いまさらながらの原点回帰
あの世に聞いた、この世の仕組み
スメルマン
その男は、長らく1枚のブリーフを愛用していた。
今はなき父より受け継いだ、由緒正しき大切なブリーフ。
さらさらのコットン100%。厚すぎず、薄すぎず。
締め付けすぎず、緩すぎもなく、実に、収まりがよろしい。
ふぐりとともに気分までピシッと引き締まるようだ。
時代がどんなにトランクス人気に拍車をかけようとも、決して流されることなくそのブリーフを履き続けた。
どれほど周りから、「ダサい、古い」と言われようとも、男は決して揺るがなかった。
「どのみち、見えるわけではあるまいに」と。
が、ある日のこと。
男はいよいよあることに気がついた。
「なにか、臭う」
そう。
唯一その布が男の股間を離れるのは、排泄時に足下に下ろす時のみ。
男はそのブリーフを愛し過ぎたがゆえ、一時たりとも決してそのブリーフを脱がなかったのである。
かつては真っ白だったブリーフも、いまではすっかり黄ばみ、彼色に染まっていた。
もはやそれは、第2の皮膚。自身の一部。
いや、それ以上に、このブリーフこそが己のアイデンティティを成しているのだと言わんばかりの同一化ぶりである。
ブリーフを非難されれば、それは己を非難されるのと同義。
そのブリーフが、臭う。
そして、かゆい。
ストレス、といえばストレス。が、我慢できないほどではない。
雨の日も風の日も、これまで人生の苦楽をともにしてきた同志。
そう易々と脱ぐわけにはいかぬ。
なにより、脱ぎ方がわからない。
そしてそのまま、男はいつもの日常へと舞い戻った。
「大丈夫。どのみち、見えるわけではあるまい」
が、いくら自分がよしとせよ、周りはそれをよしとはしなかった。
たしかにズボンの中のブリーフが、そのまま見えているわけではない。
それでも、内側からにじみ出るものは、隠しようがなかった。
人は徐々に離れだし、時には非難され、気がつけば、周りは、自分と同じような匂いの連中ばかりになっていた。
*****
「あの、前から気になってなんですが……臭い、ですよ」
初めて露骨に注意してくれたのは、男と営業2課で席を並べる琴音さんだった。
「やっぱり、僕、臭い?」
「ええ、強烈に。こう言うのもなんですけど、あなたの営業成績にも響いていると思いますよ?」
「すまない。自分でも薄々気づいてはいたんだけど……。でも、これが僕という人間なんだ」
「何を言ってるんですか。人は、誰だって変われます!」
「そう簡単に言わないでくれよ。なにをどうすればいいって言うんだ?」
「簡単ですよ。ブリーフチェンジすればいいだけです」
「ブリーフチェンジ?」
「そう、いままでのブリーフから、新しいブリーフにすればいいんです」
琴音さんの言葉には、男に変わって欲しいという願いが色濃く感じられた。
なにより、毎日隣の席で被害を被っているのだから。
「へー!ブリーフチェンジね。 で、それはどうやって?」
男の質問に、琴音さんは目を丸くした。
「いや、どうやってもこうやっても……。新しいブリーフに替えるだけですよ」
「そうは言っても、これまでのブリーフが、すっかり身についてしまっているんだ。それに、ほかにどんなブリーフにすればいいのかもわからない」
「どんなブリーフでもいいですよ! 人の数だけ、様々なブリーフがあるんですから。とりあえず、あなたの場合は防臭性の高いブリーフがいいと思いますけど」
「防臭性の高いブリーフだね! ありがとう! 早速買ってみるよ。ところで、オススメのお店はある?」
そして男は、会社帰りに、これまで足を向けたこともなかった百貨店の下着売り場へ到着した。
なんてことだ。世の中には、こんなに沢山のブリーフがあったのか。
所狭しとならぶ下着を前に、男は感嘆した。
『抗菌・超防臭』
パッケージに大きく書かれたその文字をみつけ、男は意気揚々とレジへ向かった。
「これで、俺は変わる!」
*****
次の日。
男は「琴音さんは、この変化に気づいてくれるだろうか」という期待とともにいつもより早く出社した。
「おはようございますっ!」
琴音さんが席に着くと、男は胸を張って挨拶した。
「あ、おはよう、ございます。あれ? いつもの匂いが……。もしかして、早速替えたんですか?」
