ルーツな日記

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上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@赤坂BLITZ

2012-12-28 22:58:15 | ジャズ
随分と昔の話になってしまいましたが、11月14日、赤坂BLITZにて上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトのライヴを観てまいりました。2012年度のジャパン・ツアー追加公演であり、唯一のライヴ・ハウス公演であり、これがツアー初日となったこの公演。私にとってはフジロック以来およそ4ヶ月ぶり今年2度目のトリオ・プロジェクト。フジロックで見せた圧倒的な熱演は個人的なベストアクトでしたが、果たして今回は如何に! なにせライヴハウスでのスタンディング公演ですからね!

開演前、ライヴハウス独特の密集感に観客達のトリオを待望する空気がどんどん濃縮されていく雰囲気。まだかまだかと待ち構える中、いよいよ3人がステージに現れる。上原ひろみ、アンソニー・ジャクソン、サイモン・フィリップス。歓喜の大声援がこだまするなか、ライトに照らせれる3人の姿は既に神々しいレベル。そして始まったのは最新作のタイトル・トラック「Move」。いきなりの凄まじさ! 3人の音が絡み合い、弾けあい、混ざりあう、アグレッシヴこの上ない音空間。ライヴハウスらしいラウドな音質がまたこのトリオに合っている。やっぱこのトリオはロックですよ!そして観客の反応もロック! 上原ひろみの弾けるパッションに呼応してその都度「ギャー!ギャー!」と声をかける。さらにその声に反応するかのように上原ひろみのプレイは激しさを増していく。これは狭いライヴハウスならではのロックな親密感と濃密度。堪りませんね~。後半にはサイモン・フィリップスのドラムソロが炸裂する。上原ひろみとアンソニー・ジャクソンによるプログレッシグなリフに挑みかかるように凄まじいソロを叩くサイモン・フィリップス。そんなソロを含めた3人の織りなす音像は、もうジャズでもロックでもない得体のしれないエグさに溢れ、それがステージ上に見えない「怪物」を描き出すような。観ているものはただただその怪物に飲み込まれていく。

「Endeavor」「Rainmaker」と新作からの曲が続くステージ。ノードを使かったファンキーな曲でも、美しい旋律が流れ行く曲でも、その怪物感はまったく薄れない。昨年、一度でも「サイモン・フィリップスのドラムは上原さんの魅力を引き出すタイプではないのではないか?」なんて思ったことを素直に謝りたい。これはまさにこの3人にしか現出し得ない巨大な怪物であり、この怪物感こそ現在の上原ひろみが目指す音風景なのではと思いたい程、とにかく圧倒的。上原ひろみとサイモン・フィリップスのバトルは技巧を超えたレベルで肉感的に弾けあう。そしてその両者を包み込みむように繋ぎあわせるのがアンソニー・ジャクソンの懐の深いベース・ライン。と、思ったりしていましたが多分それも間違い。この夜はこれまでになくベースの音がよく聴こえました。しかもアグレッシヴこの上ないブリブリの低音で。アンソニー・ジャクソン、この人、思いの他えげつないベース弾きますよ! このトリオの怪物感は案外この人のベースによるところが大きいのかも? と思う程、とにかく揺れ幅の大きいぶっといベース・ラインにやられっぱなしでしたね。「Endeavor」でのピアノに拮抗するかの如くに歌いまくるベース・ラインの見事なこと!彼のファンキーなベースから始まる「Margarita!」も格好良かった! 一見、縁の下の力持ち的なアンソニーですが、いやいや、彼も主役。まさにトリオですね。上原ひろみ、サイモン・フィリップス、そしてアンソニー・ジャクソン、3人が極限的に混じりあう凄まじさ、天晴です!


CAST誌に掲載された上原ひろみのインタビュー曰く、新作「MOVE」を製作するにあたってものすごい量の練習とリハーサルを繰り返したそうです。もちろんアンソニーもサイモンも。その積み上げこそ現在のこのトリオの原点なんでしょうね。それこそ前作「VOICE」はまだ顔見せ程度だったのかも。それぐらい現在の凄まじさは計り知れない。もちろんツアーによる積み重ねもあるでしょう。それは成長と言うよりは、ようやく本来の姿を見せ始めた、そんな感じ。そして当初からこのヴィジョンを思い描いていたであろう上原ひろみ、もう私の想像の遥か上を行っちゃってます、当たり前ですけどね。

そしてそんな上原ひろみのソロ・コーナー。ピアノに向かって弾き始めたのは「I Got Rhythm」。でも正直、初めの数分は何の曲だか分りませんでした…。新曲?とか思いきや、ラグタイム調のパートまできてようやく、あ、「I Got Rhythm」か!みたいな。その後はジェットコースター的展開でガンガン飛ばしまくる。もう何所へ行ってしまうのか分らなくなるような強烈な弾けっぷり。その力強くも超絶的な鍵盤裁きから上原ひろみの“快感”と“狂気”がビンビンに伝わってくる。やはりこれぞ上原ひろみですよ! 大好きです!

上原ひろみにとっても初めてだったという単独公演でのスタンディング・ライヴ。圧倒的な密度と濃度で駆け抜けたステージ。最後を飾るのは最新作からの大作「Suite Escapism」3部作。相変わらず天然脱力系な喋り口で観客達を和ませつつ、この曲で最後と告げる上原さん。それに「え~!!」と不満そうな声を漏らす観客達。その声を聴いて、「あの~、この曲すごく長いんで~、大丈夫だと思いますよ。」と諭す上原さん。しかも「応援次第でどんどん長くなりますから」とのこと。流石です。

そして始まった3部作。これはもう「素晴らしかった!」の一言。やはりこのトリオ、怪物ですよ! 私もそこそこ新作「MOVE」は聴き込んでるつもりですが、ライヴで聴くと、ホント何所までがキメで何所からがインプロなのかさっぱり分かりません。キメにしてはあまりにもフリーキーですし、インプロにしてはあまりにもプログレッシヴ。参りましたね。そしてこの3部作。ドラマチックな曲展開も、3者様々なインプロの応酬も、ここまで行っちゃうとなんか美しかったです。ホント、美しかった!!!

*上の写真は会場で購入したパンフレット。2万字インタビュー等、読み応えあります。



この日のセットリスト↓ (「The Tom And Jerry Show」はやらずに「I Got Rhythm」でした。上原さんの気分で変更したんですかね?)





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 12.11.14 フジロック・ベストアクト第1位!



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