舟橋聖一 著
大奥を取り仕切り、ときめいていた年寄絵島と役者生島とのスキャンダルを
人間模様や時代背景とともに、美しい文章で描き出す。
時の将軍・家継の生母・月光院を中心とする勢力と、前将軍・家宣の正室・天英院を中心とする勢力の
派閥争いや、贅沢三昧の大奥の風紀を引き締めようとする表方と、それだけが勤めの楽しみとする
大奥女中との小競り合い、また、将軍お気に入りであった新井白石と間部詮房の足元をすくおうと
するたくらみ、はたまた将軍家の世継ぎ争いなど、もはや絵島も生島もあずかりしらぬことが絡み合い、
世紀の事件へと広がっていく。
もともとは堅い絵島が、そのまじめさゆえに生島との関係にはまり込んでいくさまや、
味方と信じた朋輩もそこはライバル関係、結局は裏切られていく様子が哀しい。
経済的に追い詰められていく過程などは、無知は罪という言葉を思い出した。
ドロドロの人間模様でありながら不快感なく読めるのは、やはり筆者の力。
裏も表も美も醜も併せて、素晴らしい物語となっている。
上下巻とかなりボリュームはあるが、緩急のリズムもあり読みやすかった。
また時間をおいて読んでみたいと思わせる。
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