「ええ! 昨日早速買ってきました。どうですか、匂い、なくなりました?」
「う〜ん。まだちょっと臭うけど……」
「え?」
「いや、それでも、全然いいですよ! 薄くなりました、匂い」
「あ〜〜〜、良かった〜〜〜」
「きっとこれから、色んな事が好転すると思いますよ。ブリーフが替わると、人間関係も仕事も、色々影響されますから」
「そうですか。それは楽しみだなぁ」
*****
数ヶ月後。
「ねえ、最近あの人、ちょっと変じゃない?」
「あの人って?」
「あ〜、もしかして、あの営業2課の?」
「そう! あの人、なんだか最近、腰回りっていうか、股間のあたり、オムツはいてるみたいにモコモコしてない?」
「してる〜〜〜!!」
かつて「スメルマン」と呼ばれていた男は、「オムツマン」と呼ばれるようになった。
「あいつ、古いブリーフ脱がないまま、新しいブリーフ次から次に重ね履きしてるな……」
そのことを知っているのは、琴音さんだけである。
そしてまた、匂いとかゆみは脱ぐだけで解決できることに、男はまだ気づいていない。
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トークライブ・インフォメーション
\
1年ぶりに、札幌にお伺いいたします!
今回のテーマは「老子」。
『ラブ、安堵、ピース』の世界から、本には書かれていないお話までたっぷりお話したいと思っています。
黒澤一樹トークライブ『TAO』
〜老子に聞いた、この世の仕組み〜
【日時】7月15日(土)14:00〜16:00(開場13:30)
【会場】札幌市教育文化会館 研修室301
札幌市中央区北1条西13丁目(札幌市営地下鉄東西線「西11丁目駅」1番出口から徒歩5分)
【料金】お一人様3,800円
主催・協賛:株式会社ULGさま(お問い合わせ:011-614-1319/古池さま)
お申し込みは【こちら】から
*****
「引き寄せの法則」のオーソリティ登壇!
「引き寄せ」を超常現象などのように捉えるのではなく、「現実的な学習」と再解釈し、そのコツや心得、実践をわかりやすく提示することで大ベストセラーとなった『引き寄せの教科書』の著者・奥平亜美衣さんをお迎えし、おなじみ阿部敏郎さんとイベントをご一緒させていただく運びとなりました!
第2次引き寄せブームを牽引された奥平さんに、僕からも根掘り葉掘りあれこれお伺いしてみたいと思います!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/89/7fe2ca3557901163ad4cd2ef2ad95bb1.png)
願望実現の仕組みと実践 阿雲&奥平亜美衣
【日時】7月23日(日)14:00〜17:00(開場13:30)
【会場】KFC 2ndホール
東京都墨田区横網一丁目6番1号国際ファッションセンタービル 2階 (MAP)
【料金】お一人様5,000円+税
詳細・お申し込みは【こちら】から
*****
平日のお話会『月イチ☆』ツアー。
今月は下記のスケジュールで開催いたします!
事前のご予約やチケットのご購入は不要です。当日、直接会場へお越しください!
平日のお話会「月イチ☆」(東京開催)
【日時】7月31日(月)19:30〜21:30(開場19:00)
【会場】三鷹産業プラザ7階 703会議室
東京都三鷹市下連雀3-38-4(MAP)
【料金】お一人様2,000円
平日のお話会「月イチ☆WEST」(大阪開催)
【日時】7月27日(木)19:00〜21:00(開場18:30)
【会場】大阪産業創造館 5階 会議室B
大阪市中央区本町1-4-5(MAP)
【料金】お一人様2,500円
平日のお話会「でら☆月イチ」(名古屋開催)
【日時】7月28日(金)19:30〜21:30(開場19:00)
【会場】ウインクあいち 会議室1008
愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38(MAP)
【料金】お一人様2,500円
←「雲黒斎」から「黒澤一樹」になったのは、消臭効果ですか?
