犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

公共事業>人口減少時代の水道の計画について(その3)

2012年04月01日 | 公共土木事業評価監視
旧柳田村簡易水道計画とは
 旧柳田村の簡易水道の歴史を要約するとつぎのとおりである。
40年ほど前の昭和40年代に柳田地区を始めとして各地区に簡易水道が造られた。整備拡充、給水地区の拡張、地区の統合をしながら、平成9年(1997)の「柳田地区簡易水道第3次拡張事業(H9~18)」によって旧柳田村全体の簡易水道統合を目指した。総事業費47億円(一人当たり約100万円)である。集約的な維持管理をして、低廉、清浄、豊富な水道水が長期的に安定供給するためである。財政が逼迫したこともあり、計画通りに進行せず、その間、平成17年に町村合併もあり、平成19年からは公営企業経営健全化計画もあり、事業の完了は当初完了予定の平成18年度を10年延長し、平成28年度とした。

 「柳田地区簡易水道事業変更概要書」によると、平成18年(2006)の村の人口は5,150人(行政区域内人口)、このうちの給水できるのは4,840人(計画給水人口、行政区域内人口の94%になる)である。事業を10年延長するに際して、これらの諸元はそのままである。

 計画では、「行政区域内人口の過去10ヶ年の減少人口は576人(中略)。若年層の都市流出を食い止める各種の施策を行って(中略)。将来人口の人口減少を100人程度と定め、平成18年度の行政区域内人口は5,150人とした。」とある。実際には、1,000人程度の人口減少があり、平成18年で4,295人(住民基本台帳人口)となっている。計画人口の83%である。平成28年では、3,390人程度と推定され、66%となる。

 この間の推移を図によって示す。
図1は、昭和61年(1986)から平成7年(1995)の人口の実績値を示している。住民人口は住民基本台帳人口である。行政区域内人口は簡易水道計画において各地区の住民数を調べ合計したものであり、住民基本台帳人口とわずかな相違はあるがほとんど同じものである。給水区域内人口は簡易水道の水供給を受けることができる人口である。

 図2は、平成9年に柳田地区簡易水道第3次拡張事業を開始した時の推定である。平成8年(1996)から平成18年(2006)の行政区域内人口の推定値の推移を示し、平成18(2006)年の人口は5,150人である。同様に、給水区域内人口の推定値の推移を示し、平成18年(2006)の人口は4,840人である。1995から1996にかけて不自然に増加しているのは、推定値が各地区の推定人口を足し合わせて作られた数値のためである。住民人口はすべて実績値である。計画で推定した平成18年(2006)の行政区域内人口5,150人に対して、住民人口の実績値は4,295人となり、900人程度食い違っている。

 図3は、事業の諸元を変更することなく、事業完了年度を10年延長して、平成28年(2016)とした場合である。行政区域内人口5,150人に対して住民人口3,390人程度と推定され、その差は、1,760人となり、行政区域内人口の34%に相当する。給水区域内人口も同程度の見込み違いがあるとすれば、平成28年(2016)の実際の給水区域内人口は3,190人程度となる。その差は、1,650人である。おおよそ2対1になる。3人で支えるべきものが2人で支える勘定になるので、負担は1.5倍になる。例えると、水道使用料金が1立方メートルあたり200円ではなく、300円ということになる。実際にかかっている給水原価は平成7年度で454円ということになっているのでこれを1.5倍すれば700円にもなる。

図1 旧柳田村簡易水道計画 人口の実績値推移

図2 旧柳田村簡易水道計画 1996-2006 人口の実績値と推定値の推移

図3 旧柳田村簡易水道計画 1996-2016 人口の実績値と推定値の推移


 能登町の方針では、平成28年度に上水道事業と経営統合して問題解決、あるいは問題解決と言うよりも救済しようとしているようである。救済する側の上水道の給水人口は、17,500人(平成18年度)であり、旧柳田村簡易水道の計画給水人口(平成28年度)4,840人に比してそれほど大きいわけではない。上水道事業の財政状況は収支トントンの様子であるが、余裕があるわけではない。近年、使用料金収入が落ち込む傾向があるなど、先行きの不安が発生している。統合が上水道の足を引っ張る懸念がある。旧柳田村の簡易水道は人口という主要要素から見ると完全に破綻しているのは明らかであるが、人口減少時代の水道の計画について考えている様子はなく、問題先送りといった感が強い。代替案がない、成り行きでしようがないではなく、この先行きの悪化を防ぎながら、行政サービスを提供する本物の知恵がためされている。
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