旧約聖書を読む 43

2018-11-04 14:24:47 | 

 ユダヤ人の排外主義。

 ペルシアの助けにより、バビロンからエルサレムに帰還したユダヤ人たち。そこで彼らが最初に行ったのは、カナン地方の先住民の嫁、そして彼女たちとの間に生まれた子供と、離縁することだった(エズラ記10)。もともと、先住民の娘との結婚は、禁じられていた(出エジプト記34、16。記録に残るほぼ世界最古のヘイトスピーチ)。

 何をいまさら、という感じがする。ヨシュア率いるユダヤ人がカナンを征服してから、数百年が経っているというのに。それはともかく、神の怒りを宥めるために、彼らはそうした。だが・・・。

 旧約聖書を振り返ってみよう。アブラハムの息子イサクの嫁は、アラム人のリベカだった(創世記25、20)。

 イサクの息子ヤコブ(イスラエル)の嫁も、アラム人のレアとラケルだった(創世記29)。

 ヤコブの息子ヨセフの妻は、エジプト人のアセナトだった(創世記41、45)。彼女との間に生まれた息子マナセ、エフライムの子孫は、イスラエルの12部族に含まれている。

 時代が下って、モーセの妻はミディアン人のツィポラだった(出エジプト記2、21)が、そのことを非難したモーセの姉ミリアムは神の怒りを買い、重い皮膚病にかかった(民数記12)。

 さらにダビデ王は、ヘト人ウリヤの妻バト・シェバに横恋慕し、ウリヤを戦地に送って戦死に追い込んだ(サムエル記下11)。ヘト人はカナンの先住民で、そもそも神がユダヤ人に滅ぼし尽くすように命じていた(申命記7)。にもかかわらず、神はダビデ王を罰している(サムエル記下12)。

 ダビデの子、ソロモン王は多くの外国の女を愛した。700人の王妃と300人の側室がいた(列王記上11)。

 そうそう。ダビデ王の祖先には、モアブ人のルツという女性がいた(ルツ記)。 

 つまりユダヤ人は、もともと排外的ではなかった。だが、落ちぶれてしまうと、どうしてそうなったのか、不本意な歴史の説明を求めるようになる。だれかに責任を押しつけたくなる。その結果、モーセの時代のカナン人排斥に回帰したのだ。

 ・・・いや。ていうか、カナン人に責任を負わせる旧約聖書の記述は、すべてバビロン捕囚以降に書き加えられたもの、なのかもしれない。
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