ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ドン・デイヴィス、安らかに

2014-06-08 11:02:46 | ソウル、ファンク
JOHNNIE TAYLOR / WHO'S MAKING LOVE

6月5日、デトロイトの大物プロデューサー、ドン・デイヴィスが亡くなられたそうです。75歳でした。

モータウンの総帥ベリー・ゴーディと並び賞される程のデトロイト・ソウル・シーンの重要人物でありますが、代表的な仕事は、ジョニー・テイラー、ドラマティックスなど、メンフィスのスタックス系でのものが多かったりと、北部と南部を繋いだ革新的なプロデューサーだったのかもしれませんね。

また、プロデュースだけではなく、ジョニー・テイラーの大ヒット曲「Who's Making Love」を始め、数々の名曲にソングライターとして名を連ねたり、いくつかのレーベルを立ち上げその運営を手掛けたり、活動初期にはモータウン等でセッションギタリスト(バレット・ストロングの「マネー」でもギターを弾いていたとか)を務めていたり、後に銀行家としても大成したりと、様々な顔を持つ方でもありました。

そんな中、やはり一番の代表作と言えばジョニー・テイラーの「WHO'S MAKING LOVE」(写真上)でしょうね。これは1968年の作品で、ドン・デイヴィスにとっておそらくスタックスにおける最初期の仕事。タイトル曲「Who's Making Love」はジョニー・テイラーのディープなフィーリングと、ドン・デイヴィスのノーザンなグルーヴが見事にマッチした名曲ですね。またジョニー・テイラーとはこのアルバム後も「Jody's Got Your Girl and Gone」(72年)、「I Believe in You (You Believe in Me)」(73年)、「Disco Lady」(76年)など、数々のヒット曲を生み出し、名コンビとなりました。





RON BANKS AND THE DRAMATICS
ドン・デイヴィス関連ではジョニー・テイラーに次ぐ重要アーティストであるドラマティックス。彼らはドン・デイヴィスのプロデュースで72年に「In the Rain」という大ヒット曲を出しており、それを含むVOLTからの1st作が人気のようですが、私はこちらの3枚目の方が好き。ヴォーカル・グループの粋を極めたこれぞスイート・ソウルな名作です。



DAVID RUFFIN / SO SOON WE CHANGE
元テンプテーションズのリード・シンガー、デヴィッド・ラフィン。彼がワーナー移籍を機にドン・デイヴィスのプロデュースのもと、アダルトな魅力で再出発を果たしたのがこの79年作。デニス・コフィ(g)、ルディ・ロビンソン(kbd)などデトロイト人脈が奏でるアーバンなサウンドとデヴィッドのジェントルな歌唱が心地よい。



もちろんこの他にも、デルズ、ソウル・チルドレン、マリリン・マックー&ビリー・デイヴィス・Jr.などなど、数々の印象的な作品を残しています。R.I.P.

アーマ・トーマス、幻のコティリオン・アルバム

2014-06-06 22:00:03 | ニューオーリンズ
IRMA THOMAS / FULL TIME WOMAN: THE LOST COTILLION ALBUM

ニューオーリンズR&Bの女王、アーマ・トーマス。彼女が71年、72年にアトランティック傘下のコティリオンに残した録音集がリリースされました。全15曲中13曲が未発表曲という、ファン垂涎の音源集です。録音時期的にはスワンプ・ドッグとの「IN BETWEEN TEARS」の直後だと思われるのですが、この時期はアーマ・トーマスにとってもまだ30歳になったばかりという、シンガーとして充実した時期であるのに反し、商業的な成功はもちろん、真っ当なリリース自体にも恵まれなかった不遇の時代でもあります。今回、また一つ、彼女の埋もれた名唱が発掘されました。

01. Full Time Woman
02. All I Wanna Do is Save You
03. She's Taken My Part
04. Shadow of the Sun
05. Waiting For Someone
06. Fancy
07. Time After Time
08. Our Love Don't Come That Easy
09. Turn Around and Love You
10. Tell Me Again
11. Try To Be Thankful
12. It's Eleven O'Clock (Do You Know Where Your Love Is)
13. Could It Be Differently
14. Song with No Name (aka Song for Jim)
15. Adam and Eve


