小沢鋭仁元環境相の両候補に不満足だったクラッシャー小沢は長年の盟友だった西岡武夫参院議長を考え、鳩山サセテイタダク元首相は原口一博前総務相を推して話がまとまらず、鳩山サセテイタダク元首相が「三権の長が(別の)長になるのはどうでしょうねえ」と文句を言えば、クラッシャー小沢も「原口は若い。雑巾がけもなあ…」と不満げで、まあショウガネエナアと決まったのが海江田候補だったとか……。

円高と日銀のお仕事 其の伍

2011-11-05 15:02:51 | 日記・雑学
■対談も大詰め、これから日本が採るべき経済政策のお話です。

――では、最後のまとめとして、これから日本はどのような経済政策を取るべきなのかについて、意見を聞かせてください。

若田部 第1にはやはり震災復興が大事です。まだ9万人弱の人が避難所生活を送っているというのは異常な状態だし、仮設住宅に入れても、働く場所がない、仕事がない、お金がない。場合によっては食事を切り詰めるなんていうのは、文明国ではありません。まずはそこに重点的に対応する。それからマクロ経済として次の課題はデフレからの脱却で、経済成長路線に復帰し、そういう条件が整ってきて財政再建、そしてさまざまな制度改革という順番だと思います。……

――野田首相の国会の答弁では、現役世代が痛みを分かち合うと言っていますよね。

若田部 痛みを分かち合う心は持っていても、痛みは痛みなんですよね。……「仕方ない」と思って税金を払ったあとは、みんな財布のヒモをしめる。そのことが一番大事な復興需要みたいなものが出てくるのを阻害します。そうするとデフレがさらにひどくなりかねない。悪いことばかりです。だから、政策の流れでいえば、復興から考えなくてはいけないので、マクロでいうと財政を出動させる。そうする円高が進んでしまうかもしれないので、円高対策、震災復興、そしてデフレ脱却を考えると、一層の金融緩和を行う。普通に考えれば、こういうことだと思います。……
 
■この①円高対策、②復興政策、③デフレ脱却という順番は非常に重要だと思います。これを無視して②のために「まずは増税だ!」と動き出したら③のデフレ対策が消えて無くなり①の円高対策は永久に不可能になってしまうでしょう。日本を滅ぼすような話を誰が野田ドジョウ前財務大臣に吹き込んだのでしょうなあ?


……気をつけないといけないのが、1997年に消費税増税や社会保険料の引き上げで、国民の負担を9兆円増やし、その後不況になった経験です。あのときには、アジア通貨危機が起きたので、不況に陥ったのはアジア通貨危機が主因だという話になっているが、負担の増加が悪影響をもたらしたことを否定できる人は少ない。今回も、例えば2013年度から増税をやるとなると、ちょうどギリシャがデフォルトするときと、一緒になりかねません。

高橋 その可能性はありますね。

若田部 昭和恐慌のときも、いまと似たような感じがあった。29年の10月に金本位制への復帰を決めて、30年の1月に実施した。大恐慌という大嵐がきているときに、窓を開けたようなもだという言い方があるが、歴史を生半可に知っている人の中には、金本位制への復帰は正しかったけれども、大恐慌がやってきて、日本経済がダメになったという言い方をする人もいます。今回も、「増税は正しかったけれども、ユーロ危機が……」と、これと似たような言い方をされる可能性もある。

高橋 97年の時も「消費税増税は正しかったが、アジア金融危機が……」と似たような言い訳があった。……ギリシャのCDSからみれば、多分、増税とギリシャのデフォルトは同じタイミングになる。そのときに震源地ではない日本の景気がどうして悪くなるのか。リーマンショックのときも、景気が急激に落ち込んだけれども、実はその前から悪くなっているんですね。2006年に量的緩和を解除し金融引き締めに転じた。その約半年後から景気が悪くなってくる。悪くなっているときに、リーマンショックで後ろから押されたために、大変な景気後退になったわけです。だから今回も、円高や増税で雰囲気が悪くなってきているときに、後ろから押されると大変ですよ、ということを、言っているわけです。

若田部 今の政府は大嵐が来ることがわかっていながら、自ら窓を開け放とうとしているということです。 

■以上で橋・若田部対談は終了であります。大嵐が来るのを窓を開いて待ち構える野田ドジョウ首相の心中や如何に?やはり、既に「窓を開けたのは正しかったのだが、嵐が来たのが不運だった」という言い訳を誰かさんが用意して手渡しているのかも知れませんなあ。

円高と日銀のお仕事 其の四

2011-11-05 15:02:35 | 日記・雑学

――「実質成長率信仰」については、どう考えますか。

高橋 実質成長率は高いほうがいいに決まっている。ただ、実質成長率を上げるのは結構、難しい。もし、実質成長率を上げる確実な方法がわかったら、ノーベル経済学賞ものです。実質経済成長率を上げるには基本的には、生産性を上げないといけないが、生産性は物的資本、人的資本、天然資源、技術の組み合わせで決まるので、こうすれば上がるという方程式はありません。ただ、実質成長率を上げるためには、企業が設備投資をどんどん行って、その中に技術が織り込まれているという設備投資経由によるものが、一番、生産性を上げる可能性が高い。

若田部 技術が設備に体化されるというような形ですね。

高橋 そうです。それで実質金利(=名目金利-期待インフレ率)をある程度下げないと、設備投資が出てこない。だから、期待インフレン率を高めて実質金利を下げると、設備投資が出てくるから、実質成長率を上げる方向に働くと、私は実は思っている。今の状況では、日本はデフレ、つまりインフレ率がマイナスで実質金利高いから、設備投資がでてこない。実質金利は為替にも関係する、実質金利の高いほうの通貨が高くなるから。実はお金の量が少なくなると、インフレ率が低くなって、実質金利が高まる。デフレ、円高、設備投資不足も実質金利を介して、みんな整合的につながっている話なんです。…… 

■実質金利と名目金利のややこしい話が、デフレや円高との関係から説明されると比較的分かり易くなります。今の日本が苦しむ経済的な停滞は、決して大地震や津波のような自然災害ではないというのが橋さんの主張であります。では、誰がどんな大間違いをしているのか?


……小泉政権のときに、要するにみんなが予想インフレ率がわからないと言うから、私が物価連動国債を新たに発行できるようにしたんです。一生懸命やって、実現まで2年かかった。この物価連動国債と通常の固定金利の国債を比べることで、市場がインフレ率をどう予想しているかわかる。今の日本はこれを計算すると、これからの5年間でマイナス0.5%です。アメリカを同様に見てみると、予想インフレ率は1.5%くらいある。名目金利の差は小さいけれども、実質金利は2%程度も差がある。

若田部 アメリカの方が予想インフレ率が高く、反対に実質金利は日本よりが低いということですね。それで、実質金利の高い日本円に需要が集まって円高になる。当然ですよね。…… 

■日銀にとって「インフレ」という言葉はすべての辞書から削除したいくらいに忌み嫌われる呪わしい響きがあるようなので、「インフレ・ターゲット」だの「予想インフレ率」だのは耳を塞いでしまいたくなる話でしょう。手が付けられないインフレよりはデフレの方がずっとマシだ、と信じて疑わない病気が蔓延している巨大な組織を消毒して治療するのはほぼ不可能かも知れませんなあ。ここから「日銀があと70兆円お札を刷れば円・ドルレートは100円になる」という橋説に入ります。


若田部 ただ、円高是正論者の中には、円高を是正するために金融緩和の必要性は分かるけれども、すでに日本は十分に金融緩和をしてきた、この失われた20年をみると、欧米の中央銀行に比べて、一番自分自身のバランスシート(貸借対照表)を拡大して、金融緩和を行ったのは日銀だという人もいますね。

高橋 これには完璧な誤解があると思います。金融緩和の度合いをGDPと中央銀行のバランスシートの大きさの対比でみるんだけれども、GDPに対する比率は、もともと現金通貨がどれだけ決済などに使われているかで、国によってそれぞれ違う。アメリカのようにクレジットカードやチェックなどが多く使われて、現金通貨をあまり使わない社会というのは、GDPに対する中央銀行のバランスシートの比率は低い。だから、金融緩和の度合いを見るときに大切なのは、その水準ではなく、どのくらい変化したかという変化のほうが重要です。例えば、アメリカは低いレベルから、ものすごくGDPに対する中央銀行のバランスシートの比率を上げた。日本は高いレベルから少し上げただけで、その意味では金融緩和をしていません。それで、結果的に日本は円高になっている。…… 

■金融緩和政策の度合い(効果)は「水準」ではなく「変化」の方が大事だという話は、橋氏は雑誌やテレビで何度も語っていますが、「日本は十分に金融緩和をしてきた」説は、日銀が垂れ流している責任逃れのヨタ話の類だと分かっているのに大手新聞もテレビのニュース解説番組でも知らん振りして日銀の伝令役に徹しているのは実に不思議であります。


高橋 為替の話をすると、1985年のプラザ合意の1年間ほどあとから、実は円・ドルレートは、日本のベースマネーをアメリカのベースマネーで割り算した数値にほとんど近くなる。……国際金融のマネタリーアプローチから自然に出てくる。今だと大体、日本のベースマネーは約130兆円で、アメリカのそれは2兆ドルくらいだから、割り算すると円・ドルレートは1ドル大体65円になる。本当にこれはね、ここ25年で7~8割くらいの確率で当たる。だから、1ドル100円くらいにするためには、あと70兆円ほどお札を刷ればいい。70兆円マネーの供給量を増やしても、少しインフレになるくらいだと思います。しかも日本はいま国内が大変だから、この金融緩和は国内の金融政策としてやるということす。だから、他の国は日本に対して何も言えない。…… 

■実際にリーマン・ショックを起こして世界中に多大なご迷惑をかけた米国は、一言も謝りもせずにドル紙幣を洪水のように国際市場に溢れさせて金融破綻を避けるのに必死でありますし、EUもギリシアばかりを責めていますが、ちゃっかり共通通貨のユーロをダンピング同然に安値に誘導しているという現実を踏まえて、議論はメディアが盛んに流している「近隣窮乏化」説の誤りを衝いて「通貨安競争は大恐慌の時に世界経済を混乱させたとして、悪者扱いされているけれども、最近の大恐慌研究ではそうではない。金融緩和によって通貨を安くした競争は、基本的に悪くなかったというのが結論だ」という新しい理論が紹介され、帝国主義的なブロック経済圏の少なくとも内側では「近隣富裕化」の効果があったとの分析まで出ているのだそうです。

■為替問題の結論としては「貧しくなりたくないのであれば、近隣窮乏化であろうがなかろうが、通貨安競争には参加するしかない」という覚悟の問題になるというお話です。

円高と日銀のお仕事 其の参

2011-11-04 14:00:28 | 日記・雑学
■日銀と大蔵省との対立と軋轢は戦後ずっと続いていたのは有名な話で、日銀総裁人事や公定歩合の引き上げ問題などでは政権与党だった自民党も混ざって三つ巴の大喧嘩をしていたものです。そして、その陰には新聞やテレビがまったく触れない米国という真の支配者がいて、プラザ合意の頃から日本の富を吸い取って米国の赤字を裏から支えようと悪知恵を働かせて陰に陽に圧力をかけていたという話も既に秘密ではなくなっているようです。

若田部 それは日銀の独立性にかかわる問題ですね。97年の日銀法の改正の時には、政府部内ではそういう議論はしなかったんですか?それともする余裕がなかったのですか?

――それまでの日銀法では、政府に日銀の役員の解任権や、大蔵(財務)大臣に業務の命令権があったが、新日銀法ではそれらが廃止されて、日銀の独立性が高まりましたね。

高橋 日銀法改正というのは、当時、大蔵省(現・財務省)が接待スキャンダルに追われていて、それから目をそらすために、仕掛けて出してきたやつだから(笑)。もう動機が不純なんですね。だから、日銀の独立性について議論ができるわけない。大蔵省が「独立性がちょっと……」などと言ったら、当時の雰囲気では「まだ大蔵省は懲りていない」と、言われてしまう。だから、中央銀行の独立性がどうあるべきかについて、実は真面目な議論ができなかった。同時期に、バンク・オブ・イングランド・アクト(イングランド銀行法)も改正が行われていて、当時から、すでに中央銀行の独立性というのは、金融政策という手段に関する独立性であって、目標の独立性ではないということは、私はだいたい知っていました。しかし、日銀法の改正に当たっては、大蔵省はそうした資料は提出しなかった。 

■難しい財政問題などはさっぱり分からない国民でも大蔵省の悪口が言える材料となったのがあの「ノーパンしゃぶしゃぶ」などの過剰接待の実態暴露事件でしたが、今から考えれば護送船団方式の鉄壁の守りを乱暴に破るために米国のCIAあたりが仕組んだ謀略だったとの指摘も出来るようですが、役所の中の役所と自他共に認めた大蔵省は悪口雑言の嵐の中で解体されたのでした。バブル経済のお祭り騒ぎとその後の「失われた10(20)年」も米国が仕掛けた急激な円安が発端だったのですから、解体された大蔵省としては納得できない非難も多かったでしょうし、棚から牡丹餅の新日銀法で「独立性」を手に入れた日本銀行は大喜びだったのでしょうが、どちらも成長政策を打ち出さないままリーマン・ショックとギリシア危機の時代に突入してしまったのは残念至極。


高橋 日銀にはできるだけ国債は買いたくないという、持って生まれた本能みたいなものがあります。まず金融を緩和する、金利を下げると負けという意識がある。国債を沢山買うのも金融緩和になってしまうから、要するに両方とも負けということになってしまう。だから、そういう意味でバイアスがかかっていて、日銀法改正以前は、実質的に大蔵省の子会社だったということが、心理的に影響していると思う。実際に、昔は「国債を買え」と、言ったこともあります。

若田部 その根拠は財政法第5条但し書きですね。予算総則の「第5条 国債整理基金特別会計において、「財政法」第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする……」。つまり、日銀が保有する国債のうち、償還される分については、日銀が直接引き受けることができるということですね。

高橋 その条項は予算総則ですね。それが有名になったのはうれしい。私は1990年代前半に(大蔵省)理財局の担当課長補佐だったのですが、これを使って日銀に国債を引き受けてもらっていました。予算総則では、引受は日本銀行が保有している国債の今年度の償還の範囲内ということになっているので、実はそれを目一杯やったところで、ベースマネー(日銀が供給する通貨のこと。市中に出回っている流通通貨と日銀当座預金残高の合計)は増えないというレベル。だから、日銀の直接引き受けは「禁じ手だ、禁じ手だ」というのだけれども、その禁じ手をずっとやってきたわけです。…… 

■この「禁じ手だ!」の大キャンペーンが割と成功したことが不思議であります。新聞各紙がお先棒を担いで「禁じられている」報道に熱心だったのも、おそらくは記者クラブの癒着構造が原因なのでしょうが、財政再建の錦の御旗を押し立てて「増税だ!」と一心不乱の財務省も円安になって景気が回復したら税収が増えてしまい、悲願の増税が出来なくなるから日銀と結託して情報操作をしている節があるようです。


若田部 日銀が国債の引受を嫌がるときには、それが財政をファイナンスすることになるという理由を挙げますね。直接引受をやると、財政や通貨に対する信用が失われると……。

高橋 それは観念論でしょう。これまで財政法の但し書きを使って、日銀が直接引受をやってきて、国債の信認が失われて、長期金利が急上昇したことはありません。……今年度、日銀が保有している国債の償還額は30兆円。今年度は12兆円を日銀が引き受ける計画なので、償還額に対して18兆円の余裕がある。だから、日銀が国債を引き受ければ、増税しなくても、復興財源は捻出できます。…… 

■ここに出て来る「増税しなくても」の一節が重要ですなあ。国会では民主党のマニフェストを今こそ実行して公務員給与2割カット!を法制化すれば増税予定分は捻出できるじゃないか!?と至極当たり前の議論が吹っ掛けられているのですが、野田ドジョウ首相は役人作文を俯いて棒読みするばかりで議論が噛み合ったことがありません。次の総選挙で、もしも奇跡的に民主党が原型を留めていたとして、一体、どんなマニフェストをどの面さげて発表するのか、今からぞくぞくするほど楽しみでありますなあ。

安全運転で見切り発車 其の伍

2011-11-04 08:47:10 | 政治
■「税」の一文字が巨大な意味を持って野田ドジョウ内閣の首根っこを押さえつけているというわけであります。ドジョウのぬめりで官僚の魔手を逃れることは出来ないのかも知れません。

国家戦略会議のメンバーをみても、強引に官僚の壁を打破できるようなパワーを持った人物は見当たらない。経済財政諮問会議では11人のメンバーのうち、改革派の学者や財界人など民間が4人を占め、首相と官房長官がこれに加われば過半数を超えた。……
野田佳彦内閣総理大臣 藤村修内閣官房長官 古川元久国家戦略担当大臣 川端達夫総務大臣 玄葉光一郎外務大臣 安住淳財務大臣 枝野幸男経済産業大臣 白川方明日本銀行総裁 岩田一政日本経済研究センター理事長 緒方貞子国際協力機構理事長 古賀伸明日本労働組合総連合会会長 長谷川閑史武田薬品工業社長・経済同友会代表幹事 米倉弘昌住友化学会長・日本経団連会長 
改革派として旗を振りそうなのは、学者の岩田一政氏と、経済同友会代表幹事の長谷川閑史氏ぐらいだろう。労働組合も民間ではあるが、改革には反対する守旧派に回ることが多い。緒方氏は独立行政法人のトップで、霞ヶ関の代弁者という役回りを担うことになるのだろう。……第1回の会合も……民間議員2人が独自に配布資料を用意したが、その2人とは岩田氏と長谷川氏だったのだ。経済財政諮問会議では、メンバーは内閣官房に執務室を持ち、事務局の職員を使って「民間議員ペーパー」の作成ができた。ところが、今回のメンバーには執務室は与えられないらしい。……当面は、2010年6月に決めた「新成長戦略」の見直し作業を行い、産業空洞化対策など、震災を踏まえた「日本再生の基本戦略」を年内にまとめる、という。当初は具体策まで盛り込んだ「日本再生戦略」年末までに、という話だったが、いつの間にかこれは「来年半ばをめどに」ということになった。これでは従来の役所の審議会とあまり変わらない機能しか果たせないのではないか。ここまで書き進んでくると、国家戦略会議に関する限り、野田内閣は財務省に完敗したことが歴然としてくる。戦略会議の立て付けに失敗した今、首相が財務省や霞ヶ関を敵に回してリーダーシップを発揮するのは、ほぼ困難だろう。もし、野田首相が政権を長続きさせようと考えれば、財務省傀儡というレッテルを甘受し続けるほかなさそうだ。 

■こうした内閣事情を背負って野田ドジョウ首相は生き馬の目を抜く国際会議場での交渉と議論に向かって政府専用機で飛んで行ったのであります。前途多難の四文字しか頭に浮かびませんが、残念ながら今の日本の首相を交換することは出来ないのですから、天佑神助を祈って大間違いを犯さずにだらだらと任期満了まで党内もまとまらず、身動き出来ないままで政界再編が起きるまでお勤め願うしかないようであります。
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安全運転で見切り発車 其の四

2011-11-04 08:46:53 | 政治
■国家戦略会議の初会合について磯山友幸「経済ニュースの裏側」に興味深い分析が出ておりました。 

国家戦略会議が2ヵ月近くたった10月28日になってようやく初会合を開いた。この間の、会議設立に向けた動きをつぶさに見てみれば、野田内閣と財務省の力関係が鮮明に浮かび上がってくる。組閣に当たって野田首相が古川元久議員を国家戦略担当相に抜擢し、国家戦略会議の設置を指示した段階では、野田首相は財務省の軍門に下る気はなかったに違いない。…… 

■マニフェストに「政治主導で予算の骨格を策定する」とされているのですから、財務省が警戒して反発するのは当たり前のことであります。予算を作るのなら財源も作らねばなりません。それを今は昔の「政治主導」で推し進められたら財務省は存在意義を失ってしまいますからなあ。


増税を明言することで財務省の全面的な協力を得る一方で、国家戦略会議を設置して財務省の暴走を抑えることを考えていたのだろう。大蔵省(現財務省)出身とはいえ、財務省幹部には決して評判が良いとは言えない古川氏を斬込み隊長にしたのも、計算したうえでの判断だったのだろう。首相周辺によれば、野田首相は古川氏に、国家戦略会議の早期設置を促していた。自民党政権時代に官邸主導のツールとして機能した「経済財政諮問会議を事実上復活し、国家戦略会議という通称にすればいい」とまで言っていた、という。経済財政諮問会議では民間議員が作った改革案を首相の決断で通し、予算案作成に向けての「骨太の方針」としてまとめていた。予算編成権こそが権力の源泉である財務省からすれば、大枠をはめられる「骨太の方針」は鬱陶しく、それを作る経済財政諮問会議は何としても葬りたい存在だった。それだけに、経済財政諮問会議の復活だけは何としても阻止したかったはずだ。…… 

