「ヘイムスクリングラ」

2015-06-24 17:33:41 | 

を読み終える。二廻り目。スノッリ・ストゥルルソン著。

 「北欧神話のオーディンは、実在の人物だった」。このような記述にはだれでも驚いてしまうだろう。だが、妙にリアルなところもある。遠回しな表現だが、「オーディンは最強の魔術師だったがローマ軍には敵わず、人々を率いて黒海沿岸から北欧へ移った」、と書いてあるのだ。

 デュメジルは、この本(特に「ユングリンガサガ」)を批判して言う。「中世アイルランドの修道士たちが書いた作品と同様、言葉遊びだらけのファンタジーで、本当の歴史が書いてあるわけではない」(「ゲルマン人の神々」)。

 だが、スノッリとアイルランドの修道士を、同列に扱っていいのだろうか? 彼は、詩人であると同時に、アイスランドの有力な政治家でもあった。アイスランド併合を企むノルウェー国王と、独立を守ろうとする同胞たちの間を、のらりくらりと遊泳。業を煮やしたノルウェー国王が放った刺客によって、生涯を終える。つまり彼は、徹底的にリアルな世界に生きた人物だった。この点については、デュメジルは何も語っていないのにゃ。

 
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