まず1曲目「Full Time Woman」から「She's Taken My Part」までの3曲は、71年11月12日にワーデル・ケゼルグのプロデュースにより、マラコ・スタジオで録音されたもの。この「Full Time Woman」と「She's Taken My Part」は当時シングルのAB面曲としてリリースされたそう。私も「Full Time Woman」はコンピ盤で聴いたことがあったものの、こうして当時の録音集として、しかもこの時期にマラコでアーマがケゼルグと邂逅した曲として聴くと、あらためてその魅力に唸らされますね。南部印のゆったりとしたカントリー・フレイバー溢れるメロディーを、雄大なブラック・フィーリングで歌うアーマ・トーマス、最高です。またこのシングルは、アーマをアトランティックに引っ張り込んだ張本人ジェリー・ウェクスラーが「自分史上最高の一枚」と賞したそうですが、それも頷ける出来映えですね。「She's Taken My Part」での軽やかなファンクネス、そしてスロー・ナンバー「All I Wanna Do is Save You」の包容力たっぷりのソウルネス、どちらも素晴らしい。

そして1972年5月3日、4日、デトロイトで録音されたのが、4曲目「Shadow of the Sun」から11曲目「Try To Be Thankful」までの8曲。ここからは全て未発表曲です。流麗なストリングスの下抑制の効いた歌声でスィートなソウル・フィーリングを醸す「Shadow Of The Sun」、土地柄かモータウン的な躍動感が印象的な「Waiting For Someone」、アーマの溌剌とした切れのある歌声が素晴らしい「Fancy」や「Our Love Don't Come That Easy」、後半のディープこの上ない黒いシャウトに痺れるスロー「Time After Time」、ワウ系?のエフェクトが効いたギターとストリングスがグルーヴィーに駆け抜け、アーマの瑞々しいフィーリングも素敵な「Turn Around And Love You」などなど。どれもこれも一級のソウル作品。

続く「It's Eleven O'Clock (Do You Know Where Your Love Is)」と「Could It Be Differently」は1972年7月26日、マイアミのクライテリア・スタジオでの録音。前者はダイアナ・ロス路線を狙ったのか?と一瞬思った程、アーマ・トーマスがソフトなスウィート・ヴォイスを披露していて驚かされます。コンガのリズムとか、ホーン隊やストリングスが醸す雰囲気にはニューソウルっぽい香りもあったり。このストリングスのアレンジにはアリフ・マーディンが関わっているとか。

そして最後はフィラデルフィア・ソウルの総本山シグマ・サウンド・スタジオで録られた2曲。録音は1972年9月12日。プロデュースはヤング・プロフェッショナルズ。アーマ・トーマスがフィリーで録音していたと言うのも驚きですね。

録音スタジオのハシゴや、楽曲のヴァリエーションにはレコード会社側の試行錯誤が感じられますが、それに歌い方を変えながらしっかりと対応するアーマ・トーマスの力量にはまったくもって唸らされるばかりです。アルバム1枚分の録音を終えながら、当時リリースが見送られお蔵入りとなってしまったのにはそれなりの理由があるのでしょう。ライナーに曰く、プロデューサー陣が「アーマにはもう『あれ』がない」と判断したたとか。『あれ』って何でしょうね?ちなみに英語原文では『it』でした。


あと少し気になることがあるのですが、それはこのデトロイトとマイアミ録音を仕切ったプロデューサーであるジョー・ヒントンのこと。ライナーには「「Funny How Time Slips Away」で知られる」とあるんですけど…。確かにウィリー・ネルソン作のこの名曲をヒットさせたジョー・ヒントンというR&Bシンガーはいるようです。ですがWikiによりますとその方、1968年に亡くなられてるんですよね。となると72年にプロデュースは出来ない訳で…。どういうことでしょうね? ちなみに、60年代末からモータウンで活躍したソングライターに同名のジョー・ヒントンという方がいらっしゃいますが、そちらですかね?なんて思ったり。デトロイト繋がりで。いや、それにしては彼作の曲が1曲も無いのはおかしいか…。謎です…。

フジロック第8弾&ステージ割!!!