■ミイラ取りがミイラになったような話ですが、師匠を持たない素人集団の政党なら前の与党に教えを乞うのも仕方がないでしょう。野党時代は散々批判した「経済財政諮問会議」をそっくり復活させてしまったら、何のための政権交代だったんだ?!と鬼より怖い支持団体から突き上げられるのは間違いないのですから、姑息な手段で独自色を出しつつマニフェストの公約を形だけでも実現したい、何とも切羽詰った危ない手品を見ているような感じがしますなあ。


古川氏は大臣就任直後に、竹中平蔵・元総務相や塩崎恭久・元官房長官に会っている。そして、国家戦略会議の設置についてアドバイスを受けたという。竹中氏は小泉純一郎内閣時代に、塩崎氏は安倍晋三内閣時代に、経済財政諮問会議をフル活用し、霞ヶ関と対峙した経験を持つ。竹中氏は古川戦略相に「とにかく野田首相とバイ(二人きり)で会う機会を頻繁に持つことだ」とアドバイスした、という。ところが、一部報道によれば、首相と古川戦略相の面会はなかなか実現しなかった。財務省から派遣されている首相秘書官が日程を握り、阻止していたというのだ。これについて古川氏は「首相とは15分くらいの話はよくしていた」と否定するが、古川氏自身が配信しているメールマガジンでは9月30日になってこんなことを書いている。
〈 総理、官房長官と3人で昼食を取りました。本会議があったので40分程度ですが、これだけ時間をとって総理と話をしたのは、内閣発足以来初めてです 〉
9月2日の発足以降、一ヵ月近く首相と戦略相がじっくり懇談する機会は作られていなかったということを吐露しているのだ。…… 

■何とも生々しい官僚支配の陰湿さと強靭さが伝わって来る恐ろしい話であります。官僚同士が縦割り構造を超えて閣僚のスケジュールを調整して邪魔をしたら総理大臣でさえ動きを封じ込められてしまう。まあ、それだけ民主党政権は役人にとって御し易い相手だっただけのことなのでしょうが……。


国家戦略会議発足までに2ヵ月を要したのは、大きな意味を持つ。組閣後すぐに会議が発足していれば、年末までに大枠を決める来年度(24年度)予算案の編成に方針を反映させることも可能だったはずだ。ところが、発足が10月末では予算案編成までに国家戦略会議としての方向性を打ち出すことは難しい。いくら立派な国家戦略を作っても、それが予算に盛り込まれなければ何も実現しない。それが国家というものだ。国家戦略会議の提言が実行に移されるのは25年度以降ということになるが、その予算案を作る来年の秋まで野田内閣が続いている保証はない。つまり、発足まで2ヵ月もかかったのは、財務省にとっては緒戦で大勝利を収めたようなものなのである。国家戦略会議の開催は10月21日に閣議決定された。結局、法的な裏付けのない会議体となった。経済財政諮問会議は設置が法律で明記され、明確な権限を持っていたが、それとはまったく異なる位置づけになったのだ。…… 
■閣僚が続々と「言うだけ番長」になり下がり、民主党政権自体が初代からずっと「言うだけ」政治を繰り返していれば支持率は奈落の底に落ちて行って再び政権交代、或いは政界再編へと雪崩れ込んで行くのでしょうが、「官僚は永遠で政治家は選挙に落ちたらお仕舞いなのさ!」と霞ヶ関から高笑いが聞こえてきそうであります。政権政党が何処に転がろうと、誰が総理大臣になろうと、小粒になった日本の政治家を丸め込んで洗脳するのはいとも簡単なことなのでしょうなあ。残念なことであります。


……経済財政諮問会議自体を復活させる手もあったのだが、小泉竹中改革の司令塔というイメージが強く民主党内に反発が強いため、結局この手は封印したままとなった。閣議決定された文書に記載された国家戦略会議の位置づけも、経済財政諮問会議とは大きく異なる。 文書にはこう記載されている。
〈 税財政の骨格や経済運営の基本方針等の国家の内外にわたる重要な政策を統括する司令塔並びに政策推進の原動力として、総理のリーダーシップの下、産官学の英知を結集し、重要基本方針の取りまとめ等を行うとともに、国の未来への新たな展望を提示するため、新時代の中長期的な国家ビジョンの構想を行う 〉
一方の経済財政諮問会議の役割は内閣府設置法にこう書かれていた。「内閣総理大臣の諮問に応じて経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針その他の経済財政政策に関する重要事項について調査審議すること」比較すれば一目瞭然だが、「財政」「経済」という言葉は残っているが、「予算編成」という言葉はきれいに消えている。その代わりに「税」という文字が加わっているのも注目点だ。つまり、国家戦略会議には予算に関わる基本方針を決めるという役割は与えられていない、と読むべきだろう。もちろん、首相のリーダーシップで、国家戦略会議で決まった事を予算に盛り込むことは可能だ、という反論はあり得る。だが、現実には、首相が議長を務める場で予算の大枠として決めなければ、省庁の縦割りの予算要求と財務省による査定という昔ながらの形式に楔を打ち込むことはできない。…… 

安全運転で見切り発車 其の参

2011-11-04 08:46:37 | 政治
■読売記者とフリー記者の上杉氏などとの間の口論ばかりが注目された小沢一郎・元民主党代表の会見があった10月20日、同日の午前中に更に重要な発言をしていたそうであります。

民主党の小沢一郎元代表は20日午前、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への日本の交渉参加について「交渉ごとだから、慎重にやらないとな。しっかりと米国と交渉できるやつがいないとな」と述べた。国会内で面会した側近の三井辨雄政調会長代理らに語った。
2011年10月20日(木) 産経新聞 

■本当に「交渉できるやつ」がいるのかいないのか?それは大問題であります。それ以前に交渉に参加するかどうかで血みどろの党内抗争を起こしているようでは民主党自体に外国交渉を上手に進められる資質は無いのだと分かっているようなものなのですが……。


民主党の長島昭久首相補佐官は1日、東京都内で講演し、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加の意義について、「アジアを米国と中国(の2国だけ)に仕切らせない。アジア太平洋の秩序は日本と米国で作っていく積極的な視点が必要だ」と述べた。TPPを軸とした日米の経済連携を強化することによって、台頭する中国をけん制する狙いを示唆したとみられる。
長島氏はまた、「アジア太平洋全域を私たちの庭として手に入れ、経済秩序と安全秩序を作っていく」と強調した。野田政権の外交方針に関連し、「中国とどう向き合っていくかが最大の戦略課題だ。中国から見て『なかなか手ごわい』と思わせる戦略的な環境を整えていく」と語った。 .
2011年11月1日(火) 読売新聞

■鼻息の荒い景気のよい話ではありますが、交渉前にあっけらかんと手の内を明かしてしまうのは如何なものでしょうなあ?長島補佐官はテレビに出ると何の根拠があるのか不安になるほど自信過剰な発言をすることがありまして、大学院博士課程在学中に自民党の石原伸晃衆議院議員の事務所に入って公設秘書になった経歴からして民主党の中では浮いた異分子的存在になっている印象が強く、ちょっと危なっかしい感じがしております。更に1993年に渡米してテネシー州ヴァンダービルト大学客員研究員になった後、ワシントンD.C.のジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院SAISで国際関係論修士号を取得し、米国外交問題評議会研究員(アジア政策担当)に就任して朝鮮半島和平構想プロジェクトに参画、リチャード・アーミテージやマイケル・グリーンとも仲良しで、ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー東アジア研究所の客員研究員、などという輝かしい親米の経歴を引っさげているのですから余り張り切ってしまうと民主党内で足元をすくわれて身動きが出来なくなる心配もありあそうです。

■長島補佐官は政策シンクタンクの「国家基本問題研究所」の理事にもなっているようなので、無理に褒めれば民主党の懐の深さ、多種多彩な豊かな人材を持つ民主党と言えなくもないのですが、政党として綱領もまとめられない気味の悪い烏合の衆である事実を考えますと、文字通り後ろから鉄砲で撃たれる危険がますます高まりそうであります。長島補佐官がクラッシャー小沢が言う「交渉できるやつ」なのかどうか、お手並み拝見と言いたいとこですが失敗したら亡国ですからなあ。やはり、政権交代は大失敗だったのかも?

■「国家基本問題研究所」からの連想で民主党の政権交代マニフェストにも謳われていた似たような名前の組織があったことを思い出します。「鳩山政権の政権構想」の第3策、官邸機能を強化し、総理直属の「国家戦略局」を設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する!と高らかに公約されていたのに、国会の事情で法改正が出来ず「局」は無理だからと「室」になったのでした。その初代室長が古川元久さんで担当大臣は何もしなかった当時の副総理だった菅アルイミ前首相。因果は巡る糸車でもないのでしょうが、今の国家戦略担当大臣はぐるっと回って古川元久になっております。

■本来ならマニフェストに言う「新時代の国家ビジョンを創る」仕事にTPP交渉は含まれるのが当然なのに、野田ドジョウ首相は内閣発足後の10月21日に既存の18の会議を廃止して「国家戦略会議」を発足すると決めてしまい、国家戦略室は会議の事務局という下請け機関にされてしまった由。10月28日に初会合が開かれたのですが、その内容がひどい物だったのだそうです。そもそも国家戦略会議の仕事は「税財政の骨格や経済運営の基本方針等の国家の内外にわたる重要な政策を統括する司令塔並びに政策推進の原動力として、総理のリーダーシップの下、産官学の英知を結集し、重要基本方針の取りまとめ等を行うとともに、国の未来への新たな展望を提示するため、新時代の中長期的な国家ビジョンの構想を行う。」と麗々しく規定されているのですが……。

安全運転で見切り発車 其の弐

2011-11-03 12:32:42 | 政治
■「4億円問題」関連でしか名前が報道されなくなっているクラッシャー小沢一郎元代表は、本人の発言は報じられないまま何故かTPP賛成派にされているようなのですが、これも不思議な話であります。自社の記者が袋叩きの非難を受けた10月20日の公開会見に関して讀賣新聞は根に持って弁明をしたり逆恨み気味に小沢批判を強めているようでもありますが、テレビも「ルールは守らなくちゃだめだよ」発言ばかり繰り返し放送して「説明責任」を果たせと半で押したように話を締め括るばかりでした。でも、あの会見ではTPP問題に関して重要な発言が出ていたのだそうです。BLOGOS編集部の10月25日付けのレポートを読んでみましょう。