今はなき父より受け継いだ、由緒正しき大切なブリーフ。
さらさらのコットン100%。厚すぎず、薄すぎず。
締め付けすぎず、緩すぎもなく、実に、収まりがよろしい。
ふぐりとともに気分までピシッと引き締まるようだ。
時代がどんなにトランクス人気に拍車をかけようとも、決して流されることなくそのブリーフを履き続けた。
どれほど周りから、「ダサい、古い」と言われようとも、男は決して揺るがなかった。
「どのみち、見えるわけではあるまいに」と。
が、ある日のこと。
男はいよいよあることに気がついた。
「なにか、臭う」
そう。
唯一その布が男の股間を離れるのは、排泄時に足下に下ろす時のみ。
男はそのブリーフを愛し過ぎたがゆえ、一時たりとも決してそのブリーフを脱がなかったのである。
かつては真っ白だったブリーフも、いまではすっかり黄ばみ、彼色に染まっていた。
もはやそれは、第2の皮膚。自身の一部。
いや、それ以上に、このブリーフこそが己のアイデンティティを成しているのだと言わんばかりの同一化ぶりである。
ブリーフを非難されれば、それは己を非難されるのと同義。
そのブリーフが、臭う。
そして、かゆい。
ストレス、といえばストレス。が、我慢できないほどではない。
雨の日も風の日も、これまで人生の苦楽をともにしてきた同志。
そう易々と脱ぐわけにはいかぬ。
なにより、脱ぎ方がわからない。
そしてそのまま、男はいつもの日常へと舞い戻った。
「大丈夫。どのみち、見えるわけではあるまい」
が、いくら自分がよしとせよ、周りはそれをよしとはしなかった。
たしかにズボンの中のブリーフが、そのまま見えているわけではない。
それでも、内側からにじみ出るものは、隠しようがなかった。
人は徐々に離れだし、時には非難され、気がつけば、周りは、自分と同じような匂いの連中ばかりになっていた。
*****
「あの、前から気になってなんですが……臭い、ですよ」
初めて露骨に注意してくれたのは、男と営業2課で席を並べる琴音さんだった。
「やっぱり、僕、臭い?」
「ええ、強烈に。こう言うのもなんですけど、あなたの営業成績にも響いていると思いますよ?」
「すまない。自分でも薄々気づいてはいたんだけど……。でも、これが僕という人間なんだ」
「何を言ってるんですか。人は、誰だって変われます!」
「そう簡単に言わないでくれよ。なにをどうすればいいって言うんだ?」
「簡単ですよ。ブリーフチェンジすればいいだけです」
「ブリーフチェンジ?」
「そう、いままでのブリーフから、新しいブリーフにすればいいんです」
琴音さんの言葉には、男に変わって欲しいという願いが色濃く感じられた。
なにより、毎日隣の席で被害を被っているのだから。
「へー!ブリーフチェンジね。 で、それはどうやって?」
男の質問に、琴音さんは目を丸くした。
「いや、どうやってもこうやっても……。新しいブリーフに替えるだけですよ」
「そうは言っても、これまでのブリーフが、すっかり身についてしまっているんだ。それに、ほかにどんなブリーフにすればいいのかもわからない」
「どんなブリーフでもいいですよ! 人の数だけ、様々なブリーフがあるんですから。とりあえず、あなたの場合は防臭性の高いブリーフがいいと思いますけど」
「防臭性の高いブリーフだね! ありがとう! 早速買ってみるよ。ところで、オススメのお店はある?」
そして男は、会社帰りに、これまで足を向けたこともなかった百貨店の下着売り場へ到着した。
なんてことだ。世の中には、こんなに沢山のブリーフがあったのか。
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次の日。
男は「琴音さんは、この変化に気づいてくれるだろうか」という期待とともにいつもより早く出社した。
「おはようございますっ!」
琴音さんが席に着くと、男は胸を張って挨拶した。
「あ、おはよう、ございます。あれ? いつもの匂いが……。もしかして、早速替えたんですか?」
「ええ! 昨日早速買ってきました。どうですか、匂い、なくなりました?」