2014-06-05 22:19:01 | フジロック
THE POGUES / THE ULTIMATE COLLECTION

フジロック出演アーティスト第8弾、及びステージ割が発表になりました!! しかもアヴァロンやパレス、木道亭などの小ステージも一気に大放出。新規追加アーティストは怒濤の66組! なんか情報量あり過ぎて、目が追いつかないし、脳もついて行きません。このステージ割を元にタイムテーブルを妄想するのは正直無理!! ま、詳細はオフィシャルサイトを見て頂くとして、「ルーツな日記」的に気になるところを少々。

まずは金曜日。この日はFIRST AID KITとTHE YOUNG PHILADELPHIANSががっつり観れれば充分です。それにしてもオレンジのトリが大友良英スペシャルビッグバンドというのは少々驚きました。アーティストデータは空白のままですし、いったいどんなステージになるんでしょうね? まあ、私はおそらくトリの時間帯はヘヴンでMOE.を観ていると思いますけど…。あと久しぶりにGOLDIEを観たかったんですけど、オールナイトフジとはね~! しかも結構遅い時間に出てきそうで、さすがに諦めモードです。追加アーティストでは旬のダンスアクト、DISCLOSUREが決まりました。ですが初日にダンス系を固め過ぎじゃないですかね?もう少し散らせてあげれば良いのに…、なんて思ったり。あと邦楽勢では、ミクスチャーなロックステディをやる光風&GREEN MASSIVE、さらにそこで鍵盤を弾く小西英理さん率いるラテン・ピアノ・トリオ、邦カリプソ・バンドの筆頭株カセットコンロス、総勢13名の大所帯プログレッシヴ吹奏楽バンドというWUJA BIN BIN、さらには日本におけるディジュリドゥの第一人者GOMAなど、かなりそそられるメンツが決定しています。

土曜。とりあえず、夜はオレンジのPRESERVATION HALL JAZZ BANDから、ヘヴンのTHE LUMINEERS、そしてそのままPHIL LESHという流れで決まりでしょう。いや、ラストはオレンジのFANFARE CIOCARLIAも捨て難い。って言うか、失礼ながらFANFARE CIOCARLIAがトリって意外だったんですけど。すっかり明るい時間帯にゆっくり観る気満々だったので、この被りは想定外でしたね~。しかもグリーンのARCADE FIREに、コーチェラの時みたいに最後、PRESERVATION HALL JAZZ BANDがジョイントしたりして?なんて思うと、そっちも気になっちゃいますしね。さあ、どうしましょう?ここは当日まで悩みます。案外、この日は苗場食堂も熱いんですよね…。あとYOKO ONO PLASTIC ONO BANDがレッドのトリと言うのも驚きました。てっきりこっちがオレンジのトリかと思ってましたから。ま、観れませんけど…。追加アーティストではロッキンバリトンの浦朋恵さんが気になります。あとパレスにギャズ・メイオールもアナウンスされましたね。彼の名前が出てくると、夜のフジロックが一段とディープになってきますよね~。

日曜日。クロージングにポーグス!!これは嬉しいですね。ポーグスの決定自体も嬉しいですが、クロージング・アクトの復活も嬉しい!これは観たいですね。そしてSYL JOHNSON, BOBBY RUSH & LAVELLE WHITE SOUL MUSIC LEGENDSがオレンジのトリ!いや~、トリで良かった!!正直、ロックフェスですし、ネームヴァリュー的にもトリじゃないのでは?と心配してたんですよ。なんかトリじゃないと申し訳ないな、みたいな。だって3人のレジェンドが一同に会する訳ですから、それぞれの持ち時間をたっぷり取るにはトリじゃないとね。いや~、ホント良かった! この日の夜は、ヘヴンでスカ天国、ホワイトはヒップ・ホップで真っ黒と、どちらも魅力的ですが、私はオレンジでブルースにどっぷりです。あとカフェ・ド・パリのPRESERVATION HALL JAZZ BANDも楽しみ。あの色彩の中で聴くニューオーリンズ・ジャズ、きっと素敵ですよ! そしてこの日も、邦ジャム・バンド界の草分けMAJESTIC CIRCUS、最強ブルースバンドblues.the-butcher-590213、女性ロカビリー・トリオのTHE LIPSMAX、大阪発ディキシー・スウィング・ジャグなロックンタスケロール & ザ・キャプテンスウィングなど、面白そうな邦楽勢も続々決まっております。