……小沢氏は野田政権が推進する太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加について、「原則的・理念的にはいいこと」としながらも、「何の国民を守る対応策が講じられないままにやってしまいますと、国民生活は大変になってしまう」として、セーフティーネットを講じることが最重要と慎重な姿勢を示した。…… 

■前段だけを切り取って短く報道すれば「小沢一郎はTPPに賛成」と短絡してしまえるのでしょうが、政治家たるもの白紙委任で賛否を口にすることなどあろう筈もなく、ましてや自民党時代に対米交渉の最前線で働いたクラッシャー小沢が陣笠議員のような発言をすることなど金輪際ないでしょう。

 
小泉政権下で進められた構造改革の結果、雇用の仕組みが全く変わってしまったことを例に挙げて、「対応策をきちんと作らないままにやったので、いろんな問題が生じていると思います」として、何の対応策もせずにTPP参加交渉を進めてしまうと、小泉改革の二の舞になりかねないとの懸念を示した格好だ。…… 

■「雇用の仕組みが全く変わってしまった」小泉構造改革の裏話が『アメリカに食い尽くされる日本』というちょっと古い本に出ております。この本にはもっと恐ろしい裏話がごろごろ出ているのですが……。「ハーバード大学のライシャワー・センター(前)所長を名乗るアンドリュー・ゴードンという日本研究学者がいます。彼はいろいろ日本分析の論文を書いていますが、日本の美風といわれる終身雇用制度の研究かとして日本に送り込まれ……動労の流動化ということを制度設計している。要するに正社員のクビをどんどん切って、非正規雇用の社員をたくさん増やすことを「労働の流動化」理論で規制緩和の名の下に日本政府に働きかけて、法律の改正をどんどんやらせる係です。……」と副島隆彦氏が語っております。

■日本国内では「働き方の多様化」とか何とか言われた乱暴な規制緩和の一つでしたが、教育機関は「ゆとり教育」で未来の日本人の基礎学力を奪い、企業側も社員教育のコスト削減を喜び「即戦力の人材」などという無い物ねだりを言うようになって、日本の生産力は米国の思惑通りに弱体化して国際競争力が失われて行ったとも考えられそうです。クラッシャー小沢はこうした米国の動きを承知の上で「対応策」が必要だと警鐘を鳴らしているものと思われます。


―TPP参加をめぐって、農家を抱き込む形でいいのか。農家ばかり手厚くしていいのか、ご意見を伺いたい。

小沢氏:TPPは農林水産業の分野だけの物ではありません。あらゆる分野での規制の撤廃、自由化といいますか、関税の撤廃といいますか、そういう内容の物であります。広く農林水産業は一次産業であるため、生産性が他産業に比べて低いわけですし、それと同時に基礎的な食料は国内で自給する。その食料の生産に従事する人達の生活を国民全員で支援していくということは、これは国民全員が生活していく上で、また俗に食糧安全保障と言い方をする場合もありますが、その意味でも大事なことだと思っております。
ただ、今回のTPPは農林水産業の話だけではありませんし、むしろメインは他の分野にあると私は思っています。いずれにしても、どの分野でも国民が安心して安定して生活できるという俗に言うセーフティーネットを構築した上でやりませんと、競争力に弱い分野は生活できなくなってしまうという恐れがあります。そのため、自由競争または自由貿易は、もっとも日本がメリットを受けるわけですので、原則的・理念的にはいいことではありますが、何の国民を守る対応策が講じられないままにやってしまいますと、国民生活は大変になってしまう。…… 

■TPP交渉の「メインは他の分野にある」との見識は立派なものと申せましょう。日本より先に米国とTTA交渉を進めている韓国では大騒ぎになっているのに日本のマスコミは暢気に韓流ブームの名残を楽しむような話ばかりを伝えているのは困ったものです。米国が日本の富を収奪する策略を練っているのならぼろ儲けが出来ない農業分野ではなく、金融や医療や建築などのたっぷり旨味がある分野にこそ凶暴な情熱を燃やすことでありましょう。そう言えばヒューザーという一企業の問題に矮小化された感のある「耐震強度偽装事件」も米国のごり押しが原因だと先に引用した本に出ておりますぞ。曰く「1995年に起きた阪神大震災の後、建築基準法を見直すことになりました。……ところが建設審議会が始まるとアメリカの要求が出て来て……アメリカの業者が日本市場に参集したいために、建築確認の審査を民営化せよ、と迫ったのです。……審査という公共的なものを民営化して競争に委ねたことで日本の確認審査体制は崩れました」云々と森田実さんが語っています。

■さて、クラッシャー小沢の報道されなかった発言の続きを読みましょう。


たとえば、小泉政権下で一番顕著だったのは雇用の、従来の日本的な仕組みを取っ払ってしまいました!その結果、正規雇用、非正規雇用、その他いろいろな形態の雇用の仕組みが出来上がってますけど、それについての十分な対応策が講じられないままに、一気にやってしまいましたので、雇用面における格差や不安定さ、将来的な国民の生活というのが、非常に心配な状況になってきている。従来の雇用の仕組みでいうと、終身雇用・年功序列という良くも悪くも日本的な仕組みが維持されてきたわけです。それが全面的にこのままでいいとは思ってませんけど、少なくとも基本的な制度の背景にある哲学や理念という物は、国民みんなが安心して安定して就業して生活できるということを守っていかなくちゃいけない。その対応策をきちんと作らないままにやったので、いろんな問題が生じていると思います。
今回のTPPの問題につきましても、同じようにしっかりとしたセイフティーネット、対応策を講じた上でやるべきだと思っています。 

■つまりクラッシャー小沢は「対応策」の必要性を強く訴えているのであります。従って、それが不十分なまま交渉が進むようなら「TPP反対派」になるということでしょう。
アメリカに食い尽くされる日本―小泉政治の粉飾決算を暴く
クリエーター情報なし
日本文芸社


安全運転で見切り発車 其の壱

2011-11-03 12:31:42 | 政治
■船橋駅前で鍛えた演説の名手と評判が高かった野田ドジョウ首相ですが、代表選の時に「金魚の真似しない」話をしてからというもの「ノーサイド」の内向き勝利宣言をした後は、決して自分の言葉では語らず、ぶら下がり取材から逃げ回り公的な場では役人の作文を棒読みしてばかりいるようです。あんな調子でギリシア危機の嵐が荒れ狂う欧州になど出掛けて行って大丈夫なのでしょうか?とても嫌な予感がする一方で、まったく目立たず存在感も無く会議に出席している気配も残さず仕事もせずに安全運転で無事に帰国するだけかも?と、どちらにしても日本の国益を大きく損なう心配だけが増えて行くのであります。

国会は2日、野田首相の所信表明演説に対する各党代表質問を終えた。首相は、今回も質問者に言質を与えない「安全運転」に徹した。2日の参院本会議では、公明党の荒木清寛氏らが環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題について、「国民への説明が皆無に等しい」などと追及した。しかし、首相は「国益を確保する観点から様々な検討、分析を行うとともに、国民の理解を深めるため可能な限り説明に努めてきた」など、ほぼ同じ答弁を繰り返した。……鳩山元首相、菅前首相は発言のぶれが短命の要因となっただけに、1日の参院本会議では「安全運転をこれからも心がけていく。乱暴な運転や急に行き先を変える、事故を起こすということは許されない」と心情の一端を吐露した。
2011年11月3日(木) 讀賣新聞 

■「可能な限り説明に努めてきた」実態は、『舌切り雀』の話に出て来る大きな葛篭と小さな葛篭みたいに中身がまったく分からないまま国民は判断材料も無いので、仕方なく手持ちの僅かな情報を元に情緒的に反対したり賛成したりするしかないのであります。概ね大手新聞テレビ・メディアはTPP参加に賛成らしく、週刊誌などは賛否両論併記で細々と情報提供に努めているような状態のようですから、国民の多くは賛成するにも反対するにも力が入らないのではないでしょうか?最終的な判断を下す立場の野田ドジョウ首相は、どんな経路でいかなる情報を手に入れているのやら……。


野田佳彦首相は3、4の両日、仏カンヌで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席する。11月はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(12、13日)や東アジア首脳会議(EAS)など外交日程がめじろ押し。首相の外交手腕を示す大きなチャンスだが、欧州金融危機や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題など懸案で明確なメッセージを打ち出せなければ、せっかくの強行軍も「旅の恥はかき捨て」になりかねない。……
「この国に生まれて良かったと思えるプライドを持てる国を造るため、目の前にある問題等々をしっかりと乗り越えていきたい」首相は2日夕、久々に記者団のぶら下がり取材に応じ、こう語った。…… 

■震災復興の遅れ、原発事故の収束は先が見えず、デフレ不況が続く中での歴史的な円高、どれもこれも政治の無能さが原因だと思われるのに、増税路線だけが突出して明確になっている野田ドジョウ民主党政権の仕事ぶりから「この国に生まれて良かった」と感涙に咽んで拍手を送る日本人が何処かにいるのでしょうか?「目の前にある問題」というのは財務省が立てた増税スケジュールのことではないのかと心配になるばかりであります。


G20では欧州金融・財政危機への対応として、欧州金融安定化基金(EFSF)が発行する債券の追加購入を表明する構え。さらに2010年代半ばまでに消費税率10%まで引き上げる方針を説明し、財政再建への取り組みをアピール。為替への単独介入についても理解を求める考えだ。とはいえ、最大のテーマはギリシャ危機への対応だけに各国の日本への関心は薄く、大きな外交成果は望めそうもない。…… 

■1週間も効果が続かない円売りドル買い介入に10兆円規模とも推測される大盤振る舞いをやる一方で、今度はジャンクになるかも知れない欧州債権を買い込んで日本の財政危機をどんどん悪化させて「増税已む無し」の気分を煽って世論を誘導して行くおつもりか?それは決して民主党の政権公約ではありませんでしたし、野田ドジョウ首相個人の政治信条でもないはずです。財務相時代に役所の泥に埋まっている間に刷り込まれた誰かさんの「御説明」の賜物としか考えられませんなあ。


