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金曜日のカラオケルーム

2020年11月19日 | 気ままな横浜ライフ
金曜日の夜だというのに、カラオケ屋さんの空室率80%以上は、他人事ながら、そこで働く人たちの苦労を察すれば、たしかに医療従事者などの大変さには応援したいですが、あまた存在するカラオケ屋さんにも同情を禁じ得ないのてす。




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『しぐれ茶屋おりく』の煙草シーン

2020年11月19日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
先日、川口松太郎著『しぐれ茶屋おりく』(講談社、昭和44年刊行)を読み終えました。本書の「たばこ」に関する記述を抜き書きしましたので、ご紹介させていただきます。



第一話 隅田川春秋
【26ページ】
----「いやだァ、あたしゃまだ45ですよ。あたしが小母さんなら、あんたはお爺ちゃんだ」「あっはっはっはっはっ相変わらず口がはららねぇなぁ」
と煙草入れの筒をスポンと抜いた。そこへ女中が、山菜とお酒のお膳を運んで来た。松島は酒が好きで、酒の上では時々しくじりがある。

第二話 天麩羅そば
【50ページ】
おりくのためには席がちゃんと取ってあって、高座の右手に布団と煙草盆が用意され、円朝の上がる前あたりに、楽屋から回って入った。三遊派の芸人で銀花楼の女将さんを知らぬものはなかったから、芸人たちにも良い顔で、
「毎日ご苦労様でございます」
と前座たちが挨拶する。

【52ページ】
一緒に来ていて注文の仕方が違っている。大きい方は天麩羅とかけと2杯だが、小さい方はかけそば1つだけ、大きい方は威張って注文し、小さい子は決まり悪そうな声でいう。 
おりくは微笑しながら煙草をすっていた。細竹の羅宇(らお)(注)に、銀金具がついていて、煙草入れは金唐皮の二つ折れ。

(注)地名ラオス(Laos)を「羅宇」と当て書きしたもので、キセルの火皿と吸い口とをつなぐ竹の管のことです。ラオス産の竹を使ったことに由来します。

【56ページ】
寄席の客になって下足札を持たなくなれば立派な常連で、祝儀はいる代わりに幅がきいて、良い気持ちのものだ。浅草は昼席の入らない土地柄で、義理の客をまぜてざっと7分ぐらい、高座の左手の柱の前に座席布団が敷かれ、茶、煙草盆も型通りに、円寿、きん楽、志ん鏡の若い真打ちの3人会。

第四話 湯島の琴
【115ページ】
青年の竿に小鮒がかかった。無言で針からはずして、ぽちゃんと水に放してやった。動作がゆったりと落ち着いて、こせついたところがなく、竿を置いてシガレットケースを出した。銀製で菊の御紋章がついている。----
----ケースは立派でも、中の煙草はゴールデンバット10本5銭の安もの、御紋章の銀ケースに安煙草を入れるアンバランスは、保雄青年の体を包んでいるようだ。
(この男は此処へ来たことの意味を知っているのだろうか)
バットをふかす青年の姿を見ながら思った。

第五話 名人鉄
【143ページ】
銀花楼の出入り職人に鉄之助という指物師がいた。死んだ主人がひいきの職人で、身の廻りの雑器類や、机や飾り棚や火鉢や煙草盆や小物入れなぞは鉄之助の造ったものでなければ使わなかった。

【144ページ】
主人が死ぬまで使っていた煙草盆は、露芝模様(*1)の漆のめんそう描き(*2)で、露には銀を用いる優雅な品、今でもおりくの手元にあるが、仕事が丁寧なので狂いが出ず何年使っても飽きが来ない。
*1 露芝模様:秋草とともに描かれる模様。
*2 めんそう描き:人形の顔を仕上げるときなどに、ごく細い線で描く方法

【172ページ】
「じゃ此処いらで一休みして行こう」
腰掛け石の埃を払って腰をおろした。煙草入れを取り出すとおふねがマッチをつけてくれる。ゆっくり一ぷく吸った。向かい側の聖天様の森が夕陽を浴びて黒く見え、のあげる川面に雲が吹いて、いつ見てものどかな景色だ。

第九話 春色みやこ鳥
【329ページ】
岩田専太郎さんによる煙草盆の挿絵



第十話 芸の道は還らず
【347ページ】
人のいない茶店に腰をおろして一服喫いつけると、向島に住む仕合わせをしみじみと感じ、水の上と花の梢をぼんやり見上げているとぽつりぽつり人影が見え始める。おりくと同じように朝桜を見ようとする風流人も少なくはなく、中には古風な瓢(ひさご=ひょうたん)に酒をつめて来る者もある。
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