さて、ついにその全貌を表したフジロックですが、まだ少し枠は有りますし、行動予定はなかなか立てずらい状況。BLACK KAT BOPPERS、NARASIRATO、BARBARELLA'S BANG BANG、BOOM PAM、JUNGLE BY NIGHTあたりの、複数ステージに出る神出鬼没系な方々を、どこで観るかの検討も、重要になってくるところ。


*写真はザ・ポーグスのベスト盤。01年のリユニオン・ライヴ音源もパッケージした2枚組。





最後に小ステージで暴れまくってほしい個性派日本人アーティストの動画をいくつかご紹介。


浦朋恵
http://www.youtube.com/watch?v=-FZH7JEFMAc


カセットコンロス
http://www.youtube.com/watch?v=ybRjZ3J0Dqc


WUJA BIN BIN
http://www.youtube.com/watch?v=nkv8r7pF3sU


THE LIPSMAX
http://www.youtube.com/watch?v=AaY_hFe7mvk


ロックンタスケロール & ザ・キャプテンスウィング
http://www.youtube.com/watch?v=C3pGkVL6kzo


光風&GREEN MASSIVE
http://www.youtube.com/watch?v=GlWX7cUT9Xw


小西英理ピアノトリオ
http://www.youtube.com/watch?v=6sh8ngQFnUQ


久和田佳代
http://www.youtube.com/watch?v=HgGnFraBWqg

上原ひろみ「ALIVE」発売記念イベント

2014-06-05 11:17:26 | ジャズ
6月4日、上原ひろみさんの新作「ALIVE」発売記念イベントに行ってまいりました。渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて、限定500人のプレミアム・イベント。これは「ALIVE」購入特典の応募抽選に当たったもので、倍率はおよそ10倍だったとか。いや~、くじ運の悪い私ですが、よく当たったものです。

私の整理番号は101番だったのですが、会場に入ると、前方3列だけ用意された座席はほぼ全て埋まっていたものの、まだ立ち見は誰も居ない状況でして、何所からでも観れる状態。迷わず立ち見一番前の上原さんの表情から身体全体、手先と鍵盤まで全部見える最高の場所をキープ。いや~、思いのほか良い場所から観れて超ラッキーでした!

まずは新作からタイトル曲「Alive」スタジオライヴ映像の上映からスタート。高鳴る期待と共に固唾を飲みつつ映像に食い入り、終了後に拍手が巻き起こる中、今回の司会進行役である棚橋和博さんが登場。この方、「CAST」の編集長さんで、ことあるごとに、上原さんの超ロングインタヴューをなさってまして、その内容の濃さから、上原さんのインタビューと言えば棚橋さん!みたいな印象の方なのです。私もいつもそんなインタビューを読んでは、この人どんな人なんだろうと興味津々だったので、初めて、生棚橋さんを目撃出来て、ちょっとお得な感じでした。誌面でのインタビュー以上にざっくばらんな面白い方でした。

さて、いよいよ上原さんが登場。今回のイベントには、南は沖縄、北は釧路からはるばるやってきたファンの方もいらっしゃるということで、それを聞き上原さんも信じられないという表情で恐縮しつつ、棚橋さんに「今回のイベント、どうですか?」的に意気込みを聞かれても、「しゃべっているのが申し訳ない」みたいな感じで、早くピアノが弾きたそうな上原さん。

じゃあ、もう弾いてもらいましょう的に盛り上がるなか、まずは新作から「Seeker」。椅子に座り、上方を仰ぎ、目をつむり精神統一。そして始まった新作随一の名曲「Seeker」。もう素晴らしいの一言!そしてソウルフル!!CDやテレビで見る以上にソウルフル!後半のどんどん感情が高鳴って押さえきれないソウルが溢れ出していく様は圧巻でしたね。途中ガーシュインを引用したりの遊び心も上原さんらしかった!