「う〜ん。まだちょっと臭うけど……」
「え?」
「いや、それでも、全然いいですよ! 薄くなりました、匂い」
「あ〜〜〜、良かった〜〜〜」
「きっとこれから、色んな事が好転すると思いますよ。ブリーフが替わると、人間関係も仕事も、色々影響されますから」
「そうですか。それは楽しみだなぁ」
*****
数ヶ月後。
「ねえ、最近あの人、ちょっと変じゃない?」
「あの人って?」
「あ〜、もしかして、あの営業2課の?」
「そう! あの人、なんだか最近、腰回りっていうか、股間のあたり、オムツはいてるみたいにモコモコしてない?」
「してる〜〜〜!!」
かつて「スメルマン」と呼ばれていた男は、「オムツマン」と呼ばれるようになった。
「あいつ、古いブリーフ脱がないまま、新しいブリーフ次から次に重ね履きしてるな……」
そのことを知っているのは、琴音さんだけである。
そしてまた、匂いとかゆみは脱ぐだけで解決できることに、男はまだ気づいていない。
/
トークライブ・インフォメーション
\
1年ぶりに、札幌にお伺いいたします!
今回のテーマは「老子」。
『ラブ、安堵、ピース』の世界から、本には書かれていないお話までたっぷりお話したいと思っています。
黒澤一樹トークライブ『TAO』
〜老子に聞いた、この世の仕組み〜
【日時】7月15日(土)14:00〜16:00(開場13:30)
【会場】札幌市教育文化会館 研修室301
札幌市中央区北1条西13丁目(札幌市営地下鉄東西線「西11丁目駅」1番出口から徒歩5分)
【料金】お一人様3,800円
主催・協賛:株式会社ULGさま(お問い合わせ:011-614-1319/古池さま)
お申し込みは【こちら】から
*****
「引き寄せの法則」のオーソリティ登壇!
「引き寄せ」を超常現象などのように捉えるのではなく、「現実的な学習」と再解釈し、そのコツや心得、実践をわかりやすく提示することで大ベストセラーとなった『引き寄せの教科書』の著者・奥平亜美衣さんをお迎えし、おなじみ阿部敏郎さんとイベントをご一緒させていただく運びとなりました!
第2次引き寄せブームを牽引された奥平さんに、僕からも根掘り葉掘りあれこれお伺いしてみたいと思います!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/89/7fe2ca3557901163ad4cd2ef2ad95bb1.png)
願望実現の仕組みと実践 阿雲&奥平亜美衣
【日時】7月23日(日)14:00〜17:00(開場13:30)
【会場】KFC 2ndホール
東京都墨田区横網一丁目6番1号国際ファッションセンタービル 2階 (MAP)
【料金】お一人様5,000円+税
詳細・お申し込みは【こちら】から
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平日のお話会『月イチ☆』ツアー。
今月は下記のスケジュールで開催いたします!
事前のご予約やチケットのご購入は不要です。当日、直接会場へお越しください!
平日のお話会「月イチ☆」(東京開催)
【日時】7月31日(月)19:30〜21:30(開場19:00)
【会場】三鷹産業プラザ7階 703会議室
東京都三鷹市下連雀3-38-4(MAP)
【料金】お一人様2,000円
平日のお話会「月イチ☆WEST」(大阪開催)
【日時】7月27日(木)19:00〜21:00(開場18:30)
【会場】大阪産業創造館 5階 会議室B
大阪市中央区本町1-4-5(MAP)
【料金】お一人様2,500円
平日のお話会「でら☆月イチ」(名古屋開催)
【日時】7月28日(金)19:30〜21:30(開場19:00)
【会場】ウインクあいち 会議室1008
愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38(MAP)
【料金】お一人様2,500円
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