首相にとって最大の懸案は12、13の両日に米ホノルルで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議だ。米軍普天間飛行場移設問題の停滞にいら立ちを募らせるオバマ米大統領の要求に応じ、首相はTPP交渉への参加のほか、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣などを打ち出す意向を固めている。だが、いずれも与野党で賛否が割れる案件だけに帰国後は衆参予算委員会審議などで集中砲火を浴びることは間違いない。それを苦慮して中途半端な方針表明しかできなければ首相の国際評価はガタ落ちとなる。加えて17~19日にはインドネシア・バリで東アジア首脳会議(EAS)も開かれる。ここでは中国による東シナ海や南シナ海での権益拡大への対処が焦点となる。ベトナム、フィリピンなど東南アジア各国も中国への懸念を強めており、どこまで強いメッセージを出せるか注目される。
11月2日(水) 産経新聞 

■前の首相も前の前の首相も国際会議の場に出るのが嬉しくて嬉しくて仕方がない政治家としては未熟で幼稚な表情と態度が他国の代表達の中で際立っていたものです。「トラスト・ミー」に代表される失言を重ねた鳩山サセテイタダク元首相にしても、羹に懲りて膾を吹いて役人のメモを必死の形相で棒読みするかただニヤニヤしているだけだった菅アルイミ前首相にしても、民主党には外交能力は皆無なのだと内外に宣伝して歩いていたようなものでしたからなあ。今度は三度目の正直で、本当に日本を滅ぼす愚かな約束などしなければよいのですが……。

円高と日銀のお仕事 其の弐

2011-11-02 15:53:53 | 日記・雑学
■自称・脱藩官僚の橋洋一さんと早稲田大学政治経済学術院教授の若田部昌澄さんがダイヤモンド・オンラインで特別対談をしております。橋さんは雑誌やテレビなどで自説を発表していますが、雑誌記事が引用するコメントは前後の文脈に恣意性がありますし、テレビでは悪い癖の「一言で」と話が細切れになってしまいますから、オリジナルの発言が損なわれない対談記事は貴重であります。

■野田ドジョウ内閣が一心不乱に推し進める増税路線の指南役・黒幕の財務省と、根本的に自分の使命を勘違いしている日銀が日本経済を奈落の底に引きずり込むかも知れないという恐ろしい話は傾聴に値すると思います。原文は非常に長いので要点だけを抜粋しますが、前後の脈絡はしっかり残してあります。


高橋 ……名目成長率を上げることが「できない」という議論をやっているのは、世界中で日本だけです。1998年に現在の改正日銀法が施行されて、いままで約160ヵ月が経つ。日銀がいう物価安定は、消費者物価指数(CPI)の伸び率がゼロから2%と考えられるけれども、CPIがゼロから2%に収まった確率というのが、わずか1割6分。……他の主要国はどうかというと、中央銀行が目標としている物価安定の範囲に収まる確率は約8割。しかも、日銀の場合は目指す範囲の下に外した確率が8割です。……インフレターゲットではなく、まるでデフレターゲット。 

■日銀のお仕事は「インフレ防止」だそうですが、失われた10年以来、日本は不況下のデフレ・スパイラルを転がり落ちているのですから、誰が総裁や理事になろうと何もせずに昼寝をしていれば絶対にインフレになりそうもありませんから、こんなに気楽な商売は他に無いかも知れませんなあ。しかも驚くほど高い給料付き!


若田部 日銀の方に伺うと、日銀は実質的にインフレ目標を採用している、それどころかインフレ目標を超えて、世界的にみても先進的な金融政策をやっているという言い方をしています。その目標値は1%だともいいます。しかし、仮に日銀が1%でインフレ目標をやっているとすると、他の中央銀行と比べて一番の問題は実績値がともなっていないことですね。

高橋 みんな物価を上げることは「できない」という議論はするのだけれども、私に言わせれば「やっていない」としか言いようがない。だって統計的に考えると、物価上昇率がゼロからマイナス1%の間に8割も収まっていたら、普通はゼロから2%の間に8割収めることができるはずだと思いますよ。逆にいうと、日銀は物価に対するコントローラビリティは高くて、能力が高いと思うんです。ただ、強烈に独立性が強くて、失敗しても……。

若田部 ペナルティがない。

高橋 そう。これは不思議な制度ですね。失敗してもペナルティがないという制度は制度としてはあり得ない、というのが私の理解です。ただし、今の日銀法ではダメな指揮官をクビにすることができない。私の結論は簡単で、目標が達成できなければ、できそうな人に代わってもらうということです。 

■今の白川総裁を選んだのは実質的に現政権与党の民主党でした。日本中枢を支えるという名目で張り巡らされた官僚世界の既得権の代表たる順送り人事に乱暴に介入して破壊した後遺症は恐るべき結果をもたらしたのかも知れません。しかし、この大事件に関して新聞やテレビの大手メディアは沈黙を守ったままなので、素人判断では何も申し上げられないのが残念至極。だた、クラッシャー小沢の全盛期だった日本新党・細川政権時代に掟破りの動きを見せたエライ人が長い雌伏の天下り時代を経て民主党政権になってから日本郵政の親分に返り咲いたことは衆知の事実であります。思えば、二十世紀が産み落としたとんでもない鬼っ子の原子力発電所を押し付けられた電力会社も、ペナルティを免れる密約を自民党政権と結んでいたらしい尻尾がちょろちょろと見え隠れしている昨今ではあります。

■田中角栄の秘蔵ッ子とマスコミが腫れ物にでも触るように遠巻きに扱っていた昔をころりと忘れて、天下の極悪人みたいに鼻を摘んでピンセットで挟むような扱い方をされているクラッシャー小沢が、古巣の自民党憎しの私的感情と父親の代から受け継いだ「二大政党制」の壮大な夢を実現しようと頑張った結果の「政権交代」でありましたのに、あれほど煽りに煽ったマスコミが「数は力だ!」の底深い原理原則に則って政権交代をした直後から、一体、誰がこつこつと無党派層の票を掘り起こして頭数を揃えて、極めて現代の日本に似つかわしい素人寄り合い所帯の政党を急ごしらえするという離れ業をして見せたのか?世襲三代目のボンボン鳩山が歌って踊って自分からコケたのはご愛嬌として、いよいよ小沢政権かと思ったら菅アルイミ前首相が転がり出て来て多くの旧・投票者は唖然・憮然としたはずであります。さはされども、日銀総裁の人事を幼子の玩具のように政権交代の具にしてしまった罪は歴史に刻まれて然るべきでありましょうなあ。

円高と日銀のお仕事 其の壱

2011-11-02 15:49:51 | 日記・雑学
■政権交代マニフェストを投げ捨てて増税路線をひた走る野田ドジョウ政権の尖兵となって小柄な安住蔵相が不慣れな財政を預かっている姿は、「政治主導」の四文字を民主党は苦い思い出と共に忘れ去ったことを証明しているようであります。あれこれ羅列してあったマニフェストですが、今となってはあれこれも空想と妄想を寄せ集めた大嘘だったのは明らかで、少なくとも自民党(途中から公明党も参加)政権が残した負の遺産を裏も表もしっかり「情報公開」して、きっちり「仕分け」して国民に告げ知らせてくれるかと少しばかり期待したものでしたが、国民が嫌気をさした自民党の悪弊のほとんどを受け継いで不思議なくらいに早々と政権末期の頃の自民党と民主党は瓜二つのように見える昨今であります。

■期待された情報公開が実現しないのは、政権を取ってから初めて官僚から知らされる話に度肝を抜かれて日夜繰り返される「ご説明」の洗脳教育によって閣僚になった議員が順に情報隠しの手先になってしまったからなのでしょうなあ。でも、素人臭い情報管理の甘さが変な場面で出ることもあるようです。今回の円売りドル買い介入に際して安住蔵相は実に饒舌でありました。介入の日時、指し値売買方式の採用、続行の予告まで、すべては極秘裏に行なわれるべき為替介入について、これほどぺらぺらと喋る蔵相は前代未聞かも?

■歴史的円高が続いて輸出企業は為替差損を嫌って日本を離脱しようとするのは経営方針として間違ってはいないのでしょうが、円高不況に続いて雇用が失われ続けたら日本に希望は無くなってしまうでしょう。円高の原因はギリシアから始まったユーロ危機や米国の財政悪化だと聞かされると何だか自然災害みたいなものなのかと思ってしまいますが、本当は財務省の増税政策が進むようにデフレ不況が長引き、円高不況も重なるように日銀が協力して増税路線を後押ししているとの指摘もあるのですが……。


日銀は(10月)27日の金融政策決定会合で、歴史的な水準の円高や欧州債務問題の混乱による景気の下振れ懸念に対応するため、追加金融緩和を決定した。市場への資金供給のための基金のうち、長期国債を対象に資産買い入れ枠を5兆円増額し、55兆円とする案を8対1の賛成多数で可決。政策金利は年0~0.1%とする事実上のゼロ金利を全員一致で据え置いた。
追加緩和は、基金の10兆円増額を決定した8月4日以来。反対した宮尾龍蔵審議委員は基金を10兆円増額するよう提案し、1対8で否決された。日銀は声明で「国際金融資本市場や海外経済の動向次第で、経済・物価見通しがさらに下振れするリスクにも注意が必要」と警戒感を示した。
2011年10月27日(木) 時事通信 

■今週は11月2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を皮切りに、3~4日には主要20カ国・地域(G20)首脳会合、さらには欧州中央銀行(ECB)理事会とイベントが目白押しなのだそうで、日本は自由貿易に抵触する意図的な為替操作は出来ないだろうと思われていた10月31日午前10時のサプライズ介入でありました。それに先立って日銀が毎度御馴染みの中途半端な金融緩和を形だけやっておいたという話であります。

■一時は78円台を突破して79円15銭あたりまで円が急落しましたが、前回の介入と同様に元の木阿弥・三日天下になってしまいそうです。安住財務相は「実体経済を反映しない一方的・投機的な動きが続いている」から「納得いくまで介入する」と啖呵を切っているようですが、どうせアメリカの国債を買いますことにしか使えないドルを買い込むより別の円の使い方が今の日本にはたくさんあるような気もしますが……。

■介入の前日、安住財務相を「オオカミ少年」呼ばわりする新聞記事がありましたが、それに腹を立てての決断だったのではありますまいな?!。


超円高を阻止しようと安住淳財務相が「口先介入」を連発するなか、外国為替証拠金取引(FX)の個人投資家や一部のヘッジファンドが、せっせとドルを買い込んでいる。実際に為替介入が行われて円安ドル高に戻った際に買っておいたドルを売って円を買えば、大もうけできるためだ。政府・日銀が円売りドル買い介入に踏み切れば、「待ってました」と大量の円買いが出され、円高是正の効果が帳消しとなってしまう恐れが高まっている。…… 

