確かに名言だが・・・

2020-10-17 14:41:52 | 

 ショーペンハウアーのこの言葉は有名だが、彼は代表作の「意思と表象としての世界」では違うことを言っている。「この本を読む前に、プラトン、カント、古代インドの聖典について学んでおけ」。つまり、「大いに本を読め」と言っているのだ。

 実際、彼は読書家で、特にヘロドトスの「歴史」を愛読していたらしい。頻繁に引用が出てくる。

 「読書について」では、アケメネス朝ペルシアのクセルクセス王のこんなエピソードを引用している。ギリシア征服に向かうペルシアの大軍を見て、クセルクセスは涙を流した。なぜかと問われて、彼は「これだけ大勢の人間がいても、何十年か経てばほとんど全員死んでしまうのかと思うと、哀れで・・・」と答えた。これと同様、「たくさんの本が出版されているが、数年後にはほとんどすべて忘れ去られてしまう」、とショーペンハウアーは書いている。

 「知性について」では、プラタイアの戦いの前に、あるペルシア人が漏らした嘆きを引用している。「われわれは、ギリシア軍に敗れるだろう。だが、それがわかっていても、将軍の命令には逆らえないのだ」。その後でショーペンハウアーは、「知は力なり」という言葉はウソだと断じている。「知性は、意思を満足させるための道具に過ぎない」。

 「意思と表象としての世界」で、ショーペンハウアーは「意思の廃絶」を説いているが、その具体例として、全ギリシアのためにテルモピュライの戦いで討ち死にした、スパルタのレオニダス王を挙げている。もっともレオニダス王は、「ペルシア軍を殲滅する」という意思だけは捨てなかったのだが。
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