ここ数日、テレビ出演でこの曲を演奏することが多かった上原さんですが、やはりテレビでは時間的な制約があるそうで、今回は思う存分弾けたと本人も満足そうでしたね。

さて、仕切り直してトークの時間。棚橋さん曰く、上原さんはトークに関してははなはだネガティヴで、話し相手としては非常に困るといった雰囲気でしたが、そこは棚橋さん、上原さんをリラックスさせ巧みに言葉を引き出してくれました。上原さんがオフの一日をどう過ごしているかを時系列で探ってみたり、おやつは三連プリンだとか、、フランクザッパやマイルスデイヴィスのビデオで疑似セッションを楽しんでるとか、矢野顕子さんから教わった大根すきやきのレシピとか、海外ツアーに待ち受ける数々のトラップとか、朝まで続く地獄のゆる~いセッションの話とか、甲本ヒロトさんとの出会いとか、その他色々。敢えて語り尽くされた新作の話ではなく、ただ興味のある話へ向かう感じが、とてもアットホームな感じで楽しかったです。上原さんも楽しそうに沢山しゃべってくれましたしね。それにしてもピアノを弾いている時と落差の激しいこと。そこがまた魅力的なんですけどね。

そうこうしているうちに、あっという間にイベントも終わりの時間に近づいてくる。最後は新作から続けて2曲を披露。まずはスロー・ナンバー「Firefly」。これは本当に美しい曲。上原さんの弾く音色もエモーショナルの極地。鍵盤を優しく撫でるような繊細なタッチが生み出す至極のメロディーは、柔らかく流れるようでも有り、一音一音に深い魂が込められてるようでもある。嗚呼もう、ず~っと聴いていたい!!

最後は「Spirit」。これも名曲ですよね。そしてソウルフル!これまでに無いほど“間”を生かした感情移入はブルージーこの上ない。いやその高揚感はゴスペル的と言った方が良いかも。「Seeker」もそうですけど、この曲での感情表現における上原さんの黒さっていうのは、彼女の留まるところを知らない進化を感じさせられますよね。そしてインプロではその黒さに上原さんならではのアバンギャルド性が弾け合う訳ですから堪りませんよ!

割れんばかりの拍手に送られ上原さんがステージを後にする。もちろん拍手は鳴り止まない。まったく鳴り止まない。再び登場する上原さんですが、もう新作から一人で出来る曲は全てやってしまったと…。なので今マイブームの曲をやると言って弾き始めたのは「PLACE TO BE」のオープニングを飾った「BQE」。と言っても、初めは何の曲だか解りませんでしたけどね。いきなり難解な変態的音階を弾き続け、そんななか突如「BQE」のイントロが姿を現した瞬間、オー!!みたいな。その後は怒濤の前衛プレイの応酬。驚異的な緊張感でただただ指を酷使するかの如くストイックなプレイは、まるでトンネルのなかでもがいているかのよう。そして一気に視界が開けるカタルシス。この曲も間違いなく進化しています。

短い時間でしたが、天晴なほど、ピアノと戯れ、そして弾き倒し、晴れ晴れとした表情の上原さんでした。表情と言えば、毎度のことながら、ピアノを弾く上原さんは良い顔してましたね。もちろん立ち上がったり、肘で叩いたりという、アグレッシヴな姿も見れましたし、唸りっぱなしでしたし、ホント最高でした。

ちなみに、この夜、斜め向かいのClub Asiaでは東京スカパラダイスオーケストラがライヴをやっていまして、上原さんは自身のイベント終了後そちらに飛び入りし、「水琴窟」を共演したそうです。そっちも観たかった~!!