■4円もの急速な円安で、一体、誰が得したのか?誰のための介入だったのか?まさかとは思いますが、長い間政治資金の不足に苦しんでいた民主党議員や関係者の中にインサイダー情報を利用して濡れ手で粟の荒稼ぎをしたような悪い奴はいなかったのでしょうな?!外国人からの違法献金など民主党が抱え込んでいる「政治とカネ」の問題は自民党時代の疑獄事件よりは規模は小さくとも、胡散臭さは際立っておりますからなあ。


「必要があれば、断固たる措置をとる」。25日から3日連続で円相場が戦後最高値を更新し、1ドル=75円67銭まで上昇。安住財務相も連日のように介入示唆を続けた。証拠金の何倍もの取引ができるFXの投資家は、「円高局面では、『今がドルの底値』と考え、円安ドル高に戻った際の利益を狙い、逆張りでドルを買う傾向が強い」(マネックスFX)。それに安住財務相の口先介入が拍車をかけた。東京金融取引所のFX「くりっく365」では27日時点のドル買い越し残高が約40万2千枚(1枚は1万ドル)と、金額換算で約40億ドル(約3千億円)分に上る。円高に歩調を合わせて今月に入り急増し3日時点の1・5倍に膨らんだ。……元本である証拠金は6月末時点で9446億円に達し、現在は1兆円を突破しているとみられる。証拠金の25倍まで取引が可能で、平均10倍と仮定すると、10兆円もの取引量となる。…… 

■一時は広告臭いニュースが流れて一挙に有名になったFX取引きですが、本当に素人が一攫千金の夢を叶えられるのか?超高性能のコンピュータを駆使して稼ぎ回るプロが蠢(うごめ)く為替市場ですからご用心、ご用心。でも、デフレ不況が長引く中で銀行預金には利子らしい利子は付かず、株価も低迷しているとなれば、異様な円高が続いているぞ!と連日連夜のニュースが騒ぎ立てれば、外貨を買ってみようかなあと思うのは人情というものであります。やはり、円高を放置するのは悪いことです。


一方、欧米のヘッジファンドの一部も、「介入を待ち構え、先週ごろからドルを買い込んでいる」(市場筋)という。安住財務相が介入をあおればあおるほど、「ドル買いのマグマ」(同)がたまる構図だ。政府・日銀が円売りドル買い介入に踏み切っても、FXとヘッジファンドが束になってドル売り円買いを浴びせれば、ひとたまりもない。「円安への戻りは限定的で一時的にとどまり、もうけるチャンスを与えるだけ」(外為ディーラー)に終わる可能性が高い。だが口先介入ばかりでは、イソップ童話の「オオカミ少年」のように誰にも相手にされなくなり、市場は安心して円買いを仕掛け、円高が加速しかねない。日銀が27日に実施した追加金融緩和も効果はなかった。政府・日銀は戦略を欠いた対応によって円高阻止の手段を失いつつある。
2011年10月30日 産経ニュースfont color="#000000"> 

■戦争もビジネスも政治も、兵力を逐次小出しに投入するのは愚の骨頂とされていますが、協調介入の交渉も出来ないまま孤軍奮闘するのは万策尽きたバンザイ突撃を連想させる悲壮なものがありますが、安住蔵相のキャラクターには滑稽さも漂っているようです。「納得いくまで介入する!」などと9月上旬にスイスが発表した無期限の為替介入を真似てみても、スイス・フランと日本の円とでは発行残高の規模は比べ物にならないのですから、スイス政府が成功したような強引な安値誘導を単独で成功させるには想像もできない額のドル買いをしなければなりますまい。

正体不明の挟み撃ち? 其の弐

2011-10-26 16:09:35 | 外交・情勢(アジア)

一川保夫防衛相は25日、来日中のパネッタ米国防長官と防衛省で会談し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として日米両政府が合意した同県名護市辺野古沿岸部の環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に沖縄県に提出する方針を伝えた。パネッタ氏は「日本側の努力を評価する」と応じ、普天間移設を可能な限り早く進めることで一致した。両氏は世界的なサイバー攻撃への対処に連携していくことも確認した。一川氏は武器輸出三原則の緩和に向け検討を進める方針を伝えた。…… 

■「出来れば国外、最低でも県外」と言い出した前の前の総理大臣が「学べば学ぶほど」沖縄基地の抑止力の有り難味が分かったと、自分だけ納得して政権を投げ出してしまってから、次の菅アルイミ首相は無力の「全力」で沖縄現地にも行かずに機械的に先送り。鳩山サセテイタダク元首相が点火して一度燃え上がった沖縄県民の怒りと声は、野田ドジョウ首相の官僚作文の棒読みなどでは絶対に消せないでしょうから、米国の言いなりに事務的に移設作業を進めようとすると鳩山サセテイタダク元首相が言った「杭の一本も打ち込めない」騒動が起こることを危惧する声があちこちから聞こえているというのに、民主党政権の鈍感さを強引な姿勢に変えてうかうかと火中の栗を素手で拾おうとしているのが分からないのでしょうか?党内融和に全力を使い果たして「官僚主導」で政治を進めようとする野田ドジョウ政権の病的な内向き姿勢が足元から崩れていくかも知れませんなあ。前の総理大臣は「辞任はしない」と粘りに粘って国会を空転させましたが、今度のドジョウ首相は「解散総選挙はしない」と早々に断言して民主党全体で居座るつもりのようですから、政治不信はますます深刻になりそうです。

■民主党名物の唐突な言動から「武器輸出三原則の緩和」が飛び出したのは前原エエカッコシイ政調会長が米国を訪問した時だったと記憶しておりますが、日本に持ち帰って普天間基地移設問題に絡めてしまおうと最初から考えていたのなら、ちょっとした策士と申せましょうが、策士は得てして策に溺れてしまう危険がありまして、前原エエカッコシイ政調会長にはマスコミから「言うだけ番長」の異名が贈られてもおりますから、三原則の緩和がどこまで進むのかは予断を許しません。そこに「世界的なサイバー攻撃への対処」がさり気無く添えられているのが、今回の一川・パネッタ会談の特徴ではないでしょうか?特に防衛軍事情報に関しては、ずっと前から米国は日本の情報管理の杜撰さを知り尽くしていたので、重要情報は渡さないと決めていたはずですぞ。

■もしも、第三国からのサイバー攻撃に対処する事態になったとしても、日本には米国と共同で動ける技術も組織も無いでしょうし、米国が虎の子の最新技術を日本に提供することなど考えられませんから、この「世界的なサイバー攻撃への対処に連携」という話には中身がまったく詰まっていないことになりましょう。


普天間問題をめぐって米国では、普天間移設と関連する在沖縄米海兵隊のグアム移転計画が財政削減を求める議会の反発で頓挫しかねない状況にある。パネッタ氏は「グアム移転には普天間の具体的な進展を得ることが重要だ。両国で協力したい」と述べ、進展の必要性を強調した。……日本政府が欧米の3機種の中から選定を進めている航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)をめぐり、パネッタ氏は日米間の「相互運用性」に言及した。米国など9カ国が共同開発中のF35や米国製のFA18の選定に期待感を示した。
野田佳彦首相もパネッタ氏と首相官邸で会談し「日米同盟は、わが国の外交安全保障の基軸であるというのが私の信念だ。しっかり連携しながら安全保障、防衛面でさらなる強化をしていきたい」と述べ、日米同盟の深化に意欲を表明した。
2011年10月26日(水) 産経新聞 

■野田ドジョウ首相は、こうした発言が即座に世界を駆け巡り、目の前に座っている米国の国務長官を飛び越えて他国の政府に向かっての言葉に変わるという事実を認識しているのか?甚だ不安になるのでありますが、武器輸出三原則を見直して次期戦闘機を米国製に決め、普天間基地もさっさと約束どおりに移設してくれた上にTPPにも積極的に参加する。米国政府にとってこんなに「ウイ奴」は他に居ませんでしょうなあ。しかし、日本の国民にとっては放射能汚染の不安がどんどん膨らみ、震災津波の被災地では復興の目途がまったく立たず、歴史的な円高は変わらず、こんな迷惑千万な政権はかつて無かったかも知れませんなあ。

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正体不明の挟み撃ち? 其の壱

2011-10-26 16:09:06 | 外交・情勢(アジア)
■鬼が出るか蛇が出るか?世に言う「TPPお化け」を呼び出した野田ドジョウ首相は何も語らぬまま、外交日程を最優先に泥の中で眠った振りして独断専行で突っ走るつもりのようであります。隣の韓国が米国と自由貿易協定を結びそうだと言うので日本中がEPAだのFTAだの三文字用語が飛び交い始めて国会議員も含めて俄か勉強が真っ盛り。賛成派と反対派が一歩も譲らず国会も民主党内も真っ二つの様相を呈してはおりますが、余りにも情報が少ないために議論は噛み合わないまま白熱もせず、自由貿易と聞けばすぐに飛び出す「農業問題」、長過ぎた自民党政権時代の負の遺産が解決の糸口も見付からないまま、そっくりそのまま民主党政権にも継承されている恐ろしい現実が露呈してしまっているのは困ったものです。

■日本の財界に「バスに乗り遅れるな!」の声が上がった原因の米韓FTAを詳しく点検した研究者が警鐘を鳴らしている「ラチェット規定」と「ISD条項」という巧妙な罠の標的は決して日本の農業などではなさそうなのですが……。賛成派が鼻息荒く、まずは交渉に参加して日本の国益を堂々と主張して事を有利に進めよう!と空元気を出している様子を拝察しますと、かつての日米構造協議やらクリントン政権時代に仕掛けられた奇怪な高額訴訟の数々を思い出しまして、またまた日本は俎板の上のドジョウならぬ鯉にされて好き放題に料理されてしまいはせぬかと心配にはなりますなあ。


衆院議員のパソコンが外部からの攻撃を受け、コンピューターウイルスに感染し、衆院のサーバーが不正アクセスを受けていたことが25日、分かった。サーバー内には国会議員に割り当てられた電子メールのデータなどが保存され、盗み見された恐れがある。衆院は対策本部を設置し、情報流出の解明に乗り出した。防衛産業へのサイバー攻撃が相次いでいるが、同様の攻撃を受けた可能性もある。ただ、8月に被害が発覚していたものの、対応が遅れ危機管理意識の甘さを露呈した。…… 

■民主党が掲げる「政治主導」の看板が単なる素人集団の絵空事でしかなかったことは分かっているのですが、不正アクセスを知りながら1箇月間も放置していられる無神経さには呆れ果てます。自民党時代にも日米交渉の裏側で世界に名高いスパイ天国の日本らしく、米国側は盗聴やら不正アクセスの技術を駆使して交渉前にすべての情報を入手していたという恐ろしい話があったことを思い出します。もしも春から盛大に発覚しているサイバー攻撃事件の本丸がTPP交渉に関する情報収集だったとしたら、交渉のテーブルに着く前から勝負はついているようなものかも?


