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太宰治とたばこ(その8)

2015年02月15日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
▼「読んでおきたいベスト集!『太宰治』」その8です。それにしても、太宰治氏の文章は切れ目なく長い場合が、時としてとても心地よいのです。

『人間失格』-3

557ページ
シズ子の取計らいで、ヒラメ、堀木、それにシズ子、三人の会談が成立して、自分は、故郷から絶縁せられ、そうしてシズ子と「天下晴れて」同棲という事になり、これまた、シズ子の奔走のおかげで自分の漫画も案外お金になって、自分はそのお金で、お酒も、煙草も買いましたが、自分の心細さ、うっとうしさは、いよいよつのるばかりなのでした。

572ページ
けれども、その頃、自分に酒を止めよ、とすすめる処女がいました。
「いけないわ、毎日、お昼から、酔っていらっしゃる」
バアの向かいの、小さい煙草屋の17、8の娘でした。ヨシちゃんと言い、色の白い、八重歯のある子でした。自分が、煙草を買いに行くたびに、笑って忠告するのでした。

573ページ
としが明けて厳寒の夜、自分は酔って煙草を買いに出て、その煙草屋の前のマンホールに落ちて、ヨシちゃん、助けてくれ、と叫び、ヨシちゃんに引き上げられ、右腕の傷の手当てを、好ちゃんにしてもらい、その時ヨシちゃんは、しみじみ、
「飲みすぎますわよ」
と笑わずにいました。
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