前夜祭

みなと祭りの一週間前の土曜日は各学区で前夜祭が行われる。
みなと祭本番前の仕上の練習で、急きょ地踊りに参加する事に成っってしまった母も駆り出され浴衣で踊っている。

もう体力的に大変だからとお断りを入れていたのだけど、人数が足りないとかで参加を余儀なくされたそうで本当に大丈夫だろうかと心ならずとも気に掛かる。

いつかの年は祭りの途中から大雨に成りずぶ濡れで帰って来た事も有る。今年は審査の時だけ踊ってさっさと帰って来ると言っているそうだけど人の良い母がそんな冷たい事が出来るとも思えない。



町内の桟敷（グランドにブルーシートを敷いた物）に行って見ると今年から自治会長に成ったパーマ屋の旦那が法被姿で張り切っているのにはちょっと驚いた。此処で掛かる飲食代は町内会の予算に組み込まれているので、何の遠慮も無く飲み食いでいるのだけど（権利の主張）準備してくれた役員の手前有り難く頂戴する。


「毎朝5時頃に犬の散歩に出る時、ご近所中に起きる事を勧める犬の鳴き声約20秒を聞かされれるのは大迷惑です。（犬の目覚まし時計と呼んでいる）」と法被の旦那（家犬を二匹飼っていて、一匹はコロと言う名でいつも叱る付けているが全く言う事を聞かない。躾の失敗と言うか犬の飼い方を知らない様だ）に言おうかと喉元まで出て来たけど辞めて置いた。（大人げないから。どこが！）

上機嫌で飲み物やつまみを勧める法被の旦那と暫く歓談していたらケーキ屋の旦那も現れた。
ケーキ屋の旦那は町内の事は息子に任せてと言いのんびりした雰囲気だけど、桟敷に座って居る顔ぶれが一人も知らない事に驚き世代交代を痛感している様でした。

確かに、近所で見かける人は誰も居ない。



9時なると踊りも終わり一斉に片付け始める。
今の今まで祭モードだったのに、一瞬で仕事モードに成るのは勤勉な日本人の性でしょうか。

夜道を帰りながら遠くに花火の炸裂音が聞こえる。そうか今夜は安倍川の花火が有ったのでした。
静かな夜はちょっとざわついた夏の夜に成って居た。