~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!


 14.01.07 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@ブルーノート東京(2013年12月31日カウントダウンパーティ)/a>
 13.04.04 上原ひろみ@ブルーノート東京(2013年3月27日2ndショー)/a>
 12.12.28 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@赤坂BLITZ(2012年11月14日)
 12.11.14 フジロック・ベストアクト第1位!(2012年7月27日オレンジ・コート)
 11.09.14 矢野顕子×上原ひろみ@昭和女子大学人見記念講堂(2011年9月9日)
 13.11.11 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@SWEET LOVE SHOWER 特別編(2011年8月28日)
 11.09.02 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@SWEET LOVE SHOWER(2011年8月28日)

フジロック予習: ザ・ルミニアーズ

2014-06-03 18:26:00 | フジロック
THE LUMINEERS / THE LUMINEERS

昨年はマムフォード&サンズがフジロックを盛り上げてくれましたが、今年は、デビュー当時「アメリカからのマムフォード&サンズへの返答」などと評されたザ・ルミニアーズがやってきます。これは楽しみですね~!

米コロラド州デンヴァーを拠点に活動してきたというザ・ルミニアーズ。2012年のデビュー曲「Ho Hey」、そしてデビュー・アルバム「THE LUMINEERS」が米英で大ヒット、さらにグラミー賞「Best New Artist」にノミネートされるなど、まるでデンヴァーから光の如く成功を掴んだ若者達なイメージですが、実は中心人物であるウェスリー・シュルツとジェレマイア・フレイツの2人はなかなかの苦労人だとか。そもそも2人はデンヴァーではなく、ニュージャージー州ラムゼーの出身だそう。子供の頃からの付き合いだったそうで、05年頃から音楽パートナーとして活動を始め、共にニューヨークへ渡り成功を夢見ますが、摩天楼で4年間揉まれた末に挫折。そして再起の地に選んだのがデンヴァーだったそうです。それにしても何故デンヴァーだったんでしょうね?そこが謎なのですが、それが運命だったのでしょう。その地で女性チェロ奏者ネイラ・ペカレックと出会い、いよいよザ・ルミニアーズの快進撃が始まる訳です。

私はこのザ・ルミニアーズというバンド、凄く不思議なバンドだと思ってるんです。サウンド自体が凄くミステリアスと言いますか。アメリカのバンドなので、カントリー/フォークをベースにしたサウンドな訳ですが、メロディーの持つ憂いを含んだ昂揚感は英国的ですし、印象的な“oh”とか“hey”とか“ho”のような掛け声からはヨーロッパ的なロマンを感じさせられたりします。あと、メンバーにチェロ奏者がいるというスタイルもユニークですよね。これはアヴェット・ブラザーズからヒントを得たのかもしれませんが、彼らよりザ・ルミニアーズのそれは、ピアノとの絡みなど、より室内楽的な洗練を感じさせられます。そう、ザ・ルミニアーズはカントリー/フォークに根ざしながらも、あまり土っぽくないように思うんです。でもその反面もの凄くトラッド的であったりする訳で、その辺りはやはり彼ら独特の楽曲とアレンジ力の成せる技なのでしょうね。しかもそんな楽曲で普遍的な愛を歌ったりしてるから、ファンタジック!!

流麗なフィンガー・ピッキングからカントリー風景へと旅立つ「Flowers In Your Hair」、今作最も土っぽさを感じさせる曲ながらアレンジのセンスも光る「Classy Girls」。力強くも美しいチェロの響きが印象的な「Dead Sea」、“ho”、“hey”の掛け声が際立つ代表曲「Ho Hey」、ウェスリー・シュルツのソウルフルに歌うスローナンバー「Slow It Down」、躍動感溢れるバスドラムのリズムとロマンティックなコーラスに高揚する「Stubborn Love」などなど。これらエモーショナルに溢れた魅力的な曲の数々からは、やはりルミニアーズが持つどこかミステリアスなファンタジーを感じさせられずにはいられません。いやはや、ライヴが楽しみです!