衆院事務局によると、ウイルス感染は8月28日頃に判明。サーバーの管理委託を受けた業者が「不正アクセスの痕跡がある」と事務局に通報した。経路を調べたところ、衆院議員3人に貸与したノートパソコンがウイルスに感染していた。議員のパソコンからサーバー自体にウイルスが転移した可能性もある。議員側がメールに添付されたウイルスを不用意に開いたことが原因とみられ、大規模な感染拡大を防ぐため、議員のパソコンとサーバー1台をネットワークから切り離したという。サーバーには衆院議員や公設秘書、事務局職員の計約2660人分のIDやパスワード、メールなどが保存されている。藤村修官房長官は25日の記者会見で「違法行為が確認されれば、警察が厳正に対処していく」と語った。衆院議院運営委員会の庶務小委員会(松野頼久委員長)は対策本部を設置し、各議員にパスワードの変更などを促す方針を決めた。
2011年10月26日(水) 産経新聞 

■日本の警察はサイバー犯罪に対して無力に等しいことは衆知の事実で、情報が1箇月間も駄々漏れになった後で「警察が厳正に対処する」などと寝言を言っているのでしょうか?でも、他に手段がないのが実態なのでしょうなあ。さてさて、国会議員や在外公館を狙ってサイバー攻撃を仕掛けているのは米国なのか?はたまたTPPは自国に対する経済的な封じ込め政策だ!と警戒感を強めているチャイナの北京政府なのか?或いは泰平の夢から醒めずに昼寝を続ける日本を戦場として両国が情報戦を展開していたらどうしましょう?残念ながら戦後の60余年を振り返れば決して米国は日本の良き同盟国ではなかった面も多多あり、ニクソン政権下でのドルショックやらバブル経済の狂乱を生んだプラザ合意、そして未だに傷が癒えないリーマン・ショックと、或る人の資産によりますと毎回毎回100兆円の国富が日本から米国に移転していたとか……。次なる100兆円の奪取方法としてTPPを使おうと悪知恵に長けた誰かさんが画策していないとも限りませんぞ。

やるべき事をやった後で…… 其の四

2011-10-18 15:39:04 | 政治
■国会が閉じてから野田ドジョウ新首相は泥の中に隠れたかのようにマスコミ取材を避けておりまして、既に空証文になっている「政治主導」の復活に期待する声もすっかり消えて、財務官僚の腹話術人形になり切って盛んに口をぱくぱく動かしている安住財務相の言動ばかりが目立つのが不気味であります。少しは自分の言葉を持っているらしい前原政調会長は夕焼け番長ならず「言うだけ番長」などと政治記者から渾名を付けられて冷笑されつつも、武器輸出三原則の見直しやらTPP参加に積極的な姿勢を見せて野田ドジョウ首相の露払い役を担っているようにも見えるのですが、前と前の前の政権があれやこれやを先送りしただけでなく更に政治課題を積み増しする大失敗を犯してしまった後継内閣なればこそ、大車輪で業績を上げて行かねばあと1年しかない党代表の任期が切れたらさっさと交代させられてしまうという個人的な事情もある野田ドジョウ新首相としては、短期決戦型で大きな仕事を立て続けに片付けてしまねばならないのでしょうが、身の丈に合わない無理をすると結局は官僚主導の奇怪なつぎはぎ縦割り政治が最悪の形で復活してしまいそうで、この10日間ほどは得体の知れない危惧の念に苛(さいな)まれて茫然自失状態であります。

安住淳財務相は12日、経団連会館で経団連の米倉弘昌会長と会談し、「来年には必ず消費税の法案を税と社会保障の一体改革とあわせて(通常国会に)出す」と語り、平成24年度の税制改正で消費税率の引き上げを目指す考えを示した。安住財務相は「少子高齢化に直面する日本が今後も直接税に依存していくのはもう無理」と表明。「消費税を国民の皆さんにお願いするしか道はない」と語った。米倉会長は「大いにやってほしい」と賛意を示し、双方は財政健全化の重要性で一致した。…… 

■財政に通じているという噂を聞いたこともなかった安住財務相が、不自然なほど自信たっぷりに増税論をぶって歩く姿は滑稽でもあり気味が悪いものを感じますが、どうして国民に向かって説明する前に経団連会長に妙な約束をしに行くのでしょうなあ?既成事実を積み上げて愚かな国民を煙に巻いてしまおうと誰かさんが策を弄しているとしか思えません。二代続いた愚かな政権の後ですから、目先の失敗を避ける知恵なら誰にも負けない官僚組織に頼り切って政党消滅を必死で回避しようとしているだけの事なら大問題でしょうなあ。経営者の団体であるはずの経団連の代表が長引く不況下で増税を「大いにやってほしい」などと言ってしまって、本当に良いのでしょうか?


……安住財務相はまた日本の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加問題について「メリットはなかなか目に見えないが、しっかりと説明し深く考えれば日本人は必ず結論を見いだしてくれると思う」と語り、参加に前向きな考えを表明。会談のなかで「将来を見据えて進んでいかなければならない。覚悟の問題だ」と強調した。……
2011年10月12日(水)11時11分 産経新聞 

■安住財務相こそ、「TPPのメリット」を深く理解しているのか?はなはだ心細い印象が強いのですが、「戸別補償制度」くらいしか農業政策を提示しえないまま政権を取ってしまった民主党にTPPに対応する農業大改革など出来るのかいなあ?と心配になります。今の民主党にこそ「覚悟」が有るのか?と問いたくなります。菅アルイミ前首相が「第3の開国だ!」「平成の開国だ!」と毎度のことながら唐突に言い出したのは1年前のことでしたなあ。既に発言の軽さに誰もが辟易していた頃でしたから、「ああ、また何か言っているよ」と聞き流されてお仕舞いでしたなあ。そして、安住財務相が妙に張り切って「覚悟」を語っていた日に、眼を疑うようなニュースが流れたのであります。


藤村修官房長官は12日午後の会見で、今月内にも初会合を行う予定の「国家戦略会議(仮称)」について、日本再生戦略など中長期的な問題を戦略的に考えていく組織になるとし、環太平洋連携協定(TPP)や税と社会保障の一体改革などの議論は入ってこないとの認識を示した。……今週中に会議に加わる民間人のリストを作成して要請するとの段取りを明らかにしたうえで「TPPは党の議論が始まっており、(政府の)議論は閣僚会合に預けることになった」と語った。さらに税と社会保障の一体改革についても、国家戦略会議には入ってこないと思うとし、「日本再生戦略を年内には発表したいというのが所信表明の中身であり、足元の問題というより中長期的なことをここ(国家戦略会議)で戦略的に考えていく。当面の課題を結論づけるという位置づけではないと思う」との見方を示した。また、国家戦略会議で、経済財政諮問会議のように骨太の方針を策定する予定もないという。
2011年10月12日(水) ロイター 

■税金を使って運営する組織の仕事を説明するのに「やらない事」を列挙するというのは実に変な話であります。新発売の自動車を発表する時に「この自動車は空は飛ばないし水にも潜れません」などと言うはずはないし、IT機器の説明で「できない仕事」を列挙することなど有り得ません。華々しくマニフェストに掲げた「鳩山政権の政権構想」として5原則・5策の第3策に「官邸機能を強化し、総理直属の国家戦略局を設置し、官民の優秀な人材を結集して新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する」と明確に書かれているのに、「税と社会保障の一体改革」には指一本触れられないまま「日本再生戦略」を作れるのか?これが野田ドジョウ新首相が言うマニフェストの「理念は生きている」という事の実態ならば、もう民主党の命運は尽きていると申せましょうなあ。

■年金制度の改悪案が公表されて日本中が大騒ぎになっておりますが、菅アルイミ政権の時代に取りまとめた「税と社会保障の一体改革」案の中にこっそり忍び込ませていたのを、故意か過失かは知りませんが、マスコミは足並み揃えて消費税引き上げ問題ばかりを大きく取り上げて国民もうっかり騙されてしまっていたのが真相だとか……。菅アルイミ首相が「やるべきことはやった」と虚しい自画自賛をして総理の座を降りた時、誰も数少ない業績の一つだった「一体化案」の検証をしようとはしなかったのは迂闊がことでありました。菅アルイミ前首相は何もしなかったのではなくて、実はトンデモない置き土産を残していたと改めて思い知るのであります。


政府は、年金記録の訂正申し出が妥当かどうかを判断する総務省所管の年金記録確認第三者委員会を13年度以降に廃止し、業務を厚生労働省所管の社会保険審査会に移す方向で検討に入った。当初、厚労省は業務移管を拒否していたが、社保審の人手不足解消策として第三者委の業務を引き受ければ組織を拡大できることもあり、方針を転じた。…… 

■これまた唐突な発表で、情報元の「政府」とは誰のことだ?と訝しく思えるほどですが、年金制度改悪案の念押し報道に合わせるようなタイミングを計っている頭のよい悪い奴が隠れていそうでありますなあ。


第三者委は07年6月、年金記録問題の発覚を受けて設置された。本来、確認業務は厚労省所管の社保審がやるべき任務だったが、事務局の設置場所について、安倍晋三政権は「旧社会保険庁や厚労省では国民の信頼を得られない」として、厚労省の抵抗を抑え総務省とした経緯がある。当時「審査の資格なし」と判断された厚労省が業務を引き受けることは、「焼け太り」との批判を招きそうだ。第三者委は設置から4年以上が過ぎ、処理件数は徐々に減っているが、10年度の件数は週平均1200件で、行政評価事務所からは「本来の行政監視業務ができない」との声が上がっている。このため、第三者委は今年6月にまとめた報告書で厚労省側への業務移管を求め、総務省が厚労省に移管を要請した。しかし、厚労省は国民年金保険料の未納問題への対応などで人手を割けないとして、いったん拒否。総務省は厚労省と協議を続ける意向で、来年度分の経費74億円を概算要求に計上している。…… 

