息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

いつか響く足音

2012-05-21 10:02:04 | 柴田よしき
柴田よしき 著

一時期郊外の団地に住んでいたことがある。
築30年以上で4階建ての2DKもしくは3DKが数十棟建ち並ぶ無機質なような
それでいてにぎやかな不思議な街だった。
親の代から住んでいる子供たちが結婚して、新たに居を構えていたり、
バブルによる家賃高騰で都心に住めなくなった人たちが暮らしていたり。
すでに商店街は寂れ、高齢化は進んでいたけれど、まだのんびりした雰囲気が
残っていた。子どもも多かった。
我が家はそんなことは知らず、その広大な団地のはずれに作られた一棟だけ
新しい高層住宅を見つけ、子どもが生まれる機会にと引っ越したのだ。
暮らしやすい反面、近所づきあいや当番など共働き家庭には過酷でもあった。

本書の舞台であるかつては若い夫婦の夢が詰まっていた団地は、いま
時代から取り残されたような人ばかりが暮らしている。

借金まみれのキャバクラ嬢、息子に絶縁されてしまった老女、
猫の写真を撮るカメラマン。
厄介ごとも多いし、外国人も増えてきて問題も多発。
それでも人はつながっている。

実はこういう濃密なつながりが苦手だ。
子どもが小さいときはこれも親の仕事と割り切っていたが、周囲から
切り離されていると落ち着く。
そんな私でも最後の飲み会のシーンは素直に楽しそうと思った。

こんなふうに暮らすのも悪くないかも。
不覚にもそう思ってしまった自分に驚き、そう嫌じゃないことにも
びっくりしている。

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