さて、現在5人組となっているザ・ルミニアーズ、ライヴではどんなサウンドを聴かせてくれるのでしょうか。今年2月の来日公演では、ドラム、マンドリン、アコギ、ピアノ、アコーディオンなど、メンバーが持ち場を変えながら楽器を持ち替えつつ、巧みな演奏を繰り広げてくれたそうです。そして今度はフジロック。山の中で聴いたら最高でしょうね。まるで森の木々や精霊達と一体化するようなマジカルなライヴになるのではないでしょうか? 出来ればヘヴンで観たいものですが、ネームヴァリュー的にはグリーンですかね?そろそろステージ割も発表される時期だと思いますが…。



The Lumineers - Live at Paradiso, Amsterdam 26/02/2013
http://www.youtube.com/watch?v=f-5wKbynvD0
↑昨年2月、アムステルダムでのフル・ライヴ映像。やはりライヴにはスタジオ作とは違うアグレッシヴさがありますね。ある意味CDとはまた別物のような印象で、よりアメリカのバンドらしさも感じられたり。バルコニーに登っての「Ho Hey」とか、ラストにはザ・バンドの「The Weight」をカヴァーしたりなど、見所も多いです。

そそるライヴ 6月編

2014-06-02 20:17:21 | そそるライヴ
関東近辺にて6月に行われるライヴ、フェス、イベントのなかで、気になるものをピックアップしてみました。

6/01(日)BRIAN AUGER’s OBLIVION EXPRESS featuring ALEX LIGERTWOOD @ブルーノート東京
6/01(日)SIMON PHILLIPS "Protocol II"  @丸の内コットンクラブ
6/02(月)SOLAS @渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
6/05(木)内田勘太郎 @タワーレコード渋谷店(インストア・イベント)観覧自由!
6/05(木)BIG BAD VOODOO DADDY @ブルーノート東京
6/06(金)Chris Dave and the Drumhedz @ビルボードライヴ東京
6/07(土)Kan  @吉祥寺 Star Pine's Cafe
6/08(日)永井ホトケ隆&KOTEZ from ブルーズ・ザ・ブッチャー @タワーレコード渋谷店(インストア・イベント)
6/13(金)ALBERT LEE @丸の内コットンクラブ
6/14(土)CHRIS SPEDDING  @初台 The DOORS
6/17(火)ANDY ALLO @ブルーノート東京
6/17(火)Russian Red @渋谷 CLUB QUATTRO
6/19(木)MIKE STERN/RANDY BRECKER/BILL EVANS SUPER BAND featuring CHRIS MINH DOKY & DENNIS CHAMBERS @ブルーノート東京
6/20(金)ALESSI'S ARK @恵比寿 Batica
6/21(土)音楽の日2014 @アンスティチュ・フランセ東京
6/22(日)Hostess Club Weekender @新木場 STUDIO COAST
6/23(月)Harlem Gospel Choir @ビルボードライヴ東京
6/26(木)BadBadNotGood @代官山 UNIT
6/28(土)PETE ESCOVEDO LATIN JAZZ ORCHESTRA featuring SHEILA E. @ブルーノート東京



お出かけの際は事前のご確認をお願いいたしま~す!

2013年 ベスト・アルバム 1位~10位

2014-06-01 11:10:10 | 2013年総括
第1位

BEYONCÉ / BEYONCÉ
もう圧倒的な第1位。R&Bの女王として完全無欠の大傑作。低音を効かせたバウンシー且つ艶っぽいグルーヴでブラック・ミュージックの今を伺いつつ、ビヨンセのビヨンセにしかあり得ない王道を突き進むこの気持ち良さ!!しかも王道ゆえの大味感も感じさせず1枚の作品としての引き締まったトータル性は見事としか言いようがありません。ゲリラ的に配信リリースした手際とその即効性も圧巻でした。そして何よりもビヨンセの歌声。漲ってます!ありとあらゆる感情が漲ってます! これぞディーヴァの歌唱!やはりビヨンセ最強!!