■年金制度を世界で最も複雑で管理不能のシステムにしてしまったのも、グリーンピアなどの愚かな無駄遣いで1兆円以上もの損失を出したのも自民党政権時代の旧社会保険庁でした。人口ピラミッドが逆転するのを知っていながら制度改革を怠り、後の給付義務を忘れて積立金をハコモノばらまき政治に流用し続けた罪をすっかり忘れて「政権奪還」を夢想する自民党にも困ったものでありますが、保険料を負担する人口が急速に減る一方で元気なお年寄りが都市にも地方にもあふれるような少子高齢化問題をずっと先送りした上に国民からの信頼を失って保険料を支払って貰えなくなってしまった年金制度をどんなにいじくり回してみても現実に適応した制度になどならないのかも知れません。投票率が高く数の多い高齢者を喜ばせることで長期政権を維持した自民党が悪いのか、政治に興味を持てずに選挙権を放棄してしまった多くの若者が悪かったのか、判断は難しいところですが戦後の民主主義が残した大いなる負の遺産であることは確かでしょう。その証拠に自民党政権を支えてくれた世代は食い逃げに成功し、後に続く世代は保険料の納め損になる可能性が年々高まって行くのであります。


こうした中、厚労省は第三者委と同じ苦情処理機関の社保審が人手不足に陥っている問題を勘案し、総務省の要請を再検討した。健康保険や年金給付への不服申し立てを受け付ける社保審は、申立件数が10年度は1782件で1238件を処理できず、今年度に繰り越した。「能力の限界を超えている」(事務局)といい、第三者委の業務を社保審で引き受けることで組織を拡大する方向にかじを切った。総務省には13年度に設置期限を迎える「年金業務監視委員会」も設置されている。厚労省内には、第三者委と同時に取り込んで「年金審判庁」とする思惑まで浮上している。

◇年金記録確認第三者委員会
国に記録がなく、受給者側にも領収書など保険料を納めた証拠のない場合、本人の申請に沿って記録を訂正し、年金を支給すべきか否かを判断する機関。総務省本省に中央委員会、全国50カ所の行政評価事務所などに地方委員会があり、これまで約24万件の申し立てを処理した。弁護士や社会保険労務士などによる合議制で、有識者の合議制としている社会保険審査会と似ている。
2011年10月17日(月) 毎日新聞 

■年金制度の不備を補うために要する人的コストも莫大で、どこかバブル崩壊後に金融機関を公的資金で延命救済した構図に似ているようにも思えますが、国民の怒りを買った自民党は長年の与党政権の座を失うという最も重い罰を受けたのに厚労省や社会保険庁は実質的な罰は何も受けずに今度は「焼け太り」までして更に組織を肥え太らせようというのは、官僚天国そのものと申せましょうなあ。

やるべき事をやった後で…… 其の参

2011-10-03 15:02:57 | 政治
■発足して馴らし運転・安全運転を続けている野田ドジョウ新首相は、慎重な言動と実直・低姿勢に徹して粛々と誰かさんの指示通りに増税路線を突き進んでいるようです。民主党の三代目首相が誕生したことよりも経産省の改革派官僚だった古賀茂明氏が辞表を出したことの方が、日本の政治を考える上では遥かに重大な意味を持つと思うのですが、この件をずっと考えているうちにブログが開店休業状態になってしまいました。考え事の整理がつき次第、別項で取り上げようと思っております。

■さてさて、外交デビューを果たした野田ドジョウ新首相が帰国してワイドショー系の報道では首相夫人の方が注目されていたようですが、国連での初演説がパレスチナ代表の後という貧乏籤に当たったこともあって八百長問題の発覚以来ずっと閑古鳥が鳴いている大相撲の会場よりも空席が目立つ、実に寂しいものになったのは残念でありました。折角、菅アルイミ前首相の脱原発政策をなし崩しに無視する二枚舌演説で原発推進派の国々から拍手して貰おうと原稿を練り上げて臨んだのに無駄骨に終わってしまったようです。何事につけ前政権に比べられている限りは「マトモ」と思って貰える間が華なので、せっせと国連外交で点数を稼いでおきたかった計算が狂ってしまった野田ドジョウ新首相としましては、前前政権がぶっ壊して前政権が事務的に先送りして放っておいた普天間基地移設問題を筆頭に、2年余りの外交空白を大急ぎで埋める算段をしなければならず、財務省に続いて今度は外務省の官僚からいろいろと教えて貰わねばならなくなりそうです。幸か不幸か民主党の『マニフェスト』には外交と安全保障に関しては何も書いてないも同然ですから、独自色を出そうと少しばかり思い付きで動いても問題はないような気もしますが、2人の前任者のように知ったかぶりして慣れない事をして国益を失い大恥を掻くようなことはないでしょうなあ?

■その2人の前任者、菅直人前首相、鳩山由紀夫元首相は9月5日付けで民主党最高顧問に就任していたのですが、知っている人はほとんど居ないかも?これまでの民主党最高顧問は単なるお飾りでしたが、これからはかつての自民党時代のように「総理経験者」が現首相を囲んで会議をしたら、さぞやマスコミ受けして選挙向けの宣伝にもなるなどと能天気なことを考えてはいないでしょうな!?大失政を山のように重ねたという意味での大先輩2人から言われた事の正反対に行動すれば大過なく政権運営が出来る可能性は高いでしょうが、既に鳩山サセテイタダク元総理などが「ぶら下がり取材は鬼門だ」などと自分自身の愚かさを棚に上げて助言しているようですが、慎重居士の野田ドジョウ新首相は鼻も引っ掛けずに黙殺している由。自民党政権時代、小泉プレスリー元首相はぶら下がり取材を徹底的に利用して高い支持率を維持していたのですから、鳩山サセテイタダク元首相が辞任に追い込まれたのは発言がころころ変わって政治が大混乱したことが原因であるのは明らかです。御本人だけが真実を理解していないのは恐ろしい話であります。

■日本の憲政史上「鳩山は最低、菅は最悪」と身内の幹部からも断罪された片割れの菅アルイミ前首相の方は、影が薄いどころか総理大臣だったことさえも間も無く忘れ去られそうな気配でありましたが、やはり、他にやるべき事も無いらしく初めての「有言実行」となるお遍路さんを再開したのだそうです。まあ、政治資金規正法違反で告発されている身ですから本格的な取調べが始まり、起訴でもされたらお遍路さんなどしている暇はなくなるでしょうから、一つくらいは公言した約束を守ってみせるためにも今しか歩き出す機会は無いのかも知れません。


退陣してから約1カ月の菅直人前首相が、中断していた四国八十八カ所霊場巡りを再開した。白装束に「同行二人」と書かれた菅笠(すげがさ)をかぶり、3日には愛媛県今治市の五十四番札所「延命寺」を訪れ、歩いての札所巡り「歩き遍路」を再スタートさせた。SPを連れてはいるが、東京の事務所にも詳しい日程は知らせていない一人旅で、9日までかけて香川県へ入る予定。この日午前は、延命寺や五十五番札所「南光坊」など今治市内の札所を巡った。…… 

■鳩山サセテイタダク前首相を謀(たばか)って不信任案を否決して政権にしがみ付いていた頃から次の札所は「延命寺だ」と冗談みたいに報じられていたものですが、本当に延命寺から再スタートだったのですなあ。居座りに成功した最後の3箇月を延命寺のご本尊に感謝したかどうかは不明ですが、腐っても鯛ならぬ失政を重ねた前首相でも税金を使ってSPを付けなねばならないというのは行財政改革の範疇には含まれないようですなあ。原発事故で人生を大きく狂わされた被災者の中には菅アルイミ前首相を深く恨んでいる人物がいるでしょうから、山道を一人で歩かせるわけにも行かないのでしょうが……。


南光坊で取材に応じた菅前首相は心境を問われ、「東日本大震災からの復旧・復興と、犠牲者の冥福。それから原発事故の収束。それだけです」と穏やかに語った。更に脱・原発依存については「(首相)在職中にある程度、方向が示されたと思う。最終的には国民が決める」と述べた。菅前首相のお遍路は、年金未納問題で民主党代表辞任に追い込まれ、「自分自身を見つめ直す」と髪を短く刈り上げて04年7月に一番札所「霊山寺」(徳島県鳴門市)からスタート。その後も断続的に続け、党代表代行時代の08年7月に、五十三番札所「円明寺」(松山市)まで達していた。
2011年10月3日(月) 毎日新聞 

■四国のお遍路と言えばショーケンこと萩原健一さんが1990年代前半に突如として白装束に身を包んで密かに歩いていたことが芸能ニュースとして大きく取り上げられたことがありましたから菅アルイミ首相がお遍路姿になった時には軽薄な二番煎じのような印象を受けた記憶があります。その菅アルイミ首相はショーケンの4歳年上で、興味深いことに二人は厳密な意味での「団塊の世代」を前後に挟んでいるのであります。終戦後の第一次ベビーブームと呼ばれる1947年から1949年に出生した約806万人が団塊の世代とされているそうですから、1946年生まれの菅アルイミ前首相と1950年生まれのショーケンは巨大な集団を挟んで育って来たことになります。因みに初代民主党オーナー首相として散々な悪評のみを残した鳩山由紀夫さんは1947年(昭和22年)生まれで「団塊の世代」の代表でもあったのでした。そして、野田ドジョウ新首相は10歳年下で1957年(昭和32年)の生まれですから、小学校に入学した時には団塊の世代は全員が中学校に上がってしまい校内には残っていなかったことになります。順に鳩山・菅・ショーケン・野田と並べると手軽な世代論が作れるかも知れませんぞ。

■民主党最高顧問の菅アルイミ首相は神奈川県の住民らが政治資金規正法違反罪(虚偽記載)で、菅氏に対する告発状を東京地検特捜部に提出して受理されており、首の辺りにひんやりしたものを感じながら四国を歩いている一方、クラッシャー小沢一郎・民主党元代表の方は資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人の判決が26日午後、東京地裁(登石郁朗裁判長)で言い渡されまして、大方の予想を裏切って石川被告と大久保法規(50)、池田光智被告(34)の3人が全員「有罪」となりました。「政治とカネ」の問題を声高に叫んでは政権交代を成功させた最大の功労者であるクラッシャー小沢を生贄にして「反小沢」で支持率を引き上げようと躍起になって民主党内部に深刻な対立を作ってしまったのが菅アルイミ前首相で、その後始末を押し付けられた野田ドジョウ新首相は大変な苦労をしております。思いつきの「脱・原発依存」は継承されているとは思えず、「ある程度、方向が示された」などと陰湿な自画自賛に浸っていられるような状態ではありますまい。本当に菅アルイミ内閣は何をやっていたのでしょう?!既に思い出したくもない政権として記憶の外に排除されてしまいそうですが、民主党政権が続く限りは菅アルイミ内閣の問題は決して忘れてはならないと思うのであります。