息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

神の狩人 2031探偵物語

2012-12-21 10:01:31 | 柴田よしき
柴田よしき 著

2031年を舞台にした近未来探偵小説。
少子化、高齢社会、情報化、ドラッグ、自殺など、現代社会における問題は
さらに進行している。

主人公の探偵・サラは、ひとりの女性から行方の知れない姉を探して欲しいと
依頼を受ける。
しかし彼女には曖昧な記憶しかない。姉は実在するのか?
それを探るうちにサラは元探偵の老人・風祭に行き着く。

連作短編集のかたちであるが、ひとつの大きな物語としてまとまっている。
謎解きも十分に面白いものだが、やはり魅力はこの世界観。
細やかな設定の一つひとつが、来たるべき近未来にきっと現実となりそうで、
思わず引き込まれてしまった。

全ての食物が生産工場でつくられる。
医師の診察に触診はない。
妊娠計画は保健所が管理する。
美容整形、アンチエイジングの進化は人から見た目の年齢を奪う。
インフルエンザは抗ウィルス・エアドームにより都市から排除される。
オゾンホール対策のため人工雲が常に頭上を覆う。
個人のトーク・カードは、行く先々でネットにつながり、キャラクターが
マネジメントを務める。

もうすぐそこにある技術も、そうなってほしくない技術もある。
これが書かれたのは2008年、それから現実に近づいた技術もある。

そしてサラのやや無機質なキャラクターとハードボイルドな風祭の対比もいい。

シリーズ化するらしいのでこの先が楽しみ。

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