第2位

JESSE HARRIS / BORNE AWAY
ジェシー・ハリスのソング・ライターとしての魅力、シンガーとしての魅力、それらを一つのアルバムとして聴かせる表現者としての魅力、そういったもの全てが静かに凝縮し結晶化されたような素晴らしい作品。アコギ弾き語り主体というシンプルな音像が、まるで別世界のような旅へと連れて行ってくれます。音楽という名のアート作品のようなアルバム。


第3位

BOBBY RUSH / DOWN IN LOUSIANA
チトリン・サーキットの体現者ボビー・ラッシュ。これは近年の充実振りが生んだ最高傑作。ローカル・ブルースならではのいかがわしい臭いに溢れた彼独特のファンクネスに脱帽です。ですが案外、これを現代に聴かせる彼のセンスというのは、かなりの新感覚なのかもしれない、と思ったり。どちらにしろ、相当なくせ者であり、くせ者ならではの現代最高のブルース。


第4位

GUY CLARK / MY FAVORITE PICTURE OF YOU
テキサスを代表するヴェテラン・シンガー・ソング・ライター、ガイ・クラークのソロ・アルバム。アコースティック・ギターを中心にしたシンプルなフォーク/カントリー。その円熟した音色は優しく、暖かく、そしてどこか寂し気である。そして70歳を超えたガイの、渋い歌声に酔いしれます。亡き奥様の写真を掲げるジャケットも良いですね。


第5位

NORTH MISSISSIPPI ALLSTARS / WORLD BOOGIE IS COMING
地元ベースの地道な活動がいよいよ実りを結んだかのような充実作。全17曲というアナログなら2枚組であろうヴォリュームが生むある種の整合性の無さに、かえってミシシッピ・ヒル・カントリーの裾野の広さを伝える説得力を感じさせられます。またそれらを現代の音として鳴らす実験結果のようでもある意欲的な楽曲とセッションの数々は、さすがジャムバンド気質が成せる技!!


第6位

PRISCILLA AHN / THIS IS WHERE WE ARE
エレクトロなサウンドがドリーミーに舞う新モードのプリシラ・アーン。一聴ポップなれど聴き進むにつれ陶酔感に誘われる、まるで白昼夢のようなサウンドが秀逸。また透明度に一滴、媚薬のような濁りを加えた、これまでとは違うニュアンスのプリシラの歌声にも注目です。


第7位

SARAH JAROSZ / BUILD ME UP FROM BONES
新世代のブルーグラス、サラ・ジャロス。バンジョー,ギター、マンドリンと、多彩な才能を聴かせてくれますが、シンガーとしてもソングライターとしても魅力的。穏やかな中にも研ぎ澄まされた感覚を感じさせる魅力的な1枚。


第8位

JOHN SMITHE / GREAT LAKES
英国フォークの新しき至宝と呼びたいジョン・スミス。1曲目から何処かに迷い込んだかのような錯覚に陥りそうな深いフォーク感。何かを語りかけてきそうなギターの音色と、深みのある歌声、そして楽曲、アレンジ、まったくもって素晴らしい。


第9位

CYRIL NEVILLE / MAGIC HONEY
シリル・ネヴィル流ブルース・ロック・アルバム。ウィリー・グリーンを中心にしたニューオーリンズなバック・バンドならではのグルーヴ感が最高。クラレンス・クレメンツ、マイク・ジト等ギタリストのプレイも強力なれど、シリルの熱くソウルフルなヴォーカルも未だ健在。


第10位

HOT 8 BRASS BAND / TOMBSTONE
前作と対を成したアルバムであり、ニューオーリンズらしく鎮魂と祝福を合わせもったスピリチュアルな作品。とは言え重くなりすぎず、パーティ感溢れているのが、流石かの地のブラス・バンド。ヒップホップ世代ならではのドープなグルーヴも素晴らしい。(フジロックでメンバーからサインを頂き、ジャケがぐちゃぐちゃになってしまいました…。)