を読む。マルセル・モース著。岩波文庫。去年出たばかりの新訳。「西洋の没落」の後だから、なおさら読みやすいのにゃ。
内容は、主に北米や太平洋の島々の人々が行うポトラッチ(競覇型の全体的給付)について。要するに、相手を破産に追い込みかねないくらいの、豪快なプレゼント合戦のことにゃ。こむつかしい理屈は控えめで、彼らの実生活の描写がメイン。さまざまな観察者の記述が引用されていて、フレイザーの「金枝篇」っぽい。「人と人の間でやりとりされる物には、神秘的な力がある」という観念が、時代や地域を越えて、いかに強く人々を支配しているかが書かれている。オカルト好きな人にもオススメにゃ。
本編よりも印象的なのが、おまけで収録されている「トラキア人における古代的な契約形態」。ポトラッチの一例として、クセノポンの「アナバシス」に出てくるトラキアの王様の宴会がクローズアップされているんだけど、やっぱり学者は目のつけどころが違うわ。ワタシも「アナバシス」は読んだけど、記憶に残っているのは「ペルシアから故郷へ逃げる途中で、ギリシア兵のひとりが現地の美少年を誘拐。結局二人はギリシアで生涯を共に過ごすことになった」、というエピソードくらい。ほんと、ワタシったら、どうしようもないわね。うふっ。