トゥーキュディデースの

2011-08-04 18:43:32 | 

「戦史」を読む。岩波文庫。

 世界史の教科書にも載っているこの本は、現在絶版中。なんとか古本屋で買えたのにゃ。まあ、いずれ復刊するだろうけど。

 ポリスの理念を高らかに謳い上げ、アテーナイ市民にペロポネーソス同盟との戦争の正当性を説くペリクレース。美しく力強い言葉だが、直後に疫病が襲い、アテーナイは大混乱に陥る。そして、高邁な理想は市民から忘れ去られ、ただただ利益だけが追求されるようになる。

 アテーナイの民主政が、戦争に拍車をかける。新たに台頭してきた市民たちが権益を求めて、対外遠征を際限なく繰り返すのだ。

 やはり、言葉よりも事実の方が強いのか。この頃からソクラテスを始めとする哲学者が続々と登場するが、それは哲学が一般市民から遊離し、少数のエリート(社会的な身分ではなく、哲学体質かどうかという意味での)だけのものになってしまったことを意味するのではないか。

 ヘロドトスと対照的に、リアリズムに徹したトゥーキュディデース。特に海戦の描写が見事だ。彼のような鋭敏な知性の持ち主が、現代に現れたら・・・・・・。たとえば、中央卸売市場の移転問題について、こう断言するのではないか。「築地です」、と。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする